第2章 第3話

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読了時間目安:24分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

阿須那
「…ふー!」

羽身
「店長~あんま吸い過ぎん方がええでっせ~?」


ウチは店の中で不機嫌そうにタバコを吸って時間を潰しとった。
既にピークは過ぎて客もおらへんし、別に迷惑にはならんやろ…


羽身
「店長~?」

阿須那
「うっさいなぁ…ほな、外で吸って来るわ!」


ウチはそう言ってタバコを咥えながら外に出る。
エプロン着けたままやったけど、面倒なんでそのまま出たった。


阿須那
「クソッタレが…結局、何の進展もあらへんかったし」


フラグもクソも無く、ウチは街から出れへん。
そして、何となく予想した…多分ウチはこの街から出る必要は無い、と。
この世界のクリア条件は、もっとシンプルかつ解りやすい条件なんやろ。


阿須那
(確信は無い、せやけどここ2年で考えられる事は全部やったはずや)


ウチもアホやない、ここまでにやれる事はやったつもりや。
せやけど、それでもボスは出て来うへんし、それっぽいイベントも無い。
それこそ、ループしてんのちゃうか?と思う位平穏な毎日が繰り返されたんや…

ウチは足元に灰を捨て、再びタバコを咥える。


阿須那
(もしかして、ウチひとりじゃ解決出来へん条件なんか?)


それなら合点は行く。
そもそも今までのウチは、自分ひとりで何とかしようとしか思うてへんかった。
この世界の人間やポケモンが設定されただけのモブなんやったら、そもそも協力しようとも思わんしな。


阿須那
(せやけど、ほんならどうやって攻略する?)


ぶっちゃけ、クリア条件自体が不明なんや。
ウチひとりで無理なんやったら、誰を利用すれば良い?
思い付く限りで真っ先に浮かぶ顔は…


阿須那
「あのアホしかおらんか…」


ウチがこの世界に辿り着いてすぐに知り合うたアホ。
途方に暮れてたウチに仕事を与え、相棒としてずっと付き合うて来た女房役や。
それが、結果的にモブやったとしても…ウチは利用せなアカンのかもしれへん。


阿須那
(クソッタレが…! 胸クソ悪いわ!)


羽身の事は別に嫌いやあらへん。
むしろようウチに懐いてくれるし、料理の腕も努力した。
アイツはウチの一番弟子であり、本来誇るべき存在なんや。

アイツの事は…この2年でよう解っとる。
短い間かもしれへんけど、それでもウチ等は互いに信頼しとるはずや…
少なくとも、仕事に関しては。


阿須那
(…この時点で、敵の術中か)


ウチは短くなったタバコを握り潰し、残らず灰にする。
パラパラとウチの手から灰が落ち、それ等は風に乗って北新地の街並みに消えて行った…
そして、ウチは決断をする事にする。



………………………



阿須那
「………」

羽身
「あ、店長! ええ所に…」

阿須那
「…何や?」


ウチはまだ不機嫌そうな顔でそう応対する。
羽身はやや呆れながらも、何やらテーブルにウチを促した。
するとそこには、見た事の無い奇っ怪な誰かが椅子に座っとる。
ウチはその姿を見て、明らかに表情を変えた事やろ。
それ位、ソイツの異質さはウチの感情に火を点けた。


阿須那
「…ようやく、フラグ成立か!?」


「さて? 正直に申しますと、そろそろ我が主が飽きて来ていますのでね…」


その声は明らかに男の声で、奇っ怪な服装に違わず人を食った様な口調やった。
姿を一言で言うなら、まるでピエロか奇術師か…
白、黒、紫の配色で割り振られた服は異様な出で立ちであり、どう考えてもこの世界観には不釣り合い。
頭には紫のシルクハットを被っており、目元には大きなサングラスを付けとった。
身長は170cm前後やが、背中から生える紫の両翼は鳥ポケモンの証明…
どう考えても、イベント進行やとウチは結論付けた。


謎のピエロ
「まず、自己紹介からさせていただきましょうか?」
「私の名は『ラーズ』…種族は『フリーザー』でございます」


ピエロはスッ…と立ち上がり、そう言って礼をする。
いかにもって感じの佇まいであり、明らかに挑発的な態度やった。


阿須那
「…フリーザーやと? そんな悪趣味な色したフリーザーがおるんか?」

ラーズ
「見た目だけで全てを判断する…愚かな判断基準と言えるでしょう」

阿須那
「…仮にそうやとして、アンタからは冷気のひとつも感じへんのやがな?」


ウチがそうツッコムと、ラーズはサングラスの置くにある瞳を青く光らせる。
その瞬間、ウチはゾクッ!と背筋を凍らし、全身から冷や汗をかき始めた…
それを見たラーズはフフフ…と笑い、口元に手を当てて微笑する。
端から見てた羽身は意味不明にオロオロしとるな。


