第2章 第6話

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読了時間目安:53分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

ラーズ
「さて! それでは次のゲームを始めましょう!!」

阿須那
「…次は何をさせる気や?」


阿須那ちゃんは彼岸女さんに肩を支えられ、顔をやや蒼くしてラーズさんを睨んだ。
強気には振る舞っているけれど、今の阿須那ちゃんは大量の血を抜かれて貧血状態…
少なくとも、連戦出来る状態とは思えなかった。


守連
(そもそも、連戦が許されるとも思えない…か)


始めに私たち5人でそれぞれ…と言われていたし。
つまり、この場合阿須那ちゃんの命は助かったけれど、他の4人は何も保証されていない…という事だ。


彼岸女
「…阿須那ちゃんはゆっくり休むと良い」
「どの道、これ以上阿須那ちゃんが戦う事は無いだろうし」

ラーズ
「フフフ…その通りです! この戦いはあくまで貴女方5人が全員勝つ事が勝利条件!」
「連戦は基本的に認めませんので、ご注意を…」


そう言って、丁寧に頭を下げて礼をするラーズさん。
阿須那ちゃんは軽く舌打ちするも、それ以上は何も言わなかった。
彼岸女さんはため息を吐き、やや俯き気味な角度で下からラーズさんを睨んでいる。

そんな中、タイナさんはひとり冷静に何かを考えていた…


タイナ
(全員の勝利が勝利条件…逆に言えば、誰かひとりでも負ければ?)

羽身
「…とりあえず、次は何のギャンブルでっか~?」


口元に手を当てて考えるタイナさんを横目に、羽身さんがそう質問した。
すると、ラーズさんはクスクス笑いながら指をパチン!と鳴らす。
その後、ライトアップする部分が切り替わり、とある一角が照らされた。
そこには、何やら大きなモニターが見える。


阿須那
「…何や? 何をさせる気なんや?」

彼岸女
「…見た感じ、モニターとテーブルがあるだけだけど」

ラーズ
「フフ、次のゲームはこちらになります!」


ラーズさんがそう言ってモニターに手を翳すと、モニターの電源が入って画面が写る。
そこに映ったのは、誰もが知っているあの国民的ゲームの表示に見えた…


阿須那&彼岸女
「………」

タイナ&羽身
「…?」


「じ、人生ゲームですってぇ!?」


雫ちゃんだけがそうツッコンでいた。
阿須那ちゃんと彼岸女さんは呆れた顔をし、タイナさんと羽身さんは互いに?を浮かべている。
そして私は…苦笑するしかなかった。


ラーズ
「フフフ、さていかがです? 誰が挑戦しますか?」

羽身
「何でっかアレ?」

タイナ
「見た事はありませんね」

阿須那
「とりあえず、このふたりはパスやな」

彼岸女
「そうだね、知らないなら任せるのは危険すぎる」


そもそも、人生ゲームで危険とか何なの?
私には全く想像も出来ない。
ただルーレットを回して、最後に総資産を競うのがルールだと思うんだけど…?


ラーズ
「この人生ゲームは、オリジナルでプログラムを組み直した特別製です」
「なので、基本的に一般販売されている製品とは違うと思っておいてください」

彼岸女
「そもそも、この世界の時代設定じゃまだ日本には販売されていないと思うけどね!」

阿須那
「あ、そうなんや…」


私も全く詳しくないけど、始めて知った。
って、人生ゲームの歴史とか彼岸女さん知ってるんだね…


ラーズ
「一応、先に軽くルール説明をしておきましょうか…」
「このゲームはプレイヤーひとりのみでプレイしていただきます!」

阿須那
「まぁ、そらそういうルールになるやろうからな…」

守連
「じゃあ、残りはCPUと?」

ラーズ
「いえ、ソロでやっていただきます」


私たちは全員?を浮かべる。
ゲームを知らないふたりはともかく、知ってる私たちですら?を浮かべたのだ。
それもそのはず、本来人生ゲームは複数人数でワイワイやりながら楽しむのが基本。
なのに、それをソロで黙々とやれと?



「…何が楽しくてぼっちプレイを強要されなきゃならないのよ?」

阿須那
「そもそも、それ肝心の主様は楽しめるんか?」

ラーズ
「でしたら、他の方も参加いたしますか?」
「あくまでエキストラ扱いにさせていただきますが…」

彼岸女
「それは勝敗や生死判定には一切関係無いって事?」


ラーズさんは、はい…と言って頷き、クスクス笑う。
彼岸女さんは息をひとつ吐いて納得した様だった。


ラーズ
「挑戦者はリスク有りでひとり参加していただきます」
「他にプレイしてみたいだけの方は、3人まで参加を許可しましょう」
「その方たちには、一切リスクやペナルティは考慮いたしません」
「ただし! 挑戦者への協力も一切許しませんが、ね…」


そう言ってラーズさんは口元に手を当てて笑う。
阿須那ちゃんは睨みを効かせながらも、私たちを見て何か考えていた。
さてと、まずは肝心の挑戦者…だよね?


守連
「…誰が、やるの?」

阿須那
「ウチは参加権無いしな、エキストラもパスや」

彼岸女
「…タイナと羽身は危険な感じもする、けど完全に運ゲーならあるいは?」

タイナ
「私はどちらでも…皆さんの判断にお任せします」

羽身
「よう解らんけど、運否天賦なら自信有るで!?」


「私はエキストラで出たい!」


…と、それぞれがそんな感じで答えた。
とりあえず、雫ちゃんのエキストラ参加は確定かな?


阿須那
「どないする?」

彼岸女
「…まぁ、雫は好きにさせるとして」
「本当に運否天賦なのかは、やや疑問があるけどね…」


そう言って彼岸女さんはラーズさんを睨む。
ラーズさんはフフフ…と笑うだけで、特に気にしてはいなさそうだった。


ラーズ
「まぁ、信じるかどうかはご自由ですが…このゲームのルーレットに関しては、完全に運ですので」

彼岸女
「それじゃあ、先にリスクの方を提示してもらっても良いかい?」

ラーズ
「構いませんよ、それでは!」


ラーズさんはそれを聞いて指をパチンと鳴らす。
すると、天井から何やら長方形の箱がゆっくりと降りてきた。
そしてそれが床に設置されると、吊っていたワイヤーが同時に離れる。
私たちは、まずそれが何なのかを疑問に思った。


守連
「…透明の、箱?」

阿須那
「いや、何かボタンが付いてるで?」

彼岸女
「成る程、コントローラか…という事は」

ラーズ
「今回のゲームでは、酸素を賭けていただきます!」

羽身
「酸素~?」


見た感じ、2m位の高さがあるその箱には大きな管が直結されていた。
ラーズさんはその管を何やら床の穴に直結し、準備を完了させた様だった。
どうやら、あの中に入ってゲームをプレイさせるみたいだね…


