第46話 骨だらけの島

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:9分
 ヒトカゲ達は次に向かう島「ビオレタ島」を目指して、いつものように連絡船へ乗り込んだ。ただ、その連絡船にはいつもと違うところがあった。

『……ボロい……』

 そう、今回ヒトカゲ達が乗った船はとても古びたものだった。いつもなら外装も内装もきれいで乗客も多かったのだが、今回は自分達以外に客がいるのかいないのかわからないほど寂しく、至る所に修復した跡が見受けられる。

「こんな船に乗るなんて……」

 これが庶民というものなのか、とチコリータは感じさせられた。しかしそれは違う。この船は誰が見てもボロいと言うだろう。そんな時、デッキの方で何かが割れる音がした。

「うおっ!?」

 ヒトカゲ達がデッキへ向かうと、そこには動けないでいるドダイトスがいた。何と彼の重みで床が抜け、足がはまって身動きが取れずにいたのだ。

「だ、大丈夫?」
「は、はい。何とか」

 何とかしてやろうと、チコリータは“つるのムチ”でドダイトスの足を縛り、みんなで引っ張った。何回か引っ張るうちにドダイトスの足が簡単に穴から抜け、まるで大きなかぶを引き抜いた時のようにみんなは尻もちをついた。

「痛ててて。ホントにボロいねこの船」

 ヒトカゲが自分の尻尾を撫でながら嘆いた。チコリータ達も同意して頷く。不満を抱きながらも、これはこれで楽しんでいるようだ。

「もう少ししたら着くから、我慢しようぜ。さすがに“なみのり”でみんなを運べねぇし」

 自分で起き上がれずに仰向け状態のままゼニガメがため息をついた。そうだなとみんなは思いつつその場を離れようとし、誰も彼を起こしてあげようとしない。「起こせ!」と怒鳴られてようやくヒトカゲは手を貸してあげた。


 数時間後、4人は何とか無事にビオレタ島の港に着くことができた。そこで、みんなは船がボロかった理由が何となくわかったような気がしたようだ。
 彼らの目の前に広がるのは、まるで廃虚と化した街だった。建物は風化しており、草木も枯れかけている。そしてなにより、ポケモンがいる気配がまるで感じられない。

「なんか、見るからにヤバそうな島だよね」
「ホントね。幽霊でも出るのかしら?」

 ヒトカゲとチコリータは率直な感想を述べた。確かに、幽霊が出てもおかしくない光景だ。だから『霊の勾玉』があるのかとヒトカゲ達は納得する。

「黙ってても仕方ないから、中心の方まで行ってみるか。もしかしたら誰かいるかもな」

 そうゼニガメが言うと、他のみんなは少し渋りながらも歩き始めた。その後ろを、先程からヒトカゲ達の様子を窺っていた怪しい影が3体ついていく。

 しばらくして、4人は街の中心へとやって来た。だが相変わらずポケモンのいる気配はなく、静寂が虚しくあたりを支配していた。天気もだんだん悪くなっていき、暗い気分になってしまった。

「やだなぁ、こういう所」

 ヒトカゲが少し怯え始めた。小刻みに震えている炎を見たゼニガメが驚かしてやろうかとも考えたが、詠唱+炎技をやられたら命がないと気づき、あえなく自粛した。

「それにしても……きゃっ!」

 よそ見をしながら歩いていたチコリータが何かにつまずいて転んでしまった。慌ててドダイトスが彼女のもとへ駆け寄り、怪我がないかを確認し始める。

「大丈夫ですか? お嬢。怪我は?」
「えぇ、何とも」

 チコリータが起き上ろうとしたその時、彼女は自分がつまずいた物を見てしまった。

「きゃあっ! ほ、ほ、ほ……」

 つんざく悲鳴に驚いた他の3人はどうしたのかと彼女に近づいてみると、そこにはありえないものが落ちていたのだ。

『ほ、骨!?』

 彼らは一瞬にして背筋が凍りついた。チコリータがつまずいたもの、それは骨だったのだ。だが驚くのはそれだけではない。みんなが辺りをよくよく見回すと、至る所に骨が落ちていたのだ。何とも不気味な光景である。

「な、な、何で骨が落ちてるんだよ!?」
「し、知ってるはずないでしょ! それよりどーすんのよこれ!?」
「お、お嬢落ち着いて! ととととりあえず……」

 落ちている骨を指しながら慌てているゼニガメとチコリータとドダイトスの顔は青白く変化していた。だがヒトカゲだけは冷静にその骨をもう一度よく見て、ある事に気づいた。

「みんな、これ、カラカラとかが持ってる骨じゃない?」

 彼の言葉でようやく落ち着くことができた3人。よくよく見ると、確かにカラカラやガラガラが持っている骨にそっくりだ。安堵の息を漏らし、顔色ももとに戻った。

「だけど、何でこんなに落ちてるんだ? それにカラカラとかいなさそうだし」

 ゼニガメが腕を組みながら考えていると、別の方角から悲鳴のような甲高い声が聞こえてきた。同じ目に遭っているポケモンがいるのだろうと思った4人はすぐさま声のした方へ向かって走っていった。



