21Days:「離ればなれの夜、一緒の朝」の巻

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読了時間目安:28分
 これで第2章:「しめったいわば」編は終了です。
 せっかく依頼を成功させて良い気分だったのに、ペラップには水を差されるわ、食事前にギルドメンバーが騒ぎ出すわ、ソラとココロは言い合いになるわで落ち着かない感じだったな。この先が本当に不安になってくるよ…………。


 満天の星空に一際大きく輝く満月。そして穏やかな波音を立てる海。そんな静かな夜も大分更けてきた頃、私はふと目が覚めて寝付けなくなってしまいました。頭の中に募るのは機嫌を悪くしてしまったススムのことばかり。結局あのあと彼は私やココロちゃんがいる………この部屋には戻ってきませんでした。三人分用意された藁のベッドのうち、ポツンとひとつだけ空いたそれを観ていると、私はなんだか彼のことを思って話しかけずにいられなくなったのです。


 「ねぇ、ススム………。今日は色々あって忙しかったね。でも初めての仕事がうまくいって良かったよ。プクリンのところにお金ほとんど持っていかれちゃったのは悔しかったけど………」


 自分の感じていた気持ちを伝え始めると、途端に込み上げてくる寂しさ。きのうも確かに彼は寝入っていたので話は聞いていなかったかもしれないけれど、そこにススムの姿があるだけで良かった。きょうだって本当はそこにいてくれていたはずなのに…………。


 でも、いくらここで考えたところで状況が変わることはありません。ですから私はそこにススムがいるとイメージしながら、話を続けることにしました。



 「でも、これも修業だから仕方ないし………何よりバネブーに感謝されたのが、私凄く嬉しかったよ」


 なんとなくだけど自分の気持ちを伝えたら、ススムのニッコリと笑った笑顔や言葉が返ってきそうな気がしました。「気乗りしなかったかもしれないけど良かったね、がんばって」と。


 「うん、ありがとう♪それに新しい友だち、ココロちゃんとも出逢えた。これもススムと一緒に冒険できたおかげだよ?不安な気持ちもあったけど、ススムがいると凄く安心するんだ…………」


 私はその場にいるはずもない彼との話を楽しみました。寂しさや時間を忘れて。しかしそれも長くは続かず、だんだんと眠気がやってきたのでした。


 「…………ふあぁぁ。眠くなってきちゃった。私、もう寝るね。また明日がんばろうね。おやすみ。ススム………」


 そのときも「うん、おやすみ」という笑顔でうなずいてるような…………そんな彼の声が聞こえてくるような感じがしました。


 (明日はススムと一緒にこの部屋で過ごせたら良いな………)


 私はそのように考えながら、また目をつぶって朝がくるのを待つのでした。


 …………冗談じゃない。ソラさんだけに良い想いさせないよ。あたしだって本当はススムさんと一緒にいたいんだから。こんな自分のことを迎え入れてくれて…………温もりを感じさせてくれたススムさんと…………。


 (出来れば一緒に…………私の元々いた世界に来てくれないかな………。そう、カラカラでなく一人の人間として生きていた世界に…………。でもなぁ…………無理かな?ススムさんが私のように人間として生きていたって言うなら話は別だけど…………でも、いっか。それなら今一緒にいられる時間を大切にしよ♪)


 ススムさんのことを考えると、あたしは思わず小さく笑ってしまいました。大事な骨を抱きながら。幸いソラさんとは背中合わせ。藁のベッドも離れていたので、彼女には気づかれることはありませんでした。


 (人間に戻れる方法が見つかって…………ススムさんと離ればなれになる日が来る前に………いつかどこかで………自分の気持ち、ちゃんと伝えることが出来るといいな…………)


 叶わない想いかも知れません。でも後戻りは出来ない。“カラカラ”になった理由も分からず、たった独りで生きてきた自分の心に温もりを与えてくれた彼への想いを、誰にも遮られたくありませんでした。例えそれがソラさんだったとしても…………。