ラーズ
「まず、このゲームの開始時には1億円を所持していただきます」

阿須那
「1億…えらい高めなスタートやな」

ラーズ
「最低変動価格は100万円から、そしてこの1億というラインを、最低セーフティラインとします」

彼岸女
「…セーフティ、つまりその金額を下回ったらリスクが発動する…って事かい?」


彼岸女さんの反応に対し、ラーズさんは笑ってYES!と答える。
そして不適な笑みを浮かべながら更にこう説明した。


ラーズ
「1億から0に向けて下がるにつれ、この箱に水を注水いたします!」
「9000万なら1割、1000万なら9割埋まると思ってくだされば良いでしょう」

タイナ
「…そうなりますと、およそ9割も満たされれば呼吸は出来なくなりそうですね」


確かに、あの箱は2m位だから9割でおよそ180cm…
私位の身長だと、とても呼吸は出来なくなる。
でもそれは、他の皆もそこまで変わらない…


阿須那
「運ゲーの中で、窒息のリスクと戦うって訳かいな」

彼岸女
「…ちなみに、肺活量に自信はある?」

タイナ
「ありませんね、当然ではありますが」

羽身
「30秒位なら!」


「…ダ、ダメだわ、このメンバーで勝てる気がしない!」


私はあはは…と空笑いし、とりあえず前に出る事にした。
そういう事情なら、それが最良っぽいしね♪



「か、守連…貴方の潜水記録は!?」

守連
「えっと、正確に測った事はないけど…10分位ならいけると思うよ?」


直後、全員がどよめく。
そ、そんなに驚く程なのかな?


彼岸女
「海女さん以上の肺活量だね…そりゃ安心そうだ」

阿須那
「問題は運やが…まぁ守連ならゲーム適正あるし、他よりかはマシやな」

タイナ
「そうですね、そういう理由であれば守連さんが適任でしょう」

羽身
「むぅ~まぁええか、ほなウチはエキストラで参加しよ~♪」


とりあえず、決まったみたいだ。
メインは私、エキストラには雫ちゃんと羽身さん。
今回は、これで挑戦だね!


ラーズ
「決まりましたか?」

守連
「うん、私が行きます」


「なら私たちはエキストラね!」

羽身
「運なら負けへんで!?」

阿須那
「アンタ等、間違っても守連の足引っ張るなや?」

彼岸女
「逆に、守連ちゃんを助けたりもしちゃダメだからね?」


そう、エキストラはあくまでエキストラ…
この勝負は私がメインであり、私だけがリスクを負う。
あくまで勝負の結末は私のプレイに関わっており、他のプレイヤーは何の影響も無いのだから…多分!


ラーズ
「フフフ…それでは守連さんはあの部屋にどうぞ!」


私は促されて透明の箱に入る。
すると外からラーズさんにドアをロックされ、私は少し違和感を覚えた。
思ったより、酸素濃度が低い?


ラーズ
「今回のゲームでは、あくまで守連さんがゴール出来れば勝ちとさせていただきます」
「その際、総資産は一切考慮しませんので、ご注意を…」


成る程…つまり私はただゴールだけを考えていれば良い訳だ。
それなら無用なリスクは負うべきじゃない。
可能な限り、安全にゴール出来る様に進めなきゃ。


守連
「………」


私は目の前にあるコントローラを見た。
私の胸の下位の位置に配置してあり、一見すると音ゲーみたいな感じだね。
ボタンは3つあり、左右にYESとNOが書かれた大きいボタン。
そして中央やや下側にあるのは、STOPと書かれた大きいボタンだ。
配置的には逆三角形の形であり、これだけ見たら○シバシのコントローラみたいだね…大きさも色も概ねそんな感じ。


ラーズ
「STOPボタンはルーレットの停止に、YESNOボタンは選択肢の決定に使います」
「後、足には足元にある拘束具を付けてください」

守連
「……」


私は無言で足元の拘束具を両足首に付けた。
ロック式の手錠みたいな物で、床に短い鎖で繋がれてる。
これだと、ジャンプも移動も出来ないね…
やるからには、勝たなきゃ生きて出られない。
これは、そういうゲームなんだから…


阿須那
「…さて、どないなるかな?」

彼岸女
「ゲームな以上、どんな罠があるか解らない」
「最悪、開始から借金スタートも有り得るだろうからね」

タイナ
「そうなった場合…一気に難易度が跳ね上がりますね」


もちろん、そうならない様にするのが1番だ。
私の肺活量が高いと言っても、このゲームはターン制。
ひとり1分使うとしたら3人で3ぷ……


阿須那
「ちょ、ちょい待てや!?」
「コレもしかして、雫と羽身のターンって完全にデメリットかいな!?」

ラーズ
「そうなりますね、水で満たされていた場合は」
「その代わり、強制イベントで得をする事もありますし、決してデメリットだけでもありませんよ?」

彼岸女
「…確かに、メリットが無い訳じゃ無いけど」


私は少しだけ不安になった。
遅延行為が最大の敵になりそうな予感がしたからだ。


羽身
「ほ~ぅ? つまり何や…ウチ等がオジャマキャラになる、と?」


「甘えるんじゃないわよ守連!? 優勝は私がいただくわ!!」

羽身
「ダマラッシャイ! 勝つんはウチや!!」


そう言ってふたりは別に渡された無線コントローラを手に持ち、目をギラつかせていた…
私はあはは…と苦笑し、とりあえずモニターを見る。
今はまだタイトル画面…これから、酸素を賭けた人生ゲームが始まるのだ。


羽身
「で、コレってどう使うん?」


「ふっ、ド素人め! この勝負既に見えたわね!!」


雫ちゃんはそう言って鼻で笑う。
既に勝負は始まっている…と言わんばかりの態度であり、羽身さんはカチン!と来たのか、眉をひそめてプルプル震えていた。


ラーズ
「それでは、早速始めましょうか!?」
「さぁ、ゲームスタートです!!」


ラーズさんがオーバーなポージングを取り、ゲームは開始される。
するとまず全員に1億円が配布され、順位が暫定的に表示された。
当然ながら全員1位の状態であり、この時点じゃ何の差も無い。
そして、その後画面が切り替わり、マップが表示されてルーレットの指示が…


