26Days:「発生!あ~ん事件!?~トゲトゲやま#3~」の巻

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 ストック切れだ!がんばるぞー!
 ようやくソラと合流できて、明るい雰囲気が出てきたのも束の間。ぼくたちはまた新たなポケモンたちに襲撃されてしまった。なんとかソラが頑張ってくれているみたいだけど…………。


 「うっ……………」
 「この電気ねずみめ………俺たちの邪魔をしやがって。 せっかくの楽しみが無駄じゃねぇか」


 背後からうっすらと聞こえてきたのはイシツブテの声でした。どうやら力任せに“たいあたり”をされてしまったのです。私はうつ伏せのような形で倒れてしまいました。どうやらココロちゃんと話をしている間に“ひかりのたま”の効果が切れてしまったようで、その結果イシツブテやドードーも段々自分の意志で行動出来るようになっていたのでした。


 「ナメたことをしたことを後悔させてやる。たっぷりとお返しをしてやるぜ………おらぁぁっ!!」
 「うぐっ!!!」
 「ソラアアアアアアァァァ!!」


 起き上がる前に私はイシツブテから“いわおとし”を受けてしまったのです。ススムの叫び声が届きました。しかし状況が改善されることはありません。波のように押し寄せる激痛に私は苦痛の声をあげましたが、それだけで痛みが緩和することもなく、逆にどんどん傷が出てくるばかりでした。そんな哀れな姿を見て、イシツブテが馬鹿にするように大笑いをしていました。


 「痛いか?だったら仲間を呼べば良いじゃねぇか。お前が助けようと懸命になっていた仲間のことをよ!?それとも周りに見捨てられたんじゃねぇのか!?」
 「うう…………」


 何も反論できない悔しさ。助けを求められる状況ではありませんでした。ススムはまひ状態でしたし、ココロちゃんだってダメージがあるので助けて欲しいなんて簡単には言えませんでした。だけどそれで自分が見捨てられたなんて感情はあるはずがありません。滅茶苦茶なことばかり言われて気分が良いわけがありませんでした。


 「さてと!!そろそろトドメといこうか!!」
 「キャッ!!く…………苦しい………」


 いきなり私は胸ぐらを掴まれてしまいました。懸命に手足やしっぽをバタバタさせてみたり電撃を放ってみたりしたのですが、解放には至りませんでした。


 「な………何するの…………!?」
 「教えて欲しいか?」


 致命的な息苦しさを感じながら、私はなんとか尋ねました。するとイシツブテは冷酷な笑みを浮かべながらこのように答えたのです。


 「このままお前のことをあの壁に向かって投げ飛ばすんだよ!!トゲ状になっているあの壁に串刺しにするためにな!!」
 「え!?いやああああああああ、助けてええええええええ!!」
 「うっせぇんだよ!!」
 「イヒヒヒ、イイ気味だ………!」


 それは自分の命を奪うという意味でした。一気に恐怖感に支配された私は悲鳴を上げてしまったのでした。しかしすぐに胸ぐらを掴まれる力が強まってしまい、また呼吸をするのがやっとという状態になってしまったのです。そばにいたドードーは私を逃がさないように考えているのでしょう。いつでも“しばりだま”を使えるように、くちばしで咥えていたのでした。


 (ちくしょう…………ぼくがこんなことになっていなければ、アイツらなんて簡単に倒せるのに…………!!)


 やられ放題のソラに援護が出来ないぼくは苛立ちを隠すことが出来なかった。だが、しびれに抵抗してなんとか体を動かそうとするも、彼女を援護できる状況には至らなかった。むしろ力が尽きてきて、ガクッとまたうつ伏せ状態に倒れてしまったのだった。


 (ごめん………ソラ)


 ぼくは彼女に謝ることしか出来なかった。


 (…………ううん、いいの。あなたが悪いわけではないんだから。予想外の攻撃を受けてしまったら誰だってこんな風にきっとピンチになると思うよ………)


 私はススムにそのように話しかけました。何となく彼は自分のために傷ついた体を動かそうと必死になっているような気がしたのです。本当なら“パートナー”の私が仲間のピンチを助けられるように行動しなきゃいけなかったのに……………。


 (自分が弱いから支えることが出来なかった………)


