第2章 第3話

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:41分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

この世で別の命を作り出せるのは、神と人間だけだ。

お前は人間に作られたポケモンだ。

他に何の価値がある?





『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲より引用』










………………………




「とりあえず、全部聞かせて貰うぞ?」

ミュウツー
「…ああ」


俺たちはこすぷれ~ん1号店に戻り、昼食を取ってからリビングで話し合っていた。
ミュウスリーはお腹一杯になって眠くなったのか、今は俺の膝の上でスヤスヤ寝息を立てている。


ミュウツー
「コイツのこんな安らかな寝顔…初めて見たな」
「そもそも、あの痩せこけてたのがこんなんになるんだ…よっぽど、今が幸せなんだろうな」


「でも、一体誰がミュウスリーを造ったんだ?」

ミュウツー
「人間だよ…もうひとりの特異点」
「奴は、私の細胞からクローンを造った…ミュウスリーは私のクローンなんだ」


俺たちはその答えに衝撃を受ける。
てっきり、ミュウツーと同じでミュウの細胞から造られたと思ったが、まさかミュウツーから造られたとは。


悠和
「ですが…ミュウツーにしては、ミュウスリーは特徴が違いすぎませんか?」
「ミュウスリーは角が繋がってるし、尻尾もありませんよ?」

ミュウツー
「そりゃそうだ…ミュウスリーはメガ進化してるんだからな」


俺はそれを聞いてギョッ…とする。
そして同時に理解出来た…確かにミュウスリーの特徴は、メガミュウツーのそれに酷似している。
特徴的な角や無くなった尻尾は、まさにY進化の特徴か…



「だけど、何でミュウスリーは常時この状態でいられる!?」
「メガ進化って、フツーは時間制限とかあるんじゃないのか?」


少なくとも、愛呂恵さんや鐃背さんのそれはそんな感じだった。
他にも、肉体のダメージが限界を越えたら強制解除されるはず。
ミュウスリーは最初に見た時点でかなりの極限状態に感じた…
あんな状態でメガ進化を維持出来る物なのか…?

だが、次にミュウツーから語られるその真相は、更に俺たちを驚かせる内容だった…


ミュウツー
「ミュウスリーの脳には、直接メガストーンが埋め込まれている」「そして、常時メガ進化状態を維持出来る様に、産まれる前から遺伝子改造されてたんだ…」


予想はしていたが…やっぱそういう事情か。
俺は軽く歯軋りし、ミュウスリーの運命に怒りを覚えた。
そりゃ使い捨てと言われる訳だ…ハナからミュウスリーへの負担は考慮してない。
どうせ、死んでも作り直せば良い位の感覚なんだろう…クソッタレが。


悠和
「でも、結果的にミュウスリーは寿命すらも削られてこの状態に…」

ミュウスリー
「メガ進化は確かに強力無比だが…それを常時維持するデメリットもまた凄まじい」
「ミュウスリーは、メガ状態の体を維持する為、エネルギーを常に放出し続けなければならないからな」
「造られてすぐに成長促進させ、体は成人と同様まで成長させたものの、すぐに体は痩せ細った…」
「どの道使い捨てだからと、ロクな栄養も与えられなかったからな…」


俺は聞いてて虫酸が走る。
同じ人間として、とても許せる事じゃない!
人間とポケモンが共存する世界なのに、何でそんな悲劇が起こるんだ?
何で、誰も助けてはくれなかったんだ…?


ミュウツー
「私たちが産み出された世界は、ただの地獄だった…」
「人間は人同士の交配を捨て、全てを自分たちの手で造り出す」
「世界はクローン人間に支配され、そこに住むポケモンたちも全て支配されていた…」
「私が産まれた時は、既にディストピア状態…」
「私は産まれてすぐに遺伝子改造を施され、ただの戦闘兵器として育てられた」
「ディストピアとはいえ、争いは絶えなかったからな…」


「内乱…か」


ミュウツーはああ、と言って無気力な顔をした。
思い出すのも虚しい…そんな顔だな。
想像するだけでも、呆れを通り越して怒りが込み上げて来る。

人としての生き方を捨てた時点で、それはもう人類とも呼べないんじゃないのか?


ミュウツー
「馬鹿げた話だよ…クローン人間の私利私欲の為に、私は戦い続けたんだからな」
「母親であるミュウもあの世界は見限った…私をひとり残して」


「母親…? お前はミュウのクローンじゃ無かったのか?」


ここまでの話的に、てっきりそうだと思ってたんだが…
まぁ、ミュウツーの設定は初代の頃から映画と設定が食い違ってて、今じゃ何が正解なのか解らなくなってるからな。

今回のミュウツーの場合は、ミュウの子供説が通ったわけだ。
この設定は初代やリメイク版のゲーム内で、しっかりと見る事が出来る部分だな。

映画だとクローンだったんだけど…


ミュウツー
「私はあくまでミュウの実子だ」
「もっとも…体外受精で産み出されたし、親からの愛情は一切無かったがな」

悠和
「そんな…親なのに?」


「親って言ったって、皆が皆、愛情を持つ訳じゃないさ」
「人間だって、子を殺す親はいくらでもいる」

ミュウスリー
「ン…」


俺の言葉にミュウスリーが突然唸った。
俺は少し気持ちを切り替え、寝ているミュウスリーの側まで行って頭を撫でてやる。
すると、ミュウスリーはすやすやと寝息をたて、少し安心した様な感じになった。