ラーズ
「順番は1Pから…つまり守連さんからです!」


「私が2Pね」

羽身
「ほなウチが3Pか」


モニターではルーレットが周り始めており、私の手元にある赤いSTOPボタンが点滅している。
私はとりあえず、開幕の運を試すべくそのボタンを押した…


ラーズ
「5マス進みます! まずは就職活動…さて守連さんはどんな職業に?」


画面上では、古臭いドットであえて描画されてる黄色い車がマップを進んでいく。
そして5マス目で停止し、何やら職業の表示がされた。


ラーズ
「医師の職業ですね、給料は2000万となります」
「この職業に就くのであればYESを、そうでなければNOを押してください!」

守連
「…他の職業がどんなのかは解らないけど、リスクは負うべきじゃない」


私はやや迷うものの、YESを押して決定した。
これで私は医師の職業となり、それが画面にも反映される。
すると、私はそのまま自動的に次のエリアに進むのだった…



「さぁ、次は私の番よ!! 目指せトップアイドル!!」

羽身
「何やそら!?」

阿須那
「…ノリノリやな雫」

彼岸女
「楽しそうで何より…」

タイナ
「うふふ…♪」


雫ちゃんはさっさとルーレットを回す…出た目は4。
そこで、出た職業は…ビジネスマンだった。
給料は1200万…び、微妙だね。



「くっ! たかだかサラリーマンなんぞになれるかっ!! 拒否よ!!」

羽身
「ええんでっか~? 今時定職就かんと後で後悔しまっせ?」


堂々と拒否する雫ちゃんに対し、煽るかの様に笑う羽身さん。
そして羽身さんもすぐにルーレットを回した。
出た目は、7。


羽身
「おっラッキーセブーン! 幸先ええわぁ~♪」


「ふん、序盤でそんな意味なんて無いでしょ!?」

ラーズ
「羽身さんが止まったマスの職業は…政治家! 2200万の給料となります!」

羽身
「おっしゃ高収入! それに決まりや!!」


「バ、バカな…!」


羽身さんはホントに幸先良く、高収入と思われる職業に就く。
雫ちゃんはそんな現実が信じられないのか、ワナワナと震えていた。


阿須那
「あのアホ、ホンマに強運の塊やな…」

彼岸女
「そんなに凄いの?」

阿須那
「イカサマ無しで役満2連続出す様なレベルやからな」

タイナ
「言葉の意味はさっぱり解りませんが、何となく凄いのは解りました」


私はあはは…とまた苦笑する。
あくまでこれは最初のオープニングだ。
こんな所で浮かれてはいられない…気を引き締めないと!


ラーズ
「さて、それでは2ターン目です!」
「守連さんは第2エリアからスタート…どうぞルーレットを!」

守連
「…!」


私は適当なタイミングでルーレットを停止させる。
ここからは多分イベントマスが多発するはず…大丈夫だろうか?
出た目は…またしても5。
私の車は5マス進み、停止したマスは…


ラーズ
「おっと、いきなりマイナスイベントですよ!?」
「仕事でミス! 損害2000万です!!」

守連
「!?」


まさか、開幕からだなんて…!
私は若干焦るものの、すぐに部屋には注水が始まっていた。
私の残額は8000万…およそ2割程部屋に水が貯まっていく。
深さにして約40cm…早くも膝近くまで水が!


阿須那
「…! 中々、焦らしてくれるな」

彼岸女
「とはいえ、序盤なのもあってまだ被害は軽い」
「これなら給料マスですぐに復帰は可能だ」

タイナ
「成る程、ああやって資産を増減させながらゴールを目指すゲームなのですね…」


私は水の温度に若干体温を奪われながらも、キッとモニターを見る。
そしてターン経過までの時間をすぐに計算し始めた。
次は雫ちゃんのターン…ルーレットは、1。


ラーズ
「おっと、残念! そのマスは医師なので、何も起こりません」
「各職業は、ひとりだけしか就けませんので!」


「お! の! れ! 守連ーーー!!」

羽身
「せやからさっさと就職せぇ言うんや…給料低くても安定収入は大切やで~?」


雫ちゃんは私に謂れの無い怒りを向けられ、あはは…と苦笑するしかなかった。
そしてここまでの時間をおおよそで予測する。


守連
(やっぱり、ひとり1ターンにつきおよそ1~2分!)


イベントの内容にも寄るけど、最悪3分位は覚悟した方が良い。
つまり、私が完全に入水してしまったら、およそ耐えられるのは長くても3ターン弱!
それを計算に入れて慎重に進めないと…!


羽身
「ウチは6っと…守連はん追い抜き~♪」

ラーズ
「羽身さんはプラスマス! 選挙に成功、収入2000万です!」

羽身
「あっはっは~幸先ええわぁ♪」

阿須那
「…ホンマにイカサマ無しか疑問に思うわ」

彼岸女
「アレがナチュラルなんだったら、凄い切り札になりそうだね…」

タイナ
「ある意味、切り所を考えさせられるカード…ですか」


羽身さんは序盤から既に差をつけていく。
あくまでまだ2ターン目ではあるけれど、その差は明らかに明暗を分けていた。
私はあくまで自分の事を考える。
これは私がメインの戦いなのだから、この際他のふたりの事は考えなくて良い。
私が生き残らなければ、このゲームに意味は無いのだから…


ラーズ
「第3ターン! 守連さんのルーレットは6!」
「とりあえず給料日ですね! それではもう1度ルーレットを回してください!」
「目によっては、ランクアップ等のイベントが起こります!」

守連
「ランクアップ…! 上手くいけば給料も上がる!!」


そうして意気揚々と私が出した目は…まさかの1。
すると嫌なSEが鳴ると共に、モニターにはクビの文字が…
私は冷や汗を長し、モニターを注視していた。


ラーズ
「これは不運! 開幕から失職とは!!」
「しかし、ここでの給料は医師の給料で支払われるのでご安心を!」
「以降、守連さんはフリーターで進めていただきます!」


何て事だ、まさかいきなりそんなイベントに見舞われるだなんて。
今回の給料で私の資産は1億に戻り、水位は0に戻るものの先の見通しは暗い。
果たして、私は生き残れるのか?


ラーズ
「それでは、給料マスからもう1マス進み、11マス目!」
「マイナスマスですね! 財布を落とし1200万損失!」

守連
「…くっ」


私は踏んだり蹴ったりになってしまう。
折角0になった水位が、また少し上がってしまったのだ。
最初よりマシとはいえ、水位は20cm程上がる。
私の太もも付近位まで水が貯められたのだ。



「ふっ、御愁傷様ね! 私は今度こそアイドルになってみせるわ!!」

ラーズ
「雫さん、7マス目! そこも羽身さんの職業なので無効です!!」


「ぬぁぜだぁ~~~!?」


雫ちゃんは頭を抱えて仰け反っていた。
う、うん…アレを見てると、自分はまだマシに思えてきたよっ!
とはいえ、資産だと雫ちゃんには負けてるんだけどねっ!!


羽身
「ああはなりとう無いなぁ~おっ、9かぁ~まず給料日♪」
「んで、ランクアップのチャンス! ルーレットや!!」

ラーズ
「お見事! 10ですね!! 市長にランクアップです!」

羽身
「良きかな良きかな♪」

ラーズ
「更にこれで15マス目! 羽身さん、更にプラスマス!!」

羽身
「民衆から支持を受けて支援! 更に4000万収支!!」
「早くも1億8700万! まだまだ稼ぐで~♪」

阿須那
「…この圧倒的な差よ」

彼岸女
「もう何も言えないね…」

タイナ
「あ、あはは…」


本当に何も言えなかった…って言うかホントに羽身さんスゴッ!?
どうやったら運だけでああなるの!?
もしかして私と雫ちゃんの運吸われてない!?