 (早く明日が来ないかな…………。ススムさん、ちゃんと体を休められてるのかな?心配だな。)


 弾けるようなススムさんの笑顔が自然と浮かんできました。そんな彼のことを私は心配になったけれど、あたしは元気でいてほしいと願いを込めるように、大切な骨をススムさんとイメージして、その抱く力を一回り強くして再び目を閉じるのでした……………。


 (う~ん、やっぱり失敗だったかな。ちょっと寒気がする…………。風邪引いちゃうかも知れないな)


 ソラとココロの言い合いに見かねて怒ったぼくは、自分の部屋を飛び出して依頼の手紙が集まる掲示板の前で寝転がっていた。しかし当然のことながらここには藁のベッドも何もなく、床へ直にって感じだからなんだか落ち着かない。とてもじゃないけれど体がゆっくりと休まる………というような感じではなかった。


 (でも仕方ないよな。あのままあの場所にいたらきっと言い合いが収まらなかっただろうし、これで良いんだよな。問題は………明日以降どうするかだよなぁ…………)


 きょうは咄嗟に飛び出してきたけれど、現実的に考えてこんなこと毎日続けることは出来ないだろう。女の子二匹といて気遣いして疲れていくよりは、ぺラップに相談して別の男の子のメンバーが集まっている弟子の部屋に入れてもらった方が、お互いの為になる。そうだ。その方が良い。きっと…………。


 (なんか眠くなってきたな…………。いいや。明日のことは明日考えよう………)


 体は必死に休みを欲しがっているようだ。おとなしく言うことを聞いておこう…………。明日からもまだまだ修業は続くのだから。







 その次の朝のことでした。眩しい朝の陽射しが窓から差し込んできて、なんとなくあたしもソラさんも目が覚めていたのですがポカポカと気持ちが良かったこと、それから昨日の疲れがまだ残っているせいなのか、二人ともまだ藁のベッドから起き上がれずにいました。…………そこへ、「アイツら、また寝坊かああああああ!」と言う空気を切り裂くような怒号とともに、ズーンズーンという地鳴りのような足音。


 (一体誰なの………?)


 よく考えてみたらあたしはススムさんやソラさん、それからペラップ以外のギルドのメンバーのことはまだよく知りませんでした。そしてそれが悲劇を呼び込むことになったのです。



  ガチャ!!
 「起きろおおおおおおーーーー!!朝だぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉー!!」


 部屋のドアを開けたのは、昨日ぺラップに不満をぶつけていたドゴームでした。彼はあたしたちの姿を見るや否や、ジャンプしながらこのように叫んだのです。恐らく“ハイパーボイス”も関係していることでしょう。その怒鳴り声によってあたしもソラさんも目を回して倒れてしまう…………いわゆるK.O.状態になってしまったのです。


 「聞こえてるのか!?絶対に朝礼に遅れるなよ!!?わかったな!?」


 そうやって伝言すると、彼は慌てた様子で外へ飛び出して行ってしまったのです。


 「……………うううう…………なんて声なの?」
 「………うううっ………おはようっ………ココロちゃん、ススム………」


 あたしたちはしばらくその場から動けませんでした。ようやく落ち着いて起き上がりお互いに挨拶を交わすと、急いで朝礼が行われているというフロアへと向かったのでした。


 (そう言えばススムさん、結局戻って来なかったんだ………。きっと寒かっただろうな。一体どこで寝ていたのかな?)