ミュウスリーの事だ、寝ていても俺たちの感情は感じ取れるのかもしれないな。


ミュウツー
「まぁ、実際あの母親は、あくまで卵子を提供しただけの母体だ」
「私を作ったのも気紛れだったろうし、そもそも興味があったのかも解らない」
「どっちにしろ…母に捨てられた時点で、私はそもそも戦闘兵器としてしか価値が無かった」


このミュウツーは、産まれながらにそんな運命を定められていたんだな…
そりゃ、人間不信にもなるわ。
親からも捨てられ、誰ひとり理解者もおらず、ただ戦う為だけに改造された…

ぶっちゃけ、映画のミュウツーさんが幸せに思えるレベルの不幸っぷりだな。
もっとも、このミュウツーは別に人間を支配してやろうとかいう野心も無さそうだが。

むしろその辺は、○トムズ的にそっとしておいて欲しいのかもしれん…
うむ、そう思うと実に蒸せる世界観に思えて来た…不思議だ。


ミュウツー
「私は、戦闘兵器としての性能はそれなりに評価された」
「だが、所詮一騎当千とはいかず、あの世界の軍事レベルからしたらあくまで性能の高い人型兵器にしか過ぎない」


「世界観の違いか…ミュウツーがその程度って扱いなんだから、大概だな」

ミュウツー
「いくら私といえども、マトモに銃弾を受ければ死ぬからな」
「自己再生出来るとはいえ、急所を撃ち抜かれれば即死する」

悠和
「あくまで、人化した体は人間とほぼ変わりませんからね…」


確かに、人化したポケモンたちは基本的に急所も人間と同じになる。
もちろん、一部の種族はその特徴で表されることもあるだろうが…

どれだけレベルが高かろうと、どれだけ強かろうと、銃で撃たれればポケモンも死ぬのだ。
鋼タイプや岩タイプといった、装甲のある種族ですら急所に当たれば死ぬ。
それが、人ってモンだからな。



「つーか、そういえば初めからミュウツーが人化してる前提で話してたけど、ミュウツーは最初っから人化してたのか?」

ミュウツー
「そりゃそうだ…人化してるミュウの子供なんだからな」


俺たちはギョッとする。
まさか、ミュウが人化してたとは…
そして、ここに来てつい先日の謎がいきなり解けてしまったかもしれない。

人化したポケモンの子供は、人化したポケモンとなる?
いや、ミュウツーは遺伝子操作で産み出されてるし、そもそも父親が誰かも解らない。
他のポケモン娘たちも同じとは限らないからな…


ミュウツー
「とにかく、私だけじゃ兵器としては足りないから、結果ミュウスリーは造られてしまった…」
「即席のクローンとしては戦闘能力がそれなりに高く、訓練無しでも暴れさせるだけで戦果はあげられたし、それなりの成功例だったと言えるだろう」

悠和
「酷い…私も、人に造られたポケモンですけど、決して私を造ってくれた人は愛情が無かった訳ではなかったのに」


「そ、そうか…悠和ちゃんも、人に造られたんだったな」


悠和ちゃんは人造ポケモン…ある意味ミュウスリーとは近しい存在なのかもしれない。
まぁ、その辺は更に設定不足でホントはどうなのかゲーム的には全く不明な訳だけどな!


ミュウツー
「結局…私は、ミュウスリーを見ていられなかった」
「兵器でありながら、私は同じ兵器のミュウスリーを見て、自分がまだ幸せに見えたんだ…」
「気が付けば、私はミュウスリーを連れ出して、反逆した」
「向かって来る敵を全て殺し、私たちは逃げ続けた…」
「どうせ短い命…死ぬなら、もっと安らかに死なせてやりたい」
「そんな、小さな希望にすがって、私は逃げ続けた…」


「で、このハリボテの世界に来たってのか…」


ミュウツーは頷く…そして、この世界ですぐにミュウスリーを造った人間と再会したと言う。
ソイツが、もうひとりの特異点。


悠和
「それで、そのもうひとりの特異点は何者なんですか?」

ミュウツー
「直接関わった事はほとんど無いし、詳しい事は何も知らない…」
「ただ…奴は自らを特異点と名乗り、ミュウスリーを救いたければ、もうひとりの特異点を連れて来いと言った」
「そして、夢見の雫があれば救えると…」


やはり…相手は雫の存在を知っている!?
そして、敵の目的はあくまで俺であり、雫なのだ。
だとしたら、ミュウツーたちは体よく利用されただけか…
そうだとしたら、相手は相当俺の事を理解している可能性が高い。
理由は不明だが、とにかく雫が欲しいんだろう。


ミュウツー
「その後、私はある程度詳細を聞いて、ミュウスリーと一緒にお前を探した」
「携帯電話を渡され、そこには何故かお前と繋がる番号が登録されていた…」
「後は、お前たちも知っている通りだな…」


俺はまたギョッとする…ソイツは何で俺の電話番号知ってたんだ?
夢見の雫の事と良い、まさか俺の顔見知りなのか?
あまりに不可解な点が多い、特異点と名乗るからには相当特殊な存在だとは思うんだが…



「ちなみにソイツの名前は? 後、どんな姿を?」

ミュウツー
「名前は…富士(ふじ)とか言ってたな、かなり年老いた老人の男だ」
「あの世界の出身だし、恐らくは誰かのクローンだと思うが、何か解るか?」


富士、ね…奇しくもゲームでのミュウツー発見者と同じ名前か。
流石に何か作為的な繋がりも感じるが、それだけで俺を知る理由にはならない。
何故なんだ…? どうして雫の事を……