羽身
「ひがんだらアカンでぇ~? ゲームの人生やし♪」

ラーズ
「フフフ…もっとも、守連さんは命を賭けてもらっているのですがね!」

守連
「…!」


私は気を取り直してルーレットを回す。
すると、その先は給料マスだった。
ピッタリそのマスに止まった私は軽快なファンファーレと共に、イベントが起こる。


ラーズ
「守連さん、ボーナス発生です! 得られる給料が倍になりますよ!?」
「とはいえ、フリーターの給料はルーレットで決まります!」
「さぁ、どうぞ守連さん!!」


私は回るルーレットをすぐに停止させる。
そうして出た目は、9!
すると更にファンファーレがなり、画面にはランクアップの文字が。


ラーズ
「守連さんランクアップです! 新米からベテランに!!」
「更に給料がアップし、収入は2700万!」

守連
「や、やった!」


これで資産は1億1500万に浮上!
水は再び0になり、とりあえずまた安全圏に入った。
とはいえ、今後どんなイベントに掻き回されるか解らない。
選択肢は慎重に選ばないとね…


ラーズ
「さて、ここからは転職ルートを選ぶ事も可能です」
「ゴールは遠ざかりますが、場合によっては収入を上げる事も可能となりますがいかがいたしますか?」

守連
「……」


私は画面の表示を見ながら考える。
このゲームはあくまで生存する事が最優先。
となると、下手にリスクを増やしかねない遠回りはある意味危険だ。
収入は少なくとも、ゴール最優先で最短距離を目指すのも悪くはないかもしれない。

普通なら、転職する方がセオリーなんだけど、ね…


守連
「そのまま行きます!」

阿須那
「最短距離で突っ走るか…」

彼岸女
「その方が無難かもね、転職に失敗して折角上げたランクを下げる事も無いし」

タイナ
「下がるのですか?」

彼岸女
「普通の人生ゲームならね…転職ルートを選んだ時点で一旦無職に戻るから」
「この場合、例えフリーターでも上げたランクは初期状態まで下げる事になるんだ」

ラーズ
「その通りでございます! ですので、ランクを大事にするのであればそのまま進むのも一興…」
「例え最低収入のフリーターと言えど、ランクが上がれば収入は高まりますしね」


そう、職業のランクは殊の外大きいのだ。
ひとつの職業を突き詰めるのは、決して愚策じゃない。
要は、借金さえしなければ良いのだから…


ラーズ
「さて、それでは守連さんは第3エリアに移動します!」


私の車は次のエリアにワープする。
ここからは、婚活マップ…か。



「まだよ! まだこれから!! 私には希望が残されている!!」

ラーズ
「8マス目! ここではギャンブラーに就けます! いかがいたしますか?」
「ちなみに、後2マス以上進めば強制的にフリーターへと就かされますので、選択は慎重にどうぞ!」


「く…フリーターよりかはマシか!」


雫ちゃんは苦悶の表情をしながらも、ギャンブラーを受け入れた。
えっと、アレって確かかなり収入不安な職業じゃなかったっけ?


羽身
「あ、ええなぁ~ウチもその職業が良かったかも…」

ラーズ
「フフフ、場合によっては職業交換イベントもありますよ?」

羽身
「へぇ~色々あるんやなぁ」
「さてと、ウチの番やで~6かぁ、強制的に給料マスやね」
「ボーナスは無いけど、ランクアップチャーンス!」

ラーズ
「出た目は5…残念ですがランクは据え置きとなります」

羽身
「まぁしゃあないな~とりあえず給料2700万だけもろとこか」


これで羽身さんの資産は2億を越えた…
ここで私は1度全員の資産を確認する…まだ序盤だけど、目安にはしておいた方が良いだろう。



1位 3P羽身 2億1400万円
2位 1P守連 1億1500万円
3位 2P雫 1億円



………………………



守連
(ここからは婚活マップか…)

タイナ
「次はどんな感じのマップなのですか?」

阿須那
「解りやすぅ言うたら、結婚する為のマップやな」
「このゲームがどんな扱いにしてるかは知らへんけど、まぁウチ等が気にしとってもしゃあないやろ」

彼岸女
「まだまだ中盤戦だし、出来れば無理はしたくない所だけどね」



守連
(とにかく、このゲームはあくまで生き残れば勝ち)
(つまり、一切ギャンブル性の高い選択肢は選ばない事が重要なはず!)


第5ターン、私は迷いを捨ててルーレットを回した。
出た目は…5!


ラーズ
「守連さん、5マス進みます!  辿り着いた先は…職業マスです!」
「バイトの新人を育成、大成功!  収入1500万です!!」


とりあえず収入マスだけど…婚活は非成功か。
まぁ、プラス収支でグズる分には問題無いし今は少し落ち着こう。  


ラーズ
「さぁ、次は雫さんのターンです!」


「大分遅れてるけど…ここから一気に巻き返してあげるわ!!」


雫ちゃんが辿り着いたのは3マス目…
まだエリア2だし、すぐに追い付かれる事も無さそうだね。
…って、私にとっては順位の意味は無いんだけど。


ラーズ
「パチンコで当たって収入!  1600万の収入です!」

羽身
「額だけ聞いたらトンでもないな…どないしたらそんな稼げるんか」


「そんなゲームにマジレスせんでも…」


羽身さんはそんなツッコミを入れつつもルーレットを回す。
そして出た目は…9マス!
一気にこれで羽身さんが前に出る形になった…後はどんなイベントが?


ラーズ
「おっと、ここで羽身さんは早くも結婚!  よってお祝い金が発生します!!」
「羽身さん、どうぞルーレットを!  出た目によって他のプレイヤーから資産を徴収致しますので!!」


私は一気に青冷める。
まさか、ここでそんなマイナスを食らうなんて!
いや、とはいえそこまでのマイナスになるかは解らない。
あくまで耐えられる範囲のマイナスならまだ復帰は出来るのだから。


阿須那
「…あのアホ、早速いらん事を!」

彼岸女
「不味いね…ルーレット次第では守連ちゃんが追い詰められるかも」

タイナ
「…後は、運任せですね」

羽身
(…や~れやれ、こらチト面倒なタイミングやな)


羽身さんは少しだけ眉をひそめる。
そして画面上で回転するルーレットを睨みながら、静かにボタンを押した…
出た目は…1!!


ラーズ
「おっと残念!  1ですので、得られる収入はひとり当たりたったの1000万!」
「よって、羽身さんは2000万の収入となり、守連さん、雫さんは1000万づつの支出となりました!」

羽身
「…残念、な」
「あんま、けったいな言い方すんなや変態メガネ?」


何故か、羽身さんはラーズさんを睨み付けていた。
微かではあるものの、羽身さんは何やら怒りを露にしている。
一体、何が気に障ったのだろうか?