「ぎゃああっ!」

 その声は女性の発した声のようだ。そのポケモンもおそらく骨を見たのだろう、おもわず目を覆っている。周りでは連れと思われる2匹のポケモンが絶句していた。

『大丈夫ですか!?』

 そこへ駆けつけたヒトカゲ達。彼らは悲鳴を上げた主を見るや否や、また別の意味で驚かされてしまった。

『あっ!』

 その声に聞き覚えのある3人は、ヒトカゲ達の方を向いた。そして彼らも驚かされた。今ヒトカゲ達の目の前にいるポケモン達、それは間違いなく“3バカ”ことチーム・ロバーズの3人だったのだ。もちろん悲鳴を上げたのはリーダーのオオタチである。

『ああっ! お前らっ!?』
「……帰ろっか」

 3バカを見た瞬間、関わりたくないと直感的に思ったヒトカゲはみんなに帰ろうと言い出した。ゼニガメ達も黙って頷いてその場を後にしようとしたが、3バカはそれを止めた。

「ちょっと待て! 姉貴が怖がってるのにいくら何でもそれはないだろ!?」

 慌ててペルシアンが4人の行く手を阻んだ。姉貴ことオオタチが怖がっているとはいいつつ、アーボックとペルシアンも怖くてたまらないようだ。だが彼らはお構いなし。「どいて」と言って強引に立ち去ろうとした。

「いやいや待てって! 大変なんだって!」

 今度はアーボックが立ち塞がった。それだけで腹が立ったゼニガメは容赦なく“ハイドロポンプ”を浴びせた。勢いあまってアーボックが倒れると、4人は再び帰ろうとした。

「お前達! これが目にはいらないのかい!?」

 オオタチがバカでかい声で言った。4人はキレ気味に振り返ると、一気に様子が変わった。彼女が指す方向を見ると、そこで1匹のカラカラがうつ伏せで倒れていたのだ。この状況に対し、ヒトカゲ達は勘違いをした。

「3バカ! とうとう強盗殺ポケに手を染めたんだね!?」
『はぁ!?』

 ヒトカゲが激しく怒りながら3バカに言い放った。彼らも冗談じゃないと言わんばかりに強く否定する。しばらくこれについて言い争いをしていると、放置状態にされていたカラカラの意識が戻り、いち早く気づいたドダイトスがカラカラの元へ駆け寄った。

「大丈夫ですか?」
「う、うん……」

 ドダイトスが声をかけると、まだ弱々しそうにカラカラが答えた。よろけながらも立ち上がると、何があったかを説明しようとした。

「何があったんです?」
「じ、実は……!」

 そこまでカラカラが言いかけると、ドダイトスとカラカラは何かの気配を感じて緊張が走った。辺りを見回すが、誰もいない。いるのは、まだ言い争いをしている仲間と3バカ。

「もしかして、この気配の主にやられたのか?」

 冷静に分析したドダイトスが尋ねると、カラカラは黙って頷いた。ようやく異変に気づいたヒトカゲ達も直ぐに言い争いを止め、辺りの様子を窺った。

(何かいる!)

 その場にいた全員が何者かの気配を感じ取ったようだ。どの方向から襲ってきても対処できるように攻撃態勢にはいっている。

「どうやらお前らのせいじゃないみたいだな」
「アタイ達を信じなさいってーの」

 気を張っているゼニガメが3バカに言った。だがあれだけの悪行、もといアホ行をしてきた彼らを信じろという方に無理がある。

「ねぇ、この気配に覚えとかないんですか?」

 チコリータが3バカに聞いてみたものの、誰も当てにはしていなかった。だが意外にも、何となくだが覚えていると答えが返ってきた。

「これはたぶん、ビオレタ島ならではのポケモンの気配だ」

 3バカのうちの1人、アーボックがこの気配に関してうっすら覚えていたようだ。だが様子から察するに、あまりいい感じではないらしい。

「ビオレタ島ならでは?」

 ヒトカゲはビオレタ島にどのようなポケモンが生息しているか知らなかった。これについて答えてくれたのは、ペルシアンとドダイトスだった。

「ビオレタ島――オーラ色が紫の島。そしてこの街の風景を見れば一目瞭然だ」
「さらにこの島に祀られているのは『霊の勾玉』だ。もうわかるな?」

 すると突如ヒトカゲ達の前に、全員を囲むように多くのポケモン達が姿を現した。それを目にした瞬間、ペルシアンとドダイトスが言った意味がわかった。

『ゴースと、ゴーストの大群……?』

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。