1-1 荒野の出会い

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読了時間目安:8分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 この小説はポケモンの世界観を使った、オリジナルの地方でオリジナルのトレーナー達が織りなす物語です。
 別所にてしていたその連載をこちらでもしたいと思い、投稿させていただきます。
 また、別所にてキャラクター募集をさせていただきました。
 ゲストキャラクターとして登場する際にはキャラ親さんのお名前をあとがきなどでお借りしたいと思います。
 それでは不定期更新ですが、お付き合いいただけると嬉しいです。
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 流れゆく風に乗せて、届け、届け、
 この思いよ、貴方へ届け

 夜明けの空に映える薄白い月のように
 地平線の彼方へと姿を眩ませても
 私は貴方を追い続けます。






  【明け色のチェイサー】










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 そいつとの出会いは、とある昼下がりのことだった。


 荒野の真ん中に引かれた大きな道路の脇に、青を基調とした一台のサイドカー付のバイクが止めてあった。バイクの傍には持ち主である青年、というには背が低い少年が立っている。
 身長のことに関しては自分で言っていてむなしいとは、自覚はしているが。
 個人配達を生業としている俺は、バイクに備え付けられたカーナビ機能で目的地を確認し、サイドカーに載せてある宅配物を見る。それから、配達票をチェックして、ウエストポーチから水のペットボトルを取り出して水分補給をした。

(目的地までは……あともう少しか)

 日差しが強いせいか汗をかいたので、一旦ミラーシェードを外し、タオルで顔を拭う。額を拭こうとする時、手の甲に前髪がのしかかった。
 この群青色の髪も、随分と伸びたものだ。前髪もだが、後ろは肩ぐらいの長さになっている。切らねばとは思うものの、短く刈り上げるのは好みではないのでほったらかしていたらこの有様だ。
 水色のミラーシェードをかけ直していると、行き先の方から爆音が鳴り響いた。
 目の前の道路を黒くてごつい外装のトラック3台と、それを護衛するように陣取るいかついバイクに乗ったライダー達が、クラクションを鳴らしながら猛スピードで走って行く。

(まーた、あいつらか……)

 あのトラック達には見覚えがある。この周辺一帯を縄張りとしている義賊団<シザークロス>の所有している車両だ。きっとまた今日も彼らはどこかの誰かからポケモンを盗んでいるのだろう。
 奴らが来た方向だと、荷物の届け先からポケモンが盗まれたという可能性もある。
 追いかけるべきか否か、迷っていたらトラック達がやってきた方向から、誰かの叫び声が聞こえた。

「ぽーけーもーんーっ、ドロボー!!」

 声の主は女性だった。デリバードにしがみついて地面すれすれを飛び、食らいつくように青の瞳でトラックを睨みつけている。

 すれ違う瞬間、澄み切った青空に彼女の長い金色の髪が波打つ。一本一本が日の光に透けて煌めくその光景に、俺は目を奪われていた。

 ロングスカートをたなびかせながら集団を追いかけていく女性。いくら黒タイツを履いているとはいえ、スカートで空を飛ぶなとツッコミを入れたかった。
 頭を抱えていると、女性トレーナーの追跡にしびれを切らした<シザークロス>の下っ端ライダーである男がバイクのブレーキをかけ、背に乗せていたクサイハナに指示を出す。

「しつけーぞ、このアマ!! クサイハナっ、『しびれごな』!!」

 黄色い粉がクサイハナのつぼみから放出され、追跡者に襲いかかる。

「リバくんっ『プレゼント』!」

 リバと呼ばれたデリバードが、前方に赤いリボンで装飾された小包を袋からばらまいた。
 小包は『しびれごな』に接触した途端、爆発する。
 紙吹雪交じりの爆風で霧散する『しびれごな』
 同時に煙幕が彼女達の姿を隠したので、下っ端とクサイハナは煙の中に目を凝らす。
 煙の中から彼女たちが出てこない、ということは先ほどの攻防で『そらをとぶ』を中断したのだろう。
 少し経った後、デリバードと、その後ろに立つ女性のシルエットが薄っすらと見え始めた辺りで、煙の中からデリバードの『れいとうビーム』がクサイハナを射抜かんと繰り出された。

