第5話 ~はついらい だいくせん~

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読了時間目安:22分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

主な登場人物

 [シズ:元人間・ミズゴロウ♂]
 [ユカ:イーブイ♀]

前回のあらすじ
救助隊キセキを結成したシズとユカ。チークの手引きによって早速初依頼へ挑戦することになるが、ほかの救助隊はキセキの受けた依頼が未経験者には難しいと不安に思っているようだ。しかしそんなことは知らない二匹は……どうなることやら。
「……うわぁ、暑そう。」
「みずタイプのキミが頼りになりそうなダンジョンだね。うん……」

チークの地図に従って、"炎の洞窟"までやってきた救助隊キセキ。洞窟の外側からみただけでも、地面の穴から炎が吹き出したり、たくさんのかがり火が立てられていたり……とにかく温度が高そうだ。

「……ユカ、ホントに突入するの?」
「水筒に水……よし、入ってる。……覚悟を決めよう。きっとチークは、ワタシたちでも達成できる依頼を選んでくれたんだ。油断しなければ大丈夫だよ、多分。」
「"多分"って言わないでよ……不安になっちゃうからさ……」

二匹は固唾をのみ、そしてしばらく顔を見合わせ……決意が固まると、洞窟の中に入っていった。依頼の内容は、"あついいわ"30個の回収。きっと達成できる。

……突入して早々、シズたちはポケモンに出くわす。

「"ブビィ"だ……600度の体に触るとヤケドじゃ済まないよ。臆病ではあるけど……」
「不思議のダンジョンじゃそんなのアテにならないしね……うん、聞きたくなかった。」

幸いなことにブビィはこちらに気づいていないようだ。二匹は、そいつのそばを通り抜けてしまうことにしたが……その途中で、"カチリ"といった、岩だらけのこの場所にそぐわない機械的な音が鳴り響いた。

「わっ、罠だ!!」
「ええっ!?」

この音が、不思議のダンジョンに仕掛けられているという罠の作動音であることに気がついた二匹は身構える……が、しかし、何も起こらない。

「……シズ。これ、"ふしぎなゆか"だよ。」
「"一時的に変化したポケモンの能力が元に戻る"……ってやつ?びっくりした……」
「そう、それ。チークからいろいろ聞いててよかった。……あ。」

引っかかった罠が……仕掛けが無害な存在でよかった。そう思ったのも束の間、今の騒ぎでブビィがこちらに気づいてしまった。

「や、やばい……アイツの特性次第では……」
「触ったらあぶない……でも、ワタシたちには遠くから攻撃できる方法がない……」

シズたちは身構えるが、しかし対抗手段なんて持っていない。こちらが使えるワザば"たいあたり"1つだけ。二匹とも思考を巡らせる……そうしている間にも、ブビィは少しずつ近づいてきている。

「……一か八かだ。やったことないけど、試せば"みずでっぽう"ができるかもしれない!」
「ほのおタイプのブビィに効果は抜群だけど……よし、それしかなさそうだね。やってみてよ!」

……自分の、"みずでっぽう"へのイメージに従ってやってみれば、なんとか繰り出せるかも知れない。まずは大きく、息を吸い込んでみる。その空気を利用して、うまいこと水を吐き出せれば……こうだ。水の出し方が……分かったかも知れない。

「すぅーーっ……"みずでっぽう"っ!!」

やった……出せた!シズの口から飛び出した水の弾丸は、彼のイメージしたとおりの軌道を通ってブビィに命中する。

「あたった!……けど倒れてないよ、シズ!」
「じ、弱点のはずなのに……」

ブビィは多少怯みはしたものの、戦闘に影響はないといった表情をしている。昨日のポッポのようにはいかないらしい。そしてヤツははこちらを少しにらみつけると、シズが"みずでっぽう"を放ったのと同じように"ひのこ"を飛ばしてきた。

「うわっ!」
「あ、あぶない!!」

二匹はすんでの所でそれを回避するが、しかしブビィはその隙をついてシズに接近しようと試みている。さっき発射した"ひのこ"は隙を作るための布石だったようだ。

「な、なんだ!?こいつ……昨日のダンジョンのヤツらとはちがう!!」

"ほのおのパンチ"か……あるいは"ずつき"か……とにかく、ヤツがシズに攻撃しようとしているのは明白だ。なにかのワザで迎撃できるかもしれないが……しかしシズは特性"ほのおのからだ"の存在が脳裏にちらついて怯んでしまい、"たいあたり"を繰り出すのか避けようとしているのかどっちつかずの姿勢で固まっている。実戦経験の不足から来る判断の遅れ、それそのものだ。

