今回はクーア視点です。前々回から続いた入れ替わり騒動完結です。
とある町にて......すっかり日も傾き、徐々に灯りもつきはじめてるそんな頃。夕焼けに照らされる町並みも、明るい時間帯とはまた違った雰囲気できれいだった。
空を駆けるヤミカラス達もまた夕刻の訪れを告げていた。
そして、私達はというと待ち合わせ場所へと向かっている。ちなみにラルナがあの後あちこち回った結果、少し遅刻しそうだ。
やがて待ち合わせ場所にたどり着いた私達。そして、そこで待っていたのは......
「やっと追い付いたよ......」
「みんな久しぶりだね!」
「まったく遅いぞ。まあ久しぶりだな!」
「アリサ、ラルナ、クーア久しぶりだね!」
そう、フウト達だ。ちょうどこの町にいると聞いて待ち合わせることにしたのだ。
ラルナはやや息切れした様子で、ぜえぜえと荒い息づかいで呟く。一方のアリサは元気よく久しぶり?の再開を喜んでいた。
そして、かわいい服を着ているミライはジト目でため息をつきながら、フウトは少し遠慮がちに元気よく言う。
「まったく......ラルナ遅いぞ」
「ごめ~ん! てへぺろ。って......えっ?」
「あれ......?」
ミライは少し呆れたような表情でラルナに言うと、それに対してラルナ(見た目はアリサ)はいわゆる、てへぺろで誤魔化す。
「みんな久しぶりだね......って、ちょっと待って......?」
「クーアどうしたの?」
少し久しぶり? の再会を喜ぶ私達だったが、ちょっと待った......何か違和感を感じるような。
「フウト、ミライ...なんか喋り方いつもと違ってない?」
二匹の口調や雰囲気がいつもと異なるのだ。なんとなく理由が分かるような気もするけど......まさかね。
一方、フウトとミライはというと何かを思い出すと、ハッとした様子。
「ふふふ、その謎は名探偵のこのボク......いや私、ラルナが......」
「えっ......?」
ラルナが、いつの間にかどこかから取り出した探偵っぽい帽子をかぶりそう言うと、ミライは少し驚いた表情でそんなラルナを見ていた。
さらに続けてアリサもラルナの謎解きに参加したいと言い出して。
「なんか楽しそう! 私も参加させて!」
「ラルナいったいどうしたんだ......まあかわいいけど。口調が女の子だぞ」
「私は女の子だよ!」
「ええっ......もしかしてお前......ラルナの裏人格か?」
「大正解~! えーと名前は......」
「ちょっと待った! 何勝手なこと言ってるの~!? 勝手に私の設定増やさないでよ~!」
今の状況を利用してたくみにからかってくるアリサ。恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらそれを慌てて止めようとするラルナ。
二匹が入れ替わってることに気づいてないようで、さっきから戸惑いっぱなしのミライ。なんか今のミライはいつもに比べて目付きが鋭いような。
「おい、アリサ......ラルナいったいどうしたんだ?」
フウト達もやっと気づきかけてるようだ。一方の私も二匹の様子を見てある結論にたどり着く。やっぱり......きっとそういうことかな。なんかびっくりだけど。
「もしかして、フウトとミライ」
「アリサとラルナ」
「「入れ替わってる!?」」
私とミライーー中身はフウトだけどーーはほぼ同時にそう言う。なんと私達だけじゃなく、フウトとミライも入れ替わっているようだった。
なんとなくそうだとは思ってたけど......まさかそっちも入れ替わってたとはね。驚きを隠せない。
「なんだ、そういうことだったのか......まさかそっちも入れ替わってたとはな......」
「びっくりだよ! ところでフウトちゃんかわいいね」
さてミライとフウトの入れ替わりが判明したわけだけど、ということは今かわいい服を着ている......彼女は......。
「あんまり見るなよ......! 恥ずかしいから」
いやこの反応から察するに着させられたの方が正確だろうけど。
お互いの状況がわかると早速ラルナがフウトのことをからかってきた。フウトが対抗するように反論する。
「確かにかわいいけど......フウトちゃんって言うな。そういうお前こそとってもかわいいな! ラルナちゃん」
「私は男の子なの! ラルナちゃんじゃないもん!」
「ぷはははは......何その口調?」
「バカにしないでよ~! 私だってやりたくてやってるわけじゃないんだから!」
「いや......すっごく似合ってると思うよ。可愛くていいんじゃない?」
「あっありがとう......ってな訳あるかぁ! アルカ......?」
「そういうフウトちゃんこそ、その服とっても似合ってるね~! かわいいね~!」
