毎週木曜日に更新とは何だったのか?(汗)
←5日遅れ
何とかチーム崩壊は免れたけれど、あのチカの積極的な行動にはいつもビックリするばかりだな………。この先、別の意味で大変そう。
「ようやくたどり着いたよ。5階に。少しずつ前に進んできてる。がんばるぞ、がんばろう」
「うん!」
ここは“ハガネやま”の5階。とはいっても、このダンジョン内から外を眺めることは出来ないので、あんまり実感は無いけれど。相変わらず岩なんかがゴロゴロ転がっているだけの殺風景な景色が広がるだけだ。間違いなくこの4日間で最も寂しい景色。日中だと言うのに外からの光が入らず、薄暗い感じがますますそんな気分を増長させる。
(もしかしたらこの景色のせいもあるのかもな。ボクのこの言い様の無い不安も。早いところ脱出したいな………。なんか気分が重くなっていくし)
ボクは何だか足取りが重くなる。自分がこのように感じるってことは、最上階でエアームドの人質になっているディグダはもっと辛く怖い想いしてるだろう。早く父親のダグトリオのもとへ帰してあげたいものである。
「ユウキ、待って!待ってよ!」
「チカ…………はぁ~」
チカの声がした。ボクは一旦足を止めて後ろを振り返る。個人的には一刻も早く先へ進みたいのだが、彼女はなぜかいつもそのリズムに乗り遅れる。もちろん彼女の役目は“リーダー”役のボクをサポートする事。なので、ボクの周りをカバーするために、周囲が確認出来るように行動してるんだろう。ある程度は仕方ないと思ってる。しかし、それにしても遅い感じがする。これからのことを考えたら、あまりこの状況を頻発するのは好ましくない。そうやって考えたボクは注意をする。
「チカ。自分の役割が大切なのは分かるけど、ボクにしっかりついてきてよ?万が一バラバラになっちゃったら大変なことになるし」
「あ、ゴメンねユウキ。そういう訳じゃないんだ」
「え?」
ボクは拍子抜けしてしまった。彼女は恥ずかしそうに苦笑いを浮かべると、次のように話してくれる。
「なんかね、こうしてユウキと救助活動が出来るのって幸せなんだなぁって思っちゃって。そしたら自然と楽しくなってきたんだ」
「そうなんだ」
ボクはつい生返事になる。なんでまたこのタイミングでそんなことを………と、ボクは思った。自分と救助活動出来るのが楽しいと感じてくれるのは嬉しい話。でも、先ほどの「怖い気持ちをしながら助けを待ってるポケモンがいる」ということを考えると、心の底からその感覚にはなれない。だからと言ってここで変な事を言えば、また衝突につながるだろう。でも、言わずにはいられない。ボクって困った性格だな。
「先…………急がない?ディグダが待ってるんだし。他のポケモンの姿も見えないし、今がチャンスだと思うんだけど…………」
「そんなことわかってるよ…………!」
やっぱり。ボクは彼女をまた不機嫌にさせてしまった。早足になって自分に近づいてきてくれたものの、先ほどまでの笑顔はすっかり消えてしまった。
「わかってるよ…………そんなこと。言われなくたって…………ただちょっと、幸せな気分になりたっただけだよ…………。自然災害がもうウンザリだから」
「チカ…………」
ボクはその言葉に何と返せば良いのかわからなかった。そう言えばそうだよね。チカや他の救助隊のポケモンだって、本当はきっと自然災害の事で不安なのかもしれないのに、その気持ちを隠して他のポケモンのために尽力してるんだよね。ボクはまだこの世界で過ごした時間なんて全然無いに等しいけれど、周りはそうじゃないんだよね……………。
(それだけでも凄いことなのに、チカの場合は元々人間だったボクとチームをしてくれてる。しかも自分を振り回すようなことをしたって、ずっと信じてくれてる…………。ボクには出来ないや………)
ますますボクはチカの「さりげない凄さ」を感じていた。同時に自分の未熟さを感じる。それが仕事を果たすためだからとはいえ、そんなささやかな彼女の幸せな気持ちを理解しなかったことに。少しだけ不安な気持ちを忘れることが出来たことを邪魔してしまったことに。
「ごめん、チカ………」
ボクは彼女に聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
(それにしても静かだな。不気味なくらいに………。誰もいないんだろうか?それなら別にいいんだけど)
ボクは首に巻いた赤いスカーフを掴みながら後ろを振り返る。その行動から困惑なボクの気持ちを察してくれたのだろうか。彼女はまだご機嫌斜めなのかもしれないのに、何も言わずに真剣な眼差しで頷いてくれた。
……………と、そのときだった。
ガラガラガラガラ!!!
「チカ、上!!危ない!!」
「え?………!!」
物騒な物音を耳にしたボク。ふと天井を見ると、爆発が起きたわけでもないのに何故か崩れて岩が落下してくるのが目に入った。その真下にはチカが…………。「危ない!」と、咄嗟にそのように感じたためその危険をチカに知らせた。しかし彼女は動揺しているのか、その場に立ち尽くしたまま何も出来ずにいた。このままでは岩の下敷きになってしまう………!!