 あたしはそんなことを考えながら、ソラさんの後を追いました。探検隊としての証である、まるでどこまでも続く青空のような青いスカーフを首に巻きながら。


 「ススム!!」
 「ススムさん!!」



 部屋を飛び出して朝礼が行われるフロアに着くと、そこには既にススムさんの姿がありました。少し気まずそうに…………だけど心配をかけたくないのか、無理に作った苦笑いを浮かべて。あたしもソラさんもいても立ってもいられなくなり、ダッシュで彼の近くへと向かって二人で抱きついたのでした。


 「わわわっ!?二人ともどうしたのさ!?」
 「ゴメンね、ススム!!」
 「昨日はごめんなさい!!」


 突然のことでぼくはビックリしてしまった。女の子に………それも二人からこんなことをされただけでも動揺するのに、みんなが集まっているこんな場所でされてしまったら勘弁だ。明らかに…………特に男の子のメンバーからの視線がキツイ。


 「うおおおおお!何てヤツだ!新米のくせに…………!!」
 「ずいぶんとリア充してるでゲス!」
 「ヘイヘイ!お前ばっかりズルいぞ!!」


 違う!!違うんだって!!大きな誤解だ!!ぼくはそのように言いたかったけれど、とても冷静に意見を取り入れてくれそうな様子ではない。完全に彼らの嫉妬の対象となってしまったのである。これでは昨日考えた男の子たちが集まるチームでお世話になろうというプランも、ぺラップに伝えにくくなった。きょうの探検活動のことよりも、どこを寝床にするか…………ぼくはそっちの方が頭が痛くなり、ついつい溜め息をついてしまうのであった。


 (でも………。ソラのふわふわとした毛並み、凄く温かく感じる。ココロがすぐそばにいて…………何だか凄く安心する………)


 ぼくは彼女たちの優しさが身に染みていた。昨日は本当にイラッと来ていたけれど、それを忘れさせてくれる癒し。だからこそ出たこの言葉。


 「昨日は取り乱して悪かったね」
 「そんな………!!ススムさんが悪い訳じゃありませんよ!!」
 「そうだよ!全然気にしないで!きょうも一緒にがんばろ!?」
 「ありがとう…………ぼく、凄く幸せだよ。こんな優しいメンバーに囲まれて…………」


 そう。本音を言えば昨日は寂しくて仕方なかった。確かに女の子ふたりと同じ部屋で一緒に寝ることには抵抗はあるけれど、きっとソラやココロだってぼくのことを気にしていたはすだから。あんまり自分のことで迷惑はかけたくなかった。


 「コホン…………////////!そろそろ朝礼を始めたいが、良いかな?」
 『あっ…………///////!!』


 そんなぼくたち三匹のひとときは、見ている方が恥ずかしかったのだろうか。赤面しつつ咳払いしながらぺラップが注意してきたわけだが、それでぼくたちもますます恥ずかしくなってしまった。周りの視線が痛い。結成2日目の新米チームが変に目立ってしまった瞬間だった。









 『みっつー!みんな笑顔で明るいギルド!』
 「さあみんなっ♪仕事にかかるよ♪」
 『おおーーーーーっ!!』


 まだ朝礼の雰囲気に慣れてないせいか、他のメンバーと声を合わせるタイミングがズレてしまう。特にきょうが初めての朝礼のココロにはこのテンションそのものが苦手なのだろう。ずっと恥ずかしそうにうつむき加減でなんとかその場をやり過ごしている感じに見えた。


 とは言え、きょうもそれぞれの1日がスタートした。他のメンバーは既に散らばっていた。ところがぼくたち「トゥモロー」は特にこれといった予定もなく、その場で困惑していた。


 「ススム。きょうは私たちどうしたらいいんだろうね?………」
 「う~ん…………」
 「困りましたね………」


 ソラもスッキリしない表情でぼくに話しかけてくる。三匹の中で最も探検活動に意欲がある彼女は、もうその場でじっとしていることももったいないのだろう。その気持ちはぼくもココロも理解できた。しかし、そうしたところでこの状況が変わることはない。


 「オマエたち、またウロウロしてるな。こっちに来なさい」


 そんなぼくたちのことを見かねてたのだろうか。やれやれという感じにため息をつきながらぺラップが話しかけてきて、何も言わずにさっさと先に行ってしまった。結果的に置いてきぼりという形になってしまったぼくたち三匹は不安を覚える。お互いの表情を見て一旦気持ちを落ち着かせ、そして意を決して彼の後を急ぎ足で追いかけていった。


