P.3 Neu 初めてのジム戦

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Diary of Shirabe




『――けっ、けどリーフィアさん……』
『フォノ、これ僕の名前で――』
『シャワーズの私がフォア』
『聞き間違いだったら申し訳ないのですけど、今シルクさんが義理の姉弟て……』
『うん! 私達、一卵性の三つ子なんだけど――』
『フォノの奥さんがシルクだからな』
『奥さんって……ええっ? 』
『い、今何ていいました? 』
Written by Neuf




「すみません! 」
 トキワのジムの前でライト、っていう姓名判断師? と会ったぼく達は、その人にぼく達ふたりの名前を伝えてもらった。その人が連れてたふたりが連れてた種族は初めて見たけど、それ以上にぼくはユイにぼくの事に気づいてくれた事が凄く嬉しかった。あの感じだと出逢った時には薄々感づいてたような気はしてたけど、訊いてこなかったのはもしかすると、確証が持ててなかったからなのかもしれないね。
 それでぼくもセプタもボールから出たままジムの中に入ったぼくは、そこでもまた驚かされた。そもそもぼくが知ってるトキワのジムは、最初じゃなくて一番最後に挑む事になってたと思う。その時点でもぼくはビックリしたんだけど――
「はいはい、今行くよ」
『えっ……』
 出てきたジムリーダーが、ロケット団のボス、サカキじゃなかったから……。ビックリしすぎて思わず声をあげちゃったけど、サカキとは違って若い男の人。
「シズイさん、この子のジム戦をお願いします」
「ライトさん……、ってことは、今年ももうそんな時期かぁ……」
 シズイって言う人はライトさんの事を一目見ると、はぁ、って小さくため息をついて頭を抱えてしまう。そんな種類のトレーナーはいなかったから分からないんだけど、マフォクシーって言う種族のティルさんが言うには、ジムの強さの基準を満たしているかとか、設備の管理が行き届いているかを診る仕事をしているらしい。これを訊いて思ったんだけど、誰でも自分の強さとかを事細かく診られたり、居場所がキレイなのか徹底的に調べられたら、あまりいい気はしないよね……。そういう仕事をしてるトレーナーがいるから、ジムが関門の一つとして成り立ってるのかもしれないけど。