「えーい!!間に合え!!“ひのこ”!!」
落下している岩を砕こうと考えたボクは、“ひのこ”を無我夢中で発射した。頼む、なんとか間に合ってくれ………と必死に考えながら。
(ユウキ……………私だって!!!)
そんなボクの姿を見て何かを感じたのだろう。チカは全身に力を込めて赤いほっぺたから強烈な“でんきショック”を繰り出した!自分の頭上、落下してくる岩に向かって。………するとどうだろう…………。
ドオオォォォォォン!!ガラガラガラ!!
「よし!」
「やったあ!!」
“ひのこ”と“でんきショック”が命中した岩は見事に粉砕された。思わずその場でガッツポーズをするボク、そして満面の笑顔を浮かべるチカ。
「…………チッ、なんだよ。あいつらオレの技………粉砕しやがったじゃねぇかよ!!」
「バーカ、お前の技の威力が足りねぇんだよ!」
「誰だ!?」
そこまで広くないこのフロア。その奥から何か声がするのをボクは耳にした。すかさず声を張り上げる。ボクたち救助隊のことを快く思ってないここのポケモンたちなのか、それとも単なるイタズラなのか。確かなことはわからないが、このままだと自分たちの身が危ないのは確かだった。
「正体を知りたいのか?オレたちはイシツブテだ。ここに住むポケモンだぜ」
「残念ながら先には進ませないからな!お前らみたいな正義のヒーロー気取りで、俺たちがどれほどの迷惑かかってるか………教えてやる!」
「うわっ!!」
「ユウキ!!」
ボクたちの前に姿を現したのはがんせきポケモンと呼ばれる種族のポケモン、イシツブテだった。彼らはこのように言うとボクたちの意見を聞こうともせず、“たいあたり”で突っ込んできた。直後に鈍い音がした。正面にいたボクはそれを避けることが出来ず、もろに直撃してしまったのである。
「ユウキ!大丈夫!?」
「そこのピカチュウ、よそ見してる場合なんてあるのか?“いわおとし”!!」
「チカ!!危ない!!」
「!!?」
攻撃を受けてしまったボクを助けようと駆け寄ってきたチカ。しかし、そんな彼女に再び頭上から岩が落とされた。ボクの声に急に表情が強張る。……………しかし今日のチカは違った。そこからキリッと真剣な表情へと変化していき、再びその落下してくる岩に“でんきショック”をぶつけて破壊したのだから。
「生意気なヤツめ…………!!」
「!!?」
それに対して面白くないように感じたのはイシツブテ。今度はチカに向かって“たいあたり”………いや、それよりも素早くパワーがある“とっしん”をしたのである!彼女はなんとか自慢のスピードを活かして回避することは出来たのだが、ちょっとした怖さを感じていた。
「良かった………。チカが無事で」
ボクは安堵する。同時に確実に彼女は強くなっているんだと感じる。何せ相手は自分のでんきタイプが全く通じないじめんタイプも含まれてるのだから。普通であれば動揺しても不思議ではない。それを一切感じさせないあたり、彼女には確かな自信があるのかもしれない。
(だとしたら、チカがボクに“一緒に頑張ろう”って言うのもわかるな……………。やっぱりボクって未熟者だよな…………)
皮肉なことに彼女が活躍を見せれば見せるほど、ボクの情けなさが浮き彫りになっていく。それがボクの心を苦しめる。リーダーという役目を任せられながら何一つ出来てないことが。
(でも、今は我慢しなきゃ。チカは元々救助隊になりたくて色んな努力をしてきたのが、こうやって今報われて輝いてるだけなんだ。ボクだって負けないで努力すればきっと…………)
ボクは握り拳をゆっくり作って、その場にゆっくりと立ち上がる。今一度キリッと真剣な目付きをして、目の前で行く手を阻むイシツブテに相対する。
「そこをどけるんだ、イシツブテ」
「ああ!?誰に命令してんだ?まさかオレたちがお前らより体が小さいからって甘く見てんだろ?」
『!?』
イシツブテのその言葉にボクらは嫌な予感を覚えた。しかしここで怯むわけにもいかない。相手がどのように動いても大丈夫なように、左右対称なフォーメーションで身構えていた。
だが、そこから動きは全くなかった。無音で時が流れる。焦れったい。そのように感じたボクは先手攻撃を仕掛けたのである。
「“ひのこ”!!」
「ユウキ!!」
「オレたちにほのおタイプの技で挑むなんて大した度胸だな!?」
「だけどそんなもん返り討ちにしてやるわ!」
「何するつもりだ!?」
「ほのおタイプの技の正しい使い方ってヤツを見せてやるんだよ!!」
「なんだって!?」
ボクは彼らの言葉に動揺した。まさかとは思ったが、次の瞬間にそのまさかが起こってしまう。
「“ほのおのパンチ”!!」
「うわっ!!?」
なんと、イシツブテの拳からメラメラと赤い炎が点火したのだ。そのまま殴られたので当然体は痛む。
けれどもそんなことより、ジグザグマたちと遭遇したときに“みずのはどう”を繰り出されたように、予想外の攻撃をされたことにボクは一瞬怯んでしまう。
「それくらいなんだって言うんだ!!もう一回!!」
「させるかよ!!“ロックブラスト”!!」
「!!!?」
「危ない!!“でんげきは”!!」
ボクはもう一度“ひのこ”を飛ばそうと試みた!!そのときもう一匹のイシツブテから、まるでマシンガンのように硬い岩石をいくつか連続で発射されたのである!!たまらずそばにいたチカが必ずターゲットに的中する電撃、“でんげきは”で援護射撃してくれた。
バリバリバリバリ!ドガアアアアン!!