 私は自らを責め立てました。最も周りのチームからすれば「失敗やミスは誰にでもあること。次に向けてのジャンプ台にすれば良い」と切り返しするでしょう。経験の浅さがここに来て余裕の無さみたいな感じで露呈する形になってしまったのです。



 …………でも、こんな状況でも私の声はちゃんともう一匹の仲間に届いていました。








 「ソラさんを離しなさい!!“ホネこんぼう”!!」
 「うがっ!!」
 「ココロちゃん!!」
 「いつの間に!!?」


 遠くに避難させていたココロちゃんが戻って来たのです。大切な持ち物である骨をイシツブテに向けて目一杯振り下ろして!!奇襲とも呼べるこの攻撃はじめんタイプだったため、いわタイプの種族であるイシツブテに“こうかはばつぐん”でした。「うぐぐ」を悶えながらその場にズシンと倒れたのです。


 「ココロちゃーーん!!」
 「ソラさん!ケガはなかったですか?」
 「うん、大丈夫。でもなんで?」
 「仲間だからですよ。私たちは同じチーム。だからみんなで助け合いましょ?」
 「うん……………ありがとう!」


 ココロちゃんにお礼を伝える私。そうだよね。彼女だってれっきとした“トゥモロー”の一員。思わずお互いに笑顔になってしまうのでした。


 「この野郎!!よくもイシツブテのことを攻撃しやがったな!!!“ドリルくちばし”!!」
 「危ない、ココロちゃん!!やめてええぇぇぇぇ!!」
 「うわああああああああ!!」


 喜びも束の間、すぐにドードーが襲いかかってきました。ココロちゃんとしては苦手なひこうタイプだったこともあり、私は慌てて“でんきショック”を繰り出したのです!すると見事に技は的中!ドードーは悲鳴を上げて体から細く黒い煙を立てながら、目を回しながらその場に倒れたのです。


 「ソラさん…………」
 「大丈夫だった!?ケガとかしてない!?」
 「心配しなくても大丈夫ですよ。ありがとうございます♪」


 今度は私がココロちゃんからお礼を伝えられました。必死に行動した結果だったので、ちょっと照れくささはあったけど。それでも仲間の為にがんばれるって、やっぱり気分が良いなってそのとき私は思いました。


 「そうだ!!ススムさん!?」
 「いけない!!早く起こさなきゃ!!」
 「あ、ずるい!!あたしが先に気づいたのに!!」
 「そんなこと関係ないよ!!」


 ココロちゃんに指摘されて、私はススムのことを思い出しました。私が先に行動したのが面白くなかったのか、彼女はいきなりご機嫌斜めな様子になりました。さっきはダンジョン内では“パートナー”だからと、ススムのそばには私がそばにいるように提言してくれたココロちゃんでしたが、きっとそれは建前。
 本音では彼女だってススムのそばにいたいんだろうなって私は思いました。


 「ススム、大丈夫!?」
 「しっかりしてください!!」
 「体が…………しびれて…………思うように動けないよ…………」
 「しびれ?………“まひ”状態ってことね?それなら……………」
 「もしかして“クラボのみ”があるんですか?」


 ススムが倒れている場所に駆け寄った私たちは彼に声にかけました。苦しそうに“まひ”の症状を訴えられた私は、急いで肩から提げている道具箱を開き、“クラボのみ”をひとつ取り出したのです。


 この“クラボのみ”と言う木の実は、可愛い花を咲かせるのが特徴的でした。それだけではありません。今、手にしている真っ赤な木の実がとても辛く、そして刺激的な味をしているので“まひ”状態を治すのに有効だと言われているのです。


 「ススム?辛いかも知れないけど、我慢してこれを食べてね。もう大丈夫だよ………?」
 「ソラ…………ううう………」


 ススムは痺れて上手に手を動かすことが出来ないのか、なかなか“クラボのみ”を受け取ることが出来ていない様子でした。それを目にして何だか「ススムには私がなにがなんでもそばにて、お世話しなきゃいいけない」という気持ちが出てきて、いてもたってもいられなくなりました。今までに感じたことが感覚です。少し動揺してしまいましたが、その気持ちを落ち着かせつつ、私は直接食べさせることにしたのです。


