第2章 第5話

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:24分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

阿須那
(さぁて、まずは様子見やな)


ウチは椅子に座りながらリモコンを手に、目の前のロボを睨み付けとった。
ロボットの見た目は、コッテコテの四角いパーツで組み立てられたレトロ臭が凄まじい奴や。
顔はまるで○テカセキングみたいな奴で、目がたまにピカピカ光る。
緊張感が全く無い相手やな…


阿須那
(とはいえ、負ければ死…しかもダメージに応じて血は抜き取られる)

彼岸女
「ちなみに阿須那ちゃん、体重は?」

阿須那
「大体87kgや」

羽身
「そんな重かったんでっか? 体は結構細身なんに…」

阿須那
「アホッ、ウチの尻尾を計算してみぃ! これだけで28kgはあるんやぞ?」


ウチはそう言って椅子に座りながら特徴の九尾をワサワサと動かす。
つーかコレのせいで椅子にも座りにくいんやけどな!
ルール上、しっかりと背もたれに腰付けとかなあかんし、尻尾の根本を押し付ける形にせなどうにもならん。


羽身
「…そらキュウコンやし、納得ですな」

彼岸女
「…なら、阿須那ちゃんの血の量は約7Lって所か」
「だとしたら、限界は約2L位だね」

守連
「? どういう意味~?」

タイナ
「血液の20%程を失いますと、その時点でまず出血性ショックを引き起こします」
「ここまでならまだ意識は保てますが、そこから更に失われ続けると、失血死の可能性が引き上がります」
「人体としての限界点はおよそ50%と言われていますが、このゲームではあくまでプレイヤーが動ける事を前提にされていますので…」

彼岸女
「阿須那ちゃんが意識を保てるのは、およそ30%の2Lって訳さ…」


彼岸女とタイナはそう言って守連に説明したる。
ウチもそこまではよう知らんかったわ…覚えとかなな。
ウチは改めてモニターを見る。
あのライフゲージはいわゆるウチの総血液量。
あのゲージが3割切ったら、ほぼ終わりっちゅう訳やな。


ラーズ
「そろそろ始めてもよろしいでしょうか?」

阿須那
「そういや聞いてへんかったけど、間違えて頭以外をどついたらどうなるん?」

ラーズ
「その際は、ペナルティとして衝撃に応じたダメージを受けていただきます」
「あくまで叩いて良いのは、相手の頭頂部のみ…」
「そこ以外は全てペナルティとします、故意であろうがなかろうが」


ウチはそれを聞いてロボを見る。
なら、後は出たとこ勝負か…


ラーズ
「それと最後にもうひとつ…このゲームにはまだひとつだけ隠された仕様があります」

羽身
「何やて!? それは一体…」

ラーズ
「それはお教え出来ません…あくまで阿須那さん自身でお解きください」
「その代わりと言っては何ですが、こちら側のライフは低めに設定させていただきますので」


低め、ね…どん位違うんかは知らんけど。
しかし、隠された仕様なぁ~?
それが解らんかったら、このゲームには勝てへん…のやろな。


ラーズ
「さぁ、そろそろ良いでしょう! ゲームを開始します!」
「阿須那さん、どうぞリモコンのボタンを!!」


ラーズは高らかにそう促し、ウチは目を細めてボタンを押す。
するとモニターには互いの手がデタラメにハイスピードで表示され、スピーカーからはドラムロールが鳴った。
緊張する中、それはやがて止まり…


ジャン!


ラーズ
「…阿須那さんの勝ちです! では阿須那さん、攻撃か防御の選択を!!」


ウチはチョキ、ロボはパーやった。
つまりウチの勝ち…そして選択権をウチは得る。
さて…まずは先手を取りたい所やな。
しかし、ウチは考える…反応速度で勝てるか?と…

スピードにはそれなりに自信ある…せやけど、ハリセンとメットの重さは解らん。
普通ならメットの方が重いと思うんやが、それなら防御側が不利や…わざわざそんな違いを設定するか?
まぁ要するに、何事もやってみな解らん!っちゅうこっちゃ。
せやから、ウチは直感を信じてこう宣言する…


阿須那
「…攻撃を選択するわ!」

ラーズ
「結構! では、合図が鳴るまで待機を!!」


やや和やかなBGMが流れながら、ウチは合図を待つ。
緊張感は最大や…絶対に先手取ったる!
ウチの方が絶対に速い! 自信を持つんや!