バリバリバリバリ!ドガアアアアン!!
バリバリバリバリ!ドガアアアアン!!
「ユウキの邪魔は私がさせない!!でんきタイプの技があなたたちに効果が無くたって、後ろから援護するんだから!」
「チカ…………」
ボクは彼女の表情や言葉、そして後方から支えてくれることに頼もしさを感じていた。同時にこうしちゃいられないと思い、再度イシツブテたちに攻撃をしかける。
「“ひのこ”ーーーー!!」
「無駄だって言ったんだろう!」
「“マグニチュード”!!!」
彼らは次に足元を大きく揺らしてきた。バランスがうまくとれず、ボクは技を外してしまう。それだけでは済まなかった。その衝撃によって両サイドの壁に大きな亀裂が生じて壊れたのである。無論それはボクたちに向かって、新たな“いわなだれ”として襲ってくることを意味していた。
ドドドドドドドドドド!!
「ちくしょう!!“ひのこ”!!」
「“でんげきは”!!!」
予想外の展開。ボクとチカは急いで自分たちの技を迫ってくる岩に向かって放った。今回はイシツブテたちが技で繰り出した岩よりもサイズが大きかったため、狙いを定めること自体はさほど難しくはなかった。しかしさすがは壁を作っていた岩石。今までのように簡単に粉砕することが出来なかった。その結果、ボクたちは岩の直撃を避けることが出来なかった。
「ぐあああああ!!」
「きゃああああ!!」
鈍い痛みがボクたちを襲う。堪らず叫ぶ。岩はそのままボクたちの来た道を塞いでしまった。下敷きにならずに済んだことが救いかもしれない。しかし危機はそれだけでは済まされなかった。
「寝転がってる暇なんてあるのかな?ま、俺らには都合良いけどよ!」
「きゃっ!!くっ…………!!」
「チカ!!?」
2匹いたイシツブテのうち、1匹がチカに近づいてきた。その直後に“ほのおのパンチ”を彼女の体へ振り降ろたのである。ただの痛みのみならず灼熱の炎による苦痛も重なったため、これにはチカも苦悶の表情へと変わっていった。きっとダメージも相当だろう。
(またか…………!ちくしょう!)
ボクは心の中で叫んだ。何もカバー出来ない自分が悔しい。どこまで彼女に一方的に負担をかけてるのだろうか。正に無力である。
…………そんなボクにも敵の脅威は迫ってくる。もう一方のイシツブテが“ロックブラスト”を繰り出してきたのだ!!!
ズガガガガガガガ!!
「ぐあ!!ぐっ!!があ!ち、ちくしょう………!」
「ユ………ユウキ!?」
心配そうにチカが声をかけてくる。彼女も先ほどのダメージが残ってるせいか、思うような援護が出来ずにいた。しかし、それでも道具箱を開けて何かこのピンチを回避できるものは無いのかと模索していた。
(そっか………。昨日はカクレオンのお店でお買い物もしなかったし、今日は朝早くからここに来てるんだった。“オレンのみ”が一つもないや………)
…………こうなれば私にもどうすれば良いのかわかりませんでした。既に“ロックブラスト”をモロに受けてしまった彼もボロボロ。事態は深刻化するばかりでした。考えてみれば最初のジグザグマとのバトルからまともに回復出来てないのですから、ユウキも私も本来の力を出し切ってるかさえも分かりません。
…………こうなるとバッジの効力のひとつ、自然回復に委ねるしかないわけですが。
(そうなると回復するまでにパワーの強い技を受けちゃうと倒れちゃう!!それだけは避けないと…………!!)
どうしたら良いのかわからなかった。半分仰向けになった状態で悲観的になった私は、俯いてしまいました。そのときです。彼の「危ない!!」という叫び声が聞こえたのは。
「お前からくたばれ!!“ほのおのパンチ”!!」
「い…………いやああああああ!!」
……………メモリー30へ続く。
1日1000字書くのも大変ですね。6000字目処でやってみたいと思います。