第4話 ハウの試練

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 開始の合図とともに、アシレーヌが動く。
 ……速い。

「ピカチュウ、いくよっ! "10万ボルト"!!」
「ピカッ!!」

 ボクは、身体中から電気を放った。
 ……だが。

「レェッ!」
「なっ……!」

 アシレーヌは高く跳び、電撃を避けた。
 ……やっぱり島巡りをしただけの力はある。アシレーヌ……強いっ……!

「っ、ピカチュウ! もう一度"10万ボルト"!!」
「ピ、ピカ……!」

 もう一度、アシレーヌに向かって10万ボルトを放つが……。やはり、避けられてしまう。

「うっ……。当たらない……」
「ピ……」

 このまま10万ボルトを打ち続けても、一方的にボクの体力が無くなるだけだ。何か決定的な攻撃をしなければ……。
 ……と、その時。

「アシャッ……!!」

 アシレーヌがこちらを向いた。恐らく、技の構え……!
 避けないとっ……!

「アシャレェェェエエヌッ!」
「避けてピカチュウっ……!」
「ピッ……!!」

 ボクは必死に走り、避けようとするが――アシレーヌの放った水の攻撃は……ボクの身体に命中した。

「ピカチュウっ……!!」
「キュッ……」

 ボクは、正面から来た水流に耐えきれず、地面を引きずった。

「ピカチュウ、大丈夫っ……!?」
「ピ、ピカ……!」

 ……なんとか持ちこたえた。

「今のはハイドロポンプだねー。アシレーヌ、ユウたちはまだバトル初心者なんだから、やりすぎちゃダメだよー!」
「レェヌ……」

 アシレーヌがボクの元にやってきた。

『やりすぎちゃったみたいね……ごめんなさい』
『いえ、大丈夫です。これがバトルというものなんでしょうし』
『これがトラウマになったら困るから、いつもは手加減してるんだけれども……』

 けれども……? なんでボクの場合は違かったのだろう……?

『あなたとは……正々堂々ぶつかり合いたかった……みたいな?』
『正々堂々……?』
『偽りのないあなたを知るためには、正々堂々ぶつかれば分かるかな……と。……でも、ちょっとハメを外しすぎちゃったみたいね……』

 ……なるほど。技はクリスマスの奇跡のおかげでピカチュウのようなものになっているけど……。ボクも、"本当のボク"で正々堂々ぶつかりたい……!!

「ピカ! ピカピーカッ!!」

 ボクは、バトルの態勢に戻った。

「まだいけるのね、ピカチュウ……!」
「ピカァッ!」
「レヌ……!」

 ボクの全力で……ぶつかるっ!!

「ピカチュウ! "10万ボルト"っ!!」
「ピカッ……!!」

 ボクは高く跳び上がる。
 10万ボルトでは、すぐに避けられてしまう。それなら……!

「ピカァァァァァァアアアアアアアッ!!!」

 ボクは、天に向かって叫んだ。ボクの周りに暗雲が立ち昇る。
 自身の身体から電気をバチバチと放電し……。
 大きな"雷"を起こすッ……!!

「ピィィィカァァァァァァキュゥゥゥゥゥゥゥウウウウウッ!!」

 空から、とても大きな"雷"をアシレーヌ目がけて叩き込んだ。
 ……膨大な力を放ったボクは、地面に落ちた。

「ピカチュウっ!!」

 ユウちゃんが駆け寄ってくる。

「ピ……カ……!」
「ピカチュウ、凄いよ! 今の技、かっこよかった……!」
「ピカァ……!」

 ボクは、ユウちゃんに微笑んだ。
 ……前を見てみると、そこにはダメージを受けたアシレーヌがいた。

『お疲れ様、ミミッキュ。あなたの全力、見せてもらったわ……!』
『アシレーヌさん……!』
『これなら、島巡りも大丈夫そうね!』

 と、バトルを見ていたガオガエンとジュナイパーもこっちに寄ってきた。

『凄かったぞ、ミミッキュ!』
『島巡り……頑張ってくださいね』
『ガオガエンさん……! ジュナイパーさん……! ありがとうございます!!』

 ハウもボクたちの元へ歩いてきた。

「試練、お疲れ様ー! すっごくいいバトルだったね!」
「ありがとう……!」
「このピカチュウすごいよー! "かみなり"を使えるなんてー!」
「かみなり……あぁ! あのすっごい技!!」

 そうか……。ボクは、"かみなり"を使えるようになったんだ……!