「…っ!? ま、まさか…継承者なのか?」
「確か、先々代の継承者は雫を暴走させて世界を滅ぼしたって…」
「先々代は生きていた? それで、俺の雫に目を付けて…!」


あくまで推測だが、それなら色々納得もする。
もし、継承者なら当時はほぼ何でも有りだ。
下手すりゃ未来でも見てこの時を待っていたのかもしれないし…

暴走させて生きていた理由は解らないが、前もって保険でもかけていたらどうなるか解らない。


悠和
「で、ですが…それでどうして聖様の電話番号を知る事が?」


「そもそも、ここじゃ携帯は圏外だ…つまり本来電話なんて出来ない」
「でも、ミュウツーとはちゃんと通話出来た…つまり」

ミュウツー
「そもそも、この番号はデタラメで構わなかったって事か?」


俺はミュウツーのガラケーを見る。
そして、画面に表示されている番号の履歴を見て頷いた。
それはデタラメに入力された数字で、全く何の意味も無い。

どうやら、とんでもない悪意が渦巻いている様だな…
もし本当に先々代なら、雫をどうするつもりなんだろうか?
そもそも、ミュウスリーを使い捨てとして造った時点で、外道なのは間違いない。
実際に会ってみたい所だが、嫌な予感はプンプンしやがる。


ミュウツー
「この世界は、今まさに混沌だ…私たちの世界からクローン兵団が無尽蔵に送り込まれて来てる」
「奴らの狙いは解らないが、私たちを皆殺しにする事が目的の様にも感じるし」
「多分、そこに富士は絡んでる…奴は無関係を装っていたが、恐らく軍を動かしているのは奴だ」


だとすると、偉くデタラメな計画に感じるな…
それだと、ミュウツーを利用する意味が解らなくなる。
そもそも、俺みたいな人間位はフツーに大群率いて捕まえれば良いはず。

確かに悠和ちゃんがいるからこそ、ここまで俺は無事にいられた訳だが…
しかし、いくら何でももっと大勢で来られたら、悠和ちゃんでも守りきれないはず。
なのに…相手はそれをせず、戦力は小出しにして攻めて来ていた。

ミュウスリーが加わってからも、そこまでの大群は見なかったし…



(全く富士の意図が読めない…それとも、そう思わせる事が目的なのか?)


俺は色々推測するも、答えは全く導き出せなかった。
解るのは、富士の目的が確実に夢見の雫だって事位か…



「夢見の、雫……?」
「……まさか、な」

悠和
「聖様、何か?」


俺は軽くそう呟くも、余りに馬鹿馬鹿しいとして首を横に振った。
そんな事は有り得ない、有り得ちゃいけない、そんな…馬鹿みたいな事。
俺は考えを払拭しようとするが、それでも記憶の片隅から不安が抜けなかった。
俺の頭が覚えておけと命令する…その考えを、捨てるなと。

そして、俺は考えられる最悪のケースを口に出す。



「もし、夢見の雫がもうひとつあったら、全部辻褄が合うな」


場が一瞬静寂する。
まるで、空気が固体化した様な一瞬だった。
言ってる俺も信じられない…夢見の雫は一子相伝。
常に世界にひとつだけしか存在しないはずの、チートアイテム。
ましてや使うにしても使用制限付きで、おいそれと連発は出来ない。

俺は無尽蔵に現れる敵の大本を想定した。
富士とミュウツーたちは、別の世界からここにやって来ている。
ミュウツーはミュウスリーを連れて逃げた…と言っていたが。



(そもそも、何故わざわざここに辿り着いた? いや違う、恐らく初めから想定されてた…)


ミュウツーは逃げたつもりだったんだろうが、それは恐らく富士の掌の上。
もし本当に富士が夢見の雫を持っているのであれば、このハリボテ世界を造り出す事も可能なはずだ。

そして、敵は別の世界から常に供給されている…?
それも、使い捨てのクローン軍団が大量に。
雫で願いを叶えているのであれば、全てが可能になってしまう…



「ミュウツー、お前の世界のクローン技術って、生物以外にも使われてるのか?」

ミュウツー
「生物以外…? いや、聞いた事は無いな」
「そもそも、生物以外でクローンとはおかしな話だろう?」
「機械や銃器なら、普通に量産すれば良い話だからな」


確かにその通りだ、だが俺は予感が消えなかった。
もしかしたら…夢見の雫はコピーされてたんじゃないか?と…
そんな事は有り得ないとは思うも、俺はやはり危惧してしまう。

そして、やはり真相を確かめるには富士に会うしかないと思った。
かなり危険な賭けだが、ここは虎穴に入るしかないだろう。



「ミュウツー、俺を富士の所に連れて行ってくれ」

ミュウツー
「どの道そのつもりだ…ミュウスリーの寿命は、後25時間位しか残されていないんだからな」


ミュウツーはそう言って俺をしっかり見る。
俺は既に覚悟は決めている…だから真っ直ぐにミュウツーの目を見てやった。
ミュウツーは俺の意志を理解したのか、特に何も言わなかった。