………………………



阿須那
「……」

守連
「な、長くない?」

彼岸女
「これも醍醐味だろうからね…毎回同じタイミングじゃ測られちゃうし」

タイナ
「とはいえ、常に緊張を保つのは大変ですね」

羽身
(阿須那はん…)


ビーーーーーッ!!


阿須那
「!!」


ウチはブザー音を聞いて、すぐにハリセンを手に取った。
そして同時にロボもメットを取る…予測よりも速い!?
しかしウチは止まれん、それなら最速でブッ叩いたる!
ウチは全身全霊を賭けてハリセンを振り被り、ロボの脳天を狙うた。
その結果は…


バシィィィィィィィィィンッ!!


ラーズ
「…ふ、攻撃失敗です!」

守連
「そんな、阿須那ちゃん!?」

彼岸女
「…1発目から、か」


ウチの攻撃はロボに防がれとった…
ロボの動きはウチよりも速かったんや。
いや、正確にはスピードはほぼ互角。
ウチは威力重視で振り被ったんがあかんかった。
まずはコンパクトな振りで、しっかりダメージを通すべきやったんや…


ラーズ
「さて、ダメージを計測します!」


またしてもドラムロールが鳴り、ウチのライフが削られていく。
それは約20%近くまでのラインであり、ウチは早速追い詰められる形になってもうた…


タイナ
「既に、出血性ショックギリギリの…!」

羽身
「あかんですがな!?」

ラーズ
「さて、それでは早速血をいただきますよ!?」


ラーズは面白そうに口元を歪めて笑い、ウチの腕に針を刺す。
そしてそれを包帯やら何やらででしっかりと固定し、外れん様にされた。
そこから、ウチはダメージ分の血液を抜き取られていく…


阿須那
「…っ!? け、結構くるな」

ラーズ
「ふふふ…まだゲームは始まったばかりですよ?」


ウチは軽く目眩をさせながらも、しっかりと前を見た。
そして、同時にゾッとする。
全快の状態で失敗しとるのに、この状態でやらなあかんのやから…


彼岸女
(阿須那の状態は既に最悪だ、あそこからどうやってやり返す?)

タイナ
(隠された仕様も判明していない、勝てるのですか? この勝負に…?)


ラーズ
「さぁ、第2ターンです! 阿須那さん、リモコンをどうぞ!!」
「ちなみに、受付時間は30秒までとさせていただきますので!」


成る程、休ませる時間も与えへん訳か。
しゃあない、やるしかあらへんわな。
ウチは可能な限りギリギリまで待ち、制限時間ギリギリでボタンを押した。
そして、ジャンケンの結果は…


ラーズ
「またしても阿須那さんの勝ちです! それでは選択を!」

阿須那
「…防御を選択するわ」


ウチは確認も込めて防御を選択する。
失敗したら即死しそうやが、それでも1度はやっとかんとあかんやろ。
もしかしたら、隠された仕様ってのはハリセンやメットに潜んどるかもしれんからな。


ラーズ
「それでは、合図をお待ちください!」


ラーズは相変わらず嫌な笑みを浮かべとる。
勝ちを確信しとるわけでもなく、ただ嬉しそうに笑っとるんや。
不気味な笑みやが、ウチは無視して呼吸を整える。
大丈夫や、まだ動ける。
メット被る位なら余裕のはずや。
ウチはそうやって心を落ち着け、集中力を高める。
すると、今度はすぐにブザーが鳴り響いた。


阿須那
「!!」

彼岸女
(速い! これなら防御は十分間に合う!!)


ウチは必至にメットを被って防御する。
やった…と心で思うも、ウチは違和感だらけやった…


阿須那
(な、何や…? 何で、攻撃が来んねん…?)


ウチは俯いてた顔を少し上げ、ロボの動きを確認する。
すると…ロボはあからさまにゆっくりとした動きで、ピタッ…とハリセンをメットに降ろしたのだ。
それこそ、ただ置いただけの様に…


ラーズ
「防御成功です! よって、ダメージはロボに反射されます!」


ラーズは高らかにそう言い、大袈裟なポーズを取ってモニターに手を向ける。
そしてロボが受けたダメージは…たったの1%やった。


彼岸女
(…? あれで1%も?)