羽身
「ウチは別にかめへんけど、仮にも守連はんの命がかかっとる勝負や」
「ウチが守連はん追い詰められんで、残念がるかの様な実況は止めんかっ」

ラーズ
「おっと、これは失敬…言葉には気を付けましょう」


ラーズさんは肩を竦めてそう言う。
羽身さんもそれ以上は何も言わず、少しだけ不満そうな顔でコントローラを置いて腕を組んでいた。


阿須那
「あのアホ、不器用な言い方しよって」

タイナ
「ふふ…ですが、良い人ですね彼女は♪」

彼岸女
(結果的に被害最小なのは幸いだ、だけど何か違和感がある)


何はともあれ、これで私の資産は1億2000万…
沈む事だけは回避出来たね。


守連
(だけど、まだまだ気は抜けない…ここからは収入も支出も大きく変動するみたいだ)


さっきは羽身さんが最低値を出してくれたから良かったものの、もし最高値だったら1億の支出…
もしそうなってたら、私は一気に沈没する所だった。
奇しくも羽身さんに救われた形だけど、今はこの運を信じて進もう!!


守連
(…だけど、何だかおかしい?)


私は、若干ながら体に違和感を感じ始めていた。
更に…少しだけ息苦しい?
この時点で、私はある懸念を抱く事になった。


守連
(まさか、酸素濃度が低下してる?)


…あくまで今はそんな気がする、というだけだ。
とはいえ、もし私の想像が正しかったら最悪の事態も有り得る。
とにかく今は早くゴールする事だけを考えよう!


彼岸女
「…やっぱり何かおかしい、あの部屋」

阿須那
「何がや?  別におかしな所はあらへんで?」

タイナ
「どうかしましたか?」

彼岸女
「…!?  まさか、酸素を抜いてる?」

阿須那
「はぁっ!?  何やねんそれ、もしホンマやったら相当ヤバイやんけ!!」

ラーズ
(ククク…気付きましたか、そうあの密室はほんの少しだけ酸素を抜いています)
(普段ならそこまで気にならない程度の物ですが、中にいる者は次第に違和感を感じるでしょうね)


私はすぐにルーレットを停止させる。
出た目は…9!  イベントマスだけど…その前に給料マスが挟まれた。
私はとりあえずルーレットを回して収入を確定させる。
結果は…


ラーズ
「おっと、残念!  2ですので500万の支出となります!」


ここでマイナスか…でもこれ位なら大した事無い。
フリーターは収入が安定しない職業だし、やむを得ない事情だ。
私はそのまま先のマスに進み、今度こそイベントマスに止まった。


ラーズ  
「今日はバイトの日!  寝坊して遅刻しそうですが…走った方が良いか?」  
「さぁ、守連さんどうしますか?」

守連
(ここで選択肢!?  な、何か嫌な予感がするけど)


単純に考えて、急げば間違いなくトラブルな気しかしない。
だったら、ここは急がば回れだよ!
と、思いながら私はNOボタンを押した。

ラーズ
「急に目の前で車が通過!  水飛沫を受けて体はドロドロに…」  
「バイトには遅刻し、服はクリーニング!  3000万の支出です!!」


がーん…そう来たか~!
まぁ、これが人生ゲームだよね…正しい解法なんか、無いんだよ。
うう…痛手だけど仕方無い、まだ大丈夫!


守連
(…また水位が、これで約10%か)


資産は9000万…ギリギリのマイナスだけど、注意しないと。
ここからは収支額が間違いなく上がってる、一気に沈む可能性も否定は出来ない!



「ふっ、御愁傷様ね守連!  この雫、容赦しないわ!!」


と、意気込みながらルーレットを止めるも、着いた先は私が過去に着いたマイナスマス…
雫ちゃんはそのまま支出2000万で更に沈んでいく事となった。
うわ…雫ちゃんテーブルに突っ伏してプルプル震えてるよ。


羽身
「やれやれ、運の無いモンは大変やな~♪」


「ダマラッシャイ!  ウシャシャイ!!」


羽身さんはケラケラ笑いながらルーレットを止める。
出た目は9…本当に爆速で進んで行くなぁ~
とりあえず羽身さんはまず給料マスで収入…しかもまたランクアップした!
この時点で給料収支は3500万…もう落ちる気配すら見えない。


ラーズ
「羽身さん、第一子誕生!  お祝い金が発生します!」

守連
「!?」


ここで更に追い討ち!?
まずい、羽身さんのルーレットによっては最悪のケースも!?
羽身さんは極めて冷静にルーレットを見つめ、まるで目押しをするかの如くタイミングでボタンを押した…
出た目は…1!!


ラーズ
「おおっ、またしても1ですか…それでは他のプレイヤーから1000万を徴収いたします!」


またしても助かった…って、本当にこれランダムなの?
羽身さん、まるで狙ったかの様に1を出した気がしたけど…


守連
(っ…とはいえ、これで深度20%!  何とか浮上しないと!)



阿須那
「…あれ、もしかして目押し利くんか?」

彼岸女
「さぁ…でも、それなら狙ってみる価値はあるかもしれないね」

タイナ
「とはいえ、それですと運の要素が限りなく排除されますね」  
「特に後追いで狙ったマスに止まれるのでしたら、羽身さんの止まったマスを狙えば良くなりますし」

阿須那
「出来たらバランス崩壊やな、まぁ無理と思った方がええやろ」

彼岸女
「…個別に確率操作でもされてなけりゃ、ね」

守連
(深度20%…水が入ったせいか若干気温が下がった気もする)


足元は流石に冷え始めている。
が、それを気にしてられる程余裕は無い。
徐々に空気が薄くなってる気がするし、ここはすぐに行動しよう!
私はそう決意してすぐにルーレットを止める。
出た目は…3!


ラーズ
「合コンのお誘いが来ました、参加しますか?」

守連
(また選択肢…!?  でも、完全に運ならどっちを選んでも意味は…)


私は悩んでしまうものの、この際勘に頼る事にした。
むしろ無駄な時間をかける方がピンチに陥りかねない。
こうしている間にも、徐々に空気が薄くなっている気がするのだから…!


守連
(ここはYESで行く!)

ラーズ
「合コン先でモテモテ!  しかし、出費がかさんで3000万支出!!」


ダメだー!!  勘に頼った結果がコレだよ!!
これで更に水位は上昇し、深度50%!
約1mの高さまで上昇した水位は私の体温を容赦無く奪って行った。


阿須那
「……ちっ」

彼岸女
「いよいよ追い詰められたね…最悪次のターンが正念場かな?」

タイナ
「苦しくなって来ましたね…守連さんの選択が悉くマイナスになるなんて」


運…そう言ってしまえばそれまで。
だけど、それだけで死んでしまってはただの笑い話だ。
私は既に胸付近まで浸かっている体を見て少し考える。
そして、私は考えられるだけの頭をフル稼働させて、どうにか生き残る確率を高める方法を探し始めた…



「…やれやれね、今度こそ浮上するわよ!?」


雫ちゃんが出した目は10。
ここで遅れていた雫ちゃんも一気に前に進んで来た。
まだまだ追い付かれる事はないけど、どうなるかな?
とりあえず、雫ちゃんはようやくの給料日だ。
ギャンブラーはフリーター同様ルーレットで給料が決まるんだけど…


ラーズ 
「残念!  3ですので1800万の支出です!」


「ま、まだよ!  まだ終わっていないわ!!」


そう、ご覧の通り5以下の数字は全てマイナスというまさにギャンブル…!
逆に言えば、10を出せば全職業の中でもトップクラスの収入が入るのだけど…
期待値でいったら、やっぱり微妙かも…