悠和
「ですが、どこにいるんですか?」
「もし距離があるのでしたら、時間も重要になります」

ミュウツー
「心配しなくても、この街にいる」
「というより、この街からは出られない」


ミュウツーはそんな事を言い出す。
そして俺はすぐに納得した…この世界はあくまでハリボテだ。
コピペしたってんなら、その範囲は限られてるって訳だな。
逆に言えば、こっちも逃げ様が無い…気を引き締めないと。

俺は、最終確認を取る為にスマホを耳に当てる。
そして、やや低い声でこう語りかけた。



「…恵里香、聞こえるか?」

恵里香
『どうにかね…ただ、その世界は酷く曖昧だ』
『ボクの世界送り(ワールドメール)が、何故か時々遮断される』
『何か、別の大きな力が外からかけられているのかもしれないね』


恵里香の世界送りに干渉だと…?
それで恵里香から急に切断されたのか…
だが、妙だな…それはつまり、世界送りで恵里香が声のみ送り込んでいるのを理解されてるという事だ。
まるで、神様の様に全てを見られている気がしてきたな…


恵里香
『とにかく気を付けて…その世界は色々おかしい』
『多分、今までキミが体験した事の無い、謎の「理」がある』
『下手をしたら、存在ごと消されるかもしれない…』


俺は、心臓がドクンッと高鳴るのを感じた。
消される…か、クソッタレの理…
この世界にも、何かトリガーがあるって言うのか?

だが、それで消えるかは恐らく恵里香も確証が無い。
あくまで、それは最悪の場合だ…想定はした方が良いが。
少なくとも話をしている限り、ミュウツーたちが消える様子は無い。
そもそも、そんな罰ゲームじみたルールがあるとは俺は思えなかった。

恵里香
『く…ダメだ、やっぱり持たない』


「悪いな恵里香、無理をせずに切れ」
「後はこっちで何とかする!」


俺はスマホから耳を離し、それをポケットに仕舞った。
俺の側ではミュウスリーが安らかに寝息を立てている。
胸がムニュッと俺の腕に辺り、俺は改めてミュウスリーのスペックを実感する…もはや残念おっぱいとは呼べんな!

ミュウツーも結構な巨乳だし、もしかしてミュウもスゴいんだろうか?
とはいえ、恵里香の例を見るに、そこまでの物は無さそうだな…
っていうか、やっぱおっぱいも改造されてるんだろうか?
いや、それはロマンが無いな、うん。


ミュウツー
「…しかし、この服は何なんだ? 異様に露出が多いが、防御力等欠片も感じないぞ」


ミュウツーはミュウスリーが着ているメイド服を見てそう言う。
1度戦闘した事もあってか、ミュウスリーの服はまた少し破れてしまっていた。
着替えも同じタイプとなるとあまりストックは無いし、他の服は少し動きにくい物ばかりだしな…

つーかコスプレ喫茶なんだから、そういう類いの服しか無ぇのは仕方が無い!


悠和
「機能美無視のコスプレ服ですからね…流石に防御力は無いかと」

ミュウツー
「他に服は無いのか? どこかの店から取れば良いだろ」


「さらりと犯罪発言か…まぁコピー品だし、別に良いんだろうけど」
「まぁ別に良いじゃん、可愛いし」
「流石にもっと破れたら問題だが…」


今ならまだ小破と言った所だ、流石に中大破するとおっぱいぷるんの可能性があるから、規制的に自重せねばならないが。
とりあえず、今は無理に着替える事も無いだろ。


ミュウツー
「人間の思考は理解出来んな…それともお前が特別なのか?」


「さてね…世の思春期の少年なら、こんな可愛い娘見たら放っておけないって事は確かだ」

悠和
「ふふ、聖様が優しいからですよ」
「ですから、造られた私たちの事でも家族みたいに接してくれるんです♪」


悠和ちゃんにそう言って微笑まれ、俺はつい頬を掻く。
まぁ今更ではあるのだが、やはり恥ずかしい物は恥ずかしいな。
ミュウツーは、こんなやりとりを見てただ呆れた顔をしていた。


ミュウツー
「やれやれ、呑気な奴らだ…そろそろ、ここも安全じゃ無くなりそうなんだがな」


ミュウツーは急にそんな事を言い出す。
何か気配を感じ取ったのだろうか?
俺は悠和ちゃんを見るが、悠和ちゃんは何も解っていない様だった。



「敵か?」

ミュウツー
「だろうな…まだ近くにはいないが、いずれここを嗅ぎ付けられるかもしれん」

悠和
「では、ギリギリまでは休みましょう…ミュウスリーも、まだ寝ていますし」


俺は頷く。
ミュウツーもとりあえず警戒しながら休む事に…
そして、それから1時間…敵はまだ現れず、俺たちは無事に外に出る事が出来た。



………………………




「………」


俺たちは現在、駅前を目指している。
そこに富士がいる可能性が高いらしい。
俺たちは商店街を真っ直ぐ突っ切り、相変わらず誰もいない道路をそのまま駆け抜けていた。


ミュウスリー
「ふぁ~…」


「ミュウスリーも気を付けろよ? 油断してたら、いきなりズキューン!って、されるかもしれんぞ?」

ミュウツー
「恐ろしい事を言うな…誰が狙撃など許すか」
「射程に入った時点で、こちらから吹き飛ばしてやる…!」

悠和
「でも、出来るだけ殺さない様にして」
「聖様は、相手がクローンと言えども、殺す事は望んで無い」


ミュウツーは舌打ちする。
だが別に反対もしなかった、とりあえずは従うって顔だな。
コイツはコイツで、やっぱり良い奴なのかもしれない。
俺はそんなやり取りを少し微笑みながら見る。

