夢と現実の狭間に迷い込み、みんなのおかげで助かったかたっぽだけのニダンギル。洋館に帰ってきたはいいものの、斬られてしまったという自覚を持った為に元通りになれずにいました。いつもなら息ぴったりの、片方のニダンギルと身体が合いません。どうしてもぴったり収まらず、ふかふかと隙間ができてしまいます。お互いなんだかむず痒くって、とうとう喧嘩になってしまいました
そっちがこっちに合わせないから! そっちこそ、こっちのことちっとも考えてないんだから!
鞘から抜け出て斬り合いになってしまったので、ヨノワールが二本を離して、壁に磁石でくっつけてしまいました。このまま元に戻れないかもしれないと、かたっぽのニダンギルはシュンとして布を垂らしました。
そこへ、森から洋館に来たヌケニンが通りかかりました。壁にくっつけられている二本を見て、余計なものがあるとだけ呟くようにいうと、くるりと背を向けました。背中の空洞を見てしまった二本は、魂をとられると慌てて目を瞑ります。しばらくしても何事もないので、二本が目を開けると、ヌケニンは捨ててくると呟き残して、洋館を出ていきました。
見れば、磁石が取れて床に落ちています。なんだか少し身体が軽くなったような気がして、二本がもう一度鞘を交差させると、パズルのピースが噛み合ったように、かっちりとはまりました。ひっくり返っていた天と地が戻り、暖かい半身を取り戻したニダンギルは、喜びの声を上げました。
何かを捨ててきたヌケニンが戻ってくると、しっかり元通りになったニダンギルはお礼をいいました。ヌケニンは、無表情ながらもほんの少しだけ照れ頷いて、音もなく森へ帰っていきました。
ヌケニンは何を捨ててきたのかって? それは二本がそれぞれ持っていた不信感、表に出せない不安、いなかったことに対する不満など、もやもやしていた感情です。無くなったので、すんなり信じることができたのです
それにしても、ヌケニンはマジックショーのことも、ニダンギルのことも、夢にかけた橋のことも、森にいたから知らないはずなのですが……。
きょうのおはなしは、これでおしまい