第51話 久々の再会

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 ヒトカゲ達が“テレポート”で辿り着いたのは、アスル島の北端にある崖縁であった。

『うおっ!?』

 しかし着地したところの足場が悪く、4人はバランスを崩して危うく崖から落ちるところであった。全員の心臓がバクバクと音を立てているように激しく動いている。

「はぁ、はぁ、で、ここホントにアスル島なの?」

 ヒトカゲが周りの風景を見ながらゼニガメに確認する。彼が初めてアスル島を訪れた時に都会のイメージが焼きついてしまったため、今自分達が見ている草しかない道がアスル島ではないと思わせたようだ。

「そうだよ。アスル島の北端にある名所さ、飛び込みの」
『とっ……』

 ゼニガメ以外のみんなが言葉を詰まらせた。だがよくよく聞くと、ここは自殺の名所ではなく、みずタイプのポケモンが海へ飛び込むための練習場であった。

「そんな事どうでもいいから、早く行こう……っていっても、もう日暮れかけてるしなぁ」
「じゃあ、明日にしましょうよ。でも、何となくここで寝泊りは嫌だわ」

 先程の「飛び込み」という言葉が頭に残ってしまったのだろう、チコリータは野宿するのが怖くなる。どうしようかと悩んでいると、少し渋った声でゼニガメが提案した。

「う~ん、それなら俺の家でも来るか?」

 これには3人も素直に喜んだ。ゼニガメの家でのお泊りが決定すると、一行はゼニガメの家のある、アスル島の中心街から少し南に離れたところにある集落へと向かった。


 約1時間半後、ヒトカゲ達はゼニガメの家に着いた。家を空けることを誰にも言っていなかったため、郵便受けにはペリッパー新聞がわんさか溜まっていた。

「ちょ、ちょっとここで待っててくれ。すぐ部屋片付けるから!」

 そう言うとゼニガメは急いで家の中へと入っていった。だがそれを聞いてはいそうですかと素直に言う事を聞くメンバーであろうか。彼に気づかれないように、ヒトカゲ、チコリータ、ドダイトスの順にゼニガメの家へ上がりこんだ。

(やっべー相当散らかったままだ! 早く片付けないと!)

 部屋を見て愕然としたゼニガメが急いで掃除を始めた。おそらく生きてきた中で1番のスピードで掃除している。そんな彼の後ろで、ヒトカゲ達は部屋を物色していた。

「うわー、この引き出しの中タワシがいっぱい!」
「あら? こっちには湯たんぽがいっぱい」
「おっ、酒だ♪ しかも上物じゃないか」

 ヒトカゲはタワシで遊んだり、チコリータは湯たんぽを整理し始めたり、ドダイトスは開封済みの酒を呑み始めたりと、勝手にやり放題していた。

「お前ら何やってくれてんだ――!」

 ゼニガメが怒るのも無理はない。家の主(正確にはカメックスだが)を無視して部屋の物を物色しまくっているのだから。


 その夜、ゼニガメ達が寝静まった頃にドダイトスは1人起きていた。

(みんな寝てるな……)

 全員が寝ているのを確認すると、彼らを起こさないようにしながらそっとゼニガメの家を出た。そして向かった先は、ゼニガメの家から1番近くにある公衆電話。
 ドダイトスは黙ったまま、自分の鼻先で番号を押す。ちなみにこの世界の公衆電話は少しハイテクで、タッチパネルで番号を押し、ポリゴンが造る電脳ネットワークを介してテレビ電話が出来るという優れものだ。
 そんな電話から鳴り響いた数回のコールの後、誰かが電話に出たようだ。

「俺だ、ドダイトスだ」

 電話の相手を見ながらドダイトスは通話を始めた。その表情は硬い。

「……あぁ、今日アスル島に着いた。明日にでも、『水の勾玉』を手に入れるつもりだ」

 ドダイトスの話は、受け取り方にもよるがこちらの情報を流しているようにも聞こえる。

「もしかしたら、やって来るかもしれん。明日にでもこっちに来てくれないか?」

 相手が「わかった」と返事をすると、彼は2、3言交わして電話を切った。

(いよいよ、か……)

 何かを思いながら、彼は再びゼニガメの家へと戻っていった。


 ヒトカゲ達がゼニガメの家で散々どんちゃん騒ぎをした次の日、気持ちを切り替えて家を後にした。目的は7つ目の勾玉『水の勾玉』を入手することである。

「それでさ、『水の勾玉』ってどこにあるの?」

 ヒトカゲは、自分達の中でアスル島に1番詳しいであろうゼニガメに勾玉の在り処を尋ねる。その質問をされるとゼニガメは歩くのを止め、下を向いた。

「……わかんない」
『えっ?』

 彼は『水の勾玉』の在り処を知らないという。他のみんなはてっきりゼニガメが知っているものだと思いこんでいた。それを察し、申し訳なさそうにゼニガメが理由を話した。

「この島で勾玉の存在を知っているポケモンって、極めて少ないんだよ。俺だって兄さんから聞いて初めて知ったくらいだからさ」

 彼の言うとおり、この島では意外にも勾玉があることを知らないポケモンがほとんどである。知っていそうな者も思い当たらず、どうやって探そうかと4人が頭を抱えて考えていると、少し遠くの方から叫び声のようなものが聞こえた。