そしてある程度進んだ所で、ミュウツーが敵に反応し始めた。


ミュウツー
「そろそろ戦闘区域に入るぞ…!」

悠和
「聖様は3人の輪の中に!」

ミュウスリー
「ン…さと、し…護、る!」


皆は俺を中心に、トライアングルフォーメーションでそれぞれ構える。
とりあえずどこから来ても俺は皆に護られる寸法だ。
悠和ちゃんは今回、鋼タイプに変わっている。
あくまで防御重視、鉄壁も使えるからまさに盾。
対してミュウツーとミュウスリーは、超能力の壁で完全防護。
ただでさえ規格外スペックのふたりだ、いかにマシンガンの掃射でも容易く貫く事は出来ないだろう。


敵兵
「目標発見! 攻撃開始!!」


敵は四方八方から銃を構えて現れる。
流石に軍用クローンだな、隊列もスムーズだ!
だが、こっちも無抵抗じゃない…全武器を無力化すれば、相手だって何も出来ないだろ。


ドパパパパパパパパッ!!


前面からマシンガンの掃射が開始された。
だがその銃弾はひとつして俺たちに届く事は無く、全てが空中で停止し、やがてアスファルトに落ちる。

そして次の瞬間、敵兵たちの銃が次々と破砕されていった。
ミュウスリーの超能力で銃器は無理矢理ねじ曲げられ、引き裂かれる様に破砕している。
まるで粘土を千切るみたいに簡単にやってしまうのだから、恐ろしいもんだ。


敵兵
「クソッ! 第二部隊と交代だ!!」

ミュウツー
「悪いが寝ててもらうぞ!」


ミュウツーは武器を全て破砕したのを確認すると、弱めの『念力』で敵兵の頭を揺らし、次々に気絶させていく。
だが人数は多く、動く敵全てを倒すには至らなかった…


悠和
「そうか…エスパータイプなら、そういう戦い方も出来るんですね」
「だったら私は…!」


悠和ちゃんは隙を見てメモリを切り替え、飛行タイプに変化した。
そして、得意技の『エアスラッシュ』を真空波の様に放ち、周りの敵を的確に気絶させていく。
こちらは風圧で吹き飛ばしているだけだな…ほとんど『風起こし』だ。
こういう所は流石にシルヴァディの汎用性…何気に悠和ちゃんも応用力は高いよな~


ミュウスリー
「ンー…手加減、難し、い」


「ミュウスリーは無理するな、万が一失敗して殺したら、自分が辛くなるぞ?」


ミュウスリーは少し悲しそうだった。
本人的には役に立ちたいんだろうが…クローンと言えども人は人。
その手をわざわざ汚す事は無いんだ…

戦わないで済むのなら、それに越した事は無いのだから。


ミュウツー
「ちっ…第二波が来るぞ!」


直後、俺たちの近くで大爆発。
俺は悠和ちゃんに支えられ、何とか吹き飛ばされずには済んだ。
俺は何事かと思って前を見る、するとそこには驚愕の兵器が立ちはだかっていた…



「せ、戦車だとぉ!?」


そう、それは紛れもなく戦車だった。
それもいかにも最新式です…みたいな見た目の銀色の装甲。
そいつの砲身が、真っ直ぐにこちらを向いている。


ミュウツー
「やれやれ、マシンガンの次は戦車かい…つくづくどうしようも無ぇ連中だな」


ミュウツーは顔をしかめて数歩前に歩き、あえて戦車の前に立つ。
どうやらやる気らしい…流石は最強のポケモン、ミュウツーよ。
戦車はそれを見て、問答無用で砲弾を放った。
だが、ミュウツーの目の前でそれはあっさり止まり、マシンガンの弾と同様、空中でピタリと制止する。
そして砲弾は逆に戦車に向かい、戦車のキャタピラに直撃して爆発…脚を潰した。
ミュウツーはそのまま右手を前にかざし、手を握り込む様な動作をする。
すると、砲身は超能力でねじ曲げられそのまま使用不能に…ミュウツーは瞬時に機銃も破壊した。

これで戦車は見事なまでに無力化したな…ミュウツーは戦車よりも強い!



「男なら、拳ひとつで勝負せんかい!!」

ミュウツー
「まぁこちとら女だがな…」

ミュウスリー
「勝、ち~♪」

悠和
「あ、あはは…」(^_^;)


悠和ちゃんは呆気に取られていた。
悠和ちゃんでも、やろうと思えば戦車位壊せるとは思うが、流石にミュウツーの鮮やかさと比べるのは酷か…
さて…まだまだ敵兵は多い、今度はバズーカやロケットランチャーまで携行してやがる…対人兵器と考えたらやりすぎだぜ。
まぁ…もはや、ミュウツー>戦車>その他になってるから怖いモン無いが。

前に大勢で攻められたらヤバいって考えてたが、コレを見たらもうどうにもならん気がして来たな。
今更ながら、エスパータイプは反則だわ…



………………………



ミュウスリー
「ンー!」

悠和
「はぁ!」


今度は、悠和ちゃんとミュウスリーが的確に武器を破壊していく。
ミュウツーは皆を超能力の壁で護り、逆にサポートしていた。
しっかし、多いな数が…もう30人以上は無力化してるのに。

