最終章 第1話

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読了時間目安:53分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください


「これで、何もかも終わりだ…任務、完了……」

恵里香
「あっはは…まだ本命が残ってるよ~」


開幕のボケに恵里香がマジレスする。
ホント、マトモなツッコミが欲しい!
俺は、とりあえず守連を立たせてやる。
すると、守連は少々慌てながらもしっかりと立ってみせた。


守連
「…気が付いたら、皆いる?」

阿須那
「これでやっと揃ったな」

華澄
「はい…」

女胤
「ようやく…ですね」


理解が追い付いていない守連に対し、俺たちは気を引き締めた。
さて、問題はこれからだが…



「ちなみに、安全な世界で静養って…どこで休ませる気だ?」

恵里香
「とりあえず、敵がいなさそうな世界に送り込むよ」
「近い将来に滅ぶ世界っていっても、滅びのタイミングは世界ごとに意外とまちまちだからね」
「まっ、そこでゆっくり静養すると良い…」


そう言って恵里香は道を示す。
やれやれ…まっ、とにかくそこで全員の回復を待つしかない、か。
俺たちは5人でその世界へと向かう。
そして、恵里香の世界送りによって、俺たちは安全な世界へと送られた…



………………………




「…っ」

守連
「きゃぁっ!? 阿須那ちゃん、華澄ちゃん、女胤ちゃん!?」
「み、皆凄い怪我!! ど、ど、ど、どうしよう!?」


案の定テンパる守連、まぁ知らなかったろうからな。
俺はとりあえず周囲を見渡すが、何やらどこかの家の敷地内みたいだった。
そして人の気配を感じ、俺はスマホを耳に当てる。



「恵里香、誰か来るが…」

恵里香
『大丈夫、危険は無いはずだ…その世界の住人だよ、ポケモンだけど』


俺は成る程と思ってスマホを仕舞う。
そして俺は阿須那を背負い、守連には女胤を抱かせた。
華澄は俺が片手で抱き上げる。
くっそ…流石につらいな、まだまだ鍛え方が足りない証拠か。



「あっれ? 聖じゃん!」


「はぁ…? って、ゲンガーさん!?」


何と俺たちに近付いて来たのは、あのゲンガーさんだった。
パルキア城でメイドをし、そのリーダーをやっていた人。
仕事嫌いで愚痴ばかりなのに、その仕事内容は完璧だという、よく解らない人だ。

ちなみに今のゲンガーさんは私服の様で、今回はメイド服ではない。
見た目に合ったボーイッシュスタイルで、黒Tシャツに黒ズボンと黒攻め。
足にはサンダルを履いており、ここは気温の高い場所だと気付かされる。
暑いのが解ってくると、途端に秋服は暑苦しいな…


ゲンガー
「何でこんなトコにいるんだ? ここってアタシの出身世界だけど…」
「その4人が一緒って事は、訳有りか…しかも全滅寸前」
「しゃあない! ほら、 華澄貸しな!! アタシも手伝ってやるから!」


そう言って、ゲンガーさんは面倒そうに華澄を抱き上げ、ズカズカと歩き出した。
どうやら、行く宛があるらしい。
俺たちも無言でその後を付いて行く事に…


ゲンガー
「とりあえず、近くに屋敷があるからそこに行くよ?」
「そこの家主さんは無駄に人が良いから、優しくしてもらえるよ、きっと」


「…その人もポケモンなんですか?」


俺が聞くと、ゲンガーさんはそりゃそうだろ…とバカにした様に呟く。
って事は、ここも過去に俺が救った世界なんだろうか?
恵里香は世界ごとに滅びのタイミングは違うと言っていたから、ここではまだアルセウス配下は跋扈していないのかもしれないが。


守連
「………」


守連は不安そうな顔で付いて来ていた。
ゲンガーさんとは面識は無いはずだろうから、戸惑ってるのかもな。
俺がそんな風に考えていると、やがて大きな屋敷が見える。
西洋風の広い屋敷で、レンガで組まれてるな。
ゲンガーさんは華澄を抱いたまま、屋敷の鐘を鳴らす。


カランカランカラン!!



「はいはい…あらゲンガーさん、どうしたのその娘!?」
「凄い怪我じゃない! あら、後ろの方たちも!?」


何やら、お嬢様風の女性が俺たちを見て大層驚いていた。
年はそこそこ食ってる様に見えるな…大人って感じはする。
身長は160cm位、白いドレスに緑の短髪が印象的だ。


ゲンガー
「サーナイト、とりあえず救急箱すぐに持って来て!」
「アタシたちは応接室で応急処置するから!」


ゲンガーさんがテキパキそう言うと、サーナイトさんは慌てた様に走って行った。
あの人が例の家主さんか?


ゲンガー
「とりあえずこっち…中は広いから、はぐれないでよ?」


ゲンガーさんは本当に面倒そうに案内する。
とはいえ、仕事には全く不備が無いんだから恐ろしいモンである。



………………………



ゲンガー
「ふーん、そっか…クソ主人もちゃんと生き残ったか」
「ミミロップも名前なんてもらっちゃって…元気でやってたんだな」


ゲンガーさんは応接室のソファに、それぞれ傷付いた3人を寝かせて傷の消毒をしてくれた。
そして俺がここまでの話を聞かせると、ゲンガーさんは色々思い出している様だった。
その際に、サーナイトさんが持って来た救急箱から色々治療薬を取り出し、皆に処置していく。
会話しながらでもコレなんだから、この人本当に優秀だな…
気が付いたら、阿須那、華澄、女胤と包帯まみれになっていた。


守連
「あの、ありがとうございます」

ゲンガー
「ん? あぁ…別に良いよ、どうせもうやる事無いし…今は無職だけど、ぶっちゃけ暇なだけだわ」


そう言ってゲンガーさんは治療を終え、華澄を抱き上げた。
そして、俺たちに指示して阿須那と女胤もここから移動させる。
その際、ゲンガーさんは先頭を歩いたが、その背中は何故か寂しく見えた…



………………………



ゲンガー
「…とりあえず、この部屋で寝てればすぐに回復するだろ」
「どうせ、『眠る』で回復モードだろうしね」


ゲンガーさんはそこまで読んでいた。
まぁポケモンなんだし、回復に1番良いのは眠る事だよな。



「ゲンガーさんは、ずっとここにいたんですか?」

ゲンガー
「まぁね…10年は正直長いわ」
「前はパルキア様に拾われて…それで10年過ごしたからね~」

守連
「ゲンガーさんは、白那さんの事好きだったんですか?」


守連は何故かそんな質問をした。
それを聞いて、ゲンガーさんは頭を掻きながら面倒そうに答える。


ゲンガー
「まぁ、そりゃね…最初はそうでもなかったけど」
「産まれたばかりのアグノム様押し付けられて、ホント苦労したわ~」
「あのクソ主人、人の髪の毛何本引き抜いたか…! 今思い出しても腹立つ!」