「ワニーッ!」
(あれ、この声って……)

 以前どこかで聞いたことのあるような声だとヒトカゲはすぐに感じた。みんなはその声が気になって急いで声のした方へ向かって行った。


「さあ、早くそのオボンの実を渡しな」
「やだっ! これは怪我をしているポケモンにあげるやつなんだ!」
「元は俺達のシマになっていた実だろ? だったら俺達のものだ!」

 ヒトカゲ達が声の主の近くまで行くと、このようなやりとりが聞こえてきた。これを聞いたヒトカゲは、以前全く同じ事が同じ場所であったことを確信した。
 しかもよく見ると、オボンの実を持っているのはワニノコ。相手になっているのはウパーとクラブ。そう、ゼニガメが中心となっていた不良グループだったのだ。

「弱い者いじめってやつか、酷ぇな。俺がガツンと言ってくるぜ!」

 誰が何をしているか見ていなかったゼニガメは、囲まれているポケモンを助けるために駆け足で向かって行った。一体番長の面影はどこへやら、とヒトカゲ達は思ったようだ。

「おい、何いじめなんかやってんだ?」

 草むらからゼニガメが少し格好をつけながら3人の前に立ちはだかった。だが次の瞬間、ヒトカゲ達3人を除く全員が驚くこととなる。

「あぁ? ……って、ば、番長!?」
「は……え、えええっ!? ゼ、ゼニガメじゃん!」
「お、お前らだったのか!?」

 一同騒然となった。ウパーも、クラブも、そしてこの2人を束ねていたゼニガメも、ただただ驚くしかなかった。さらにウパーとクラブは目線をゼニガメの向こうへとやると、そこには以前尻尾の火が消えかかったヒトカゲの姿があった。

「ううう嘘!? あれ、あの時のヒトカゲ!?」
「あ、ああ、そうだよ」

 ゼニガメがさらりと言うと、ヒトカゲ達も彼のところへとやって来た。ヒトカゲの存在にも驚いたようだが、ウパーとクラブはすぐにもっと怖い思いをすることとなる。

『なんでヒトカゲと……ひっ! こ、こ、殺さないでくださいっ!』

 2人が怯えたのは、突如目の前に現れたドダイトスを見たせいである。その体、顔つきだけで2人は腰を抜かしてしまったのである。

(……いいんだか、悪いんだか、どっちにしろ、俺は悲しいぞ……)

 怯えられたことに悲しみを覚え、心の中でドダイトスは少し泣いていた。どうも自分より年下のポケモンに怖がられるようで、最近自分の容姿について気にしていたのだ。
 すっかり身を小さくしてしまったウパーとクラブに、ゼニガメが話しかけた。

「で、何やってたんだよ?」
「それはこっちのセリフだって。いきなりいなくなったと思ったら、その怖~い連中と戻ってきて。今までどこ行ってたんだ?」

 そうクラブに言われると、ゼニガメは今までの事情を全て話した。ヒトカゲが元気になり、ルギアの手がかりを求めて島を回り、勾玉を集めなければならなくなったこと。敵が現れたこと。仲間が増えたこと。そして、自分の兄に接触したことなどを赤裸々に語った。

「……ってなわけで、『水の勾玉』探してるんだ。お前達知らないか?」

 ゼニガメは子分達にきいてみるも、2人ともわからないと言って首を横に振った。

「だよなぁ。やっぱそう簡単に見つかるもんじゃないな~」

 肩を落としながらゼニガメはため息をつく。「焦らなくていいよ」とヒトカゲは声をかけたが、やはり最後の1つということもあってゼニガメは気張っているのだ。
 すると、まだその場に残っていたワニノコが、思いもよらぬことを口にした。

「僕、前に見たことあるよ!」

 まさかこの子供がと全員が目を丸くした。飛びつくようにしてゼニガメがワニノコに詳細を話すように頼み込んだ。

「たまたま遊びに行ったら、きれいな勾玉が飾ってあったんだ。青色でとっても明るくて、手に取ってみようとしたんだけど、届かなかったんだ」
「そ、それで、勾玉はどこにあったんだ!?」

 ゼニガメがワニノコの肩をゆすりながら尋ねると、ワニノコは素直に答えてくれた。だがその答えを聞くと、その場にいた全員がまた驚くこととなる。

「えっと、“アルギロ神殿”の中」

 “アルギロ神殿”というのは、アスル島に存在する神殿の名前で、ヒトカゲ達が勾玉を納めなければならないとスイクンから言われた場所のことである。

「とにかく、行ってみよう!」

 勾玉の在り処がわかり、いても立ってもいられずゼニガメが先頭となってヒトカゲ達はアルギロ神殿へと向かって行った。ウパーやクラブ、ワニノコは突然のことにその場に立ち竦んでいることしかできなかった。

『番長、気をつけて!』

 4人が遠くなった頃に子分2人の励ましがゼニガメの耳に届く。後ろを振り返って小さく頷いて応えると、再びアルギロ神殿を目指して走っていった。

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