理想の光

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:3分
この小説は、ミュージカル“キャッツ”を題材にしたもののプロローグになっています。苦手な方は読まないことをお勧めします。
といっても原作のような描写はプロローグ以降も皆無なのでキャッツを知らない方でも楽しめるかと思います。
良ければ読んで頂けると嬉しいです。
『なんだ?この薄汚いポケモンは』
『まったくみすぼらしいわね……ほら、あっち行って頂戴』
『手癖の悪い奴め!とっちめてやる!!』
『うわ……なにあのボロボロのチョロネコ……』


『————v—ょ。——ぇ—n—ぅ—————n—ゃ—ぇ』


物心がついた時からあたしは独りだった。
自分がどこから来たのかも分からず、ニンゲンたちの悪意を浴びて育ってきた。
食糧はいつも知らない所から盗んできた。……そうしないと生きていけないから。
ふとしたときにこう思う。
こんな生に意味はあるのか?
何度か楽になろうと試みたことはあるけれど、どれも最後は恐怖心が捨てられない。
自分は何がしたいのか。

「あら、あなたも捨てられた子かしら?」

「……っ」
なんだ、一体誰だ、今度はあたしに何をしようというんだ。
「あぁ、その反応……やっぱりあなたも私たちと同じなのね」
「同じ……?」
落とした腰を少し上げる。今まで嫌というほど体で浴びてきた悪意は、この何者からは感じ取れなかった。むしろあたしのことを同情するような雰囲気すら感じる。
「ええ、あなたも、私も、人間に捨てられたのよ」
「すて……られた……」
何者かが言った言葉を反芻する。ああ、あたしは捨てられたんだ。だから、こんな……
「……心配しないで。こんな私たちにも、光は残されているのよ」
「ひかり……?」
気がついたら、あたしの頭に何者かの手が優しくのっかっていた。なんだろう、今までそんなことはなかったのに、何故だか心が落ち着いてくる。
「そうよ。ポケモンの、ポケモンによる、ポケモンのためだけの祭典……」
頭から手の触れる感触がなくなった。
見上げてみると、何者かはこの時をずっと待ちわびていたかのような表情を浮かべていた。
「その祭典の中でたった一匹、“ゼキルム”の称号を与えられたポケモンだけが天上の世界に昇ることを赦され、新しい生を手に入れることができるの」
「ゼキ……ルム……」
夢のような話だ。けど、今まであんなおぞましい日々を送ってきたというのに、そんな、
「誰だって理想を追い求めていいのよ?」
「……」
眩しかった。
そして、心地よかった。
「ね、ぇ……」
線の切れた声しか出なかった。
「なにかしら?」
それでも、目の前の光には繋がったようだ。
「どうすれば……?」
ふふっ、と、柔らかい声が聞こえた。
「簡単よ。その祭典の中で、あなたの華やかさを現せばいいの」
華やかさ。
あたしにそんなものがあるだろうか。
「次に月の満ちる夜、その時に二番地の路地裏が祭壇になるわ」
光は、絶えずあたしを照らし続ける。
「それじゃあ、また祭典の時に」
「あっ……」
待っているわ、最後にそう残して名も分からない光は暗闇に消えていった。
「……」
次の満月の夜。
路地裏で、理想の祭典が始まる。
考えてみても、やっぱり夢みたいな話だ。
でも……

行ってみよう。
あたしはあたしができる、精一杯のことをしよう。
そうすれば、きっと


「……きっと次は、いいことだらけ」

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。