「言ったなぁ! 見た目はかわいいというか美少女なのに性格は残念だね~」
「誰が残念だって! あと、フウトちゃんじゃないからな!」
一見すると、ミライとアリサが喧嘩してるように見える。なんかレアな光景だ。
「アリサ大丈夫?」
「私は大丈夫だよ!」
「それにしても二匹ともいつも以上にかわいいね」
「なんか、いいね」
ちなみに回りからは二匹の女の子が喧嘩しているようにしか見えなかっただろう(二匹とも本来男の子です)。
「こうなったら魔法でフウトもニンフィアにしてあげるもん!」
「ちょっと待てよ! それに、これミライの体だからな」
「もちろん一時的にだよ! フウトをもっとかわいくしてあげるんだから感謝してよね」
「感謝しないから! というか魔法なんて使えるわけないだろ?」
「ふふふ、私は魔法使いなのさ!」
「ニンフィアのフウト......見てみたい気もする」
ミライが何か言っていたけど......。それを聞いたラルナは「ミライも賛成みたいだし!」とますます強気に。
それよりもフウトはラルナの話を信じられない様子で。まあ無理もないけどね。そりゃいきなり自分は魔法使いだなんて言われてもね、まあそういう反応が普通だと思うけど。
私だって実際にそれを見るまでは信じられなかったんだから。
ジト目で見るフウトに対して、ラルナはどや顔で胸を張ると魔法を発動しはじめる。
するとラルナの手の近くに魔方陣が展開されて......
「えっ嘘......ラルナどうやって......?」
それを見たフウトは驚いたようで目を丸くしながらそれを見ていた。夢じゃないかと思い、ほっぺたをつねるが、
「いとぁい......」
一方のミライ(見た目はフウト)はその様子を目を輝かせながら見ていた。
「ちょっと待った…まさか本当にニンフィアにされるのか?」
フウトはかなり焦っている様子。
しかし、魔法は失敗して爆発を起こす。
「ああ、失敗しちゃったよ......残念」
ラルナは残念そうな表情をするが、フウトはというと助かった~という感じで少しほっとした様子。
あれ? その時私はあることに気づく。やがてラルナ達も気づいたようで。
「あれ......僕は...戻ってる?」
「あっ本当に戻ってる! よかった~」
「よかった...でもなんか寂しい」
「もう少し入れ替わっててもよかったかな?」
そう、入れ替わりが元に戻っていたのだ。フウトとラルナの男子二匹組は無事に戻ってよかった......と安心するが、ミライとアリサはというと、なんか少し残念そうにも見えた。
「ところでさっき本当に魔法を使っていたように見えたんだけど......あれっていったい......?」
「“ように”じゃなくて本当に魔法だよ! だって天才魔法使いマジカル☆ラルナなんだもん!」
「なるほどな......? まあよかったな...!」
「どう? 私すごいでしょ!」
そんなフウトにどや顔でそう宣言するラルナだったけど。
「なあ......口調が抜けてないけど?」
「ああ! もう演じる必要ないのに~!」
フウトに指摘されるとハッと気づいたようで、恥ずかしさに頬を染めると「そんな~」といった感じの表情を浮かべる。
何しろ朝からずっとその口調だったもんね。すっかり慣れてしまっていたのだ。
「やれやれ、これでいつも通りだ」
「いつも通りじゃな~い! やはり今の私の口調はなんか間違ってる......!」
「それじゃ延長しよっか? ボクはしばらくこの口調で大丈夫だよ!」
「私が大丈夫じゃないから! 延長しないで!」
「だいぶ暗くなってきたな」
「せっかくだから夜景でもみにいかない?」
「ボク賛成!」
「私もいいと思います......」
夜景をみた後は、この町に一泊することにして翌日はみんなで観光を楽しむ。
そして今は小高い丘の上にて。展望台からは町並を一望することが出来た。
「おお、すごいね......」
「町並みが一望できるね!」
思わず感嘆の声を上げるミライ。確かにいい眺めだね。吹くそよ風も気持ちいい。
他の町とはちょっと違った趣の美しい町並み、そして街中を流れる川、少し遠くの海まで一望することが出来た。
「この後どうする?」
ふとミライはそんなことを聞いてくる。
「そりゃ決まってるよ!」
「ああ、そうだな」
ラルナが即答すると、私も同意するように頷き、フウトもそれに同調する。
どうするって......もちろん、フウト達とも一緒に旅を続けるんだから!
その答えを聞いたミライは嬉しいのか思わず頬がゆるむ。
そして少しだけど笑顔を見せると
「それじゃ......みんなこれからよろしくね!」
「私達こそよろしくね」
フウト達も合流して私達のスタンプラリーの旅はまだまだ続くのだった。
続く......