俺は少し焦る…いくらなんでもこっちにはPPがある、いずれは限界が来るはずだ。
対して相手は、下手すりゃ青天井の兵隊数。
もしかして、敵は初めから倒すのは無理と解ってて、消耗戦を仕掛けてるんじゃないのか?
これだけやっても勝てないなら、戦うのは無謀だとフツーは気付く。
なのに、敵兵は何も恐れずに攻撃して来る…奴らに恐怖は無いんだろうが。

とりあえず、俺はミュウツーを見てこう言った。



「ミュウツー! PPは大丈夫か!?」

ミュウツー
「あまり余裕は無いな…だが、やはりそれが目的か?」
「しばらく現れなかった分、兵を蓄えてやがったな…!」

ミュウスリー
「ンー…敵、まだまだ…い、る」

悠和
「くっ…! こっちもいずれPPが切れる…別の技で代用しないと!」


やはり悠和ちゃんが先にそうなったか。
ここまで『エアスラッシュ』1本で戦ってたからな…
ミュウツーたちみたく、燃費の良い技で対応出来ないのはややマイナスか。

とはいえ、シルヴァディは他にも多彩な技を使える、悠和ちゃんはまだ戦う事が出来るはず。
しかし無理はイカン…このまま強行突破は避けるべきだろう。


ミュウツー
「ちっ、マズイな…一旦テレポートで逃げるぞ!?」


「ああ、頼む!」


俺たちは一旦テレポートで逃走した。
今回はこっちの作戦ミスだ…正面突破は流石に無理がありすぎた。
作戦を練り直さないとな…

しかしテレポートと言っても、あくまでポケモンの技としての『テレポート』だ。
つまり、前に立ち寄った場所にしか戻れない…よって、移動先は『こすぷれ~ん1号店』って訳だな。

…古い時代の○ーラ仕様を未だに貫き通しいているポケモンには頭が下がるぜ!



………………………




「くそ…あんなに数を投入してくるなんてな」

ミュウツー
「全員殺して良いなら、少ないPPで全滅させる事も出来るんだぞ?」


「…ダメだ、それを許すつもりは無い」
「俺は、お前たちにそんな業を背負わせたくない!」


ミュウツーは深いため息を吐く。
そして顔に手を当て、不機嫌そうにこう言った。


ミュウツー
「どの道、私たちはもう過去に何100人も殺してる…」
「今更だぞ? それでもお前はそんな温い事を言うのか?」


「そう、俺は無益な殺生は望まぬのだ!」

ミュウスリー
「ワタシ…さと、し…スキ」
「だ、から…頑、張るぅ~」


そう言って、ミュウスリーは俺に抱き付いて来た。
それを見て悠和ちゃんは笑い、ミュウツーはまたため息を吐く。
そして俺はミュウスリーの頭を撫でてやった。


ミュウツー
「時間が惜しいっていうのに…」

悠和
「でも、少しでも休まないと回復は出来ない」


「とりあえず移動しよう…もう、ここは安全とは思えないし」


俺は皆と一緒に、今度は慎重に外に出た。
そして敵に出会わない様、ミュウツーのナビで移動して行く。
俺たちはまず、デパートを目指す…駅前に近く、潜伏するなら好都合だと踏んだ。

幸い、ミュウツーが敵を関知出来る為、迂回するのも容易だ。
ミュウスリーの探知はここまで精度が高く無さそうだったからな…

とはいえ迂回する以上、時間は倍以上かかるのがネックだな。
俺はミュウスリーの超能力で持ち上げられ、高速で街を移動していた。
その速度は、少なくとも車の制限速度を軽く越えてる速度であり…車だったらスピード違反とか危険運転とかで捕まるラインだろう。

まぁ、当然このハリボテ世界にそんな違反切る真面目人間はいない訳だが…


ミュウツー
「よし、こっちだ!」


「このまま裏側に回ろう! 敵は近くにいるか?」

ミュウツー
「いや、大丈夫だ…多分位置もバレてない」
「今頃、奴らは商店街を中心に捜索してるだろ」


とりあえず、俺たちはまだ安全と思われる駅近デパートに辿り着いた。
ここはモール型ショッピンセンターの形態だから、中は凄まじく広い。
内装や商品もまとめてコピーされてるなら、多分食事も取れるはずだ。
ミュウスリーも大分疲れ始めてる…相当燃費が悪いみたいだから、早めにエネルギーを補給した方が良いだろう。



「そういえば、ミュウスリーのエネルギー補給って、どうしてたんだ?」

ミュウツー
「基本的には食事を取れば回復する…取れればな」


ミュウツーは軽くそう言うものの、顔は暗かった。
逃亡生活って言ってたし、食う物には困ってたんだろうな。
ミュウスリーもガリガリだったんだし、それだけ食う物が無かったって証明だ。

まぁ、とりあえずそれならそれで、当面の目的は決まったな。



「ミュウツーは索敵を頼む、そのまま食事を取れそうな店に入ろう」

悠和
「色々ありますね…どこにします?」


俺は、なるべく外からは見えにくそうな場所を選ぶ事にした。
そこで、ふと目に入ったのは小さな料理店。
どうやら中華系の店の様で、店全体が暗めの色合いであり、中の様子が解りにくくなってる。
これなら簡単には見付からないだろう…