ゲンガーさんはそう言うが、それでも何となく楽しそうな感じだった。
ああ、そうか…と俺は思う。

ゲンガーさんは、やっぱり寂しいんだ。
本来なら、10年前に白那さんに拾われた。
でも、今回は白那さんが世界を見限らなかったから、皆自分の世界でそれぞれの生活を過ごしている。

愛呂恵さんも10年かけて人生をやり直し、体を鍛えてメガストーンを探したと言っていた。
白那さんたちも、10年間訓練を続けていたんだ。
そして皆、未来の為に俺に力を貸してくれた…
それに答える為にも、俺は何としてでもアルセウスを倒さなければならない。


守連
「…ゲンガーさんは、今でも私たちが憎いですか?」

ゲンガー
「…さぁね、あの戦いからアタシは10年をまたやり直したけど、ホントに何も無かった…」
「ただ、普通に屋敷で生活して、普通に自堕落に生きて…」


「…そして、何もせずに滅ぶんですか?」


俺がそう言ってやると、ゲンガーさんは黙ってしまう。
そして、俯き…両手を合わせて強く握り込んでいた。
ゲンガーさんは、解っているんだ…そして、本当は何かをしたいはずなんだ。
だから、ゲンガーさんは内心憤っている。
ただ滅ぶのを享受出来るなら、あの戦いにあれだけ意気込みはしなかったはずなのだから。


ゲンガー
「…アンタはさ、何かを成し遂げようとしてんだよね?」


「はい、俺はもう全てを思い出しましたから」
「俺は、世界を救います…特異点の力を使ってでも」
「そして、助けてみせます…ゲンガーさんの世界も」

ゲンガー
「…!」

守連
「…ゲンガーさん、聖さんを信じてくれませんか?」


守連は懇願する。
それは、純粋な期待だった。
守連には当然恨みつらみは無い。
ただ、ゲンガーさんに期待しているだけだ。


ゲンガー
「信じろって…大して関わりも無いアタシがどうやって?」
「コイツが、全世界を助けるヒーローだから信じろって?」
「馬鹿馬鹿しいだろ!? コイツは例え特異点でも、所詮普通の人間だろ!?」
「もう世界の滅びは決まってる! 今更何をしようってんだよ!?」
「アタシたちの唯一の希望を打ち砕いといて、何を信じろって言うんだよ!?」


それは、ゲンガーさんの本音だった。
ゲンガーさんは、やはりあの戦いに勝ちたかったんだ。
そして自分は消えても、藍を救いたかった…
自分が生きた証を…残したかったのか。


守連
「…ゴメン、なさい」

ゲンガー
「…っ! 違うだろ…!! おかしいのはアタシだろ!?」
「だって、ここにはもうクソ主人もパルキア様もいない…メイドの皆も、ミミロップもいない…!」
「何でアタシはここにいるの?」
「どうしてアタシは…何も出来ないの!?」


ゲンガーさんは、頭を抱えて泣いていた。
自分の弱さを責めていた。
そしてゲンガーさんはただ、パルキア城の皆が大好きだったのが解った。
ゲンガーさんの居場所は、ここじゃ…無いのか?


サーナイト
「ゲンガーさん、そんな事は言わないで」

ゲンガー
「…サー、ナイト」


気が付くと、サーナイトさんが近付いていた。
そして、嗜めるような口調でゲンガーさんに声をかける。
ゲンガーさんは、涙を流したままサーナイトさんを見た。
そんなゲンガーさんを見て、サーナイトさんは優しく微笑む。


サーナイト
「貴女がここにいてくれたから、娘は元気でいてくれたわ」
「貴女がここにいなければ、きっとあの娘は死んでいた」
「私にとって、貴女はかけがえの無い存在よ?」
「だから、何も出来ないなんて…言わないで」

ゲンガー
「………」


「あの、娘さんって?」


俺が気になって聞くと、サーナイトさんは笑って話してくれる。
この人は、本当に人が良いんだろうな…


サーナイト
「今は6歳のラルトスなんだけど、ゲンガーさんが助けてくれなかったら、もう死んでいた命なの」

守連
「そうなんですか…ゲンガーさんは、やっぱり良い人なんですね♪」


守連が笑って言うと、サーナイトさんも同じ様に笑う。
ゲンガーさんは、複雑な顔をしていた。
でも、否定はしない様だ。


サーナイト
「今でも、娘はゲンガーさんの事大好きなのよ♪」
「いつか、自分もゲンガーさんみたいにメガ進化する!って、口癖の様に言っているわ♪」


「ゲンガーさんも、メガストーンを手に入れたんですか?」

ゲンガー
「…たまたまこの屋敷にあったのさ」
「どうせ誰も使えないからって、サーナイトがアタシにくれたんだよ…」
「そんで、それ使ってラルトスを助けた事があっただけさ…大した事じゃない」


ゲンガーさんは無気力にそう言う。
まるで、自分は何の役にも立ちません…そんな風に言っている様にも感じる。
俺は、少し腹が立った…ゲンガーさんは、何故こんなにも弱くなってしまったのか?と。

少なくとも、これまでに出逢った皆は、全員強くなっていた。
それぞれが俺の為にと、強くなったのだ。
でも、俺と関わりの低いゲンガーさんは、頑張る理由も必要性も無かった。
だから、こんなにも弱くなってしまったのか?

メガ進化も可能なのに、仕事もまだ出来るのに…弱い。
俺は、何とかしたいと思ってしまった。
3人が回復しても、俺はゲンガーさんを救いたいと思ってしまったのだ。

これは、完全に俺のワガママだ。
それに、皆を無理矢理付き合わせようとしている。
皆は、俺を非難するだろうか? 俺は、想像して吹き出してしまう。
そんな事あるわけない…きっと、皆笑って言ってくれるだろう。
なら、絶対に救おう!って…



「やっぱり、これも必然なんだろうな」

ゲンガー
「…はぁ? 何がさ?」


「俺が、ゲンガーさんを救います」

ゲンガー
「は、はぁ!? な、何言ってんのさ!?」
「アンタはもう城の捕虜でもない、アタシもメイドじゃない!」
「アンタとアタシの接点はもう無いだろ!?」


俺は慌てふためくゲンガーさんを見て笑う。
そして、俺は軽くこう言った。



「それでも、救います…ゲンガーさんが、絶望して泣いてしまわない様に」

守連
「…うん、私も手伝うよ♪」

サーナイト
「うふふ、それなら私も一肌脱がないと!」


ゲンガーさんは、訳が解らないといった風の顔で、首を横に振った。
今のゲンガーさんには、生きる意味が見出だせない。
俺はそれを何とか見付けてみせる。
そして、ゲンガーさんに未来を生きる勇気を与えてあげたい。
この世界が、ちゃんと存続出来た時の為に。



………………………




「…恵里香、お前ワザとこの世界を選んだのか?」

恵里香
『まさか…偶然だよ』
『流石のボクでも、どの世界にどのモブがいるとか把握出来ないし…』


ゲンガーさんはモブなのね!! 本人聞いたら怒るぞ多分…
しかし、となると本当に必然って事か?
まるでゲンガーさんを救う為に、俺たちはここに送られた様に感じるな。

俺はとりあえずスマホを仕舞い、回復中の3人を見る。
とりあえず、呼吸も正常で安らかに眠っていた。
ダメージ的には華澄が最初に回復しそうだな、女胤と阿須那はまだかかるかもしれない。

とりあえず、どうやってゲンガーさんを救うか…?
少なくとも、サーナイトさんには気を許しているみたいだし、娘のラルトスちゃんの事も知っておいた方が良いかもしれないな。
俺はそう思い、まずはサーナイトさんを探す事にした。



………………………



守連
「あ、聖さ~ん♪」


「守連か、サーナイトさん見なかったか?」


リビングに降りると守連が手を振る。
俺がサーナイトさんの事を聞くと、守連は首を横に振った。
一緒じゃなかったか…だったらどこにいるのかね?