「シ、シズ!?」

このままでは、シズに強烈な一撃が加えられてしまうだろう。ユカはどうにかしてそれを阻止したいが、しかしブビィとの距離がかなり開いているので"たいあたり"では間に合わない。……突然、ユカの頭脳に電流が走った。

「そうだ……"でんこうせっか"だーっ!!」

火事場での、ちょっとしたひらめき。そこから繰り出されたワザは、ものすごいスピードで相手に突撃する"でんこうせっか"。その瞬間移動にも見える攻撃は、確かにブビィを捉えた。

「……っ!」

ユカがブビィに触れた瞬間、接触した部分から冗談にならない高温が伝わってくる。特性"ほのおのからだ"……自分の体に触れた者を低くはない確率でやけどさせるポケモンの能力。そのリスクを顧みぬ行動のおかげか、ブビィを弾き飛ばすことに成功する。

「なにやってんのシズ!とどめを刺して!」
「あっ……うん!」

うまく受け身をとれずに地面に転がっていたブビィにシズの"みずでっぽう"が突き刺さる。そしてブビィは、光の粒子となって消えた……

「助かったよ……ありがとう。」
「どういたしまして……ううっ……」
「あっ、大丈夫!?」

ユカが右前脚を押さえ始める。そこがやけどの患部なのだろう……シズはチークから借りた鞄に何か入っていないか確認してみるが、残念ながらやけどの治療に効果的な道具は入っていなかった。水筒の水で患部を冷やす程度の応急処置しかできないだろう。

「……ボクがちゃんとやっていれば。」
「あはは、気にしないでよ。」
「やけどしたところ、見せてよ。ちょっとは良くなると思う。」
「……ありがとね。」

できることはしたが、多少はマシ程度になった程度だ……早く適切な治療を施さないと、体力を大きく消耗してしまう。できるだけ早く仕事を終わらせて帰らなければ。

「それよりもだよ、シズ。このブビィ……」
「すごく強かった……2対1でやっとだった。」
「うん。戦闘はできるだけ避けた方が良さそうだね……」

今後の行動方針を決めた二匹は、依頼を達成するために行動を開始する。

「……ん?あれは?」

早速、シズがなにかを見つけたようだ。ゴツゴツとした岩に、赤い結晶が生えたような見た目をしている。触ってみると、やけどをするほど……とまではいかないが大変熱い。

「これが"あついいわ"かな?」
「意外と簡単に見つかったね。30個くらいならなんとかなりそう。……うっ。」

シズはそれを鞄にしまう。……依頼自体は達成できそうだが、それまでユカの体力がもつかどうかわからない。とにかく、急ごう。救助隊キセキは、赤い結晶を探してさらに周囲を調べ始めた。

「あっちにもあった……いくつか固まって落ちてるみたいだ。」
「落ちていると言うより……"かき集められた"ように見えるね。」

次のターゲットは数十分ほど探せば見つかった。4つの結晶が、ピラミッドや四面ダイスを連想させるような形で積み上げられている。しかし、その近くにはがんせきポケモンのイシツブテがたたずんでいた。ユカが言ったようにあれは人為的に集められた物であり、そしてイシツブテはその見張りをしているのだろう。

「いわタイプのポケモンもいるんだ……」
「戦いたくはないけど、でもあれはほしいよね。どうする?」

二匹が考えていると、突然、何かが荒々しく燃え上がるような音が鳴り響いた。その方向を見ると、洞窟の入り口にあった物と同じ噴射口が炎を噴き出している……シズは何かを思いついたようだ。

「……あの穴の近くに水をかけたら、"ジュッ!"って音が出せないかな。ほら、熱湯の入ったやかんを傾けた時みたいな……」
「なるほど。普通じゃ聞かないような、へんな音になりそうだし……いいと思う。」

思い立ったら、即行動。そう言わんばかりにシズは"みずでっぽう"を撃ち放つ。水の塊は狙い通りの場所に落下し、沢山の湯気とともにごく一瞬だけ肉が焼けるようにも聞こえる音がする。それを聞きつけたイシツブテは、炎の噴射口を確認しに移動した。