ラーズ
「ご理解頂けた様で何よりです」

阿須那
「用件は何や!? ただ挨拶に来ただけか!?」


ウチはバンッ!と側のテーブルを叩き、歯を食い縛って威嚇してみせる。
こんなイロモノに怯んでられるか! ボスなんやったら叩き潰したるで!?
しかし、意気込むウチとは裏腹にラーズは軽く笑い、肩を竦ませてしまった。
そして目の前で右手を掲げ、人差し指だけを立てて…


ラーズ
「チッチッチ! 言ったでしょう? 我が主はもう飽きているのです…」
「いい加減駒も揃った事ですし、そろそろゲームを開始しませんか?」


ウチは?を浮かべてラーズを見る。
何の事かおおよそ検討付かへん。
主? 駒? ゲーム?
これ等が示してる答えは…何や?


阿須那
「主…主やと!? まさか、この世界には他にボスがおるんか!?」

羽身
「て、店長?」

ラーズ
「意外と察するのが遅いのですね? もっと切れ者かと思ったのですが…」

阿須那
「ほんなら何か!? アンタはただの中ボスっちゅう訳か!?」


ウチが熱量を上げて強く威嚇するも、ラーズは何一つ冷静さを崩さない。
むしろバカにした様な笑みで肩を震わせており、癇に触る態度や!
ウチはそれを見て頭をクールダウンさせる。
このまんまコイツのペースに乗せられるのは癪や。
罠でも何でもええ…今は、ひとつでも手がかりを得なアカン!


ラーズ
「…とりあえず、今回は顔見せだけです」
「そちらにやる気があるのでしたら、明朝『神風』にお越しください」

阿須那
「神風やて? 何処の事や…!?」

ラーズ
「それ位は自分で調べてください、それでは…」


ラーズはそう言ってその場で回転を始め、霧を撒いたと同時に姿を消してしもうた…
一体どういう原理や!? あれも技か!?
アイツ、ホンマにフリーザーか? 何や全然共通点が見当たらんで…


阿須那
「…神風、ねぇ」

羽身
「神風言うたら、南の方にあるサ店でっせ?」

阿須那
「知っとるんか?」

羽身
「詳しくは知りまへんけど…そういう店があるってのは」


っちゅう事は、少なくとも突然湧き出た施設や無いいう事か。
ほんなら、突撃あるのみやな!


羽身
「て、店長…あのいけすかへん客、何なんでっか?」

阿須那
「…アンタには関係あらへん、気にすな」


ウチは素っ気無くそう言い、羽身には関わらせない様に促した。
どの道、モブの羽身はもうここまでや。
こっからはウチの戦い…! さっさとクリアして先に進んだる!!


羽身
「…気にすな、でっか」
「それ、ホンマに言うとんでっか?」

阿須那
「あたりきしゃかりきコンコンチキや!! これはウチに売られたケンカや!」
「部外者のアンタは引っ込んどれ!」


ウチはワザとそう言うて突き放す。
羽身が関わる必要は無いんやし、モブはモブらしくテンプレ回答しときゃええんやから…
しかし、ウチが思うてた事とは裏腹に、羽身はズカズカと前に出てバンッ!と強くテーブルを叩いた。
ウチは少々驚くも、羽身はプルプル震えながら右手に何かを持っており、どうやらそれをテーブルに叩き付けたみたいや。


羽身
「何が部外者やアホタレ!! ここまで一蓮托生、ふたりで生きてきたんやんか!?」
「それなんに、阿須那はんひとりのケンカかっ!?」
「阿須那はんに売られたケンカは、ウチのケンカでもある!!」
「大切な相方扱き下ろされて、黙っとれるかい!!」


羽身はそう言って右手に湯呑みを持ち、左手からサイコロをふたつ出した。
ウチはそれを見て思わず目を細める…そして、羽身はウチにこう啖呵を切る。


羽身
「この『綿鍋 羽身(わたなべ はみ)』! 阿須那はんに勝負を申し込みまっさ!!」

阿須那
「はぁ? 何でそないな事をせなアカンねん!?」

羽身
「ウチのプライドの問題や!! その代わり、ウチに勝ったらもう何も言わん!!」
「せやけど、ウチが勝ったら絶対付いてくかんな!?」


何で、羽身がそこまで入れ込むんかウチには理解出来へんかった…
羽身は所詮、ゲームを彩る一介のキャラでしかないはずやのに。
何で、そこまでしてウチに関わろうとするんや?
これも…設定されてる挙動なんか?
ウチは頭がグチャグチャになりそうな程思考する。
せやけど、今はそんな事にゴチャゴチャ言うのは無駄や。
勝負やったら…やったるわい!!