「そこだクサイハナ!」

 『ようりょくそ』で素早さが上がっているクサイハナは、その場でくるりとターンをして、ギリギリのところで『れいとうビーム』をかわし、『ようかいえき』を放つ。『ようかいえき』は小さなシルエットに命中した。
 だがシルエットは動じないでそこに立ち続けている。おかしい、と下っ端とクサイハナが思ったその時、荒野に一陣の風が吹いて煙を吹き飛ばす。
 そこには、デリバードの半分ぐらいのサイズの溶けかかった氷の塊とその陰に潜むデリバードの姿があった。『れいとうビーム』で先に氷の壁を作り出していたのだろう。
 冷気をその身に溜め込んでいたデリバードは、壁の前へと勇んで飛び出した。

「速い、ね。でもこれならどうかな!」
「! クサイハナ、もう一度――」
「『こおりのつぶて』!!」

 下っ端の男がクサイハナに指示を出す前に、クサイハナが技を出す前に、デリバードが生み出した氷でできた礫がクサイハナをとらえ、突き飛ばす。
 突き飛ばされたクサイハナに下っ端は巻き込まれ、そのままバイクごと横転した。
 パチン、と荒野に乾いた音が響く。彼女とデリバードがハイタッチをしていた音だと気づくのに、少し時間がかかった。


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 倒れた男はなかなか起き上がらなかった。それを見て、初めはデリバードとハイタッチをしていた彼女が、みるみる顔を青ざめさせていく。

「あ……だ、だだ、大丈夫ですかー!!」

 男とクサイハナに駆け寄る彼女。俺はというと、ここまで一部始終を見ておいて彼女らを置いて素通りするような気分にもなれなかったので、慌てふためく彼女の隣まで行き、男の容体を診た。
 男もクサイハナも、目を回しているだけだった。

「伸びてるだけだ、大丈夫だろ」
「そっかあ、良かった……」

 ほっと胸をなでおろす彼女。自分のことのように安堵する彼女に、俺は反射的にツッコミを入れる。

「いやまて、良くはないだろ! こいつらにポケモン盗られたんだろ、あんたは!」
「…………ああっ、そうだった!! ドルくんが、私のドルくんが!!」

 俺に指摘されるまで、頭の中からすっかり抜け落ちていたようだ。彼女は慌てて辺りを見回す。ようやく彼女が視線に捉えたのは、すっかり小さくなったトラック集団だった。

「どうしよう……」

 愕然とし、へたり込む彼女。そんな彼女を見て、俺は内心ため息をつきながら声をかけた。

 『へたり込んでる暇があったら、追いかけろ』
 そう、言うつもりだったのだが

「諦めるのはまだ早い。奴らの根城や拠点としている場所なら、いくつか知っている。良ければ俺が案内しようか」

 こう、言っていた。

 本音とは別のことを口走っている自分に少し驚いたが、まあ、いいだろう。大差があるわけでもない。

「いいの? っと、そういえば、キミは――」

 戸惑いながら顔をこちらに向けた彼女に、俺は手を差し伸べながら名乗る。

「俺はビドーだ。個人配達業をしている者だ」
「私はアサヒ。ヨアケ・アサヒ。旅のトレーナーです。えっと、微糖君?」
「コーヒーか俺は。ビドー、だ、ビ『ド』ー。まあ、呼びにくいのは分からなくもないが……」
「うん、ごめん……ビト、ビドー君」
「……好きに呼んでくれて構わない」
「じゃあ、ビー君で」
「それでいい」

 すくっと立ち上がったヨアケは、俺を見下ろしながら、笑顔をつくった。笑っている場合じゃなかろうに。

「ではビー君、道案内お願いします」
「分かった、ヨアケ」

 それから俺とヨアケは、道の真ん中で転がっている男と男の乗っていたバイクとクサイハナを、後から来るであろう車に轢かれないように道路から離れた位置に移動させてから、奴ら<シザークロス>の後を追った。
 いくら相手が賊でも、寝覚めが悪くなる事態は勘弁だから、な。

 ――思えば、ここで道案内を引き受けていなかったら、俺はヨアケ・アサヒという人物と、こうして知り合うことはなかったのだろう。



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