 「ココロちゃん。申し訳ないんだけど、ススムの体を起こしてくれないかな?」
 「え?良いですよ」


 さすがに寝転がった状態では食べさせることは出来ない…………私はそのように判断すると、ココロちゃんにお願いして彼の体を起こしてもらいました。両手でしっかりと腕をつかみ、ゆっくりと体を起こすココロちゃん。ススムは何をされているのかわからない不安と、痺れる体を動かされたことが辛かったのか、今まで以上に苦しそうな表情を浮かべています。私は何だか自分に彼にひどいことをしているような気がして、早く何とかしたいって気持ちになってしまいました。


 「よし、ススム…………あーんして?」
 「は///////!?」
 「ななな、何言ってるんですか///////!?」


 次の言葉にビックリ仰天のススムとココロちゃん。仕方ないですよね。私だって本当は恥ずかしいですし、変に誤解されてススムにドン引きされるのではないかって恐怖心もありましたから。それでも仕方ないのです。さっきも言ったように彼が自力で上手く手足を動かせない状態なら、直接食べさせるしか方法が無いのですから。二匹は顔を赤くさせてる中で、私はキリッと表情を引き締めてもう一度言いました。


 「ススム。あーんして………!!」
 「出来ないよ…………恥ずかしい」
 「良いから!!風邪引いたりして動けないときに、お母さんに言われたらちゃんと言うこときくでしょ!?」
 「そんな…………」


 女の子だからでしょうか?「ススムを助けたい、支えたい、守らなきゃ」って気持ちが強くなっていくのです。まるで駄々をこねる我が子を叱る母親のような気持ちになっていました。これが母性本能ってことなんでしょうか。凄く恥ずかしくて仕方なかったけれど、これも大好きなススムを思ってのこと。それを考えたら恥ずかしいなんて言ってはいられません。私はそのまますっかり動揺する彼へさらに強い口調で指示をしました。


 「ほら!!しっかり私に甘えてよ!!じゃないとずっと体が治らないよ!?あなたを支えるのが私の役目なんだからね!!」
 「う…………仕方ないなぁ!!」
 「/////////!!」


 (……………ううう…………)
 「良かったね♪これで元気になったよ♪」
 「ソラさん…………ススムさんがショック受けてますよ………」
 「あ!!…………ゴメンね、ススム!悪気は無いからね!」


 ぼくは凄く恥ずかしかった。確かに体の痺れは取れて完治したけどさぁ…………。まさかこんな場所で、ソラに「あ~ん」をしてくれって言われると思いもしなかったから。これじゃあ本当にソラがお母さんって感じだよ。ココロに指摘されて慌ててソラは謝ったけれど、しばらくトラウマ案件として残りそうだな…………。


 …………あたしだってショックでしたよ。あれじゃソラさんがススムさんの恋人として確定したみたいな感じじゃないですか。そんなこと受け入れたくないですよ。だって…………あたしだってススムさんのこと好きなんですから!!見てられなくて思わず両手で顔を隠しちゃったけど、その姿……………ススムさんに見られてないかな?もし見られたとして、変な風に考えられたら嫌だなぁ…………。嫌われちゃうよ………。


 『はぁ~……………』
 「どうしたの、二人とも?」
 『え!?いやいや、なんでもない(です)よ!』
 「変なの」


 何だかココロちゃんとススムの息がぴったり。もしかして私との相性よりも良いんじゃ…………。そんな不安が自分の中を駆け巡りました。


 (いやいや!!そんなはずないよ!!だってススムは私のことを好きって言ってくれてるんだから!!それを信じなきゃ!!それに嫌がっていたけど、ススムにあ~んも出来たんだから!!)


 再び頂上を目指して進むも…………ぼくと私とあたしの不安はまだまだ続きそうな気がしました。


 ……………それからも何度かぼくたちはダンジョン内で暮らすポケモンと遭遇しては、みんなで力を合わせて撃退していった。体力温存をしたいのと、探検隊へのイメージを悪化させたくないので、極力バトルは避けたいところではあった。でもバトルの経験を積み重ねることで自分への自信もつけたいのも事実。なんだか悩ましい問題だ。変な気分だな。