その後、雫ちゃんは前に羽身さんが止まったプラスマスに止まり、4000万の収入を取り返すのだった。



「ふっ、やはり神はまだ見捨てていない様ね!」

彼岸女
「調和に反逆せし愚者が、神にすがるなよ…」


「それはそれよ!!  ゲームの神は調和でも混沌でもないわ!!」

羽身
「はいはい、さっさと進めるで~」


羽身さんは言葉通りノータイムでルーレットを止める。
出た目は7…だけど給料マスで強制停止。
これにて婚活エリアは終了だ。
羽身さんは3500万の収入を得て、ターンエンドなった。

私もすぐに次のルーレットを止める。
出た目は4で、ここで羽身さんに並んだ。
結局結婚は出来なかったものの、それは仕方無いだろう。
とにかく、まずは給料日だ…ここはしっかり収入が欲しい。
私はとにかく適当にルーレットを止め、出た目を見て安心する。


ラーズ
「9!  これにより守連さんはベテランから店長にランクアップです!」
「給料も3600万にアップ!」


これは大きい!  フリーターといえども、ここまでランクが上がったらなら不安定でも収入期待値は大きくなる。
私の資産は8600万まで回復し、それに比例して水位も下がった…
短い時間とはいえ、少し体温を奪われた事で私は体を震わせる。
室温は水のせいで低くなってるし、濡れた服が張り付いて気持ち悪い…


守連
(それに…着々と空気が)


私は、ほんの少しだけボーッとしてしまう。
ある意味、最悪の事態になったかもしれない。
いや、元々それこそが相手の狙いだったのかも。


彼岸女
「大分効いてきてるね」

阿須那
「…敵さんの想定通りって所か?」
「せやけど、えらい姑息やな…ハナから複数プレイヤーでやる事想定した罠なんか?」

彼岸女
「…とは言えないかもね」
「多分、ソロだったならそれに合わせて酸素濃度を変えてきたんじゃないかな?」

タイナ
「…成る程、あくまでこの状況はなるべくしてなった、と」

阿須那
「…ホンマかいな」

ラーズ
(ふふふ、概ね正解ですよ)  
(酸素の調整は、あくまで人数に合わせてです)  
(これがソロでしたら、もっと早く窒息に繋がるだけ…)  


「さぁ、さっさと先に進むわよ!」


雫ちゃんはここで8を出して、一気に給料マスへ。
これで雫ちゃんも婚活エリアへと到達した。
そして、ルーレットは4…やはり安定しない!


ラーズ
「雫さん、600万の収入です!」


「も、儲からねぇ~!!」

羽身
「さ~て、これでエリアは4!  後どの位なん?」

ラーズ
「最終エリアは5となっていますので、後ふたつですね」


後2エリア…!  そこまで、持つのだろうか?
私は徐々に焦りが出始めている。
空気の薄さもあるせいだろうけど、頭がボーッとしてくるのだ。
まだ、後2エリア…どう早く見積もっても5~6ターンはかかるはず。
1ターン10分前後かかるとしたら、1時間…!?

そう、ここまでで既に8ターン目…既にゲーム時間は2時間近くかかっているのだ。
約2時間でこの酸素濃度…既にチアノーゼ(酸素欠乏症)が出始めてる私が、耐えられる?


守連
(諦めるな!  耐えられるかじゃない耐えろ!!)


私は両手で頬袋を叩き、弱気になり始めていた自分に渇を入れる。
そしてバチバチと電気を弾けさせ、私はキッとモニターを睨み付けた。
こういう時は、体力よりも気力だ!
羽身さんは既にルーレットを止めて先に進んでいる…出した目は8  
本当に羽身さんはどんどん進んで行く。
まるでヘイストでも使ってるのか?と思う程の爆速だ。


ラーズ
「子供が夜泣きして寝不足!  仕事にも支障が出てしまい、4000万の支出です!」

羽身
「あちゃ~まぁしゃあないしゃあない」


羽身さんはあくまで余裕の笑み。
もはや、たかだか4000万と言わんばかりだ…
こっちが食らってたら洒落にならないよ…
私は自分の番が来たらすぐにルーレットを回す…がっ、出た目は羽身さんとまさか同じ8!

これって、最悪のパターンなんじゃ!?


ラーズ
「諦められずに婚活するも、失敗!  4000万の支出です!」

守連
「…!!」


私は歯軋りしながらも、注水を見る。
資産は4600万…よって水位は約54%!
またしても1mちょいの水に私は埋もれる事となった。
そして同時に空気が更に薄くなるのを感じる。
それはそうだろう…今部屋の半分以上は水なのだ。
つまり残された酸素があるのは上半分の領域のみ。
ただでさえ少ない酸素は水で押し出されている様な物なのだから…


阿須那
「クソッタレ…!  運の無いやっちゃな」

彼岸女
「良くも悪くも時間との勝負だと思ったけど、ここまで収支幅が大きくなると」

タイナ
「1回の支出が、とても大きくなりますね…特に守連さんには」


「さぁちゃっちゃと行くわよ!  この際子供作りまくって引導渡してあげるわ!」


雫ちゃんはどこまで本気で言ってるのか解らないけど、とにかくすぐにルーレットを止める。
彼女は彼女なりに気を遣ってくれているのかもしれない。
そして出した目は8…


ラーズ
「雫さん、結婚成功!  お祝い金発生です!!」


「!?  ふ、ふふふ…まぁ仕方無いわねぇ~!」

羽身
「…この、ドアホ」


雫ちゃんはかなり複雑そうな顔しながらも、笑いながらルーレットを回す。
そして出た目は7…!!
これで発生する金額は…


ラーズ
「雫さん、ここで7000万円を他のプレイヤーから徴収です!」


私は遂に借金に到達してしまう。
つまり、水は完全に部屋を埋め尽くしてしまうのだ。
私は注水で埋まる切る前に思いっきり酸素を体に取り込む。
あるだけでも良い!  とにかく耐えるしかない!!
万全じゃないだろうけど、それでも5分以上は持つはず!


阿須那
「ヤバイやないかい!」

彼岸女
「まさか、こんなに早く!」

タイナ
「守連さん…!」

ラーズ
(おやおや、思ったよりも持った方ですかね?)


そして私は完全に水没してしまう。
だけどモニターには目を向ける。
水のせいでかなり視界は悪いけど、何が起きてるのか解らないほどじゃない。
幸い、声は部屋の中に響くから一応聞き取れるし。


羽身
「ちっ!」


羽身さんは時間を置かずにルーレットを止める。
出した目は9…そのまま給料マスに突っ込み、羽身さんはボタンを連打してメッセージも見ずに先へ先へと進めていった。  
羽身さんはそのターン、6500万の収入を得てすぐに私へとターンを回す。
私も合わせてすぐにルーレットを止める。
この際、慌てない事が重要だ。
呼吸というのは、暴れれば暴れる程酸素が奪われる物。
私は極めて冷静に頭を冷やす。
とにかく、落ち着いて迅速にゲームを進めないと…
どうやっても、浮上するかどうかは運なのだから。

そして出た目は3…私はまず給料マスに止まる、そしてこれもすぐに落ち着いてルーレットを止める。
が、出た目は2…収入は0だった。
だけどまだ先のイベントマスがある、そこでプラスを引ければ…!


