ツンデレ先輩とかわいいあの子 前編

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ハリマロン「どーもハリマロンだぜ! 名前はまだない!」
マグマラシ「ぼくはマグマラシです。同じく名前は未定です」
ミジュマル「俺はミジュマル......同じく名無し。三匹合わせて......」
ハリマロン「チーム名も未定なんだよな」

ハリマロン「ふと気になったんだけど......ノルトって本当に男子なのか?」
マグマラシ「まあ見た目は女の子ですからね。世間では男の娘って言うらしいですよ」
ハリマロン「詳しいな。まあおれはどっちでも気にしないぜ! タブンネ」
マグマラシ「そういうハリマロンも可愛いですけどね」
ハリマロン「うるさい!」
ミジュマル「女装男子というカテゴリーもあるらしい」
ハリマロン「なるほど? ところで今回はポケモンバトルの香りがするな......」
マグマラシ「匂い? よく分かりませんけど」
ハリマロン「とにかくノルト! おれとバトルしようぜ!」

ノルト「Zzz」
アルカ「お兄ちゃんはお昼寝中」

今回は一部を除いてフウラ視点です。

 ユキハの仲間のラティアスこと、クルミさんとのおいかけっこも幕を閉じ、二匹が彼らのギルドへ帰っていくのを見送ったあと。

 それにしてもあづい......照りつけてくる日差しに私はちょっとへばり気味である。

 道を通りすがる他のポケモンも、少しでも暑さを紛らそうと手でパタパタと扇いでいたり。しかし大した気休めにすらならないようだ。

フウラ「それにしても暑いわね......」
ラキト「まあ夏だからね......大丈夫?」
ユキハ「ちょっと休憩しましょう」

 暑い街中でおいかけっこしていた私達は、というわけで木陰のベンチでちょっと休憩。
 通りに比べると、暑さも少しは軽減されてホッと一息。たまに頬を撫でるそよ風がちょっと心地いい。

 しっかりと水分を補給。熱中症にはしっかり気をつけないとね。

セッカ「このあど......でゅおするぅぅ......?」

 おそらく「このあとどうする?」って聞いているんだろうけど......暑さにやられてるのかろれつが回っていない。

ラキト「セッカ大丈夫!?」
セッカ「大丈夫だから安心して。でもやっぱり夏は暑いじゃけん」

 どうやら大丈夫そうなので、ホッとするけど暑さでろれつが回らない時は危険かもしれないからしっかり気を付けようね。

ユキハ「さてこの後どうしようかしら......」

 同じグレイシアでも比較的平気そうなのは、氷タイプなかわいい可愛い先輩ことユキハだ。この後の予定に考えを巡り巡らせているようだ。

ユキハ「せっかくだしあなた達のギルドに寄ってみても大丈夫かしら?」
セッカ「全然大丈夫です。こっちから誘おうと思ってましたし」
ユキハ「いいのかしら? 問題無いならお言葉に甘えさせえもらおうかしら?」
フウラ「問題なんかなにもないわよ......!」
ラキト「きんモザ......?」

 ユキハの申し出に快く応じるセッカ。もちろん私達としても歓迎である。
 問題なんかなにもないよ! 結構結構いけるもんね!

 そうしてユキハさんも、うちのギルドによってくことになった。

         ♢ ♢ ♢

ノルト「う~じめじめするぅ......」
ソルア「しょうがないだろ......この時期だし......まあ気持ちは分かるけどな」

 その頃、僕はというとギルドの近くにて蒸し暑さにへばっていた。氷タイプにはこの暑さはちょっとキツい。

ノルト「生姜がないの?」
ソルア「持ってないけど? というか生姜って持ち歩くものなのか......いや違うな」

ソルア「ところで生姜って別名なんて言うか知ってるか?」
ノルト「それはジンジャーじゃないの?」
ソルア「英語ではそうだな。でも日本語で別名は?」
ノルト「うーん、なんだろう~」
ソルア「ヒントお前の属性に似てるな」
ノルト「僕の属性......つまりイケメン? 似てるってことはつけ麺......?」
ソルア「お寿司を買うとついてくるあれだ」
ノルト「わかった~! ガリだ!」
ソルア「そうだ、ガリだ。そしてお前はガーリーだ」

 なんかよく分からないけど......ガーリーってどういう意味だろう。きっとカッコいい感じの言葉かな?