 あはは……。まぁ俺達はそれが仕事の一つだからね、仕方ないよ。

 ティルさんはティルさんでこういうことになれてるのか、苦笑いを浮かべながらテレ端-、って言う方法で話しかけてる。
「確かにね。……で、君が挑戦者の――」
「はい! マリエシティから来たユイ、って言います」
『ねぇヌフ? 』
『ぅん? 』
 バトルが始まるまで暇だからだと思うけど、ユイに抱っこしてもらってるセプタが、何か知りたい事があるみたいでぼくに話しかけてくる。セプタはアローラ、っていう地方の出身だって言ってたけど、確かそこにはジムが無い、って言ってた。だからカントー、それからティルさん達のホウエンとかジョウト、っていう地方でも当たり前の事をしらないのかもしれない。
『ジムと試練ってどう違うの? 』
『うーん。その試練、っていうのが何なのか分からないけど、ジムリーダー、っていう強いトレーナーと戦って、チームの強さを認めてもらえる場所の事なんだよ。地方に八カ所あるんだけど、全部で勝つとリーグ、っていうその上の段階に進めるんだよ』
『へぇ……。何か大分違うけど、リーグは聞いた事あるよ。アローラでは最近できたばかりみたいなんだけど、地方のリーダーみたいな感じなんだよね? 』
『そんな感じかな』
 何か少し違うような気がするけど、間違いでも無いような気もする。この世界はぼくがいたところとは大分違うけど、ジムがあるって事はシステム的なものは変わらないんだと思う。リーダーと言われると何かズレてるとは思うけど、他のトレーナーから一目置かれる、って言う意味では同じなのかもしれない。
『やっぱり! なら――』
「――それじゃあ、始めようか」
「よろしくお願いします! ヌフ、いくよ」
『あっ、うん』
 これからセプタが何言おうとしてたのかは分からないけど、ユイ達はユイ達で話が終わったみたい。呼ばれたからぼくは耳をピンと立たせて、“嘗ての”パートナーの彼女の方に目を向ける。セプタは抱っこされたままだったからそのままだったけど、ぼくはトレーナーの定位置の方に歩いて行くユイの後を追いかける。あまり離れてなかったから、すぐに追いついて――
「――トキワシティジムリーダー、虫タイプ使いのシズイがお相手するよ」
 こっちの世界では初めてのジム戦が幕を開け――って今、虫タイプって言った?
「最初はヌフ、お願い! 」
「バタフリー、一番手頼んだよ」
『う――ちょっ、ちょっと待って! 地面タイプじゃなかったの? 』
『昔はそうだったみたいだけど、うちはこれでやってるから』
 まさかぼくが戦う事になるとは思わなかったけど、ぼくは思わずユイの方に振り返り、声を荒らげてしまう。ジムリーダーとは一回しか戦えはしないけど、ぼくの中でトキワは地面タイプ、って言うのが常識だった。……確かに地面タイプじゃなくて虫だからぼくでも戦えはするけど……。
「まずは手始めに、体当たり」
「尻尾を振る! 」
『じゃあ早速、お手並み拝見といかせてもらうよ』
 ぼくはまだ驚きから立ち直れてないけど、すぐにジム戦が始まってしまう。向こうのバタフリーの方が素早さが早いみたいで、ジムリーダーの指示が出るとまっすぐぼくの方に滑空してくる。
 対してカナはセオリー通り、バタフリーの防御を下げてから攻めるつもりみたい。先手を取れないのは痛いけど、後々楽になるから――
『くっ……』
 真正面から受け止めて――
『ここからが勝負……! 』
フサフサの尻尾を大きく振ってみる。どういうシステムでそうなるのかは分からないけど、かわいさで油断させる……、そういう感じで相手の防御が下がるんだと思う。何かセプタとかがざわついてるような気がするけど――
「電光石火で攻めるよ! 」
「毒の粉で迎え撃ちましょう」
『うん。先制取れるもんね』
『まぁ飛んでる僕に届けば、の話だけどね』
 指示が出たから次の行動に移る。向こうの世界でのぼくならめらめらバーンとか、そういう専用技を使ってると思うけど、今のぼくにはそれは使えない。だから全身、特に四本の足に力を溜め、一気に駆け出す。シュッ、って音がしそうなぐらい素早く駆け抜けて――
『ぅっ! 』
『虫タイプ相手でも、素早さなら負けないよ! 』
 後足で地面を思いっきり蹴って、下まで降りてきてるバタフリーに思いっきり突っ込む。電光石火だからあまりダメージは見込めないけど、ぼくの先制技は体のど真ん中に命中する。けど先制出来――
『じゃあこれなら……、どうかな? 』
『えっ……』
 先制はできたけど、ぼくはここでバタフリーの返り討ちに遭ってしまう。命中率があまり高くない技のはずだけど、ほぼゼロ距離だったから紫色の粉まみれになってしまう。おまけに毒々しい色の粉を吸っちゃったから――
『うぅっ……』
「ヌフ! 」
 多分だけど、毒状態になったと思う。向こうではシステム的な処理だけだったから何ともなかったけど、何というか……、頭が割れるように痛くなってきた……。それに凄く吐き気が――
「虫喰い! 」
「かっ、かわして電光石火! 」
『これは勝負あったかな? 』
『まだ……っ! 』
『くぅっ……。これは……』
 気持ち悪くなってきたけど、こんなんで倒れる訳にはいかない。足が震えて力が入らないけど、何とか立ち上がって駆け出す。たまたま向こうも物理技を仕掛けてきたからだと思うけど、出せる限りのスピードで急接近する。三メートルぐらいのところで跳びかかったけど、何故か相撃ちになってしまう。頭から突っ込んだ時に、ぼくの頭にストロー状の口を伸ばしてきてたのが見えた。……で、バタフリーに歯なんて無いような気がするけど、頭の真ん中に刺すような痛みが襲いかかってきた。……だけど向こうは向こうで最初の尻尾を振るが効いてきてるみたいで、ぼくに弾かれて地面に堕ちてきてる。
『はぁ……はぁ……。毒状態って……こんなに……しんどいなんて……』
『ヌフ、大丈夫? 』
『このくらいで……倒れてなんか――』
ぼくはぼくでかなり危ない状態になってきてるけど、ここで倒れる訳にはいかない。向こうではリーグ……、マスタートレーナーも全員倒してきたんだから、ここでぼくが負けるなんてあり得ない。だから目の前が霞んできたけど、ぼくは力を振り絞り――
「あと少し……。体当たりで決めるよ! 」
『――いられないよ……! 』
 なけなしの力で技を発動させる。もうフラフラで技って言えないかもしれないけど、ぼくにだってプライドって言うものがある。一つ目のジムって言うのもあるし、これじゃあ向こうの世界の仲間達に顔向けできない。意地でもぼくが勝つ、そう言い聞かせてから走り始め――