「これから、頑張ってねー! おれも、応援してるよー!!」
「ありがとう、ハウ!」
「試練は終わりましたかな?」
「じいちゃん! うん、すっごいバトルだったよー!」

 島キングのハラさんが戻って来たようだ。

「ふむ……。本来なら、ここでアシレーヌZやガオガエンZ、ジュナイパーZを渡すのですがな……」
「ぜ、Z……?」
「Zクリスタルって言うんだよー! これとZリングがあれば、Zワザを出せるんだ!」
「Z……ワザ……!」

 ……ふと、ボクは地面を見た。
 あれ? あそこになにか光り輝くものが……。

「……ん? そこにあるのは……輝く石……!」

 ハラさんがその石を手に取る。

「ユウさん、少しばかり待っていただけますかな?」
「は、はい……」
「Zリングが作れるよー! やったねユウ!」
「そうなのっ!? やったぁーっ!!」
「守り神、カプ・コケコがお主らを気に入ったのかもしれませんな!」

 ……もしかしたら、これもクリスマスの奇跡のおかげ……?
 いや、これはボクとユウちゃんの"絆"のおかげかもしれない。

「明日になったらこの石をZリングにして返しますぞ」
「ありがとうございます、ハラさん……!」

 これでZワザが……! ……いや、Zクリスタルがない。

「じいちゃん、Zクリスタルどうするー?」
「うむ……あいにくピカチュウZは持っておらぬ……」
「……大丈夫です。島巡りで集めますから」
「ごめんねー、ユウ」

 Zワザを打てるようになるのは、まだ先のようだ。……まあ、ピカチュウZをもらっても、どうせ打てはしなかったのだが。





 一旦ハウたちに別れを告げ、リリィタウンを後にした。
 明日にならないとZリングは貰えないので、ボクたちはポケモンセンターに泊まることにした。

「初めてのポケセン! まずはあなたを回復しないとね、ピカチュウ!」
「ピカー」

 ボクたちは、ポケモンセンターの中へ入った。

「お疲れ様です、ポケモンセンターです」
「ピカチュウの回復をお願いします」

 ……厄介なことになる前に、ボクはジョーイさんに光線を浴びせた。

「それでは、一旦ボールの中にピカチュウを入れてください」

 言われたとおりに、ボクはボールに入る。そういえば、今まで連れ歩いていたからボールに入ったのは初めてかもしれない。
 ボールの中は、意外と快適だった。

「それでは、ピカチュウをお預かりしますね」

 中からはよく見えないが、回復装置の中に入れられたようだ。
 ジョーイさんがボタンを押すと……。
 わぁ凄い。疲れが一気に吹き飛んだ。

「お預かりしたピカチュウは元気になりましたよ!」
「ありがとうございます、ジョーイさん!」

 ボクは、ボールから出た。

「やっぱりピカチュウといつでも一緒にいたい!」

 ……ボールに入るのは、極わずかになりそうだ。

 ボクたちはジョーイさんから鍵を借り、ポケモンセンターにあるトレーナー用宿泊所に向かった。

「ポケセンって便利だよねー! 回復できるし、泊まれるし、ご飯も買えるし!」
「ピッカ!」

 ポケモンセンターは、トレーナーには欠かせない存在だろう。



 次の日。ボクたちはハラさんのところへ行った。

「ユウさん、これがあなたのZリングですぞ」
「……! ありがとうございます……!」

 白く輝くZリング。早速つけてみると……ユウちゃんにピッタリだ。

「わぁっ! すごい……!」
「……ユウ。お主はいいポケモントレーナーだ。これからも頑張るのですぞ!!」
「ありがとうございます! 頑張ります……!!」

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