ラーズ
「ふふ、ちなみに最小ダメージは1%です」
「それ以下には決してなりませんので、ご注意を」


ラーズは不適な笑みのまま、そう説明する。
そしてウチは理解した…これで、自分の生きられる最高ターン数が。


彼岸女
「…ジャンケンに負けられるのは、最高でも10回前後か」

守連
「で、でもライフの総量が違うなら先に倒せるかも!」

タイナ
「守連さん、彼は最低1%と言いました」
「つまりロボの総体力に対してまだたったの1%、ましてやロボ側は体力100%をフルに使える…」
「しかも、ダメージに応じて動きが衰えるとも思えません」
「この状態をそもそも長く続ける事自体が、阿須那さんには難しいのです…」


タイナは冷静にそう説明する。
守連はそれを聞いて露骨に不安そうな顔をした。
やれやれやな…


阿須那
「なぁに心配いらへん、こんな勝負絶対に勝ったるさかい」

羽身
「ただの強がりにしか聞こえへん!」

阿須那
「じゃかぁしぃ! とにかく外野は黙っとれ!!」


ウチはそう言って少しフラつく…あのアホが、疲れさすなっちゅうねん!
ウチは少し頭を抱えながら再びロボを見た。
そして冷静になってここまでの攻防を分析する。


阿須那
(スピードはウチの方が若干速い…)


つまり、コンパクトに攻撃出来ればダメージは蓄積出来る。
総体力が低めなら、コツコツやれれば勝てる確率は高いやろ。
ただし、ジャンケンに勝てればの話やが。
あくまで、選択権はジャンケンの勝者側にしかあらへんからな。
完全ランダムのロボ相手に、連勝続けられるとはとても思えん。


阿須那
(なら、防御を徹底するか?)


ロボは、あからさまにこっちの防御を見て手を緩めよったからな。
つまり、速く動きすぎても防御はメリットが薄い。
大きな反射を狙うなら、ギリギリで防御するのが1番やいうこっちゃ


阿須那
(つまるとこ…)


攻撃にしろ防御にしろ、ハイリスクローリターンを繰り返さな勝てん…ちゅうこっちゃ。
やれやれやな、ホンマに。
ウチは息を吐き、神経を研ぎ澄ませる。
こら、難儀やでホンマに。


ラーズ
「さぁ、第3ターンです!」


ウチは無言でボタンを押す。
そして出た結果はウチの負け…選択権はロボに与えられた。


ラーズ
「ふふ、ロボは防御を選択しました!」

阿須那
(防御…やと?)

彼岸女
「ここで防御…?」

タイナ
「チャンスとも取れますよ? 攻撃に成功出来れば一気に場を立て直せます」


確かに、な。
せやけど、ウチは嫌な予感しかせぇへん。
多分、彼岸女も同じ事考えとるな。
もし、コレが確定やったら…ウチはゾッとする事になりそうや。
ウチはそんな状況に神経をすり減らせながら、ただ合図を待った。
もうやるしからへん…大きなダメージはいらん、ここは安全策や!


ラーズ
「…ふふふ」

阿須那
「………」


やがてブザーは高らかに鳴り、ウチ等はほぼ同時に動いた。
ウチの方が若干速い! これなら先に叩ける!!
…そう思った矢先、ウチは凄まじい違和感に襲われた。


阿須那
(何や!? ハリセンが、重い…?)


ウチは前に握ったハリセンとは違う感覚に、ただ戸惑った。
もしかしたら、ウチのダメージのせいでそう感じとるだけかもしれん。
そん位微妙な差や。
せやけど、そうなった以上ウチは途端に恐怖を覚える。
このまま打ち抜けられるんか?


阿須那
(…間に合うか!?)

彼岸女
「よせ! 止まるんだ!!」


ウチはその声を聞いて、急ブレーキをかける。
そしてすぐに力加減を抑え、ウチは最小限の力でハリセンをメットの上に落とした。


ラーズ
「防御成功です…ふふ、ダメージはどれ位ですかね~?」


ラーズは嬉しそうに笑う。
癇に触るが、今は一々構ってられん。
とにかく、この一撃で最悪ウチは終わるかもしれんのやから…
ウチは嫌な汗をかきながらも、モニターを凝視した。
そして、減ったライフは…1%。


タイナ
「…これで、20%」

彼岸女
「…最悪だね、消耗戦を仕掛けて来るなんて」

守連
「え?」

羽身
「最低1%の削り合い…阿須那はんが攻撃に成功出来へんねやったら、敵はただ防御を成功させるだけ」
「仮に阿須那はんが防御を選んでも、ロボは1%の反射を受け続けるだけでええっちゅう事か!」