――――――――


Written by Septa



『このぐらいで……倒れてなんか……いられないよ……! 』
 ぼく達にとって初めてのジム戦、最初はヌフが戦う事になったけど、何かすごく危なっかしくてヒヤヒヤする。ヌフはユイと同じで違う世界から来た、って言ってたけど、それでもやっぱり見てられないよ……。あの感じだとティルさんとメガニウム――フルロさんも同じ事考えてるのかもしれないけど、ヌフ……、ぼくの時もそうだったけど、相手の攻撃を全然かわそうとしない。最初の体当たりだって簡単に避けられそうだったのに、ヌフは一歩も動かなかった。毒の粉は仕方ないと思うけど、他にもバトル素人のぼくでもおかしいんじゃないかな、って思う事が結構あった。
 それに今ヌフは毒状態になってるけど、あの感じだと多分五分五分、だと思う。バタフリーも地面に落ちてきてるし、ヌフもフラフラしてて今にも倒れそう。だから今ヌフが発動させた体当たりで決まる、そんなような気がする。
『ヌフ! 』
『くぅぁっ……! 』
 ドスッって鈍い音と一緒にぶつかったふたり――特にバタフリーの方が痛みで声をあげてしまう。限界を超えたみたいでバタフリーは目を回して倒れちゃって、ヌフは――
『ぅぅっ……』
 毒が回ったみたいで、急に力が抜けて倒れちゃってた。
「ヌフ、ありがとう。お疲れ様。セプタ、次いける? 」
『うん。いつでも行けるよ』
 ヌフが毒にやられて気を失っちゃったから、ユイは彼をボールの中に戻してあげる。ぼくはアローラにいた時からずっとボールの外にいたけど、ヌフも向こうの世界ではぼくと同じだったみたい。だからボールに戻されるところを見るのはちょっと変な感じがするけど、これがぼく達トレーナー就きのポケモンの普通だからね……。
 それでヌフをボールから戻してあげていたユイは、左手でだっこしてくれていたぼくに声をかけてくれる。確かここのジムはメンバーふたりで戦う、って言ってたような気がするか――そうじゃなくてもぼくしかいないから、ぼくはピョンとパートナーの腕の中から跳び降りる。着地したぼくは彼女のをチラッと横目で見て、小さく頷いて合図を送ってみる。
「ビビヨン、後は任せたよ」
『はぁぃ、いつも通りねぇー』
「ヌフの分も頼んだよ」
『うん、任せて! 』
 ジムリーダーの方も次のメンバーが出場したから――
「氷のつぶてで先制攻撃! 」
「光の壁! 」
『いつもの戦法だね? うん! 』
『初めて見る子だけど、どんな戦いするのかしらねぇー』
 口元に氷の属性を溜め、咳するみたいに一瞬で撃ち出した。同じ氷タイプの技で簡単だから、って訳じゃないけど、野良の時から一番使ってる。ロコンとかキュウコンは尻尾が沢山有るからアイアンテールとか……、そういう技をよく勧められるんだけど、ぼくはずっと断ってる。ぼくの尻尾、一本切れちゃってるからね。
『くっ……。流石先制技。でも次からはそうはいかないわ』
『うん、知ってるよ』
 何かヌフのバトルをそのまま再現してるような気がしなくもないけど、ぼくの氷の粒はビビヨンのおでこの辺りに命中する。するとほんの少し……、一秒とかからないぐらいの短い時間遅れて、透明な壁がぼくとビビヨンの前に現れる。あの壁はぼくの種族の取得出来るみたいだけど、確か特殊技のダメージを少なくしてくれる効果があったと思う。属性までは覚えてないけど……。
「光の壁……。ならもう一回氷のつぶて! 」