ゲンガー
「サーナイトなら、出かけてる…しばらく戻って来ないよ」


「あ、そうなんですか…じゃあ、ラルトスちゃんがどこにいるかは解ります?」

ゲンガー
「ラルトスも外に出てる…友達とでも遊んでるんだろ」
「アタシは昼寝する…何かあったら起こして」


そう言って、ゲンガーさんは気だるそうに寝室へと向かった。
仕事嫌いなのに、何かあったら起こして…ね。
ホント、ゲンガーさんは何だで面倒見が良いんだよな…
城にいた時も、愛呂恵さんが鈴鳴らしたらすぐ来てくれたし。
メイド長に抜擢されたのも、ある意味納得か。


守連
「ゲンガーさん、何だかつらそう…」


「実際つらいんだろうな…今のゲンガーさんは、自分の生き甲斐が見出だせないんだ」
「本当は、誰よりも人の役に立ちたいはずなのに…」


俺はゲンガーさんを見て、そう思った。
城にいた時のゲンガーさんは、何だで楽しそうだったからな。
そして迫り来る恐怖にも負けず、藍を護った。
藍もゲンガーさんは相当信頼してたはずだし、ゲンガーさんもきっとそうだったのだろう。


聖&守連
「………」


俺たちは思わず沈んでしまう。
だけど、ここで沈んでてもゲンガーさんが救われるわけではない。
俺は、とりあえず行動する事にした。



「…守連、お前は何かあった時、戦う覚悟はあるか?」

守連
「…それが何かに寄るけど、少なくとも誰かを護る為なら、私は戦うよ?」


俺はそれを聞いて満足する。
守連は大丈夫だ…きっと信頼出来る。
守連は誰かがピンチになっているなら、迷わず駆け付けてくれるヒロインだろう。
今回は、白那さんたちと戦った時とは違う。
戦うなら、それは何かを守る時だ。

だったら、ゲンガーさんにもその気持ちを思い出してほしい。
この世界でも、きっと守るべきものがあると言う事を…



………………………



守連
「…平和だね、この世界は」


「…ああ、でも滅びは確定している」
「少なくとも、ボスを倒さない限りは最低限の未来も確保出来ないはずだ」


俺たちは屋敷の外を歩いていた。
そこは小さな林道になっており、道はそこそこ整備されている。
今は午後の日差しが降り注いでおり、かなり暑かった。
俺は流石に上着は屋敷に置いてきており、今は白のTシャツ1枚だ…
ズボンは、流石に脱げないし仕方無いだろう。
守連は1番最初に着ていたコスプレ服(?)だし、薄着で暑さはそれ程でもなさそうだった。


守連
「そういえば、私の世界はもう大丈夫なの?」


俺はそれに強く頷く。
そして、それを助けてくれた人の事も歩きながら詳細に話した。


守連
「そっか…レックウザさん、やっぱり助けてくれたんだね♪」


「ああ…やっぱ計画的に捕まってたんだなお前?」


守連はうん…と頷いた。
どうやら、レックウザさんに協力してもらおうとしたらしいが、俺たちが向かって来るのを知ってダシにされたらしい…
あの人、ホント人騒がせだよな…わざわざ気絶させてまであんな演出しやがって!
まぁ、とはいえ…



「俺は、いつも誰かに助けてもらってるな…」


だが、それは一重に俺が育んできた絆の証とも言える。
俺が今まで救った世界で、関わった皆が俺に力を貸してくれたのだ。
俺はそれに応える…必ず世界を救うと。
だけど、その前に救わなきゃならないモノも出来た。



(ゲンガーさんの、心を救う)


これはもう決めた事だ。
アルセウスを倒す事は大事だが、あのゲンガーさんから目を背けて世界は救えない。
このままだと世界を救えても、ゲンガーさんを救う事は出来ないのだ。

もちろん、これはただのエゴだろう…
俺が勝手に決め付けているだけで、今後この世界でゲンガーさんが幸せになれないなんて事は、誰にも言えない。
あくまで、俺が今のゲンガーさんを救いたいだけだからな…

この世界は本当に平和だ…小動物もいるし、風も穏やか。
人はそんなにいないけど、何だか安心出来る場所だ。
そして俺は、ある確認を取る為にスマホを耳に当てた。



「○ン肉マンの超人強度は?」

恵里香
『95万~♪』


とりあえずネタをかましておく。
定期的にやっとかないと話が暗くなるからな…



「…恵里香、この世界は俺が過去に救った世界なのか?」

恵里香
『いや、違うよ』


俺は、それを聞いて言葉を詰まらせる。
恵里香は無感情に答えたが、その意味は想像以上に重い。
俺が救わなかった世界…それは来るべき大災害を被った世界という可能性。
もちろん、全部が全部そうなるわけではないだろうが、少なくとも俺が過去に救った世界は、いずれも程度の違いはあれど、かなりの大災害があった世界だった。

俺はその世界のポケモンたちを救う為に、自らもポケモンとなって、その大災害に立ち向かい、全てを解決してみせたんだ。
だが…この世界は、違う?


恵里香
『そこは、キミが関わらなかった世界』
『故に、アルセウス配下は存在せず、ボスもいない』
『だけど、近い将来アルセウスに消される世界だよ…』


「…なら、この世界は1度大災害にあったのか?」

恵里香
『そこまではちょっと解らないけど…でも、何か大きな事件とかはあったのかもね』


やっぱり、当人たちに聞いてみた方が良いか。
少なくとも、ゲンガーさんは10年この世界で生きたと言っていた。
それも人化したままで、だ…



「俺が関わらなくても、人化は起こるのか?」

恵里香
『キミは少し勘違いをしているね』
『そもそも、ポケモンの人化現象は過去にも類例がある』
『それこそ、キミが夢見の雫を継承する前にね』


俺は電話越しにギョッとした。
そもそも、ポケモンの人化現象は俺の存在に依存しているわけじゃないのか?