羽身の言う通りや。
そして、ウチと彼岸女が想像しとった最悪のケースでもある。
端から見たら、ただの詰みゲーや。
もう、ジャンケンの可否に関わらずロボは安牌を選ぶだけ。
対するウチは、消耗で動きが鈍る中攻撃を成功させるしかあらへん。


ラーズ
「さぁ、血を抜かせていただきます!」

阿須那
「…ぅ!」


たった1%やが、それでもキツかった。
人体から20%ものの血が抜けるという自体が、そもそも危険なんやから…


阿須那
「…ちっ」


ウチは冷や汗をかきながらも舌打ちする。
そして天を仰いで大きく息を吐いた。


守連
「阿須那ちゃん…!」

彼岸女
(どう見たって敗色濃厚…誰が見ても勝敗は明らかだね)

タイナ
(ですが、覆す方法は…)

羽身
(無いわけでもあらへん!)


不安な顔しとるのは守連だけか。
っちゅう事は…他の3人が考えとる事も大体一致しとるっちゅう訳やな。
ウチは微笑し、目を細めてラーズを見た。
そして、ウチは軽くこう話す…


阿須那
「…このハリセン、いやもしかしたらメットもか」
「まさか、重量変えてんのか?」

ラーズ
「ほう! もうお気付きに?」
「まだ、体感で感じられる程には変わってない位なんですがね…」


ウチはやっぱか…とため息を吐く。
幸か不幸か、貧血状態で弱ったから気付いた様なモンやからな。
確信も無かったし、当てずっぽうで言うてみたけど。


ラーズ
「ご想像通り、ハリセンとメットの重量は徐々に重くなります」
「ふたつとも全く同じ重量ですので、優劣は存在しませんがね」

阿須那
「…ふん、長期戦にならん様にしとるわけか」

ラーズ
「ええ、最終的には手元が狂ってペナルティ負け…ともなりかねませんからね♪」


そう言ってラーズは口元に手を当ててクスクス笑う。
けったくそ悪いやっちゃ…ロボの馬力次第やと相当不利になりそうやな。
さて、ほんならそろそろ…反撃といかなあかんか。


阿須那
「ちょっとタバコ吸わせてもろても構へんか?」

ラーズ
「構いませんよ、吸いながらプレイなされるのなら」


ウチはそれを聞いて、おおきに…とだけ言うてタバコの箱から残り全部を一気に取り出す。
そしてそれを全て口に咥え、指を鳴らして火を点けた。


羽身
「ちょっ!? 何ぼ何でも吸いすぎでんがな!!」

阿須那
「やかましい! 血抜かれて貧血なんや、ちょっと血管絞めとかんとなぁ~!!」


「どこの○斗神拳伝承者よ!?」

彼岸女
「しかも62代目の方ね!!」


ノリ良くネタがかまされる。
ええがな、久し振りやでこのノリ!
ウチはニヤつきながら、10本のタバコを一気に吹かした。
するとウチの周りには大量の煙が上がる事に。
そのまま、ウチはさっさとリモコンを操作した。


ラーズ
「…こちらの勝利です! それでは防御を選択!!」

阿須那
「はいはい、セオリー過ぎて反吐が出るわ」


ウチは落ち着きながら合図を待つ。
タバコの灰を足元に落としながら…
そして、ブザーが鳴ると同時にウチはハリセンをゆっくり手に取った。
ロボは既に防御体勢…まぁ慌てるこたあらへんな。


阿須那
「ふぅ~」


ウチはハリセンを目の前に掲げ、大量の煙を吹きかけた。
そしてそのままゆっくり…と振り被り、最低限の力でメットの上にハリセンを落とした。


ラーズ
「…防御成功ですね、それでは反射ダメージを!」

阿須那
「ふん…」


ウチはタバコを一気に吸い切り、それを携帯灰皿にまとめて捨てた。
そしてモニターには、3%のダメージ表示が…


タイナ
「…3%?」

羽身
「な、何でそんな中途半端な?」

彼岸女
「………」

守連
「だ、大丈夫なの~!?」


ウチは落ち着きながらも血を抜かれる。
一気に気だるさが増し、ウチは一瞬気を失いそうになった。
せやけど、頭を抱えて意識だけは保つ。
さて、どないなるかな?