阿須那
「…ルールは何や?」

羽身
「サイコロふたつ同時に振って、強い役出した方が勝ちや!」
「面倒な役は無し! 役はゾロ目のみで、基本数字が高い方が勝ち!!」
「せやけど、六・六に対してのみ一・一が勝つ事にしますわ!」

阿須那
「ゾロ目以外は?」

羽身
「一・二が最弱! 五・六が最強!!」
「3本勝負でどないでっか!?」

阿須那
「…ええやろ、ほんなら!」


ウチはドカッ!と勢い良く椅子に座り、足を組んで右肘をテーブルに立てた。
そのまま右手を顎に当て、ウチは羽身にメンチを切る。
そしてウチは脅しをかけてこう言うた…


阿須那
「さっさと席に着いて振れや? 先行は譲ったる!」

羽身
「…分かりましたわ、ほな先にやらせてもらいます!!」


羽身はそう言ってドカッ!と音を立てて椅子に座る。
まるでウチの真似をするかの様に、真剣な眼差しでサイコロを取って湯呑みの中に入れた。
そしてカラカラカラッ!と念入りに湯呑みを振り、ウチは冷静に成り行きを見る。
やがて羽身は勢い良くバンッ!と湯呑みを逆さまにしてテーブルに叩き付ける。
さて…出てきた数字は?


阿須那
「…っ!?」

羽身
「三・三のゾロ目! 役完成や!!」


ウチはかなり注視して見とった。
少なくともイカサマをした様には見えん。
もしかしたらサイコロにイカサマがあるんかもしれへんが…


阿須那
「………」


ウチはサイコロを手に取り、手触りや重さを確認した。
至って変哲も無いサイコロや…ホンマに何処にでもある、間違いなくただのサイコロやな。
と、なると…このアホ、ホンマに運がツイとるんか!?


羽身
「どないしたんでっか? 何かサイコロに問題でも?」

阿須那
「疑うのが普通や…1発目から何でゾロ目が出せんねん!」


ウチは次に湯呑みを見る。
どっちも用意したんは羽身や、何かあるかもしれへん。
しかし、この湯呑みは普通に客に出す湯呑みのひとつであり、イカサマの類いは何も見付からんかった…


阿須那
「ちっ、ただの運か…」

羽身
「当たり前や! ギャンブラーの名に賭けてイカサマなんてせぇへん!!」


何がギャンブラーや! ただのパチンカスやろがい!!
ウチは少々イラつきながらも、サイコロを湯呑みに入れ念入りに振った。
そしてバンッ!とテーブルに叩き付け、ウチは湯呑みを上げる。


羽身
「二・四の六…! 1本目はウチの勝ちでっせ!?」

阿須那
「ふん…こないな偶然か何度も続くかい!」
「次や! さっさと振れ!!」


ウチは言葉を荒らげてそう促す。
羽身は特に怯む事も無く、サイコロを湯呑みに入れて振り始めた。
その顔は冷静沈着であり、見た事の無い位集中力を高めた羽身の顔や。
コイツ…そこまで本気でやっとるんか?


羽身
「一・一!! またもや役成立! しかもピンゾロや!!」

阿須那
「ちょ、ちょっと待てや!? 流石におかしいやろ!?」

羽身
「おかしい事ありまへん! ちゃんとサイコロアプリでやっとるからマジです!!」

阿須那
「メタ発言止めぇ!! ウチが哀れになる!!」


(ホントにマジで運です! 作者がビビる位!!)


阿須那
(クソッタレ…連続ゾロ目やと?)


どう考えてもツキがおかしいやろ!?
確かにアイツはパチンコでも大負けした事は1度も無い。
せやけど、こうやっていざタイマンしたらコレか!?
コイツの運は…神の力でも受けとんのか!?