 まあ、そんな矛盾を抱えつつもぼくたちは4階へと続く階段を見つける。


 「あ、階段だ!!これで次に行けるぞ!」
 「そうだね!!思った以上に早く見つかって良かったね!」
 「この調子で頑張っていきましょう!」
 『おーーー!!』


 何だかんだあってもこの瞬間は嬉しいものだ。ぼくたちは互いにハイタッチをして階段を勢いよく上っていくのであった。







 そしてたどり着いた“トゲトゲやま”の4階。ここも特に変わった様子は見られない。むしろ変化が無くてちゃんとダンジョンを進んでるのか不安になるくらいだ。リーダー役の自分がこんな気持ちなんだから、パートナー役のソラはますます不安だろう。さっきから異様に近いように感じる。もはや寄りかかってぎゅっと腕を話すもんかって感じに思える。そんな彼女の様子を冷ややかな…………嫉妬している感じで眺めているのはココロである。なんだかまたぼくを巡って口論になるんじゃないのか……………そんな嫌な予感がした。やれやれ………。


   コツン!!
 「わっ!!」
 「キャッ!?」
 「だ、大丈夫ですか!?」


 やはりよそ見は良くない。体を反らしてソラとココロに意識的を取られるばかり、ぼくは何かにつまずいてバランスを崩したのである。もちろんぼくにしがみつく形のソラもそれに続いた。慌ててココロがソラの体をぎゅっとつかんで抑えようとしたが、敢えなく「ズシーン!」と、音や砂ぼこりのオマケつきで三匹仲良くズッコケてしまうこととなる!!


 「いたたたた…………」
 「ココロちゃん………苦しいよ………」
 「ソラも早く降りて…………」
 「…………//////!!?ゴメン!!」


 私は驚いてしまいました。だってズッコケた弾みで、完全にススムに抱き付く形になっていたのですから!!さっきの“あ~ん”だけでも大胆だと思われてしまったのに、これではますますわざとやったと誤解されてしまうでしょう。現にココロちゃんの視線がもう嫉妬に満ちていて、話かけるのが気まずい感じがしました。私は苦笑いで名前を呼びましたが、そっぽ向かれたところを見ればそれは明らかでした。


 「いたたたた……………。あ、あれ?どうしたの?」


 やっと起き上がってみたものの、そこにはお互いに背中しか見せてないソラとココロの姿しかなかった。すぐに何となく原因は察したものの、これでは探検活動にならない。溜め息をついた後、ぼくはついに怒った。


 「二人とも!!いい加減にしろよ!!」
 『!?』


 突然の怒鳴り声にビックリして怖さを感じたのか、二匹は慌ててぼくの方へと振り返った。そんな彼女たちにお構い無しにぼくは続ける。


 「今は探検活動して、ルリリを助けなきゃいけないんだぞ!?こんなくだらないことで毎回毎回しょーもない対立していて、恥ずかしいと思わないのか!?どういう意図か知らないけど、振り回されてるぼくの身にもなれよ!!」
 『……………』
 「悪いけどぼくはソラもココロもタイプじゃないんだからな!!ベタベタされて気持ち悪いんだよ!!」
 『そんな!?』


 何もここまで言う必要性は無かった。だって本音で言えば少なからずソラには恋心を抱いていたわけだし、ココロにも色々優しくされて感謝で一杯なのだから。むしろ酷いことを傷つけてしまった感が否めなくなってしまった。事実ソラもココロもショックを受けてしまったのか、しばらくはそのまま何も喋らずに黙りこんでしまった。むしろうっすらと涙を浮かべてるようにも見える。しかし、ここまで言わないとずっと中途半端なままで行動しなくてはいけなかった。だからぼくは自らの嫌悪感を押し殺して、強い口調で続けた。


 「ほら、先行くよ。ぐずぐずしている間にもますますルリリはピンチになってしまうんだから」
 「ススム…………」
 「ススムさん……………」


 これで二匹から敬遠されることになるだろうな。ぼくはそのように覚悟を決めていた。せっかく好意を持ってくれていたのに、それを無駄にしてしまうことに未練も多少はあったけれど。


 (でも、今はスリープを倒してルリリを助ける方が先だ。ぼくにはそれ以外のものに振り回されている暇なんか無いんだ!)
 「ススム?ススムってば」
 「聞こえてます?ススムさん?」
 「!?」