ラーズ
「それでは、ゲームを続行します! さぁ、ジャンケン開始です!!」


ウチは迷わず適当にボタンを押す。
後は出たとこ勝負やが…


ラーズ
「阿須那さんの勝ちです! それでは選択を…!」

阿須那
「…防御にさせてもらうわ、ちょっとは休まんとな」


ウチはあからさまにフラつきながらそう宣言する。
ラーズはそれを見て冷静に何かを考えとる様やった。
流石に気付いたかな? まぁ、もう遅いけどな!
ロボは、あくまでロボの思考アルゴリズムで動いとるはずや
それなら、もうラーズが何しようが対策は取れんやろ。
そして、それこそがウチの仕掛けた罠…


ビーーーーーッ!!


阿須那
「くっ…!」


ウチは露骨に動きが遅れる。
対して、ロボは途端に最速行動。
ウチがメットに手を付ける前に、ロボハリセンを振り被った。
ウチはそれを見て身を退く…と言うても、椅子の背もたれに寄りかかるだけやが。


ラーズ
「……!?」

守連
「…あ?」

彼岸女
「!!」

タイナ
「……!」

羽身
「!?」


全員が、驚いた顔しとった。
そんな中、ウチだけが笑うとる。
そして、ウチは体を震わして勝利を確信した!
その理由は…至極簡単な事や。


ラーズ
「ハ、ハリセンが千切れ飛んだ!?」

阿須那
「みたいやな~で? ウチの胸に当たったコレはペナルティやんな?」


ウチはざーとらしくニヤついて言う。
ラーズは露骨に口元を震わせながらも、辛うじて笑っとった。
そして、軽く震えながら…


ラーズ
「た、確かに…! ロボには、ペナルティダメージが入ります!」


ラーズがそう言うと、モニターにダメージが表示。
そのままロボの体力は全て削られ、GAME OVERの文字がデカデカと表示された…
ウチはククク…と笑い、腹を抑えて声を我慢する。
大笑いするだけの体力はもう無いわ…疲れるだけや。


ロボ
「ガガガガ…ピーーーッ!!」


そんな断末魔を叫びながら、爆発音みたいなSEを鳴らしてロボは倒れた。
ウチはゆっくりと立ち上がり、ラーズを見てこう言う。


阿須那
「ほな、まずは1勝やな!」

羽身
「い、一体何でハリセンがいきなり!? どんなイカサマ仕掛けたんでっか!?」

彼岸女
「千切れた部分を見れば解るよ…」


彼岸女は解ってたんか、当たり前の様にそう言う。
すると、タイナがハリセンを手に取り何やら納得した顔をした。


タイナ
「成る程、焼き切った訳ですか…阿須那さんの炎で」

守連
「え~!? でもどうやって~? 炎を使ってる様には見えなかったよ~?」

阿須那
「そらそうや、火は出してへんからな」
「あくまで高熱で焼き切ったに過ぎん、それも思いっきり振ったらやっと千切れる位のレベルで調整してな…」


ウチはそう言って足元に転がっとる金具を手に取って笑うた。
コレはハリセンに付けられとった留め具や。
ぶっちゃけ、コレのお陰で勝てた様なモンやな♪


羽身
「な~る、金具越しに熱して焼いたんか!」

阿須那
「このハリセンはプラスチックや、せやから簡単に仕掛けられたで…」


もし紙製やったら、すぐにバレとったやろからな…
そもそも紙やったらあんな仕掛けは出来んけど!
焼いたらそのまま燃え尽きてまうからな~
その点、プラスチックは熔けるだけやから調整も楽やったわ♪


彼岸女
「ふふ、わざわざ大量のタバコで視界と臭いを誤魔化すなんてね…」
「あまりに露骨なんですぐに魂胆が解ったよ」


「や、やるじゃない…私には解らなかったわ!」

ラーズ
「…成る程、解ってしまえば単純明快な仕掛けですね」
「しかし、ロボの自律性を逆利用されるとは思ってもいませんでしたよ!」


ラーズは冷静さを取り戻し、シルクハットの鍔を握って再び笑う。
やれやれ…少しは同様してくれた様で何よりやが。


ラーズ
「イカサマは、バレなければイカサマではない!」
「反則も、審判が認めなければ立派なテクニック!」
「お見事です阿須那さん! 貴女の勝利ですよ!?」


ラーズは大袈裟なポーズを取ってウチを称える。
そして徐にカルラの方を見た。
すると、カルラは孔から蒸気を噴出させる。
それを見て、ラーズは何やら安心した様に1度頷いた。