恵里香
『キミが関わった世界全てで、全ポケモンが人化現象を引き起こしたのは本当に謎だけど…』
『ポケモンひとりが人化するとか、その程度の軽度な現象は、何百、何千、何万年という歴史の中では、それなりに起こっている現象だ』
『ただ、その際には必ずある物が付きまとう』


「夢見の雫…か」


恵里香は黙るが、肯定しているのだろう。
今は俺が持つ、夢見の雫。
いつの間にか俺の中にあり、そして願いを叶えるチートアイテム。

だが使えば雫は濁り、その願いの程度と悪意の濃さによって進行は早まる…
もし、腐った性格の人間が使えば、即座に濁りきって暴走するだろうな…

その結果、何が起こるかまでは解らないが、少なくとも世界が滅ぶレベルの何かは起きるだろうと俺は予測してる。
俺は、それがとにかく恐ろしい。

ここまで何とかノーコンで来れたが、いざ予想出来ない場面で使うとなると、気が気じゃないんだ…
アレは決して負の感情を持って使ってはならない。
例えそんな気じゃなくても、人間の心には必ず負の感情はあるんだ。
正しいと思って使ったとしても、僅かだが濁っていくのだから…



「…結局、俺が関わらない所でも人化は起こったのか」

恵里香
『その世界に関しては、少しややこしいんだけどね…』
『元々は、既に人化した白那がこの世界でゲンガーを引き取った』
『その際にゲンガーは人化を果たし、彼女がこの世界に戻った時、この世界の全てのポケモンが人化した…というのが、ボクの仮説だ』
『どちらにしても、ゲンガーはキミに関わっている…それが原因の可能性も高いんだけどね』


この件に関しては、結局あやふやなままか…
まぁ、とりあえず今は問題じゃないしな…


恵里香
『…とりあえず、その世界は安全だよ』
『全員が回復するまでは、滅ぶ事も襲われる事もほぼ無いと思う』


「ほぼ、ね…」

恵里香
『もちろん、ディアルガみたいに感知して襲って来る敵はいるかもしれない』
『だけど、そんなのは一握りだ…そのディアルガも倒した以上、今は相当安全になったと思って良いだろう』


成る程、だとするとディアルガはやっぱり相当上の幹部だったわけだ。
結局、ディアルガ以外は皆理性が無さそうだったからな…会話すらしてないし。
まぁ、そんなディアルガをタイマンで屠ってみせたのだから、白那さん恐るべしだが…
やっぱ、10年分の努力は差を生むんだろうな…


恵里香
『ちなみに、キミがゲンガーを救いたいのは解ってるけど、アルセウスの事は忘れないでね?』
『長く滞在すればする程、危険度は加速度的に増していくんだから…』


「ああ、解ってる…だけど」

恵里香
『良いよ…キミがそこは譲らないっていうのは理解してるし』
『惚れた女の弱味として、納得してあげるさ♪』


恵里香は何だで楽しそうに笑っている様だった。
やれやれ、何でもお見通し…って感じだな。
まぁ仕方無い、恵里香はアレでも幻のポケモンだからな…
何だで俺も頼る事は多いし…恵里香には感謝しか出来ない。

俺はそう思うと、軽く息を吐いてスマホを仕舞う。
とりあえず、誰かに会えると良いんだが…


守連
「ねぇ、そういえば恵里香って誰?」


「…そういや、守連には何も説明してなかったな」


俺は完全に忘れていた事を思い出し、改めて守連に説明した。
俺が記憶を取り戻した事、夢見の雫の事、そして最果ての事、恵里香の事、そして…アルセウスの事を。



………………………



守連
「そっか…皆、助けてくれたんだね♪」


「ああ…皆、良い奴だよ」
「だから、俺はゲンガーさんも救いたい…」
「例え、俺のワガママでも…エゴイストと言われようとも」

守連
「大丈夫だよ」


守連は笑ってそう言う。
その笑顔は、もう3ヵ月も見ていなかった笑顔だった。
そうだ…俺はこの笑顔を取り戻す為に、ここまで戦っていたんだ。


守連
「聖さんは、私が護るよ…だから、聖さんは自分を信じて、私たちを信じて」


俺は黙って頷く。
俺には実戦でどうこう出来る力は無い。
だけど、皆の支えにはなれていると信じよう。
そして、自分は間違ってないのだと、信じよう…



………………………



守連
「…結構歩いたけど、同じ様な道ばかりだね~」


「ああ、ひょっとしたら移動は車みたいな物でも使ってるのかもな…」


あくまで想像だが、この道はそう思わせる位には長かった。
周りは変わらず林だが、景色はさほど変わらない。
俺はこれ以上歩いても無駄だと判断し、一旦来た道を戻ろうとするが…



「誰かーーー!!」


突然の叫び声、俺は何事かと周りを見るが何も見えない。
だが、俺が慌てている間に守連がすぐに音の方へ駆け抜けた。
かなりのスピードで林の間を抜けて行く。
流石は仮にも森のポケモン…人間じゃあの速度はまず出せないな。


守連
「見付けた! 大丈夫だよ、捕まって!!」


「うわ~~~んっ!!」


守連は林の先の崖で手を差し伸べていた。
どうやら誰かを引き上げようとしているらしいが、手が届いていない様だ。
守連は悲痛な顔でなおも手を伸ばす。


守連
「お願い…届いて!!」


「!?」


何かが崩れる音がした瞬間、守連の顔が蒼白になる。
一気に力を無くし、守連は崖の下を直視していた。


守連
「ダメェェェェェェェェッ!!」


直後、守連は飛び降りようとする。
俺は流石にそれは阻止しようと守連を背後から羽交い締めにした。
凄まじい力で俺ごと引きずろうとするが、守連は冷静になり、ガクッ…とその場で膝を着く。
そして涙を流し、叫んだ。


守連
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


守連の叫びが崖の上で木霊する。
救えなかった…どうやら子供の様だったが、誤って落ちてしまうなんて…
まさに事故だが…あまりにもやるせない。



「ったく…鼓膜に響くから、あんまり大声で叫ぶなっつーの…」


「あ…!?」


突然、崖下から上昇して来る人間がいた。
そして、その人は俺のよく知る人で、腕には子供を抱えている。
思わず俺も叫んでしまった。



「ゲンガーさん!?」

ゲンガー
「はいはい…ゲンガーさんですよ~」
「ったく…気になって来たら、大事件だよ」
「こら、ラルトス…崖には近付くなって言わなかったか?」

ラルトス
「ご、ごめんなさい…ひっく、ひっく!」


ゲンガーさんは浮遊して俺たちの側に降り、ラルトスちゃんを地面に立たせる。
そして、軽く1発。


ゴンッ!