ラーズ
「新たに入荷した商品が大ヒット!  4000万の収入です!!」


私はここで収入を得て借金は抜ける。
だけど、資産はたったの600万…これでは、到底息は吸えなかった。
それに、今更室内に酸素が残っているのかも怪しい。
もしかしたら、もう水が抜けても酸素は…?



「ああもう面倒ね!  サクサク行くわよ!!」

ラーズ
「雫さん給料日です、さぁ続けてルーレットを!」


「ええいボタン連打よ!!」

ラーズ
「おっと2400万の支出!」


「だー!  もう良いから先に進みなさい!!」


雫ちゃんはこれでもかと連打して先へ進める。
そして止まった先は職業マス。
そこで雫ちゃんはボタン連打で選択肢を選び、運良く2000万の収入を得てターンを終えた。


羽身
「ちっ!」

ラーズ
「お見事!  給料マスで羽身さんは最終エリア到達です!!」
「ここでは1等賞として1億円が羽身さんに入ります!」


羽身さんはほぼ最小限の時間で私にターンを回してくれる。
…が、私の呼吸はもう限界近くだった。
恐らく、次のターンまでは持たない。
やっぱり、最悪の結果を考えなければならないのかもしれない。


守連
「…!!」


私は冷静にルーレットを止める。
止まったマスは過去に羽身さんが止まったプラスマスだ!
私はここで3000万の収入を得て、水位を下げる事に成功した。
資産は3600万、つまり水位は64%…約130cm程の水位になる。
これなら息は出来る…けど!


守連
「っ!!」


私は水が抜ける前に全身から電気を放つ。
こうすれば、どうなるか?
そんな事は小学生でも知ってる簡単な答えだ。
もっとも、小学校の実験は電気が通りやすい様に水酸化ナトリウムを入れるんだけどね…

だけどそんな物は私の電力を持ってすれば、必要無い。
私の電力は乾電池程度の電力ではないのだから…


守連
「っ!  はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


私は顔が出てすぐに息を吸う。
まだまだ酸素は足りないけど、それでも一呼吸は出来た!
とりあえず…急場凌ぎの手は成功したみたいだ。


ラーズ
(ほう…あんな手で延命するとは、流石は規格外ピカチュウといった所ですか!)  
(並の電力であればそこまでの酸素は作れませんからね…)
(ですが、同じ手は2度も使えませんよ?  まだゲームは終わっていないのですから!)



「ふ、ふんっ!  まぁこの程度で死ぬとは思っていなかったわよ!」

羽身
「そもそもアンタが追い詰めたんやろがい!」


「細けぇこたぁ良いのよ!  さぁ私のターン!!」


雫ちゃんはそのままルーレットを止める。
そしてきっちりマイナスマスに止まった。


ラーズ
「3000万の支出です」


「ふっ!  まだまだ挽回は出来るわ!!」

羽身
「やれやれ、さっさとゴールしてまうかな…」

ラーズ
「突然世界旅行のチケットが当たりました!  行きますか?」

羽身
「そら折角なんやから行かんとなぁ~♪」

ラーズ
「旅行は楽しんだ!  しかしその分金を使いすぎた!」
「8000万の支出です!」

羽身
「うげっ、結構かかるなぁ~」


聞いてて恐ろしくなる…最終エリアだけあってかなり額が大きい。
これは、本当に生き残れるかどうか。
だけど諦めていられない。
とにかく、生きてゲームを終えれば勝ちなのだから。
電気分解を応用した奇策は多分もう使えない、というか下手に使ったら熱湯風呂で死ぬ事になる。
今でさえかなり水温を上げてしまったから、下手な風呂よりも熱いのだ。
まぁ、その分酸素は多く得られた訳だけど。


守連
(でも、体力も余計に消耗した…回復させるだけの時間も余裕もない)


なら後は突き進むだけだ。
私は迷わずルーレットを止めて先へ進む。
これで私も給料マスに辿り着き、最終エリアへと到達した…
後、少し!


ラーズ
「守連さん、2100万の収入!  加えて二等賞として5000万の収入です!」

阿須那
「よしっ!  これで水は無くなるで!!」

彼岸女
「後は、残った僅かな酸素で耐えるだけ、か」

タイナ
「ここから先、支出が増えなければ…ですが」


そう、いつまた水没するか解らないのだ。
恐らく、次に沈んだらもう何分も持たない。
今でさえ酸素欠乏症で顔は蒼くなってはず。
もう、本当に余裕は何も無い。


守連
(だけど、最後の最後まで諦めるもんか…!)


「さて、私もさっさとここを抜けるわよ!」

ラーズ
「雫さん、エリア3突破!  そして給料マスです!」


「えいやぁぁぁっ!!」


雫ちゃんは気合いを入れてボタンを目押しする。
それに答えたのか、出た目は9。
雫ちゃんはランクアップを果たし、大きな収入を得る事に成功した。


ラーズ
「おめでとうございます!  アマチュアからプロにランクアップです!」
「収入は4500万!」


これで、雫ちゃんの資産は2億5700万…羽身さんに追い付きかけてる。
このままだと私の資産は最下位かな?


羽身
「むぅ、後から来た奴に負けるのは何か気に食わんなぁ~」


「ふふふふっ、世の中金よ!!  どれだけ足が早かろうが金がある奴が勝つのよ!!」

阿須那
「そもそも人生ゲームに勝ち負けとかあったっけ?」

彼岸女
「さぁ?  公式にそんなルールは無いね」

タイナ
「そうなんですか?」


とりあえず羽身さんはルーレットを回す。
出た目はまたしても8…っていうか羽身さんだけ片寄りすぎてない!?
羽身さん8以上の数値ばっかり出してる気がするけど?  
羽身さんはそのまま給料マスを通り抜けて、更にプラスマスに…
計1億5500万の大型収入を得て一気に後続を突き放した。



「チ、チクショウ!  追い付いたと思ったら、すぐに突き放しやがる!!」

羽身
「まぁ、最後のエリアは変動激しそうやからなぁ~」


そう、減るのも大きいのだ。
最悪、私は一気に水没してゴールを目指さなければならないのかも…
出来れば、だけどね…!


守連
(とはいえ、残りマスは少ない…せめてこのターンを安全に乗り切れればクリア率は相当高まるはず!)


私はそう考えてルーレットを止める。
出た目は7!  よし、これで残り13マス!  運が良ければ2ターンでゴールに…


ラーズ
「趣味で骨董品を購入!  5000万の支出です!」

守連
「!!」


私はまたしても半分近く水没する。
まぁ、まだ余裕はある。
完全に沈まなければ生き残れるのだから。
頭はかなりボーッとしてるけど、もう少し…もう少し、だから!