 困った様子…………というよりは、これ以上はぼくの機嫌を変に悪化させてはいけないという焦りもあるのだろう。ついさっきまでの笑顔はどこにもなく、どこか余所余所しい感じで心の距離をとって会話をしているような感じがした。ぼくは変に神経質になってしまっているせいもあり、そんな二匹の姿に少しイラっとしてしまった。だけとこれ以上爆発するのは良くないと考え、一度深呼吸をしてから二匹と話すことにした。


 「何だよ一体…………」


 相手の態度にはいちゃもんをつけてるくせに、ぼく自身の態度もよろしくなかった。冷たい感じでしかもイラつく感じで反応してしまったので、特にソラが怯えていた。そりゃそうか。元々怖がりな自分を変えてくれるかもって思って寄り添ってきた相手が、こんなに高圧な態度へと変化してしまったら心穏やかでいられるわけがない。そんなソラを庇うようにココロが続けた。


 「さっき見つけたんです。ススムさんが躓いた足元に転がっているのを。ちょうど食べ物が無かったところですし、道具箱に入れてあとで三匹で食べようってソラさんと話し合っていたんですよ」
 「あっそう…………」


 正直興味が無かった。ココロいわく拾った食べ物というのは“あおいグミ”らしい。確かに気休め程度にお腹は満たされるけど、今はみんなで仲良く食べたいって気分にはなれなかった。きっと空腹になって食べたとしても美味しくは感じないだろう。昨日ソラと一緒になって“あかいグミ”を食べたことがなんだか懐かしいものに感じてしまう。


 一方で空返事をされたもんだから二匹の表情はますます沈んでいく。正直あれほど取り合いになっていたのがウソだったのでは無いのかと思ってしまうほどだった。何せソラでさえ近くに来ようとしないのだ。


 (まあ、探検活動をやりやすくなったと思えば良いか)


 ぼくはそのように腹をくくって先を急ぐことにした。急に急ぎ足になってビックリしたのか、慌てて二匹が後をついてくる。…………と、そのときだった。


   グワッッ!!
 「うわあ!?なんだ!?」
 「どうしたの!?」
 「大丈夫ですか!?」


 急に目の前から風圧を感じたのである。山の中だからこんなに風を感じるなんてことはまずあり得ないだろう。だとしたら近くにポケモンがいる。それも風を操れるひこうタイプのポケモンが。


 (もしかしてまたドードーなのか!?)


 ぼくは始めそのように推測した。どうやらこの不思議のダンジョンに住むポケモンたちは違うフロアに暮らしていても、異変を次々と知らせる情報手段が発達しているようだから。3階やその前のフロア住むポケモンたちがボクたちのことを知らせて、4階に住むポケモンたちが動いていることぐらい容易に想像できる。それが同種族であれば、なおより早く伝達されているだろう。


 (しかもこの技は“でんこうせっか”だ。ドードーならこの技を使える。気を付けなきゃ…………!)
 「ススムさん、危ない!!!」
 「えっ!?」
 「止めてええぇぇぇぇ!!」


 次の瞬間、ココロの声が飛び込んできた!それだけではない。眩しい光を放ちながら、ソラから“でんきショック”がその“ポケモン”に向かって飛んでいくのをぼくは目にした。


 「うわあああああああああ!!」
 「ッッ!!?」







 「ドードーじゃなかった!?このポケモンは…………」
 「むくどりポケモンって種族でムックルだよ!!確かにこのポケモンも“でんこうせっか”を覚えることが出来るから、襲撃されても不思議じゃないと思う!」
 「……………でしたら、早くここから離れましょう!!」
 「そうだねココロちゃん!ススムも急いで!!」
 「え、あ…………うん」


 ココロやソラにこれまで以上の焦りの表情が滲み出ている。確かにこれまでの出来事を考えてみても、単独でポケモンを倒すと他のポケモンたちに襲撃されるパターンがある意味お決まりだった。だから二匹の気持ちは理解できる。ただ、どうもストンと腑に落ちない部分があった。


 (こんなに焦らなくたって何とかなりそうな感じもするけどなぁ………)


 しかし、ぼくのこの考えはすぐに甘いものなのだと思い知らされることになった。というのも、狭い通路を走っている最中に背後からも正面からもムックルが群れとなって飛んできたのだから。


