60話 敵の正体

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

翌日、ハルキ達はキョウの元を訪れると、先客としてヌオーのアスタとフタチマルのアセビがいた。

「あれ? アスタさんと、アセビさん? どうしてここに?」
「その2匹ふたりは俺が呼んだのさ」

そう言いながら洞穴の奥からキョウが姿を現した。

「これは一体どういう事?」
「ハルキ達は来るとわかっていたから声をかけなかったが、そこの2匹ふたりには、昨日のうちに、ここに来るように伝えていたんだ」

キョウの言葉に無言で頷くアスタとアセビ。

「お前達をここに呼んだのは、話しておかなくちゃいけない事があるから呼ばせてもらった」
「話しておかなくちゃいけない事?」
「ああ。 お前達が昨日の夜に遭遇したダンジョンポケモン。 アスタとアセビの話の通りなら、それは俺が『虹色の戦い』の時に戦ったものと同種の可能性が高いだろう」
「同種? つまりどういう事です?」
「端的に言えば『虹色の戦い』の時と同じ事が起き始めようとしているという事だ。 順を追って説明しよう」

そこからキョウはハルキ達が遭遇したダンジョンポケモンについて話し始めた。
ダンジョンポケモン――通称『DP』。
通常、ダンジョンポケモンはダンジョンポケモンと呼称するが、ダンジョン外に出た特異な存在として差別化もかねてこう呼ばれる。
本来、ダンジョン内に出現するポケモンは個の意志を持たず、ただダンジョン内に侵入したポケモンを排除しようと動き、倒すと光になってその場から消える。
そして、ダンジョンの外にダンジョンポケモンが出る事は無い。
どんな理屈なのかは定かではないがそういう存在なのだ。
DPもこの特徴は変わらない。
『虹色の戦い』において、DPは敵としてキョウ達の前に立ちはだかった。
ダンジョンポケモンらしく個の意志は存在しなかったが、その動きは明らかに何者かによって統率され、巧みな連携攻撃によりキョウ達はどんどん追い込まれていったという。
そのDPが昨日の夜、ハルキ達が遭遇したものと同種である可能性があるという事だ。
また、DPは普通のポケモンとは明確に違う厄介な特徴がある。
それは意志が無い存在であるがゆえに、感情や痛覚を持たない点である。
普通のポケモンならば持っている恐怖心すらもないため、何の躊躇いもなく、自らを危険に晒す攻撃をしてくる。
極端な話、自爆による特攻すらも平然としてくるということだ。
同じ特徴を持つダンジョンポケモンはダンジョンを守る存在でもあるため、ダンジョンを危険に晒すような行動を基本的にはしないのが、DPと大きく違う点だろう。
わかりやすく言うならば、DPは安全装置のリミッターが解除された機械のようなものだと考えていいだろう。
そんな危険な存在であるDPが『虹色の戦い』では、たくさんいたという。

「……なるほど。 つまり、『虹色の戦い』の再来になるやもしれんという事でござるな」
「そして、昨日の騒動はその前兆という事だぬか……」
「ああ。 少なくとも俺はその認識だ」
「待て、待て。 じゃあ、俺達がこれから戦うかもしれない相手っていうのは大昔に『虹色の戦い』であんたらが戦った敵と同じだっていうのか?」
「そうだ。 俺はあの時、DPを操ってこの世界、ファンドモストを破壊しようとしたアイツが再び動き出したと思ってる」

キョウの言葉に隣で話を聞いていたヒカリが歯噛みした。

「『虹色の戦い』において俺達、ポケモンサイドを苦しめた本当の敵――『ダークマター』がな」

キョウの話が終わると、しばらくこの場にいる全員が黙り込んだ。
おそらく、これこそがハルキやアイトがこの世界に来た理由である悪しき者の正体だろう。
救助隊のギルドにあった『虹色の戦い』についての資料には、敵の名前までは記載されていなかったが、こうして当事者から当時の話を聞くことでその正体がハッキリした。
だが、あの時読んだ資料によれば『虹色の戦い』はポケモン側が人間を召喚し、人間と協力して敵を倒したことになっている。
つまり、『虹色の戦い』の時にダークマターは1度倒されている事になっているのだ。
だが、こうしてDPの話を聞いた後では、ダークマターが再びDPを操っている可能性は高い。
現に当事者であるキョウがそう結論付けているので間違いないのだろう。
だとしたら、ダークマターは復活したという事になる。
一体どうやって?
ハルキがそんな事を考えていると、ヒビキが恐る恐る手をあげて言った。

「あのー。 そんな伝説のような話に出てくる相手にわたし達、戦っていけるんです?」

ヒビキはとても怯えた表情をしていた。
急に昨日襲ってきたポケモンは言い伝えられている大戦の敵だった存在で、その大戦の元凶となる敵が身近に迫っているなどと話をされたのだから無理もないだろう。

「当然、そんな反応をしてくるだろうと思ってたよ。 だから、お前達だけじゃなくアスタやアセビを呼んだんだ」

ヒビキの疑問にニヤリと笑って答えたキョウ。

「簡単な話だ。 お前達、チームスカイはアスタとアセビ、そして俺の3匹さんにんと特訓をして力をつけてもらう」
「なるほど。 そういうことだぬか」
「ちょっと待つでござる。 何故、拙者までも教える立場にならないといけないでござるか?」