 ぺラップは梯子を昇り、地下2階部分にいた。そこには他のメンバーなのか、はたまた何か依頼に来たのか別のポケモンの姿もあった。レディバ、ニョロトノ、トゲピーの3匹である。本当なら挨拶くらいはすべきなんだろうけど、なんだか話に夢中になっているようだし、ぼくたちもそれどころではないので、今はとにかくぺラップが待っている場所へと向かった。一体彼は何をしようと言うのだろうか。


 「あれ?昨日は確かあっちの掲示板の仕事をしたような………」
 「そうだ♪きょうはこっちの仕事をやってもらうよ♪」


 ソラが首を傾げながらぺラップと話すのも無理はない。確かに彼女の言うように、昨日は中央にある梯子から見て左側に設置された大きな掲示板でぺラップから説明を受けた。しかしきょうは梯子から見て右側にある大きな掲示板の前に呼ばれたのである。ソラがぺラップに質問を続ける。


 「あっちの掲示板とはどう違うの?」
 「よく見るのだ♪」


 ぺラップに言われるがまま、ぼくたち三匹は掲示板を眺めてみる。
 

 「あっ!ススム見てよ!色んなポケモンの絵が貼ってある!みんなカッコいいなあ!」
 「ですね~。有名な探検家なんですかね?」 


 ソラとココロのリアクションにイマイチついていけないぼくではあったが、確かにそこにはたくさんのポケモンのイラスト付きの手紙がところ狭しと貼ってある。


 「ねえ?ぺラップ。彼らは何なの?」


 ソラが再びぺラップに質問する。すると掲示板を眺めながら彼は言いにくそうにこのように答えた。


 「ここにあるのは………全員お尋ね者。みんなワルいことをして指名手配されてるヤツらだ」
 「ええっ!!お、お尋ね者~~~~っ!?」


 予想外の答えにソラはその場で跳び跳ねてしまうくらいに、ココロに至っては大事な骨を危うく放り投げてしまうくらいに驚いていた。そこまでのリアクションとまではいかないが、さすがのぼくも動揺してしまう。そんなぼくたちをよそにぺラップが話を続ける。


 「そう。それゆえ彼らには賞金が懸けられてる。だから捕まえればお金が貰えるんだけど………でも凶悪なポケモンが多いからねえ………みんな手を焼いてるんだよ」
 「それを私たちが捕まえろって言うの?そんなの絶対無理だよう!」


 ソラの言う通りだ。それなりに経験がある探検隊が苦労しているというのに、まだ結成2日目の“トゥモロー”が敵う可能性は限りなく低いだろう。唯一経験が豊富なココロでさえ、お尋ね者の存在は知らなかったみたいだし………いくらぺラップの指示とはいえ、これは拒否すべきだろう。…………なんてぼくが考えていると、笑いながら彼はこのように言った。


 「ハハハハハッ♪ジョーダンだよ♪ジョーダン♪ワルいポケモンって言っても色々いるからね♪正規の極悪ポケモンもいれば………ちょっとしたコソ泥もいるって感じでほんとピンキリだよ♪極悪ポケモンを捕まえて来いなんてオマエたちに頼めるワケないじゃないか♪ハハハハハッ♪」


 なんか腹が立つような言い方だけどひとまずは安心したぼくたちがいた。更に彼の指示は続く。


 「まあこの中から弱そうなヤツを選んで懲らしめてくれ♪」


 弱そうなヤツって…………なんか相手に大分失礼な言い草だけど、ぼくはまあ仕方ないと割り切る。チームリーダーとして、その掲示板を眺めてみる。だが、ソラは何となく気乗りしていない様子でこのように言った。


 「ううっ………でも弱いと言っても………ワルいポケモンには変わりないんだよね?そんなヤツと戦うなんて………私怖いよう………」
 「ソラさん…………」


 ぺラップの話にすっかり怯えてしまったソラ。ココロがそんな彼女の手を心配そうにそっと握る。ぼくも本音ではソラと同じだ。どんなポケモンが相手かわからない以上、不安で支配されても不思議ではない。