ラーズ
「主も満足いただいた様で何より!」

阿須那
「あれ、喜んどるん?」

彼岸女
「…多分ね」

羽身
「本当に無口なやっちゃな~」

守連
「………」

タイナ
「守連さん?」


何や、守連がカルラを見て不思議そうな顔をしとった。
守連の事や、アイツがホンマは良い奴なんちゃうか?とか思うとるんやろな~


守連
「…あの人、本当に敵なの?」

阿須那
「当たり前やろ! ウチが殺されかけたんやぞ!?」
「…まぁ、アイツに直接手ぇ出された訳や無いが」

ラーズ
「ふふふ…主は楽しければ勝利も敗北も関係無いのです♪」
「怠惰な主が数少なく楽しいと思える物…それがこの命を賭けたギャンブルですので!」


ラーズはそう言って誇らしげに笑う。
何だで、忠誠心は高いんか?
どうにも、あの主あってこの従者やな…
どっちもロクでもないわ!



「な、何て傍迷惑な趣味!」

羽身
「しかし! ギャンブラー的には燃える展開でっせ!?」

阿須那
「ドアホッ! 一々命賭けとったら身が持たんわっ!」

彼岸女
「確かに、それさえ無ければほぼ無害なんだけどね…」

タイナ
「理解しかねますね…自分は高みの見物で、命のやり取りを秤に賭けさせるとは」


タイナは至極真っ当な感想を述べる。
事実、カルラやラーズは一切リスクがあらへん。
せやのに、こっちは半強制的に命を賭けなあかん。
確かにメリットはあるんやが…


ラーズ
「…成る程、言い分は最もですね」

カルラ
「……シュコ~」


タイナの意見を聞いて何か思う所があったのか、カルラは蒸気を噴出させて何やら頭に両手を当てた。
それを見てラーズは露骨に驚き、狼狽えを見せる。


ラーズ
「カルラ様!? 一体何を!?」

カルラ
「………」


ガコッ!と機械的な音が鳴り響き、カルラはフルフェイスの兜を真上に引き抜いた。
すると、大量の蒸気と共にカルラの素顔がウチ等全員の目に映る。
その見た目はとても麗しく、深紅の長髪がサラリとなびいとった…
間違いなく美人の顔立ちであり、軽くビビる程や。
目は細く、つり目で目付きが悪い。
華澄に似た目付きやな…アイツも大概目付き悪いし。
しっかし、ホンマ気だるそうな顔やな…何考えとんのかさっぱりや!


ラーズ
「…カ、カルラ様が自ら素顔を!? この私ですら、初めて見ると言うのに!!」


あのラーズがここまで狼狽えるとはな…そんだけ、カルラの素顔は秘密やった訳か。
せやけど、ほんなら何でいきなり?
その理由は、ウチには到底解りそうもなかった…


カルラ
「……コレが、私の…リスク」

彼岸女
「…これまで1度も他人に見せた事の無い素顔が、かい?」


カルラは頷く事すらせぇへんかった。
せやけど、肯定のつもりなんは何となく雰囲気で解る。
しっかし、素顔がリスクなぁ~


彼岸女
「…ふぅ、まぁ君の最大限の譲歩だと思っておくよ」


彼岸女はひとりで納得してもうた。
まぁ、アイツは同期の桜みたいやし解らんでも無いか?
ウチ等には何一つ解らんがなっ!


ラーズ
「…それが主の意向であれば、私は何も言いません」
「ですが、勝負は勝負!! もはやこれ以上こちらに敗けは許されません!」
「さぁ、次のゲームを始めましょう!!」


ラーズはそう言って笑う。
ウチはため息を吐きながら体をフラつかせた。
そんなウチの体を彼岸女が支えてくれる。
ウチはもう1度ため息を吐く。


阿須那
「やれやれやな…」

彼岸女
「でも、やらざるを得ない」


その通りや…
ウチ等は退く事なんか出来へん。
最終的に聖を救う…それを最終目的に戦っとるんや。
その為なら、ありとあらゆる犠牲は仕方あらへん。
どんなルールが待って様とも、ウチ等は勝つしかあらへんねんから…










『とりあえず、彼氏いない歴ウン千年のポケモン女が愛する男を救う為に戦う。後悔する暇も無い』



第5話 『阿須那、血を賭けたイカサマ』


…To be continued

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。