納得した様子のアスタとは対照的に異議を唱えるアセビ。

「関係者だからだ。 ハルキ達を強くすることがお前さんの目的と繋がっているはずだ」
「どういう意味でござるか?」
「その腰にさしている柄しかない刀。 それは代々、『我猟蒼刀流ガリョウソウトウリュウ』の継承者が引き継ぐものだ。 だが、風の噂で『我猟蒼刀流ガリョウソウトウリュウ』を扱う一族が滅んだと聞いた。 お前がその刀を持っているという事は一族の生き残りということだろ?」
「……そこまで知っているのならば拙者の目的もわかる、と言いたいわけでござるか」

キョウの言葉にアセビは顎に手を当てて少し考える素振りをすると、自分の中で答えが出たのか無言で頷いた。

「その話、引き受けさせてもらうでござる」
「よろしく頼む。 というわけだ。 ハルキ達にはしばらくここで特訓をしてもらう」
「いや、どういうわけだよ」
「ヒビキの特訓をただぼーっと待っているのも退屈だろう? ならば待っている間にお前達もレベルアップをしようというわけさ」

キョウの言う通り、ただヒビキの特訓を手伝っているよりはハルキ達も各々が力をつけていったほうがいいのは確かだ。
これから戦うべき相手の正体が明確になった今、ハルキ達の実力は明らかに不足していると見ていいだろう。

「わかりました。 ここまでお膳立てされて断る理由もありませんし、お願いします」
「そうこなくちゃ」

――――――――――――――――――――

それから、ハルキ達はシュテルン島に滞在できる期間を全て特訓の日々に費やした。
幸いな事にあれからダンジョンポケモンがシュテルン島に現れる事は無かったが、逆にそれが不気味なように思えてしかたなかった。
そして、明日の船でレベルグに戻る日の夜。
ハルキ達、4匹よにんはキョウに呼ばれていつもの洞穴に来ていた。

「こんな夜に呼び出して悪いな」
「いえ。 それで、僕達に話さなくちゃいけない事って?」
「『虹色の戦い』についてだ」
「そういえば、色んな事がありすぎてすっかり忘れてたけど、キョウは『虹色の戦い』に参加していたんだっけな」
「ああ。 『虹色の戦い』はダークマターとポケモン同士の戦いだった。 劣勢だったポケモン側はポケモンだけではダークマターを倒せないと判断し、1人の人間を召喚した。 それが、ハルキ。 お前だったんだ」
「は? どういうことだよ?」
「ここにいるハルキはあの時、『虹色の戦い』で俺達と一緒に戦ったハルキと同一人物なのさ」

アイトやヒビキが驚愕の表情を浮かべる中、当人であるハルキは不思議と驚きはなかった。

「『虹色の戦い』が終結した後、世界に平和が訪れた。 けど、未来に再びダークマターが現れる可能性を危惧したハルキと一部のポケモン達は念の為に対抗策を用意した。 その1つがハルキの転生だ。ダークマターが復活した場合、出現時期と同時期にハルキが転生するよう色々と仕込んでいたのさ。 荒唐無稽な話だと思うだろうがこれが事実だ。 その事は、当人であるハルキが1番わかってるんじゃないか?」

ハルキは無言で頷いた。
キョウの話によって、腑に落ちる事が多々あったからだ。
最初にホウオウが言っていたハルキが選ばれた理由には意味があるということや身に覚えのない情景や記憶がフラッシュバックすること。
これはおそらく、前世のハルキが体験してきた事に基づくものだろう。

「……でも、だからといって、僕が僕じゃなくなるわけじゃないし、これから僕達がしなくちゃいけないことも変わるわけじゃない」
「そうだな。 ハルキの言う通りだ。 ハルキが何者だろうとハルキはハルキだ」
「そうです! 昔のハルキ君とキョウさんがダークマターと戦うために備えたように、わたし達も今日まで戦いに備えて、特訓してきたんです」
「『虹色の戦い』とは状況が違くても、目的は変わらない。 そういうことだよね? ハルキ?」

ヒカリの言葉に力強く頷いてみせるハルキ。
そうだ。
自分が何者だろうと、成すべきことは何も変わらない。
悪しき者、ダークマターを退ける。
これが今のハルキの成すべきことであり、呼ばれた理由でもあるのだから。
ハルキの表情にニヤリとキョウは笑った。

「少しは迷ったりするのかと思ったが、杞憂だったか。 話はこれだけだ。 もう戻って休んでいいぞ」
「了解です!」
「おい、アイト」
「ん?」

雑談混じりに帰り道を歩くハルキ達の後をついていこうとしたアイトはキョウに呼び止められて振り向いた。

「念の為に1つ伝えておく」
「な、何だよ急に?」
「これからの戦いに力は必要だ。だが、力ってのは時に大切な物を見失わせる。 もし、そうなった奴がいたらお前が正してやってくれ」
「……わかった」

キョウの言葉の意味はよくわからないが、その表情は真剣そのものだった。
アイトは短く返事をし、先に歩いていったハルキ達に小走りで駆け寄っていった。

「何を話してたんです?」
「いや、大したことじゃないよ。 気をつけて帰れってさ」
「そうですか」

それから4匹よにんは雑談しながら宿へと戻っていった。

――――――――――――――――――――

「行ったか」

洞穴の前に1匹ひとり残ったキョウは物思いにふけたように夜空を見上げて呟いた。

「俺の伝えるべきことは伝えた。 あとは俺達のリーダーさんがちゃんと伝える事を伝えられるかってとこだな。 なあ、ヒカリ」
というわけで、これにて4章アイランド編は閉幕です。
やっとこの物語の敵の正体がハッキリした重要な回でもあります。
最後がだいぶ駆け足になりましたが、特訓してる部分をダラダラと
描写して話数を稼ぐより、きっちり終わらせてしまえ!って感じですね(笑)

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