 「わわわわ!!な、なんだ!?もしかしてまたぼくたちの噂を聞いて集まってきたのか!?」
 「違うよ!ムックルは元々群れで暮らす習性があるんだ!」
 「だからさっきのムックルがいなくなったことに気付いた仲間たちが、探しに来た可能性があるんです!!」
 「その探していたムックルのことを倒してしまったものだから、怒りを感じて敵意を私たちに向けてるんだよ!!だから急いで逃げようとしたんだよ!!」
 「そうなんだ……………ごめん」


 こういうとき“ポケモン”としての知識が無いことや、この世界のことをよく知らない自分に情けなさを感じてしまう。確かに元々は“人間”だったはずなので、無知なのは仕方がないことなのかもしれない。それならそうとソラとココロの考えに従わないといけないのに、変に素直になりきれないのがもどかしい限りだ。


 「でもこうなったら仕方ありませんね!なんとか三匹で協力して切り抜けるしか無いですよ!!」
 「うん、そうだね!!」


 さっきまでの姿は一体何だったのだろうか。すっかりソラとココロは協力してこのピンチを乗り越えようとしていた。仲間にそんな姿を見せられてしまっては、“リーダー”としてぼくだって黙ってはいられない。


 「ソラ。ココロには悪いけど、彼女には真ん中に構えてもらおう。じめんタイプはひこうタイプとバトルするのは苦手なんだろう?」
 「え?うん、そうだよ。じゃあココロちゃんに道具箱を渡して、アイテムで私たちのサポートしてもらっていいかな?」
 「あ、それは良いかも。ココロ、お願い出来るかな?」
 「任せてください。ススムさんって本当に優しいですね?あたし、そういうところが凄く尊敬できます」
 「え?あ………うん。どうも。でもソラのことも評価してよ。ソラが助言してくれたから決心することが出来たから」
 「そうでしたね、ソラさんもありがとうございます♪」
 「ううん。気にしないで。だって友達だし仲間だもん。力を合わせるのは当然だよ♪」


 何故か不思議な気分だった。ぼくたちはピンチを迎えているはずなのに、ちっとも怖さを感じなかったのである。今自分たちにどんなことが出来るのか模索し、互いに意見交換をしているこの時間が充実していたのである。ソラには内緒だけど、このときのココロの自分のことを尊敬しているって言葉に対して、実は幸せを感じていたし、ソラとは違う魅力を感じ始めたのも事実である。


 「あ、言いそびれてしまいました。あたし………一応じめんタイプ以外の技も使えますから、二匹が疲れてきたときにはすぐチェンジしても構いませんからね♪」
 「そうなんだ。じゃあそのときは頼むよ、ココロ!!」
 「はい!!」


 ソラの笑顔が一番なのはもちろんだけど、普段は厳しい視線をしているココロの笑顔もギャップを感じて、なんだか好きだな…………なんちゃって。でもそれくらい二匹の笑顔には不安な気持ちを癒してくれるような感じがした。


 (ソラやココロと仲間になれて本当に良かったな。自分ももっと二人に喜んでもらえるように頑張らないと!!)


 おかげで気持ちがまた燃えてきた。と、ここで背後からムックルの怒りの声が飛び込んできたのである!!


 「おい!お前らいつまでオレたちを待たせる気なんだよ!?」
 「お前らが動かねぇとオレたち動けないんだぞ!?早くしろよ!!」
 「というか、この作品の作者って酷くねぇか!?わかっていてこんなことしやがるんだぜ!?」
 「わかるわ~、その気持ち!!台本渡されたときに絶句したもんな!!!」


 ぼくたちへの怒り…………というのか、これは?単なる愚痴を吐き出しているだけのようにしか見えないんだけど。


 「あ、忘れてた~♪そう言えばこのシーンに限って必ず私たちが先に行動する前に相手ポケモンは行動出来ないって、作者さん言っていたんだった♪」
 「はあああああああああああああ!?」
 「ということで、ムックルさんたちごめんなさい♪」
 「はあああああああああああああ!?」


 その直後、ソラからの電撃でムックルたちが一瞬で撃墜されたことは言うまでもない。










 「というか、こういうときだけソラの電撃強すぎねぇ!?」


 

          ……………27Daysへ続く。


 





 





 


 


 
 


 





 
 次回の6月12日(土)に間に合わせます!お楽しみに!

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