第1話

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初めて投稿するので、初投稿です
吹き抜けていく風、木々のざわめく音、太陽に当てられた心地よい草の匂い。木漏れ日がチラチラと目蓋を照らしてきているのが眩しくて、もたれかかっていた木から背中を外して体勢を横にする。
「......ねえ。もしもーし、起きてー」
子どもの声...?
体勢を起こし、伸びをし、目を擦ったあと目蓋を開け、それに答えるために頭の回路を起動する。そこでようやく自分の置かれている状況を認識する。回り始めた思考回路がもう一度停止した。

目覚めた場所は草原で遠くには山が見える。日本じゃない。どうやら木を背に眠っていたらしい。目覚めたら知らない場所にいるのだからもうSANチェックレベルの衝撃だが、いや、それよりも...

「あ、起きた!えっと、もう少し奥はダンジョンになってるし、お昼寝をするにはちょっと危ないんじゃないかなと思って!」

無邪気な笑顔でにこやかに話しかけてきている目の前の生物はポケモンのリオル。この世にいるはずのない、空想上の生き物に今話しかけられている。
ハッとして自分の体を見た。確かリオルは1メートルにも満たないポケモンのはずだが、それなら自分とは身長差があるはずなのに、目線が同程度である。ということは...視線を下に落とす。皮膚はより鮮やかな黄色に置き換わっている。頭を触って形を確かめると、耳が上向きに細長くなって生えている。背中側を見ると、ギザギザの尻尾さえある。

「うわっ、うわああああ!!」

「わわっ!?な、なに!?」

間違いない、これはピカチュウになってる。
自分で言うのもなんだが思わず叫んでしまったのも無理はないんじゃないか。目が覚めたら知らない場所、目の前にはリオル、そして自分の身体はピカチュウになっている。もう何から突っ込めばいいのかわからない。

「...んん?...ええと、どこから来たの?」

「えっあっ...た、旅をしていて...あの、さっきはごめん、襲われたのかと思って」

「...うーん......」

リオルは腕を組んで顔をしかめている。
うーん、怪しむのも無理もないよなあ、さっきからかなり挙動不審だし、けど元人間なんて言っても信じてもらえるわけないし...ここはなんとか誤魔化すしかない!

「...」

「えっと、道に迷っちゃって!はは」

「それで昼寝してたの?ふーん、マイペースだね...」

「あはは、うろちょろしても仕方ないと思ってさ!俺方向音痴だし、出来れば村まで案内してほしいなーって」

「その前にいくつか質問させてね」

「え?」

「まさかお尋ね者とかじゃないよね?そうじゃなくても悪いことをして逃げてる最中とか。」

「い、いや?」

完全に疑われてるなあ、これ。それにしてもこの子鋭いなあ、そんなに不自然な誤魔化し方はしてなかったと思うんだけど...

「...うん、じゃあ次の質問。どこから来たの?」

「えっと...言いたくないんだよね、ごめん」

まあ、嘘は言ってないだろ。

「...ふんふん」

...?さっきからこの目を閉じて相槌を打つのには、何かを確かめるような意図があるのか...?

「...!」

ん...?今のは...?頭の横についてる黒い房みたいなのと耳がピクッと動くのは動揺したからなのか?やっぱり俺から何かしらを感じ取ってるとか...?
待てよ。これもしかして読心術的なやつか?

「!!!」

「...なるほど。全部覗かれてた?なら、人間だったってのも聞こえてた?信じてもらえる?」

「た、確かに波動は嘘っぽくなかったけど...元々人間だなんてすぐには信じられなくて...」

「まあ、それも仕方ないか...。でも、何かしら悪いこと考えてるワケじゃないのは本当なんだ、信じてほしい!」

「う、ううん。ボクの方こそ疑ったりしてゴメンね。キミが悪いポケモンじゃないことはわかったし...村に案内するよ。」

「助かるよ。ところで心を読むの、もっかい俺にやってみてほしいんだ。思いついたことがあって元人間の証拠を見せられるかも」

「ホント!?ボク、他のポケモンが考えたことが勝手に頭に流れてくるから、いつでも大丈夫だよ!」

俺は頭の中でミミロップやサーナイトなどの人型のポケモン(想像しやすいから)で、おそらくポケモンには馴染みがないであろうアレな妄想を始めた。

「ふわっ!?」

リオルの顔がみるみる赤くなる。

信じてもらえないなら、証拠である人間の知恵を見せればいい。名付けてアニマルに脳内ビデオ見せる作戦。アルファベットで略すと...いややめとこう。
全年齢対象のポケモンの世界ではこういう知識は未発達だろ?人間は発達しまくっててね。こんな序盤で顔を赤くしてちゃ山場までに失神するかもしれないな

「あ...あわわわわわ...し、失神しちゃうほど...ってあああっ!!」

真っ赤な顔を両手で覆い、その場にへたれ込んでいるのを見るに、本当に読心を自分の意思でやめられないのだろう。そして妄想は一気に佳境に入る。

「ふわああああ!!!も、もうわかったからやめてぇー!!!!!」

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