ラルトス
「ひぐぅ~!!」

ゲンガー
「約束守れなかった罰だ! まだ『テレポート』もロクに出来ない奴がこんな所で遊ぶな!」
「友達がいないって所を見ると、別れてからこっそりここに来たな…?」


ゲンガーさんは、まるで親の様にラルトスちゃんの頭を拳骨で叱りつける。
結局、つけられてたのか…この人も大概人が良いな。
ラルトスちゃんは泣きじゃくりながら、ゲンガーさんに謝っている。
っていうか、この娘がラルトスちゃんだったのか…
まだ120cm位の幼女で、頭には赤い角が映えていた。
サーナイトさん同様緑の短髪で、白いワンピースを来ている。


守連
「うう…良かった~!!」

ラルトス
「きゃぁっ!?」


守連が思わず抱き付いてしまった…つーか、お前が1番泣いてどうする。
ラルトスちゃんは逆に泣き止んでしまったぞ…
そんな光景を見てか、ゲンガーさんはため息を吐いた。


ゲンガー
「とりあえず、もう帰るぞ?」
「ったく、飯の支度もあるってのに…余計な仕事増やしやがって」


仕事を増やしたのは自分の意志だろう…とは口が裂けても言えなかった。
嫌なら寝てれば良いのに、この人はそれをしない。
結局、この人は口が悪いだけなのだ。
根本的にこの人は、誰かを気遣ってないと気になって仕方無いのかもしれない。

ある意味損な性分だが、こうやってラルトスちゃんの命を救ったのも確かだ。
だが、ゲンガーさんはどんな気持ちでラルトスちゃんを助けたのか…?
ただのお節介だからか、それとも…


ゲンガー
「行くぞラルトス…ちゃんと付いて来なかったら晩飯はわさびだ!」

ラルトス
「はいっ! 絶対に離れません!!」


ラルトスちゃんはビシッと軍隊式の敬礼をしてゲンガーさんの後を付いて行った。
ゲンガーさんは気だるそうに猫背で歩いて行く。
その背中は寂しくも、大きく見えた。

ゲンガーさんは、確かに生き甲斐は無いのかもしれない。
それでも、常にああやって人に世話を焼き、頼られるのだろう。
だけど、それはゲンガーさんが望んで得た物じゃない。
俺はある意味、道を見付けた。
ゲンガーさんの生き甲斐、それは……



………………………




「ガッカリさせないでくれ! 君の力はそんなモンじゃないだろう!?」

ゲンガー
「やかましい! 大して筋肉無いくせにマッスルポーズを取るなっ!」


「……!」


俺はガシッ!とゲンガーさんの手を取る。
するとゲンガーさんは驚いた。


ゲンガー
「ちょっ! な、何!?」


「ありがとう…たったひとりでも、ツッコンでくれて、ありがとう!」

ラルトス
「その人は、ただ泣いて喜んでいた…」

守連
「あっはは…」


俺は開幕ネタにツッコンでくれたゲンガーさんに、ただ感謝する。
ここの所、誰もツッコンでくれなかったから嬉しいよオジさん!



「ってなわけで、ゲンガーさん」

ゲンガー
「な、何だよ…?」


「ゲンガーさんは、家族をどう思ってますか?」

ゲンガー
「…家族ぅ?」


「はい…この屋敷の家族です」


俺たちは屋敷に戻り、リビングで休憩していた。
大きめのソファに俺と守連が並んで座り、テーブルを挟んで向かい側に、ゲンガーさんとラルトスちゃんが座っている。
全員で水を飲みながら、俺はゲンガーさん相手に話していた。


ゲンガー
「それで? それが何?」


「ゲンガーさんは、どう思ってるんですか?」

ゲンガー
「どうって…アタシはただの居候だよ」
「行く宛も無く、やる事も無く、ただここで惰眠を貪ってるだけだ…」

ラルトス
「ウソ吐き」


ソッコーでラルトスちゃんに否定される。
流石は気持ちポケモン…どうやらゲンガーさんの気持ちを理解したらしい。


ゲンガー
「…嘘じゃない」

ラルトス
「ウソ、ホントは家族と思ってる」


ゲンガーさんは黙って頭を抱えた。
何だかなぁ~と俺は思う。
そんなに認めたくない物なんだろうか?
ゲンガーさんにとって、家族と言う言葉はそれ程受け入れられない物なのか?


サーナイト
「私は、ゲンガーさんを家族だと思ってますよ?」

ゲンガー
「サーナイト? もう仕事終わったのか…早かったんだな」

サーナイト
「ええ、今日はお客さんも多いし、ゲンガーさんだけで料理を作るのは大変でしょ?」


そう言ってゲンガーさんの隣に座るサーナイトさん。
そして、優しくゲンガーさんの手を取った。
ゲンガーさんは気恥ずかしそうに顔を背ける。
ラルトスちゃんはクスクス笑っていた。


サーナイト
「貴女のこの手は、本当に温かい」
「そして、この10年…貴女はずっと私たちを助けてくれた」
「…5年前も、貴女は身を挺してラルトスを護ってくれたものね」


「5年前…」


それは、俺がポケモンになって皆の世界を駆け回っていた位の時期だろう。
やはり、この世界でも何かしらの事件があったのか…?


ゲンガー
「よしなよ…あの時、アタシは他の奴らまでは助けてはやれなかった」
「ラルトスかその他大勢か、天秤にかけたのはアンタだが、選んだのはアタシだ」
「誰かに恨まれる筋合はあっても、感謝される言われはない」


「一体、何があったんですか?」


俺は気になって思わず聞いてみる。
すると、ゲンガーさんは鬱陶しそうに口をつぐむが、サーナイトさんが代わりに語り出した。


サーナイト
「5年前、大災害があったの…とても激しい地震でね…地割れすら起こる程の大災害」
「あの災害で、この世界のポケモンは7割が死んだと言われているわ」
「この屋敷も、元々はとある村の一部だったんだけど、地震で陸が分断されて、屋敷だけが残る事になったの…」


聞いて想像するが、ピンとは来ない。
地震が起こって、7割のポケモンが死んだ災害か…


ゲンガー
「…ラルトスが落ちた崖があっただろ? あれ、災害前は陸が繋がってたんだぜ…」


聞いてギョッとする。
少なくとも、あの崖はかなりの広さだった。
それが地震で出来たという事は、相当ヤバイ地震だったに違いない。
ゲンガーさんは、そんな地震の中でラルトスちゃんを救ったのか。


サーナイト
「あの時、ゲンガーさんは地割れが起こる中、村が分断される前に、私とラルトスを抱いて逃げてくれました」
「結果、残りの村人は全滅しましたが、私たちは今に至ります」