 「これも修業の内だよ。なんとかしな♪………と言っても戦うにはそれなりの準備が必要だよね……。誰かに施設を案内させるか」


 ぺラップなそんなソラに敢えて突き放すような厳しい言い方。でも本当は弟子思いなのかもしれない。要所でアシストをしてくれるところを見ると。


 「おーい!ビッパ!ビッパ!?」
 「はいーーっ!」


 梯子に向かって弟子の名前を呼ぶぺラップ。すると下の階からビッパが姿を見せた。かなり急いできたのだろう。呼吸のリズムがかなり早いように感じた。


 「はあはあはあはあ………。お呼びでしょうかー!」
 「おおビッパ♪コイツらのことはもう知ってるよな♪最近入った新入りだ。広場にコイツらを案内してやってくれ♪」
 「はいーーっ!了解でゲス!!…………って、君たちは朝礼前にイチャイチャしていたリア充チームじゃないでゲスか!!?」
 「リア充って…………////////私たち、そんな関係じゃないよ!!」
 「変な誤解しないでください///////!」
 「コホン………/////////!話を続けるぞ」


 ぺラップの指示で登場したビッパの言葉に、特にソラとココロが酷く赤面をした。でも周りにはきっと彼女たちの好意はバレバレなのだろう。ぺラップも朝礼前のことを思い出したのだろう。気まずそうに咳払いをしてその場を落ち着かせようとした。


 ……………それからしばらくして。


 「改めて…………コイツはビッパ。弟子の1匹だ。ビッパの言うことをちゃんと聞いて行動するんだぞ。じゃあな♪」


 ぺラップはぼくたちにそのように伝えるとその場から立ち去っていった。恐らくプクリンの部屋に戻ったのだろう。ぼくたちとビッパという4匹の弟子がこの場に残った。


 「…………ううっ。嬉しいでゲス………」
 「ど…どうしたの?」
 「どこか体の調子でも悪いんですか?」


 静粛になったかと思いきや、いきなりビッパが泣き出した。ソラが困ったように首を傾げてながら彼に話しかける。ココロも心配そうにしている。すると彼はこのように答えた。


 「後輩が出来たんで感動してるんでゲス………ううっ………キミたちがここに来る前は自分が一番の新入りだったでゲスよ………。ぐすんっ………」
 

 …………ということらしい。こりゃあ声をかけても仕方ないような気がする。そのように考えたぼくたちはしばらくそのままにしておくことにした。


 …………それから更にしばらくして、


 「じゃあ案内するでゲス。ついてくるでゲスよ」


 ということでぼくたちはビッパのあとをついて行くのであった。


 再び梯子を降りて戻ってきて地下2階。ここに来てからビッパがあっちこっち「え~とまず………」と悩み出した。そうして最初に案内されたのは梯子から見て左側、自身を象った岩の小さな建物のちょうど口の中に収まる感じでグレッグルのいる施設である。出店か何かなのだろうか。


 「ここはグレッグルがいるんでゲスが………実は何やってるかあっしにもナゾなんでゲスよ………。なんか後ろのツボをいつもいじってるみたいなんでゲスが…………よくわかんないでゲス」


 ということらしい。本人には申し訳ないがグレッグル自身の雰囲気も含めてかなり怪しげで異様な印象を受けた。


 「こっちに行くと食堂があるでゲス」


 続けて彼から案内されたのは梯子から見て左下の食堂への入口。ここは昨日も入った場所なのでぼくたちも既に理解している。


 「これも大丈夫でゲスよね。こっちに行くと弟子たちの部屋があって…………ここが親方のお部屋でゲス」


 次は梯子から見て右下。そこは頻繁に通っている道なのでもう充分すぎるほど理解している。その上側、つまり梯子から見て右側にある親方の部屋の入口ももう見慣れている。


 「じゃ次はギルドの外を案内するでゲスね」
 「外に行くのか?迷子にならないように気を付けるんだぞ」
 「だ、大丈夫でゲスよ~!!」


 親方との話し合いが終わって一段落をしていたのだろうか。入り口の前に立っていたぺラップが心配そうにビッパに話しかける。彼は恥ずかしさからなのか、赤面しながら必死にそれを振り払い、ぼくたち三匹を連れてギルドの外の世界へと案内を始めるのであった。