「よし、今だ。」

シズのかけ声とともに二匹は最大限音を立てないように"あついいわ"に駆け寄り、鞄にそれを詰め込んだ。そして早々にその場を立ち去る。……しばらくすると、イシツブテが戻ってくるが、道具が消えたことに対して何のリアクションも取らなかった。"あついいわの"見張りをしていたなら何らかの行動を起こすべきなのに……とにかく、作戦はうまくいったようだ。

「アイツ……なんで岩が消えたのに、なにもしないんだろう。」
「……ワタシに聞かれても……うっ!?」

ユカが右前脚を押さえ始める。やけどのダメージが進行しているのだろう……時間はかけられない。次の道具を探すため、二匹は歩き出した。












「これで23個……ユカ?」
「……いや、大丈夫……。心配、しないで……」

その後、しばらく危険なポケモンたちを見つけるたびに隠れたり通り抜けたりしながら"あついいわ"を集めていた二匹。その間にも、ユカのやけどから湧き出る痛覚と身体的なダメージは、まるで毒のように彼女の体力を奪っていった。

「一度帰って、仕切り直した方が……」
「……ダンジョンの、こんな深いところまでやってきたんだよ?……だから、もう……歩いて帰るのは無理だと思う……バッジを……使わないと……」

"救助隊バッジ"……それに埋め込まれたごく小さなテレポートの結晶によって、救助隊は不思議のダンジョンから脱出することができる。しかし、その効果は万能ではなく、"あるタイミング"以外で使ってしまうと、救助隊バッジや鞄、水筒などの装備を除くすべての道具を失ってしまう。もちろん、今まで頑張って集めた"あついいわ"も例外ではない。

「あ……ほら、あっちに……"あついいわ"が……いっぱい落ちてるよ……」

ユカが指を指した先には、救助隊キセキの目的、赤い結晶が山ほどあった。数えなくとも、7個以上あるのが分かる。そしてユカは、どこかおぼつかない足取りでその方向へ歩いて行った。

「ユカ……」

シズはユカの様子を見て、数時間前の出来事を後悔する。彼女の大きな目標だったであろう救助隊……その初仕事の出鼻をくじかれてしまったのだ。ほかならぬ自分自身のミスによって。……せめて、あれを回収するまで何も問題が起きないように祈っておこう。

「あっ……これって……」

シズの祈りは、すぐに裏切られた。ユカの力ない声が響く。不安と恐怖に染まった声が。たくさんのポケモン……具体的には、6匹が光とともに現れたのだ。

「"モンスターハウス"だ!!」

ダンジョンに住むポケモンたちが、大勢で、一斉に襲いかかってくる恐ろしい場所……それが、"モンスターハウス"。一匹を相手取ることにすら苦戦していたシズたちがここを切り抜けるのは、もはや不可能に近いだろう。

「もう……だ、め……」

……そして、このタイミングで、ユカの体力の限界がやってくる。彼女は床にへたり込んで、そのまま動かなくなった。

「そ、そんな!?」

気絶している。ユカに近づけば、それはすぐにわかった。通常時の救助隊バッジの効果では、ポケモン一匹を逃がすのがやっと。そして気絶しているユカはバッジを使うことはできない。諦めて逃げるという選択肢はもう、潰れてしまった。

「……救助隊バッジをチークさんが使ったとき、四匹のポケモンを運べた理由。それは……もう、選択肢は1つしかない……」

救助隊バッジは、"あるタイミング"……不思議のダンジョン内で"目的を達成した瞬間"に、とんでもないテレポートエネルギーを発生させる。それを使えばユカを連れてこの場を脱出できるし、依頼も達成できる。……ポケモンたちが、こちらを睨んでいる。彼らがこちらに飛びかかってくるのも、時間の問題だろう。

「……昨日、ポッポと戦ったとき……アイツは脅威になりそうな相手を優先して狙っていた。ここのヤツらにも同じ事が言えるなら、きっとユカは狙われないはずだ!」

自分の恩人を一瞬放っておくことに言い訳をつけ、そしてシズは目的の"あついいわ"に向かって走り出す。それに反応して、こちらを睨んでいたポケモンたちは遠距離から攻撃できるワザの一斉射撃を始めた。

「っ!?」

大量に打ち込まれたワザの1つ、イシツブテの"いわおとし"がシズに命中する。その苦痛と衝撃で、彼はバランスを崩して床に転げてしまう。

「うぁあぁーーっ!!」

そしてその隙を突いて接近していたダルマッカの"メガトンキック"が炸裂する。動きを止めたシズへの迷いのない一撃は、彼を宙に舞わせ、意識が吹き飛びかねないほどの強烈なパワーを発揮する。

(ここでやられたら、ユカもボクも共倒れになってしまう!)