「よし、ここに入ろう…鍵は開いてるし」

悠和
「恐らく、営業中にコピーされたのでは?」
「でも、そうなると食材が放置されてるかも…」


悠和ちゃんはさらりと怖い事を言う。
だが、予想に反して中は特に不快な臭いはしなかった。
テーブルはいくつかあるが、何も乗ってない…客がいなかったのか?
それとも、コピペには何か条件があって作られるんだろうか…?
少なくとも、完全コピーとは思えなくなって来たな。


ミュウスリー
「ン~…おな、か…空い、た」


「ああ、ちょっと待てよ? すぐに作ってやるから!」
「悠和ちゃん、中華は大丈夫? 何なら手伝うけど…」

悠和
「大丈夫です、料理の基本はちゃんと押さえてありますので、ひとりでも平気です!」
「聖様は、ミュウスリーを見ててあげてください♪」


そう言って悠和ちゃんは自信満々に厨房に向かった。
流石は愛呂恵さんの直弟子…頼もしい限りだ。
あれで、しっかりと愛呂恵さんにも認められる位には料理出来るんだよな…

俺はとりあえず安心し、棚からグラスを見付け冷水機から水を注ぐ。
そして、それをミュウスリーたちに渡してやった。


ミュウスリー
「んくっ! んくっ!」

ミュウツー
「…この世界だと、水は簡単に出せるんだな」


「そっちの世界だと、水は貴重だったのか?」


俺が聞くとミュウツーはいや…と否定し、水をゆっくり飲んだ。
別に貴重って訳じゃないのか…
それとも別の理由が…?


ミュウツー
「貴重と言うわけじゃないが、水は全て管理されていた」
「私たち戦闘用ポケモンは、上から許可無く水を飲む事は禁止されていたからな」
「水源も全てが管理され、迂闊に近付けば即処刑される程の徹底さだった…」


ミュウツーは思い出して俯く。
相当辛かったんだろうな…ミュウツーとはいえ生き物だ、水を飲む事だって重要だろうに。
ミュウスリーは既にグラスの水を飲み干していたが…少し痩せて来ている。
若干、頬の辺りが痩せ始めている様に見えるな…

エネルギー消耗が激しいって事は、そのまんまカロリー消費が激しいって事なのかも…

俺はそんなミュウスリーを心配し、自分でも動く事にした。



「待ってろ、先に軽く食べられる物を持って来てやる」


俺はそう言って厨房に入る。
悠和ちゃんは大きな中華鍋を振り、大きな音をたてて炒飯を炒めていた。
あれならすぐに出来そうだ…俺はとりあえず冷蔵庫を見る。

おっ、キムチ発見♪ 他にも枝豆とか麺類もあるが…とりあえず俺は漬け物をいくつか拝借し、皿を見付けてそれ等をトレーに乗せた。
箸もとりあえず3本…よし、これで良い。

後はドリンクサーバーからジュースを淹れてやろう♪



………………………



ミュウスリー
「…ンー? これ、どう…する?」


「今から教えてやるよ…まず、こうな?」


俺はミュウスリーの背中に回り、ミュウスリーの右手に箸を持たせる。
そして正しい持ち方を覚えさせ、俺はその手を握ったまま漬け物をひとつ摘まんで見せた。
そしてそれをミュウスリーの口元に持って行く…ミュウスリーはそれをポリポリと食べる。

少し顔を歪めたな…始めてのキムチは辛かったか?



「とりあえず解ったか? 今度は自分でやってみな」

ミュウスリー
「ン…ウ~」


ミュウスリーはプルプルしながらも、拙い箸捌きでキムチを摘まんだ。
そして、それをゆっくり口元に持っていって食べる。


ミュウスリー
「~~! ン~、辛、い…」
「でも、美味…し、い♪」


ミュウスリーはキムチを気に入ったのか、少しづつ食べていった。
合間にピーチジュースを飲み、それも幸せそうに飲んでいる。
ミュウスリーにとっては、食べる事は純粋に幸せなんだろうな。


ミュウツー
「む…確かにこれは辛いな」
「しかし、箸とは便利だな…こういう細かい食材を取りやすい」


ミュウツーはあっさりと箸を使いこなしていた。
この辺は何気なくやるんだもんな…ミュウスリーも覚えるのはスゴく速いけど。
ミュウツーは見ただけで簡単に模倣出来るんだから、やっぱ天才系って感じはするな…


ミュウツー
「成る程、人間はこんな食べ物も食っているのか」


「口には合ったか?」

ミュウツー
「ああ、悪くない…野菜は食い慣れてるしな」

ミュウスリー
「ンー…無く、なった」

悠和
「お待たせっ! とりあえず炒飯です!」


悠和ちゃんが、炒飯を完成させて持って来た。
かなり大きめの皿に山盛りの炒飯が乗っており、一体何人前あるのか一目では解らなかった。

ミュウスリーは目をキラキラさせ、涎を垂らしている。
うむ、これは良い匂いだ…間違いなく美味いと断言出来る。
悠和ちゃんは別の取り皿を俺たちにそれぞれ渡し、全員にレンゲを配った。
そして、予想通りミュウスリーが固まった。



「ほら、こうやって掬うんだ…で、皿に乗っける」


俺は、手本として取り皿に炒飯をある程度乗せた。
それを見て、ミュウスリーも炒飯の山を崩していく。
俺と比べてもかなり多目に盛り、ミュウスリーはそれをパクリと一口。
そして例によって顔を幸せそうにする…見てて飽きないなホント。