 ギルドの外はきょうも気持ち良い青空が広がっていた。風も心地よく白い雲も穏やかに流れていた。そんな空の下、ソラは「一体何があるのかな?ワクワクするね♪」って、もう見るとドキドキしちゃうくらいに可愛い笑顔を見せているし、ココロも「本当ですね。あたし、こうやってススムさんやソラさんと行動できるの、凄く楽しいです」なんて嬉しそうに振る舞っていた。ぼくはそんな彼女たちのように上手く表情には出せなかったけど、気持ちを代弁してくれてるような仕草や笑顔を見ていて幸せを感じていた。


 どれくらい歩いたのだろうか。目の前の雰囲気が変わってきた。十字路の交差点になっている場所でぼくたちから見て左側の方に木の板で出来た屋根に覆われた井戸みたいな場所。そして右側には何か小さく表記された木製の矢印の形をした案内板みたいのが支柱を軸に縦に3枚並んでいるのが目に入った。


 「あそこは水飲み場でゲス。不思議なことにあの水を飲むと、自分たちの冒険の記憶を振り返ることが出来るでゲスよ」
 『へえ~』


 向かって左側にあった井戸………水飲み場についての話をビッパから興味津々に聞くぼくたち。そのあと彼に言われて反対側にある細い道を歩き、更に奥の方へと向かう。









 そこはこの3日間で最も賑やかな場所だった。いわゆる商店街と言ったところなのだろえか。様々なポケモンが出店を構えていて、そこて買い物に来たポケモンたちとのやり取りをする声、ぼくたちのように道中で興味津々に覗き込んだり、会話を楽しんでいるポケモン。………平和な日常がそこにはあった。


 (ダンジョン以外の世界も栄えている感じがするな~。なんだか安心するよ。良かった~)


 思えば“ヒトカゲ”になってからはほぼギルドとダンジョンの間の往来だけって感じだったし、どこか寂しい感じもしていたのかもしれない。だけど種族に問わずこうしてみんなが仲良く暮らしている光景を見ていると、きっとポケモンたちもポケモンたちなりに自分の世界を築いているんだなぁって思った。人間だったという以外の記憶が残ってない今、何となくしか感じられないのが何とも歯がゆいところだけど。






 いくつかの出店の前を通って恐らく中央部と思われる場所に着いた。この場所にも住民なのだろうか、ケムッソやポッポ、タネボーといったポケモンたちの姿が目に入る。声をかけてみようか。ぼくがそのように考えたそのとき、ビッパがこちらに振り返ってこのように言った。

 「ここがポケモンたちの広場………“トレジャータウン”でゲス。ひとつひとつ案内するでゲスね」
 「大丈夫。“トレジャータウン”のことなら私もわかるよ」


 彼に対してそのように言ったのはソラ。さすがに探検隊のことを勉強していたことだけあって、その表情も穏やかながらも自信に溢れている感じがする。ぼくはそんな彼女がなんだか頼もしい感じがした。そしてココロの気遣いがまた良いなぁとも思った、ソラが知っているくらいなのだ。経験者であればきっとこの場所のことを知っているだろう。むしろソラに負けじとぼくにアドバイスをしたかったかもしれない。…………にもかかわらず、このあと彼女は一切ソラのやっていることに口を出さず、そっと見守っているだけだったである。


 (昨日はちょっとイラッとしたけど、何だかんだ上手くいっているなら安心だな。この調子で三匹で頑張りたいね)