その一心でなんとか意識をつなぎ止めたシズは、地面に激突する瞬間見事に受け身を取って見せた。そして"あついいわ"の山に駆け寄り、鞄に詰め込めるだけの赤い結晶を詰め込んでいく。……それが終わった瞬間、救助隊バッジが淡い光を放ち始めた。

「あ……あとは、この光が消えないうちに!」

ユカに近づいて、バッジを使うだけ!!……しかし、敵はそれを見越していたかのように、シズの進路を塞ぐ。

「そこをどけーっ!!」

そう叫んだシズは半ば無意識的に、道を塞ぐ敵の一匹……イシツブテに向かって"いわくだき"を繰り出していた。ミズゴロウが持つ恵まれたパワーから生み出される効果バツグンの一撃は、容易に岩石の塊を弾き飛ばす。そしてすぐにユカの目の前に移動すると、救助隊バッジのテレポート能力を使いこの場から消え去った。













ここは、炎の吹き出す洞窟の前。突然、何もない空間から青白い光とともに二匹のポケモンが現れる。

「はぁ……はぁ……な、なんとか、なった……」

現れたポケモンの一匹……ボロボロになってしまったシズは、空を見つめる。心地のよい風が吹いている。洞窟の中とは大違いだ。

「う……うぅ……」

現れたもう一匹のポケモン、ユカがうめき声を上げる。彼女はまだ、気を失ったままのようだ。

「……帰ろう。」

シズはユカを担ぎ上げ、そして帰路につく。初めての依頼は、辛勝に終わった……












救助隊協会第一支部。その建物の前で、二匹のポケモンが待っていた。

「……おい、大丈夫か?」

一匹は、チラーミィのチーク。こちらを見つけると、すぐに駆け寄ってきた。

「あの……大丈夫ですか?そっちのイーブイに至っては動いてないんですけど……」

もう一匹は、見知らぬバタフリーだ。おそらく、彼女が依頼主なのだろう。シズは鞄を開いて、その中に入った"あついいわ"を見せてみる。

「なんとか、目的は果たしましたよ……」
「そ、そうですか……とにかく、ありがとうございました。これで期限に間に合います」

バタフリーはお礼を言うと、"あついいわ"を手に持っていた麻袋に入れ始めた。それが終わると、今度は鞄からコインのような物が入った袋を取り出し、シズに渡す。

「それが報酬の1000"ポケ"です」

ポケ……チークから聞いた話によると、人間のいなくなった世界で流通しているお金のことらしい。バタフリーは改めてお辞儀をすると、そのまま飛び去っていった。

「シズと、ユカ……には聞こえてないか。二匹とも、ひどいケガをしているからな。特にユカのやけどは放っておけない。それで……あー……」

バタフリーが見えなくなった後、チークが話しかけてくるが……どこか様子がおかしい。これはシズの直感だが、何か後ろめたい物を抱えているのかも知れない。

「治療を施してくれるんですか……?」
「そう、そうだ。救助隊はその仕事の性質上、ケガをすることも多い。だから、ここには薬効のあるきのみとか、医療器具とかがおいてあるのさ。はは……」

チークは何かをごまかすように笑うと、そのまま建物の中に入っていく。やっぱり、様子がおかしい……そう思いながら、彼について行くシズであった。

……それからしばらくして。

「う……うーん……?」

目を覚ましたユカは、自分が寝かせられていた長椅子から体を起こす。やけどをしていた右前脚には包帯が巻かれていた。

「あ、起きた。チークさん、ユカが目を覚ましましたよ。」
「あ、ああ……」
「えっと……ワタシは……?」

……どうやら、ユカは今の状況をいまいち理解できていないらしい。シズは、ユカが気絶してから起きたすべてのことを話す。

「……じゃあ、依頼は成功したんだね。」
「うん。」

依頼は成功……その言葉を聞いたユカはうれしそうな表情をした。救助隊になった時と違って、跳びはねたりはしゃいだりはしなかったが、それでも彼女の感情は十分に伝わってくる。