阿須那
「いや…まだや! 運は所詮運! ウチかてゾロ目が出るかもしれへん!!」


ウチは希望を込めて湯呑みを振る。
負ければその場で終了…そんな情けない事出来るかい!
頼むでサイコロちゃん!?


バンッ!


阿須那
「………」

羽身
「………」

阿須那
「……」

羽身
「……」

阿須那
「…ふっ」

羽身
「…二・三の五でんな」


ウチはあっさり燃え尽きた…
もう何なん~!? この微妙に1個だけ外しました感は~!?
せめてどっちかズレェや!! そしたらドラマチックに勝ってたやん!!


羽身
「いやぁ~ツイとったわぁ~♪」
「流石はウチ! やっぱ神様は見とるんやな~!」

阿須那
「納得いかへん…!」

羽身
「な~に言うとんでっか!? 負けは負け!!」
「勝負はウチの勝ち! 文句は言わせまへんで!?」


ウチは一気にやる気が無くなり、テーブルに突っ伏して脱力した。
もうどうでもええわ…好きにしたらええねん。
そもそも、コイツがいようがいまいが戦力にならんやろし。


阿須那
「…最後にひとつだけ言うとくぞ?」
「身の丈に合わん賭けは絶対にすな…せやないと、次は命落とすで?」

羽身
「…ウチは賭博師、ギャンブラーでっせ?」
「引き際は心得とります…安心してくれなはれ!」
「だってウチ…阿須那はんの弟子やもん♪」


ウチはこの時、少しだけ救われた気がした。
そして、胸の中にあった突っかかりがようやく消えたのを理解する。
もう、モブやろうが何やろうが、構へん…
このアホは、ウチの一番弟子で…ただのパチンカスや。
それ以上でも、それ以下でも…あれへん。



………………………



阿須那
「………」

羽身
「阿須那はん、まだ起きとる?」

阿須那
「…何や?」


ウチ等は、既に真っ暗な部屋で互いに布団を並べて寝とった。
窓からは月明かりが差し込んどり、夜にしては明るい。
ウチは体を横にしながら、背中越しに羽身の言葉を待った。


羽身
「…阿須那はんが、別の世界のポケモンって、ホンマなんですよね?」

阿須那
「…ああ」

羽身
「この街に閉じ込められて、そこから出る為にあのけったいなグラサンと戦うんでっか?」

阿須那
「それがウチの目的や…ようやく、見付かったんや」


ウチは布団の中で拳を握る。
あのピエロの後ろにおるボスがどんなんかは知らん。
せやけど、何がなんでも勝たなアカンねや!
守連や華澄、女胤たちも同じ様に戦っとるかもしれへんねんから…


羽身
「…ほな、それに勝ったら阿須那はんは」

阿須那
「この世界から出て行く、それは決まっとる事や」
「ウチには果たさなアカン目的がある、その為にこんな世界で足踏みはしてられへんねや」

羽身
「そう、でっか…」


羽身の声は、弱々しかった。
一瞬何かを言いかけた様な感じやったが、それ以降羽身が言葉を放つ事は無かった。
ウチも目を瞑り、しっかりと明日に備える。
決戦や…! 2年分の鬱憤、全部ぶちかましたる!!



………………………



一方その頃…



「彼岸女、もう無理よ!! この化け物、○ヤングの○タマックスまで食い付くしたわ!?」

彼岸女
「くっ…あれだけの物量をひとりで!」

守連
「はふ~! とりあえず満足~♪」

タイナ
「えっと…この4184kcalって、何の単位なんでしょうか?」

彼岸女
「…いわゆる、エネルギーの単位なんだけど」
「それが大きければ大きい程、単純に物量もあると思ってくれれば良いよ」


「ちなみにそれは通常のサイズの約7.3倍よ!!」


どう考えても普通に食える量じゃないっての!!
流石の守連ちゃんもあれならひとつで満腹になるかな?って淡い期待抱いた結果がコレだよ!?
結局、アレ+α食べてようやくなんだから、本気でストックがヤバイ!!
は、速くカルラ見付け出して叩き殺さないと…!