ソルア「何で喜んでるんだ? ついに女の子としての自覚が芽生えたのか?」
ノルト「えっ何だって?」

セッカ「たーだーいーまー」

 ちょうどその時、間延びした声が辺りに響いてくる。振り向くとそこには声の主であるセッカ。なんだかお疲れのようで耳も尻尾も垂れ下がっている。

 チームメイトであるラキトとフウラの姿も。どうやら依頼を終えてギルドへ帰ってきたようだ。

ノルト「おかえり......? って......セッカが増殖した!?」
ソルア「セッカが一匹、セッカが二匹......眠れないときは数えてみよう......って違うからな。見た目も雰囲気も違うだろ」

 おかえりと返そうと......僕は一瞬びっくり。もう一匹のグレイシアがそこにいた。
 確かによく見ればセッカとは異なる雰囲気を纏っていた。普通のグレイシアより鋭い目付きは意志の強さを感じさせる。

ユキハ「そうだよ。よく見抜いたね。俺はいわばセッカのもうひとつのポケ格......」
セッカ「ゆっユキハ何言ってるの? 勝手にボクの属性増やさないでね?」

 と思っていたら少女? は驚きの種明かし。やや声のトーンを低めに自己紹介? を始める。

 えっ本当にもう一匹のセッカなの? 始まる自己紹介? を慌てて止めるセッカ。

ユキハ「な~んてね。冗談よ」

 そのグレイシアの少女はセッカをからかうように、悪戯っぽく笑う。

ユキハ「私はグレイシアのユキハ! 氷属性を宿しかわいいかわいい女の子なんだからね! しっかり覚えておきなさいよ!」

 まるでマントを翻すかのような大げさな動作と共に、そう名乗りをあげるグレイシアことユキハさん。
 おさげというかツインテールを華麗に揺らしつつ可愛く一回転。かわいらしいポーズを決める。

ノルト「僕はアローラロコンのノルトです! カッコいい氷タイプだよ!」
ソルア「私はカントーロコンのソルアだ」

 僕達も自己紹介を返すけど、なぜかソルアはムッとしたような表情。なんだか不機嫌そうだ。

ソルア「ところでお前喧嘩売ってるのか?」
ユキハ「ちっ違うわよ! 何の話よ」

ソルア「そうか。そんなに可愛いか。悪かったな私は可愛げがなくてさ」

 不機嫌そうなソルアは、拗ねたようにそう吐き捨てる。

ユキハ「なに言ってるのよ! あんただって見た目は可愛いじゃない!」
ソルア「なっなんだと? 褒めても何も出ないからな。おだてても無駄だ」

 ユキハが素直に褒めると、一瞬嬉しそうに頬を緩めかけるが。

ユキハ「でも性格は可愛げが無いわね」

 結局は再びにらみ合いを継続、両者の間にバチバチと火花が散る。

 続いてる無言で対峙する二匹の時間は、決着のつけどころを見失い......。

ソルア「それじゃポケモンバトルで勝負だ! お前が先輩だからと言って手加減しないからな」
ユキハ「ええ、望むところよ? エースの実力魅せてあげるわ!」

 しびれを切らしたソルアはポケモンバトルで決着をつけることを提案する。
 先輩であるユキハに臆さない態度を見せるソルア。売り言葉に買い言葉、ユキハもそれに余裕を見せつけて応える。

ラキト「あわわわ......二匹とも......」

ソルア「先輩だろうがエースだろうが私は手加減しないからな!」
ユキハ「あらあら自信があるのね。でもその心構え私は好きよ!」

 二匹は敷地内のバトルフィールドへ移動。やがて所定の位地につくとポケモンバトルの幕が開ける。

ソルア「先手はもらうぞ! でんこうせっか!」
ユキハ「穿て! 氷の弾幕よ! 冷凍ビーム!」

 先に動いたのはソルア。でんこうせっかを発動すると一気に加速しつつユキハに向かって走り出す。
 対するユキハは冷凍ビームを乱射。氷属性を帯びた光線でソルアの行く手をふさごうとする。