ラルトス
「………」


ラルトスちゃんは流石に覚えていないのか、よく解っていない様だった。
まぁ、当時1歳だしな…
しかし、元々ここは村だったのか…今は屋敷しかないのに。



「…そういえば、旦那さんは?」

ゲンガー
「いないよ、そもそもラルトスもサーナイトとは血が繋がってない」
「大災害の時にラルトスは親を失ってるからね」

ラルトス
「でも、今はふたりが家族」


ラルトスちゃんは無邪気にそう言う。
ゲンガーさんはなおも頭を抱えていた。


ゲンガー
「ああ…分かったよ、家族で良いよもう」
「アタシなんかを家族にして、どうなっても知らないから!」

サーナイト
「ふふ、もう5年も経って今更よねぇ?」

ラルトス
「本当」


サーナイトさんは笑う、ラルトスちゃんも笑う。
思わず、俺も笑ってしまった。
守連なんかずっとニコニコだ。
俺は確信した、これこそがゲンガーさんの生きる意味だと。



「ゲンガーさん、サーナイトさんとラルトスちゃんの事、これからも護ってあげてください」

ゲンガー
「…はぁ? そんなの言われなくても、そうするよ」


「この世界の未来は、俺たちが救います」
「でも、ゲンガーさんの心は俺じゃなく、家族が救ってくれる」
「だから、ふたりを本当の家族だと思ってあげてください」


ゲンガーさんは、相変わらず?を浮かべていた。
サーナイトさんたちは笑っている。
俺も笑って言葉を続けた。



「ふたりは、白那さんたちと同じですよ」
「ゲンガーさんが大事で、大好きなんです」
「だから、もう…過去の思い出だけじゃなく、今と未来を…見てください」

ゲンガー
「…あの城の、皆と」


ゲンガーさんは、思い出している様だった。
10年経った今でも、ゲンガーさんは引きずっている。
城にいた10年は、それこそ充実していたのだろう。
怒って、笑って、楽しんで…皆、それなりに笑顔だったはずだ。



「…あんな世界のクソルールを作った俺の事は、恨んでくれて構いません」
「でも、今の家族の事も…愛してあげてください」


俺は、土下座してゲンガーさんにそう言った。
サーナイトさんも、何も言わずに見てくれている。
ゲンガーさんは、それを見てもため息をしか吐かなかった。


ゲンガー
「もう、勘弁してよ…アタシは、もう…家族なんて」


ゲンガーさんはそう呟き、壁をすり抜けてどこかへ行ってしまう。
まるで、泣きそうな声で…

俺は立ち上り、不安になる。
まさか自殺なんてしないとは思うけど、相当追い詰めてしまったのかもしれない…


サーナイト
「聖さん、ありがとうございます」


「えっ!? あっ、はいっ!」


突然、サーナイトさんに手を握られ、感謝される。
そして、マジマジと顔を見られ、俺は思わず赤面した。
間近で見ると超美人だなこの人! 流石は見た目に定評のある抱擁ポケモンだ。


ラルトス
「惚れるなよ?」


「惚れるかっ!」
「っていや、別にサーナイトさんに魅力が無いわけではなく!!」


俺はネタにツッコンで思わず弁解する。
確かにこの人は超が付く程の美人だ。
しかも、娘持ちとはいえ未婚の女性…色々とヤバすぎるわっ。
サーナイトさんはクスクス笑っていた。


サーナイト
「大丈夫です、ゲンガーさんは解ってくれてますよ?」
「でも、きっと怖いんです…今の安心を享受して、昔の幸せを忘れる事を…」


忘れる…か。
思わず世界の理を浮かべるが、確かにあれは恐怖のルールだった。
どれだけ親しかろうが、どれだけ愛していようが、ルールに抵触すれば存在を忘れられる。
ゲンガーさんは、忘れられるのが怖いから、忘れる事も怖いのかもしれない。
あの戦いから、彼女は10年…もう、それなりに遠い思い出となっているのだ。
それでも、10年過ごしたあの城は、それだけゲンガーさんには幸せな時間だった。
だからこそ、今を選んで、昔を忘れるのを恐れているのか…?


守連
「ゲンガーさんは、優しすぎるんだね」


「かもしれない…ゲンガーさんは、パルキア城でも最年長のメイドだったからな」
「どれだけ、皆から頼られていたのか…」


少なくとも、ゲンガーさんは常に動き回っている様だった。
そして、どんな時でも愛呂恵さんが呼べば来てくれた。
今思えば、どれだけゲンガーさんには助けられていたのだろうか?
あの84日間、ゲンガーさんはやった事も無い料理も覚えて、皆の世話もして…
いつも、皆を気遣っていたのかもしれない。
俺は、そんな事もロクに考えずにいたんだな、と自分に腹を立てる。
そして、俺はまずやるべき事を見付けた。



「…あの、今夜の料理、俺に手伝わせてもらっても構いませんか?」
「大した物は出来ませんけど、どうしてもやりたいんです」

サーナイト
「構いませんよ…それなら、ゲンガーさんには休む様に言っておきますね♪」


俺はそこまで言ってないのに、サーナイトさんには読み取られる。
やはり、そこはエスパータイプか…迂闊な事は考えない方が良いな。


ラルトス
「ちなみにお母さんは今日が危険日」


「違うからね!? 断じて邪な事は考えてないからね!?」

守連
「うふふ~何だか楽しそう♪」


守連は、もう皆でワイワイ食う事しか考えてない様だった…
とりあえず、俺はまず厨房を見てみる事に…



………………………




「流石に冷蔵庫とかは無いわな」


俺は改めて異世界の食事事情を痛感する。
そういや、パルキア城は何で電気通ってたのか…?
フツー、中世モデルなら電化製品は無いわな~
とはいえ、まな板も包丁もあるし、辛うじて水道もあった。
保存されている食材も何となく解る物だし、調理自体は問題無いだろう。
火は竈があるし、鉄板もある。
調味料もちゃんとあるな…油は、ラードとビンっぽいの発見。
さて、自ずと肉料理がメインになりそうだけど、副菜は無難に野菜炒めかね?
卵焼きもラルトスちゃんには良いか…


サーナイト
「どうです? 解らない事があれば遠慮無くどうぞ♪」


「はい、ありがとうございます…ところで、火はいつもどうしてるんですかね?」


サーナイトさんはそれを聞くと、両手で炎を出す。
成る程、愛呂恵さんと同じく『炎のパンチ』か…便利だよな何気に。
しかし、そうなると俺では火が起こせない…火打ち石とかもありそうにないし…素直にサーナイトさんに頼るしかないか。


サーナイト
「私も手伝いますし、今日はふたりで頑張りましょう♪」


「はい、そうですね!」


俺は笑顔のサーナイトさんに頷き、今夜の献立を決定した。
後は、量で勝負だな!



………………………




「味は保証出来ませんけど、とりあえずどうぞ!」

ゲンガー
「…唐揚げとか、よく作る気になったな」
「油は貴重なのに、もったいねぇな~」


いきなりダメ出しされる。
いや、何となくそんな気はしてたんだけど、やっぱ貴重だったのね!
サーナイトさんはニコニコして、良いの良いのって言うから安心してたよ!!


ラルトス
「うおお…この鶏肉美味しい~!! 卵焼きもふんわりで最高ーー!!」


ラルトスちゃんはご満悦の様だった。
守連も、既にペースを上げている。
相当多目には作ってるから、量は大丈夫のはずだが…


ゲンガー
「ちっ…生意気にも美味いじゃねぇか」


「これでも、ガキの頃から自炊してんだ…現代人の味付けを舐めるなよ?」

サーナイト
「うふふ、本当に独特の味の濃さが美味しいわ♪」
「聖さん、料理上手じゃないですか!」


予想外にベタ褒めされた。
俺は気恥ずかしくなり、頬を指で掻く。
そして、ラルトスちゃんが一言。


ラルトス
「お父さんにしてあげても良いな!」

サーナイト
「あらやだ、ラルトスったら…こんな年増ダメよ♪」


サーナイトさんはそう言うが、そんなに年いってるのか?
ゲンガーさんは25歳だったはずだし、それよりかは上なんだろうか?