…と、今夜も食料事情で賑わうのであった。



………………………



阿須那
「…さて、行くで!?」

羽身
「了解です! いざ行かん!!」


ウチ等は普段着で外に出て喫茶『神風』に向かう。
ここからやと少しかかるか? 南の端の方らしいからな。
ちなみにウチの服はお気に入りの赤いロングコートに紺のズボン。
羽身は動きやすそうな緑の革ジャンに黒のジーンズや。
背中にはリュックも背負っており、食料やら水やらが入っとる。
…遠足やないんやけどな。


阿須那
「やれやれ…頼むからウチの邪魔だけはすなよ?」

羽身
「心配せんといてください! ウチは絶対に足手まといにはなりまへん!」


コイツの自信はどっから出て来るんや?
そもそもウチはコイツの戦闘力とか知らへんし、バトルに関しては一切ノータッチやったからな…
まぁ期待もしてへんし、その辺はウチがひとりで何とかしたらええやろ。

ウチはそう考えながらも、15分程を南に向かって歩き続けた。



………………………



阿須那
「…ん? 何や騒がしいな」

羽身
「ん~? あっちは…河川敷か~堂島公園の方ですわ」


羽身が指差したのは、とある公園の河川敷。
そこには人だかりが出来ており、何やらザワついとった。
ウチはそこに注目し、そして絶句する。


羽身
「あ、そういや今日大食い大会や! ほら、前に阿須那はんに勧めた」


ウチはその時の事を思い出し、ああ…と答える。
しかし既に、ウチの頭にはそんな事なんかは軽く吹っ飛ぶ程の事態がそこでは繰り広げられとった。


実況
「おーっと!? ピカチュウの『雷文(らいもん)』、ここで更に記録を伸ばす!!」
「もはや独走態勢かぁ!? しかし、ホシガリスの山田もまだ諦めていない!!」
「今日の大食い大会女性部門はまさかのダークホース登場に大荒れだーーー!!」


ウチは頭抱えた…こんなアホな事あるか?
いくら何でもギャグやろ? 何でこないな所にアイツがおんねん!


羽身
「うわスゴッ! あの娘お好み焼き10枚も食べてるやん!!」
「制限時間は後15分か~こらえらい記録出るで!?」


羽身の言う通り、アレは相当な記録らしく会場は大盛り上がりやった。
それもそのはず、ただでさえ女性部門やのにあの見るからに重いお好み焼きをパクパク食べていくんや…
しかも、およそ大食いに縁の無さそうなピカチュウがリード。
色んな意味で大注目やろな…


実況
「残り時間は後5分! 雷文は既に13枚目だーー!!」
「山田はこれで12枚! 追い付けるかぁ!?」


さしもの雷文も限界が近いんかペースが明らかに落ちとる。
対して山田はまだ若干余裕がありそうやった。
苦戦する雷文の姿を見かねてか、外野から声援が送られる…


外野A
「後少しだ、諦めるな!!」

外野B
「賞金は目の前よ!? 負けたら明日は無いのよ!?」

外野C
「頑張ってくださーい!」


その声援を受け、雷文は苦しそうにしながらももう1枚を食い切る。
そしてその瞬間、時間切れのブザーが会場に鳴り響いた…


実況
「そこまで!! 雷文14枚! 山田13枚!!」
「勝ったのは、雷文 守連だーーーー!!」


見事優勝した雷文 守連は賞金を受け取る。
苦しそうながらもその顔は幸せそうであり、頬を膨らませて涙目に微笑んでいた…
ほうか…満足か。


阿須那
「って、ええ加減にせえやあのアホ!!」

羽身
「えっ!? と、突然どないしたんでっか!?」


ウチは一気に走り出し、河川敷の坂を下って会場になだれ込む。
何事かと外野に注目されるも、ウチは無視して守連の側まで走ってこう言うた。


阿須那
「守連!! アンタこんな所で何やっとんねん!?」

守連
「あぶぇ!? あぶばぢゃん!? ぼうじべごごび!?」

阿須那
「飲み込んでから喋れ!! 汚いやろ!?」


ウチは1歩退きつつ、守連が落ち着くのを待つ。
すると守連はコップの水を飲んで一気に口の中の物を飲み込んだ。


守連
「ぷはぁ~! 美味しかった~満足~♪」

阿須那
「満足~♪やないわ!! アンタ、いつからこの世界にいてん!?」

外野A
「それは私から説明するよ…」
「とりあえず、見付かって良かった」


謎の肌黒いロングコートの女がそう微笑み、ウチは?を浮かべる。
どうやら、訳有りみたいやな…



………………………



阿須那
「ほうか…! ほんならアンタが聖を拐って殺したんか!?」

彼岸女
「…否定はしないよ、殺されても文句は言えないからね」


ウチは、彼岸女と名乗るフーパの女から話を聞き、既に激昂していた。
そらそやろ…! 聖を拐っておきながらあまつさえ殺害やと!?
そんなふざけた事しといて、仲間面しよう言うんかい!?