 「まずあそこが“ヨマワルぎんこう”。お金が預けられるよ」


 ソラはまず中央部から見て右上側………ぼくたちが通ってきた道中にあった出店を指差して紹介する。いつものように満面の笑みで。その場所は左右にひとつずつお金が入った宝箱が置かれていたので、すぐにぼくにもわかった。経営者はおむかえポケモンと呼ばれる種族、ヨマワルである。


 「そしてあそこが“エレキブルれんけつてん”。技の連結が出来るんだけど………きょうはエレキブルがいないようだね」


 続けてソラが紹介してくれたのは、中央部から見て左上側の出店。らいでんポケモンという種族、エレキブルを型どった建前があるがそこには誰もいない。それはともかく技の連結って一体何のことを言うんだろう…………なんてぼくは疑問に思ったけど経営者がそこにいない以上、これはお楽しみということになりそうだ。


 「ここは“カクレオンのおみせ”。道具を買ったり売ったり出来るんだよ」


 続けてソラが紹介してくれたのは“エレキブルれんけつてん”の更に奥側、小さな橋を越えたところにある出店である。離れている場所にあるのでハッキリと確認出来たかわからないけれど、そこには様々なアイテムが入った宝箱が左右両端に置かれている。カウンターの左右にいろへんげポケモンと呼ばれる種族、カクレオンの姿があった。しかも右側のカクレオンに至ってはバラ色をした色違いのようである。


 「そして“ガルーラのそうこ”。ここに道具を預ければ絶対に無くならないよ。大切な道具があったら冒険する前にここに預ける………。探検隊の基本だよね」


 最後にソラが紹介してくれたのは、“カクレオンのおみせ”を更に奥に進んだところにある出店。おやこポケモンと呼ばれる種族、ガルーラがその経営者のようだ。ここからだとあまり見えないけど、預けた物が絶好に無くならないなんて………なんというセキュリティなんだろう。


 「大体こんな感じかな」
 「なかなか詳しいでゲスね。それなら安心でゲス。じゃ一通り準備が出来たらあっしに声かけるでゲス。そしたらお尋ね者を選ぶのあっしも手伝うでゲスよ」


 ビッパがソラの知識に感心した様子でこのように言った。それだけでなくまだ結成間もないぼくたちのアシストをしてくれると言うのが嬉しかった。


 「ありがとう。ビッパって優しいんだね」
 「そ、そんな………。テレるでゲスよ………。ぽ………///////」


 満面の笑みで感謝の気持ちを伝えるソラ。嬉しくなったのかビッパが赤面する。まるで何かの技を受けたかのように。しかし、それではダメだと自分を引き締めたのか、ブルブルと頭を左右に小さく振って気持ちを入れ直す。


 「じゃ、あっしはギルドの地下1階で待ってるでゲスよ」


 そのように言うと、彼はぼくたちのいる場所から去っていくのであった。


 「じゃあ行こうか。私、どんな道具があるのか見たいから………“カクレオンのおみせ”に行ってみたいよ。とりあえず“カクレオンのおみせ”に行ってみようよ」
 「そうですね。もしかしたら探検活動に役に立つような道具が売ってるかもしれませんよね!」
 「ココロちゃんもそんな風に思うんだ!?嬉しいな♪ね、“カクレオンのおみせ”に早く行こう!ススム!」
 「え、あ……………ちょっと!!!」


 ワクワク気分でぼくの右手をつなぐソラ。つまずきそうになったけれど、ココロが「もう。慌てん坊さんなんですから♪」なんてニッコリ笑いながら支えてくれた。


 昨日と違ってぼくもワクワクしてきた。きょうは楽しい探検活動になると良いなぁなんて思った……………でも。


 このあとぼくたち“トゥモロー”には新たな闘いが待ち受けていたのだった……………。


          ………………22Daysへ続く。





 
 次回は5月8日(土)投稿です。第3章:「トゲトゲやま」編もスタート。お楽しみに。

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