ラルトス
「お母さんはちなみに24歳」


「全然若いじゃないですか!!」
「ぐはっ…達観してるし、もっと年上かと思ってた!」

ゲンガー
「人を見た目で判断するなっての…」
「まぁ、サーナイトは確かにちょっと年増臭い仕草だけどな…」


サーナイトさんはクスクス笑っていた。
本当に人が良いな…サーナイトさんは今を楽しんでいるんだと実感出来る。



「さて、それじゃあ俺もいただきま~す!」


俺は本当に久し振りの自炊料理を食う。
当然味見はしてるので、味にコメントは無い。
強いて言うなら、この世界の鶏肉も現実世界とそんなに変わらないな。


守連
「じゅ~し~唐揚げ、なんば~わ~ん♪」

ラルトス
「わっふー!」


ふたりは心底楽しそうだった。
しかし守連よ、あえてここはツッコマんぞ…
ツッコミの来ないネタの悲しさを知るが良い!!←大人気ない人


ゲンガー
「何だよ…これなら、アンタに作ってもらってた方が楽だったじゃんか」


「あん時、俺は軟禁されてたでしょうが…」


俺がツッコムと、ゲンガーさんはケラケラ笑う。
やっと…笑ってくれたな。
俺は一瞬呆けるも、すぐに微笑する。
そして、唐揚げをパンに詰め合わせて食った。


守連
「あ、唐揚げサンドだね♪」


「ああ、米が無いしこういうのも良いだろ」


あらかじめパンには切り込み入れておいたし、野菜を入れても良い様にしてる。
ちなみにパンはよくある、コッペパンみたいな形の物だ。


ゲンガー
「成る程ね~色々考えてんだな…唐揚げサンドとか考えた事も無かったわ」

ラルトス
「卵焼き挟んでも美味しい!」

サーナイト
「うふふ、こんなに楽しい食事は初めてね♪」


今はゲンガーさんも含めて、皆笑っていた。
だけど、ゲンガーさんだけは時折悲しい顔を見せる。
それでも、ちゃんと皆と一緒に笑おうとはしてくれていた。
そんな努力にも似た行動に、俺は少し涙ぐむ。
ゲンガーさんは、本当に変わろうとしてくれているんだと実感したのだ…



………………………



ゲンガー
「…今日は、ありがと」


「構いませんよ…これは城にいた時のお礼でもありますし」


俺は、食べ終わった食器をゲンガーさんと一緒に洗っていた。
ゲンガーさんは流石に手慣れた感じで、テキパキと無駄無く洗っている。
何だかんだで、メイド長ってやっぱスゴいんだな~


ゲンガー
「…これで、終わり」


「はい、ありがとうございます」

ゲンガー
「止しなよ…本当ならアタシの仕事なんだ」
「今回はサーナイトに言われてサボっただけ…明日からはアタシがやるし」


サボった、ね…別にサボりではないと思うのだが。
ゲンガーさんはまだ悩んでいる様だった。
俺は、少し踏み込んでみる事にする。



「…ゲンガーさんは、やっぱりまた会いたいんですか?」
「あの城の…皆に」


ゲンガーさんは俯いて黙ってしまう。
どう答えようか迷ってるみたいだな。
それとも、言い訳でも考えてるのか?



「きっと、また会えますよ…これが必然なら」

ゲンガー
「…え?」


ゲンガーさんは、まさか…といった顔で呆ける。
呆れていると言っても良いな。
だが、俺は確信めいた顔でこう言った。



「俺は、皆と再会を約束しました」
「ですから、ゲンガーさんとも約束します…必ず、皆と再会出来ると」


もちろん、本当に出来るかは解らない。
だが、どうにかするつもりだ。
もっとも、それにはアルセウス打倒が大前提なのだが…


ゲンガー
「約束、ね…なら、絶対に守れよ?」


「…はい」


ゲンガーさんの言葉は意外だったけど、俺は強く頷く。
そして、それを見てゲンガーさんは微笑した。
いや、苦笑とも取れるな…何か曖昧だ。
そんなゲンガーさんが、俺にこう言い放つ。


ゲンガー
「ゴメン…ちょっと胸貸して」


そう言った瞬間、ゲンガーさんは力無く俺の胸に倒れ込んで来た。
両手はダラリと下げ、額だけを俺の胸に預けている。
俺はどうしようか迷ったが、優しく肩を抱いた。
すると、ゲンガーさんの頬に涙の筋が通る。
そして、絞り出す様な声で…


ゲンガー
「アタシさ…本当は憎いんだ」


「…はい」

ゲンガー
「でも、解ってたんだ…アイツ等に罪なんて無いって」
「あんな戦い…本当はするべきじゃなかったんだって……」


ゲンガーさんは悔やむ様に告白する。
解っていても、憎い。
でも、それは誰も悪くない。
悪いのは…そんな戦いに導いた俺なのだから。



「ゲンガーさんは、俺だけを憎んでください」
「だから…守連たちは、許してあげてください」

ゲンガー
「何で…アンタはそんな事言うのさ?」
「こんなにも優しくされて…今更どうやってアンタの事! 憎めば良いのさぁ!?」


ゲンガーさんは俺の胸に額を押し付けたまま叫んだ。
俺は震えるゲンガーさんの背中に手を回し、しっかりと抱き締めた。
小さめの体をしているゲンガーさんは、無気力に体を預けている。

これが恋人同士なら、この後キスのひとつでもするのだろうが、俺たちはそういう関係じゃない。



「…どうしても憎いなら、俺だけが憎まれれば良いんです」
「全ての引き金になったのは、俺の造ったクソ世界なんですから」

ゲンガー
「…良いよもう」
「もう、アタシは誰も憎まない…」
「あれから10年…長かったよホント」
「それで、まさかまたアンタに会えるなんて…」
「こんな事って、無いよね…? 普通……」


確かに無いな。
だが、それでも出逢えた。
だから俺はこれを、必然だと思ってる。



「やっぱり、出逢うべくして出逢ったんですよ」

ゲンガー
「…はっ、運命のふたりってか?」


確かにそうとも言えるな。
だが、ふたりじゃない。



「俺たちだけじゃありません」
「あの城の皆も、サーナイトさんやラルトスちゃんも」
「そして、守連たち4人も」
「皆、何かの切れない糸で結び付いているんです」


それは運命線とでも言うのだろうか?
だが、俺は運命という括りにはしたくない。
未来は自分で切り開く物なのだから。
この出逢いは、俺たちが導き出した未来なんだ。


ゲンガー
「…アンタは、3人が回復したらいなくなるんだよね?」


「…はい、俺たちは滅びを止める為に戦いますから」

ゲンガー
「だったら、さ…ひとつだけ、お願いして良いかな?」


ゲンガーさんは俺に顔を押し付けたまま、小さく言う。
俺は頷き、ゲンガーさんの言葉を待った。


ゲンガー
「…明日1日だけで良いから、アタシを恋人にしてくれ」


「…えっ!?」


あまりに予想外なお願いに、俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。
だが、ゲンガーさんは構わず言葉を続ける。