ソルア「かわして突っ込むぞ!」
ユキハ「アクアテールを突破できるかしら」

 飛び交う氷の光線をかわし一気に接近するソルア。しかし、そこにはアクアテールの構えを取り待機していたユキハの姿。

ソルア「水タイプの技だと!?」
ユキハ「尻尾に纏いし水流よ! アクアテール!」

 驚く間もなく、激流を纏った尻尾を叩きつけてくる。炎タイプのソルアには効果は抜群だ。

ソルア「くっ間に合え! 神通力!」

 急にはかわす体勢を取れないソルアは、とっさに神通力を発動。エスパータイプのエネルギーをぶつけて少しでもダメージを軽減しようとする。

 技の衝突により辺りに水飛沫が舞い散る。スプラッシュする。

ユキハ「新雪よ! 我が身を隠せ! あられ!」

 ユキハはすぐさま次の行動、あられを発動する。あたりにひらりひらりと舞う雪の花は、彼女の特性を引き出しその姿を隠す。

ソルア「くっどこだ......でんこうせっか!」

 はっきりと捉えにくい相手の姿。ソルアはでんこうせっかで駆け抜けつつチャンスを伺う。

ユキハ「私はここよ! アクアテール!」
ソルア「でんこうせっかで回避!」

 雪を切り裂く水流の尻尾。ソルアはでんこうせっかを重ねがけし、加速度を上げることで少しでもダメージを減らそうとする。

ソルア「物理がダメならエナジーボール!」
ユキハ「それならこっちは吹雪!」

 草タイプのエネルギー弾をいくつか虚空に放つ。草にはタイプ相性で有利にたつユキハの放つブリザードにより打ち消されてしまうが

ソルア「かえんほうしゃ!」
ユキハ「うぐ......」

 ソルアの渾身の炎が雪を溶かし、ユキハに直撃。効果抜群の一撃がユキハにダメージを与える。

ソルア「エナジーボール!」
ユキハ「凍り付け! 冷凍ビーム!」

 さらに続けてエナジーボールを放つと、ユキハはそれを凍てつく氷の光線によって防ぐ。

ソルア「でんこうせっか! 至近距離で神通力!」

 ソルアはその隙に一気に加速。高速のアタックをお見舞いする。続けて神通力を放とうとするが

ユキハ「吹雪!」
ソルア「うぐ......」

 強力な氷タイプの技はかわされることなく、ソルアに直撃。だいぶダメージがたまったところで勝敗は決した。
 本来ならまだ戦えるが、今回のバトルは両者の実力を確かめ合うもの。戦闘不能になる前に打ち止めとなった。

ソルア「さすがだな。今回は負けたよ」
ユキハ「いえあんただってやるじゃない......」

ソルア「やっぱり強い相手を前にすると血が騒ぐな。後輩の私に付き合ってくれてありがとう」
ユキハ「私こそ楽しかったわ」

 て二匹は拳を付き合わせる。どうやらポケモンバトルの勝負を経て友情が深まったようだ。

フウラ「これがライバル同士の友情なのね! なんか感動」

         ♢ ♢ ♢

ノルト「なんだかバトル観戦してたら喉が渇いてきたかも」

 別に声張り上げて応援してた訳でもないのに、なんで喉渇くのかちょっと疑問だけど......まあ確かに水分補給は大事よね! 特にこの時期はなおさらそうだ。

ソルア「あっついでに私の分も頼めるか?」
ノルト「かしこま! ユキハさんの分も買ってく?」
ユキハ「私は水筒があるから別に大丈夫よ」

 こちらはポケモンバトルで激しい運動をしたばっかりで、喉が渇いているだろうソルアさん。
 ついでにお願いと頼むと、ノルトは快くそれに応じる。
 
 というわけでノルトは二匹分の飲み物を買いに、尻尾をふわふわって感じに揺らしつつ、てとてと歩いていった。別にパシりじゃないからね。

ユキハ「ところでこの中で男子はラキト君だけ?」
ラキト「えっ......えっと」

 そういえばと唐突にそんなことを聞いてくるユキハ。確かにそうね。男子は......ラキトだけね。
 なぜだかラキトはちょっと戸惑っているように、モゴモゴと口ごもり。

 なんでそういう反応なのかしら? そんなに悩むような問題じゃないのに。
 まさか......理由を考える私の頭はとある推論を導き出す。ピカッと閃いた?