守連
「…阿須那ちゃん」

阿須那
「アンタは悔しゅうないんか!? 何で平気な顔して一緒におれんねん!?」


「少し黙りなさい…耳障りよ」


ウチはああ!?と小さな少女相手に威圧する。
しかしその少女は一切怯む事無く、ウチに対してつまらなそうにこう告げた。



「彼岸女は私が選んだわ、聖を救う為に」

阿須那
「何やそら!? アンタ一体何やねん!?」


「夢見の雫…その正体と言えば少しは理解出来るかしら?」


少女は事もあろうにそんな事を言い出す。
ウチは完全に呆れており、そんなバカな…という顔をした。
少女はため息を吐き、面倒そうにこう続ける。



「私は夢見の雫として聖と共にあった」
「だけどその聖が消滅し、器である雫も消えた…」
「私はその時外に解放され、生き残る為に彼岸女を宿主として選んだのよ」
「聖を復活させるその日まで、ね…」

阿須那
「…! ほんなら、聖を甦らせる方法を知っとるんか!?」


「さぁ? それは彼岸女の夢次第ね…」
「彼岸女が本当に心の底から聖君を愛して、そして救いたいと願うのであれば…」
「私はその夢を対価に奇跡を起こせるわ」


少女に迷いは全く感じられなかった。
そしてウチは何となく察する。
この少女が嘘を吐いて無い、と。
この少女が持つ独自の神秘性を持った瞳は、確かに夢見の雫を思い出させる。

そして、それが持つであろう大いなる力も。


タイナ
「阿須那さん、今は信じてあげてもらえませんか?」
「私は、彼岸女さんのお陰でこうやって存在しています」
「彼女が願ってくれたからこそ、私はその優しさに助けられたのです」


そう言って、後頭部から触手みたいな手をウチに伸ばす謎のポケモン。
ウチは唇を噛み締め、今はこの状況をどうにかする策を考えた。
この出逢いは、正しく渡りに船…
そして、ようやく理解した…駒が揃ったという意味を。

ラーズは、守連たちの存在を確認した上でウチに会いに来たんや。
そして、そろそろ決着を着けよう…と。
つまり、この4人で戦えいう事か。
ウチは目を瞑り、拳を握って熱量を上げる。
その後、目をキッと見開いて彼岸女を真っ直ぐ見た。
彼岸女にも迷いは無い、覚悟は決めとるいう事か。
ほんなら…ウチは。


阿須那
「…今は、受け入れたる」
「せやけど、ちょっとでもおかしな事したら背中から焼き尽くすで!?」

彼岸女
「好きにしなよ…私がやる事はどうせ変わらない」
「聖君を救う…これだけは、死んでも変えない!」

守連
「うん…阿須那ちゃん、一緒に戦ってくれる?」


ウチは差し出された守連の手を、優しく握った。
守連の体は以前よりも大きくなっており、更に逞しくなっとる。
守連も…苦労したんやろうな。


タイナ
「阿須那さん、私も微力ながら手伝わせてもらいます♪」


ピンクの女性もそう言って手を重ねる。
その後、無言で雫の少女が手を添えた。


彼岸女
「………」


「ほら、何やってるのよ?」

守連
「彼岸女さん…?」

タイナ
「今更、躊躇う事ですか?」

阿須那
「やりたくないならかめへんで! ウチ等だけでも聖は救うさかい!」

羽身
「あっ、じゃあウチがお先に~♪」


そう言って羽身が楽しそうに手を重ねる。
このアホ…何混ざっとんねん!?
とはいえ、守連たちはニコニコ笑っとる…まぁ、ええか。


彼岸女
「分かったよ、今更だしね…」


そう言って彼岸女は手を上に重ねた。
その後は無言で時間が過ぎる。
それぞれ、色んな思惑や目的はあるやろ。
せやけど、家族ならコレだけは一貫しとる。


阿須那
(聖を救う! 何がなんでも!!)


こうして、ウチ等は新たな仲間と共に神風を目指す。
果たして、そこにはどれだけの敵が潜んでいるのか?
そして、ラーズの言っていた主とはどれ程の強さなのか?










『とりあえず、彼氏いない歴ウン千年のポケモン女が愛する男を救う為に戦う。後悔する暇も無い』



第3話 『巡り合い、そして新たな結束』


…To be continued

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