「……なら風おこし」
『そっか。凍える風だと弱められるもんね』
本当は凍える風の方が威力が出るんだけど、光の壁をされたらそうはいかないと思う。だからって事でぼくはまず駆けだし、飛んでるビビヨンとの距離を詰めてみる。目が覚めたらヌフにも教えてあげるつもりだけど、同じ技でも距離が遠いのと近いのとでは命中率が全然違う。ぼくは飛べない種族だから仕方ないけど、羽にエネルギーを溜め始めてるビビヨンにしっかりと狙いを定める。もちろん走る足を止めずにイメージを膨らませて――
『少しは出来るみたいねぇー』
『そうじゃないと――くぅっ……。アローラの野良は……生きてけないからね』
『きゃぁっ! 』
 さっきよりも大きめの氷を口から解き放つ。あまり大きすぎるとスピード距離も堕ちちゃうから、ぼくは大きくても三センチぐらいにしてる。角度とかは特に考えてないけど、今日の相手は虫タイプで飛んでるから、軽く跳び上がりながら発動させてみた。すると走って助走つけてたってこともあって、相手が起こした風にも打ち落とされずに技を当てる事が出来た。その代わりにビビヨンの風にぼく自身が吹かれて飛ばされちゃったけど……。
「痺れ粉で動きを封じて」
「凍える風で追い返して! 」
『っあなた、中々やるわね……』
『まぁね。アローラ育ちを嘗めてもらったら困るよ』
 流石にこれだけで倒せるなんて思ってないから、ぼくもビビヨンも次の行動に移る。さっきの技でジムの中にまだ風が吹いてるから、ビビヨンはそれを利用して黄色い粉を飛ばしてくる。さっきのヌフの時は毒だったけど、ぼくには麻痺状態にして身動きを取れなくするつもりみたい。もちろんこのままだと動きを封じられちゃうから、ぼくはさっきとは別のイメージを膨らませながら、バックステップでビビヨンとの距離を離す。本当は凍える風は攻撃技だけど、守りにも使えるかもしれない、ってぼくは思ってる。野良の時の話だけど、ラナキナマウンテンを登りに来た就きで、暴風って言う技でリーフストームを追い返してたピジョットを見た事がある。
『どうりで……くぅぁっ……! 見た事無い種族……な訳ね……』
 息を思いっきり吸ってからそこへ技のエネルギーを混ぜ、ぼくはビビヨンが粉を飛ばしてきたのと合わせて思いっきりはく。するとはいた息に雪の粒に沢山混ざって、ふりかけられた粉も一緒に吹かれていく。痺れ粉も混ざってちょっとだけ黄色っぽくなったけど、ぼくの雪が相手の技を追い返してくれる。だけど命中しても光の壁で防がれたみたいで、この一発で倒しきる事は出来なかった。
『確かこっちのロコンって、炎タイプなんだよね? 』
「氷のつぶてで決めるよ! 」
「風おこしで――」
『じゃあこれで終わりにしちゃうね? 』
 それであと一回当てたら倒せそうだったから、ぼくはユイの指示を待たずに氷のエネルギーを蓄え始める。属性相性的にも有利だったからだと思うけど、案外楽に勝てそうな気はしてる。流石にここまでラクなのは今回だけだと思うけど、ぼくは勝利を確信しながら氷の塊を撃ち出す。
『っ! 』
 軽減してたとはいえさっきの凍える風のダメージが効いてたみたいで、この一発で気絶させる事は出来たみたい。フラフラしてて当てにくかったけど……。




To be continued……

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