フウラ「どうしたの? ひょっひょっとしてラキトって実は女の子なの!?」
ラキト「ちょっとそこ、なんで目を輝かせてるの......」

 思わず身をのりだし目を輝かせる私に、ラキトはちょっと呆れたようにジト目で苦笑する。

ラキト「僕のイーブイ時代知ってるよね?」
フウラ「でもとある都市伝説によれば最近までイーブイの尻尾はオスメス共に一緒だったらしいわよ?」
ラキト「確かにそんな話は聞くけどさ......」

フウラ「つまり何らかの理由で過去の記憶が改変されて......」
ラキト「これってそんなSFチックな小説だったっけ?」

 すかさずツッコミを入れる私の幼なじみ。いつもいつもナイスツッコミありがとです!

フウラ「なーんてね冗談に決まってるじゃない!」
ラキト「なんだ......びっくりさせないでよ......」

 ラキトはふぅっと、ホッとしたように息を洩らす。まったくそんな慌てなくてもいいじゃない。

ソルア「ああ、男子はラキトだけ......だな」
ユキハ「やっぱりそうだったのね!」

セッカ「あっあの......ボクも男の子......なん......だよ!」

 ユキハが納得するようにふむふむと頷くなか、セッカがおずおずとそう申し出る。
 そうだったわね。というか今まで設定がなんかはっきりしてなかったんだけど。

ユキハ「これってなんていうハーレムラブコメって思っちゃったり」

 ユキハの言葉でハッと気付く。よく考えればラキトの周りには魅力的な乙女が揃ってることに。
 端からみれば確かにハーレムラブコメっぽく見えるのかも。セッカはあんまり恋愛には興味が無いように見えるし。

 これは幼なじみだからと言って、うかうかしてられないわね......。

 ラキトは私にとっては今は弟的存在だけど......。

ユキハ「おやおやフウラちゃんどうしたのかしら?」
フウラ「なっ何でもないわよ!」

 ユキハはちょっぴりニヤニヤしながらチラチラ視線を送る。そんなに見られると......。私はちょっとテレテレ思わず少し頬を染める。

ソルア「ところでユキハ?」

 ちょっぴり困ってた......別にそういうわけじゃないけど! でも偶然にもナイスタイミングでユキハに話しかけるソルア。

ユキハ「どうしたの? ソルア」
ソルア「実はファッション好きで、詳しいユキハに頼みがあって」

ユキハ「なになに? 聞かせて!」
ソルア「私のチームメイトのことなんだけど......」
ユキハ「あの僕っ娘アロコンちゃんのこと?」

 やっぱりそういう認識なのね......。本ポケは否定するけど、ノルトちゃんって見た目は女の子だからね。勘違いされるのも仕方がない。
 私達ですら、彼の本当の性別をよく忘れちがちなくらいだから。

ソルア「ノルトって正直羨ましいほど可愛いんだけど、ファッションに無頓着なんだよね......だから彼女の服を選んでやってくれないか」
ユキハ「それはちょっともったいないわね......よし私に任せなさい! 特別にコーディネートしてあげるわ!」

 ソルアの頼みを二つ返事で引き受けたユキハは任せなさい! とばかりに胸をとんと叩く。

ラキト「あの......本当のこと教えた方がいいのかな......」
フウラ「それはダメよダメダメ」

 さあ、我らノルトを可愛くし隊! レッツにゃー!

ラキト「ノルト君頑張ってね......あはは......」

続く......
フウラ「やって来ました! 次回予告? コーナー!」
イーブイ「わーい!」
フウラ「この小説には可愛い乙女が揃ってるわね......これはラブコメ展開まったなし! 私もなんか負けられないのかも!」
イーブイ「フウラちゃんどったの~ニヤニヤ」
フウラ「それとも実は全員女の子だったりして!」
ラキト「いい加減その思考から離れようね?」
ノルト?「あたしも忘れないでくださいね」
アルカ「お兄ちゃん......?」
イーブイ「謎キャラの正体いかに?」
ノルト?「次回はあたし登場しないですけどね?」
フウラ「次回、ツンデレ先輩とかわいいあの子 中編!」
イーブイ「お楽しみに!」

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