「……シズ。ユカ。ちょっといいか?その……」

チークが話の流れを切り、ぼそぼそとした力の抜けたような声で話しかけてきた。どういうわけか、暗い表情をしている……

「どうかしましたか?」
「その、なんと言うべきか……」

その言葉を最後にチークは黙ってしまう。何かを伝えたいのだろうが、しかし口から言葉を発せられないような……彼は、そんな雰囲気を放っていた。そのまま数十秒の時が経った、その時。

「チーク!"面白そうなヤツ"が見つかったぞ!!」
「……えっ」

扉が蹴破られるような音とともに、朝の受付台で見たコリンク……スズキがこちらへ飛び込んできた。彼の前足には縄が握られており、その縄は一匹のポケモンにつながっている。

「さっきから何よアンタ!放しなさいよ!」
「人の精神弄っておいて"なによ"はないだろう!?」

縛り付けられているポケモンの姿はエスパータイプのニャオニクス。その口調と白を基調とした体色からメスであることがうかがえるが……そんなことより、彼女はなぜ捕らえられているのだろうか。スズキ以外の三匹はそれが一番気になっていた。

「……なあスズキ。そいつ、誰だよ」
「まあ、話せば長くなるが……」

コホンと咳払いをした後にスズキは言葉を続ける。

「今日の朝に起こった出来事を憶えてるか?ほら、チークが救助隊キセキに難しすぎる依頼を押しつけたあれだ」
「……なんですって?」
「……」

チークとシズの間におかしな雰囲気が生まれてしまったが、それに関係なく話は続く。

「それで俺はおかしいと思った。チークは時々ふざけたり、おちゃらけてみたりするが……意外と中身は冷静なヤツなんだ。俺の知ってる人物像から少し外れた行動なんだよ、依頼の押しつけは」
「ねえ、私に用が無いのなら解放しなさいよ!」
「うるせえ黙ってろ!……それで、そんな違和感を感じていたときにな。偶然こいつらが訪ねてきたんだ……」
「……あ、よんだですか?」

スズキの言葉に反応したのだろうか。一度は聞いたことがあるような幼い声とともに、一匹のピチューが建物に入ってきた。

「おれっちもいるからね!」
「わたしもいるよ。」

続いて、フライトという名のキャタピー、そしてルージュという名のムチュールもやってきた。昨日チークに救助されたレイと、その仲間たち……"元気三匹衆"の面々だ。

「それで救助隊協会に訪ねてきたこいつらの中の一匹……ムチュールのタイプはこおり・エスパーだったろ?こいつが超能力的な力を感じるって言い出したのさ。それで調べてみたら……」
「このニャオニクスさんにたどりついたんだよ。」
「レイくんがだいかつやくしたよね!」
「えへへ……てれるです。」

話が進むたび、ニャオニクスの表情が不愉快そうな……もっと言えば怒りや憎しみを示す物へと変化していく。

「そして……なんやかんやあって、コイツは白状したのさ。チークへの精神操作を実行したと……難しい依頼を受けさせてキセキの面々を大変な目に遭わせようとしたとな。そうだろ?」
「……だったらなによ。お金のために、ちょっとした細工を施すことの何が悪いって言うの。苦労したのよ?本人に気取られずに、かつ高度な行動のコントロールをするのは……」

話を黙って聞いていた三匹は状況をよく飲み込めなかった。みんな、自分たちがそんなことをされるような心当たりはないのだ……

「ま、そういうことだ。コイツに金を渡したのは誰か、何のためにそんなことをしたのかはまだ分からんが……大方、救助隊に恨みを持つようなあんまり綺麗じゃないポケモンの仕業だろ。そこら辺は俺が調べておく」
「あの、スズキさん……」
「災難だったな、救助隊キセキ……とにかく話は終わりだ、それじゃあな」
「あ、まってほしいです!」
「おいてかないでよ!」
「きゅうじょたいキセキさん、ごしゅうしょうさま……」

スズキはニャオニクスと元気三匹衆を連れて建物から出て行った。一体これは何だったのだろうか?一体、なぜこんなことをされたのだろうか?何も分からないまま、話は終わった。ひとつだけ言えるのは、自分たちがひどい目に合わされたという事実があった、ただそれだけだ……

「……えっと、オレがあんたらに話したかったのは……あんたらに難しい依頼を受けさせてしまったことについてだったんだが」
「もういいです。」
「チークのせいじゃないよ。多分……」

この場に残された三匹のポケモンたちは、その後しばらくの間、何も口にすることはなかった……

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