「ほら、ミュウツーも早く取らないと無くなるぞ?」

ミュウツー
「あ、ああ…」


ミュウツーもミュウスリーの食いっ振りにはタジタジか…
昼でも1度見てただろうに、やはり慣れてないとこういう反応するわな。
まぁ、こちとら守連で訓練されてるから、これ位の大食いは朝飯前だ。
ミュウスリーは燃費の悪さが大問題なんだが…



「ミュウツーはここまで食べないよな?」

ミュウツー
「それはそうだろう…体に入る分しか食えないんだから」


そりゃごもっともだ…とはいえ、世のフードファイターたちは胃が改造されてるらしいからな。
本来入りそうにない量が平気で入っていくんだから、凄まじいものよ…

結局、俺とミュウツーはそこそこに炒飯を食べ、ミュウスリーはペロリとあの山の7割を平らげてしまった。
もうすっかり顔もふっくらしてきたな…燃費が悪い分、すぐに腹が減るのは本当に悩み所だが。

ミュウツーが暗い顔してたのは、そもそもミュウスリーのこの大食いのせいで困窮してたせいなのかもしれない…と、俺はひっそりと思うのだった。


悠和
「餃子も出来ました! 拉麺もすぐにいけます!」


悠和ちゃんは大忙しだな…炒飯がそれ程時間稼ぎにならなかったし。
俺は今度は餃子の食べ方をミュウスリーたちに教えた。
例によってミュウスリーはこれも大満足。
ミュウツーも文句は無い様で、それなりに美味そうな顔をしていた。

そのまま、悠和ちゃんはひとり大忙しのまま夕飯は終了する。
結局、悠和ちゃんは最後にひとりで黙々と食事を食べていた…



………………………



ミュウスリー
「す~……す~……」


「ホント、食ったらすぐ寝るよな…」

ミュウツー
「元々、大量のエネルギーを常に消費して体を維持してるからな」
「私たちにとって、眠る事は力を蓄えるのと同義だ」
「特に、普段から燃費の悪いミュウスリーは、そうしないと極端に活動時間が短くなるからな…」


そして…その残り時間も、もう22時間程か。
富士が駅前にいるなら、何とか明日には合わないと…



「よく考えたら、ミュウスリーってメガ進化してるんだよな?」

ミュウツー
「ああ、そうだ…どうした今更?」


「…何で『不眠』の特性なのに眠れるんだ?」

ミュウツー
「………」
「それは…考えた事が無かったな」


あまりにもちょっとした疑問だった…
とはいえ、人間なんだしやっぱり睡眠はいるって事だろうが。



「まぁ、人間は必ず睡眠を取らなきゃ生きていけない種だからな」
「何日かは徹夜出来たとしても、やがて脳の機能が低下してその内倒れてしまう」
「いかに不眠の特性でも、自然に眠る欲求には逆らえないのかもしれんな」


恐らく、状態異常としての眠りは効かないのだろう。
でも人間の体な以上、必ず体は睡眠は取る。
自己再生だって無限には使えないし、それで睡眠を削るのは無理だって事だろうな。


ミュウツー
「思えば、PPという概念も謎が多いな」
「ただ時間が経てば回復するという訳でもなく、ちゃんとこうやって休息を取る事で回復する」


「ゲームでもそうだもんな…ポケモンセンターでもあれば即回復も出来るんだろうけど」
「基本的には、ゆっくり眠ったりして休む事が回復になるもんな…」

悠和
「これも、私たちに課せられたポケモンとしての機能なのでしょう」
「私は、そう思います」


俺もそうだな、と呟く。
ポケモン娘は本当に謎が多い…考えれば考える程、疑問が出て来る。
だけど、それも確かに彼女たちの機能なんだろう。

人間として生きていく為に、皆は人の機能を得た…
ポケモンとしての特徴も、ある程度保持したまま、だ。
だが…その中でも大きくゲームと食い違うのは、繁殖能力。

本来、ミュウツーなんかはタマゴ未発見グループであり、ゲームバランス的に子供は産めないとされている。
しかし、ここにいるミュウツーはあの幻のポケモンであるミュウの実子であり、体外受精で産まれたフラスコの中の子供である。

父親の事はは知らないそうだが、少なくともゲーム的に子供は作れなくても、現実には作れてしまう…
藍は限りなく人間に近い身体構造だと言っていたが、本当に人間と交配は可能なのかもしれないな…



「………」


俺は、安らかに眠るミュウスリーの頭をそっと撫でてやった。
すると、ミュウスリーは俺の服の袖をギュッ…と強く握る。
それを見て俺は思う…子供って、きっとこうなんだろうな、と。

俺は、本当の親を知らない…でも、親にはなれるのかもしれない。
俺なら、この娘の父親になってやれるのだろうか?
かつて、勇気さんが姉さんをそうした様に…
…姉さんが、俺の母親代わりになってくれた様に。

言ってて、少し可笑しかった…
流石に見た目がロリっぽくとも、体はしっかり成人してるミュウスリーに対し、高校生の俺をパパと呼ばせるのは犯罪だろ?…と。
やっぱり、家族で良いよな…? 血の繋がりは別に無くても良いし。
だから…俺は、この娘の家族になってやると決心した。
もちろん、最大限の愛情を注いでやって…





『ミュウスリーの残寿命、残り22時間』










『とりあえず、彼女いない歴17年の俺がポケモン女たちと日常を過ごす現実。やっぱり後悔はしていない』



第3話 『もうひとりの特異点、狙われる夢見の雫』


To be continued…

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。