阿須那
「守連、苦しそうやな」

彼岸女
「後、少しなんだけどね…」

タイナ
「後は祈りましょう…」



「…く、距離で追い付くのはもう無理!  こうなったら多くのマスに止まって収入を稼ぐしか!」

ラーズ
「雫さん、第一子誕生です!  お祝い金が発生しますよ!!」 

羽身
「このアホまたやらかしよった!!」


「な、何よ悪いのはゲームでしょ!?  これは正当なプレイよ!!」


いや、まぁそうなんだけどね…
私はもう覚悟するしかなかった。
今ある電力を使ってギリギリまで電気分解を行う。
水は電熱で一気に沸騰しかけ、私は熱湯で焼かれる皮膚の痛みに耐えながら酸素を増やして体に取り込む。

そして雫ちゃんが出した目は2…予想外に低かった。
つまり各2000万マイナスで、私の資産は3700万。
水位は思ったより上がらず、私は一気にのぼせ始めてしまった…


羽身
「やれやれ、さっさと終わらせな胃に悪いわ」

ラーズ
「おめでとうございます!  羽身さん一着でゴールイン!」
「賞金1億が入り、清算に入ります!」
「配偶者有り、子供ひとり…職業ランク3により2億プラスします!」
「それでは羽身さんお疲れ様です!  後は全て終わるまでお待ちを!」


羽身さんはふぅ…と息を吐き、コントローラを机に置いた。
そして後は腕を組んでモニターを見る。


守連
「…後、少し」


私は目眩をさせながらもルーレットを回す。
出した目は1…着いたマスはマイナスマス!


ラーズ
「有名絵画を購入!  しかし1億の支出です!!」

守連
(そう、なるのか…!)


私は容赦無く借金に叩き落とされる。
そして再び水は埋まり、私は残された少ない酸素で残りを進む羽目になった。
幸い、羽身さんはゴールしてるからターン進行は早くなる。
後は、雫ちゃん次第だね…
私は、ここから意識を切り替えて脳への酸素を限界まで抑える事にした。
いわゆる仮死状態に限りなく近い状態…と言えば良いだろうか?
もちろん、このままじゃゲーム操作も出来ない…だから限界ギリギリで止める必要があるのだ。
私は雫ちゃんの操作速度をある程度予測し、自分のターンに回って来る大まかな時間に意識を覚醒させる。
後は、運次第だ…もう何度も言うけど、本当にそれしかない。

これは…私の精神力と運との戦いなのだから。


ラーズ
「雫さん第二子誕生!  またしてもお祝い金発生です!」
「他のプレイヤーから5000万づつ徴収!」


「く…素直に喜べない!」

阿須那
「守連の奴…まさか仮死状態で無理矢理耐えとるんか!?」

彼岸女
「もう、資産はどうでも良いって判断だね」

タイナ
「生き残れば勝ち…それがこのゲームの心理ですからね」

羽身
「せやけど、あれで操作出来るんでっか!?」


私は意識を覚醒させ、ボタンを軽く連打し始める。
強い力はいらない…後は速やかにターンを進めるだけだ。
もう出た目も確認する必要はない。
ただ、限界まで耐えるだけ…


ラーズ
「守連さん、給料は得られず!  更に仕事で大失敗!  6000万の支出です!」

羽身
「ホンマに、ドン底!」

阿須那
「雫!  ボタン連打や~!!」


「わ、解ってるわよ!!」

ラーズ
「雫さん、3等賞で最終エリアに!  賞金は3000万となります!」  
「更にランクアップで給料は増加!  5400万の収入です!」

阿須那
「演出が長い!」

羽身
「はよせんかい!!」

彼岸女
「もはやクレーマーだね…」

タイナ
「…守連、さん」


私はまた仮死状態から、覚醒する。
感覚が長くなっている…このままだと次は目覚められないかもしれない。
既に意識は遠く、指の感覚すら曖昧だ。
だけど私はボタン押してみせる。
いや本当に押したのかも解らない。
もう、そんな事が理解出来るだけの感覚が…私、に……は。



………………………



ラーズ
「…守連さん、これにてゴール確認!!」
「よって、このゲームは守連さんの勝利と致します!!」

阿須那
「ええからはよ守連出せぇ!!」

タイナ
「力技ですが、ご容赦を!!」


タイナは触碗を勢い良く振り回し、守連が囚われてる透明のケースを破壊しようとする。
ケースはかなりの衝撃音で揺れるものの、全くビクともしなかった。
今の、かなりの衝撃やったぞ!?


ラーズ
「ふふ、その程度で壊れる様では守連さんは捕らえられませんよ」
「ご安心を、すぐに解放致しますので!」


ラーズはそう言うて指をパチンと鳴らし、水を地下に放水する。
そして触れる事無く鍵を開けてみせた。
タイナはすぐに扉を開けて中に入り、守連を外に引きずり出してウチ等の前に連れて来る。


守連
「………」

阿須那
「守連、生きとるんか!?」

彼岸女
「心配ない、自分で仮死状態に入ってるだけだ…外からショックを与えれば!」


彼岸女はリングからAEDを取り出し、それで守連の心臓にショックを与えた。
すると、守連は大きく体を跳ね上げて呼吸を取り戻す。
それを確認してウチはホッと安堵した。
ホンマ、心臓に悪いわ!


守連
「かっ…! はぁっ!!」
「はぁ…はっ!  …わ、私、生きてる?」

タイナ
「ええ!  守連さんの根勝ちですよ!」

彼岸女
「お疲れ、最後までヒヤヒヤさせられたよ」

阿須那
「まぁ、ヒロイン代表がこんなトコで死んだらいかんがなっ!」

羽身
「まぁ、結果オーライで何より! さぁ、次のゲームでっせ!?」

ラーズ
「ふふ、その前に主から一言あるそうです…」

カルラ
「……次は、これで」


カルラはそう言って、上半身の鎧をパージした。
って!?  何か趣旨間違えてへんか!?


カルラ
「……ご褒美」

彼岸女
「いや、別に君の脱衣が目的でやってるんじゃないからね!?」

羽身
「ほう~?  つまり最後にはその下着も?」

ラーズ
「そこまでは私が許しません!!  何としても阻止致します!!」

タイナ
「というより、脱ぐ事自体は止めないのですね…」


とまぁ、こんな感じで人生ゲームには勝利した。
守連もとりあえず無事やったし、後3勝やな!
残りは彼岸女、タイナ、羽身の3人やが…ホンマに大丈夫なんかな?
ウチは不安が大きいものの、後は信頼するしか出来へんのも理解しとった。



………………………




「…ふっ、完全に忘れられてるわね」
「何よっ!  まだ私ゴールしてないんだからね!?」
「…どの道、トップにはなれないけど!!」





最終結果
資産1位  羽身  6億7100万円
2位以下、省略!!










『とりあえず、彼氏いない歴ウン千年のポケモン女が愛する男を救う為に戦う。後悔する暇も無い』



第6話 『守連、酸素を賭けた人生ゲーム!』


…To be continued

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