ゲンガー
「あれから男もほとんど全滅して、マトモな恋愛も出来なくてさ…」
「1度でも、どんなのか体験してみたいんだ…」
「まっ、憧れだよ…どうせごっこだし」


「…解りました、明日1日だけで良いなら」
「でも、それなら名前があった方が良いですね…」
「突貫ですけど、『櫻桃』(あせろら)で構いませんか?」

ゲンガー
「何でも良いよ…任せる」


ゲンガーさんはそう言って笑う。
ちなみに本当は『西印度櫻桃』でアセロラと書くらしいのだが、短縮して無理矢理読ませる事にした。
ある意味キラキラネームだな…
そして、俺たちの奇妙な恋人ごっこが、明日から始まる事に…



………………………



櫻桃
「はい、あ~ん♪」


「は、はい…はむ」


櫻桃さんは朝イチからフルスロットルだった。
まず目覚めのキスから始まり、着替えの手伝い。
そして、朝のトーストサンドを俺に食わせてくれている。
俺は相当恥ずかしいが、これも櫻桃さんの為だと思って耐えてみせた。
せめて、もっと自然にしなければ…!


櫻桃
「美味しい?」


「は、はいっ! 美味しいです」


これは正直な感想だ。
シンプルな卵とツナと、サラダのミックスサンドだが、バランス良く盛り付けられており、コンビニのサンドと比較しても全然負けてない美味しさだった。


櫻桃
「ふふ…水もあるから、焦って喉詰めない様に」


「はい、ありがとうございます」

櫻桃
「ふふ…こんなの当たり前だろ?」


櫻桃さんは、もはや別キャラと化していた。
いや、実際に心を許した恋人なら、こんなにも女は変わる物なのか?
しかし、あんなに自然な笑顔…あれ、演技なんだよな?
どこまでが演技なのか、俺には正直判別がつかないが…
俺は初っぱなから出鼻を挫かれ、タジタジの朝食になってしまった…



………………………



櫻桃
「まっ、な~んも無い林道だけど、歩くだけのデートも悪くないでしょ?」


「はい…」


俺は右手をしっかり握られ、横並びで歩く。
櫻桃さんは猫背でやや姿勢が悪いが、俺は櫻桃さんの歩幅に合わせて歩いた。
ただ、歩くだけのデート。
特に目立った話題があるわけでもなく、雑談のひとつでもしながら30分程外で過ごした。



………………………



櫻桃
「♪~♪~~♪♪」


「………」


お昼過ぎ、昼食を食べてから櫻桃さんは鼻唄混じりに掃除をする。
俺もそれを一緒に手伝い、屋敷中をくまなく掃除していった。
その際、守連と華澄も手伝ってくれる。
華澄は、予想通り先に回復した様で、もう動いても問題は無さそうだった。
あの怪我でも1日で回復するんだから、やっぱポケモンの『眠る』って回復力スゲェ…



………………………



華澄
「成る程、その様な事が…」

守連
「うん、だから今日だけは、なるべくあのふたりで過ごさせてあげて」


私は掃除の後、華澄ちゃんに事情を説明する。
すると、華澄ちゃんは微笑して承諾してくれた。


華澄
「聖殿が決めた事…ならば拙者は何も言いませぬ」
「そんな聖殿を補佐するのが、拙者の仕事でござる」

守連
「うん…ありがと華澄ちゃん♪」


私たちは笑い、聖さんと櫻桃さんを見た。
櫻桃さん、本当に楽しそう…
でも、ごっこ…なんだよね?



………………………



櫻桃
「♪~♪」


「それ、何編んでるんですか?」


櫻桃さんは掃除の後、リビングのソファで編み物をしていた。
…俺の膝の上で。
つまり、座っている俺に背中を預けて櫻桃さんの柔らかい尻が俺の膝に乗っている。
鼻下には櫻桃さんのツンとした髪が軽く触れており、石鹸の良い匂いがした。

ぐは…いかんぞ欲情しては!?
この体勢で息子が起きると、櫻桃さんにいらぬ誤解を生んでしまう。
この作品はエロ同人では無いのだから!!


櫻桃
「ん~…一応、マフラーなんだけどね」
「まぁ、あんまりこういうのはやった事無いから、正直自信無い」
「…まっ、ラルトス用だしね」


成る程、ラルトスちゃんへのプレゼントだったのか。
もう既にいくらか出来ている様だけど、色は赤と白のチェック。
櫻桃さんは器用に編棒を操り、少しづつ少しづつ編んでいった。
やがて、30分程した所で櫻桃さんの手が止まる。
そして、俺は気付いた。
櫻桃さんが、いつの間にか眠っている事に。


櫻桃
「………」


静かな寝息をたて、俺の腕に寄りかかる櫻桃さん。
俺は櫻桃さんを優しく抱き、起こさない様にじっとしていた。
何か、本当に恋人みたいだな…
俺はドキドキしながらも、この状況を素直に受け止める。
これは…今日限定のごっこなのだから。



………………………



サーナイト
「そう、楽しそうで良かったわ♪」

櫻桃
「はは…まぁ、慣れてないだけなんだけどね」


「…はは」


櫻桃さんは、夕食でサーナイトさんに今日の出来事を話していた。
サーナイトさんは笑ってそれを聞き、櫻桃さんも楽しそうに笑う。
俺はパンをカレーに浸けて食べていた。
懐かしいな…あの城で初めて食べたのも、カレーとパンだったっけ。

あの時に比べたら、カレーの味も全然違うな…
ちゃんと、食べる人の事を考えた味付けだ。
ラルトスちゃんでも食べられる様に甘口のカレー。
俺はあの時のカレーの辛さを思い出していた。
そして、櫻桃さんの愛情を…改めて感じる。



………………………




「…そろそろ、日付変わりますよ?」

櫻桃
「うん…でも、まだ変わってない」


櫻桃さんは、俺の寝室で俺に寄りかかっていた。
ベッドの上にふたり並んで座り、俺の左肩には櫻桃さんの頭が寄りかかる。
俺は、そんな櫻桃さんの肩を、そっと掴んで抱き寄せた。


櫻桃
「ふふ…結構積極的なんだね?」


「…まだ、恋人ですから」

櫻桃
「なら、最後まで…する?」


櫻桃さんはそう言って、俺の首に両手を回し、顔を近付けた。
俺は、心臓が破裂するかと思う位鼓動を早めているのを感じる。
俺にはこれ以上踏み込む勇気は無い。
それを読み取ったのか、櫻桃さんはクスリと笑った。
そして、もう日付が変わろうとする瞬間…


櫻桃
「んっ…」


「!?」


櫻桃さんは俺の頭を優しく引き寄せて、キスをする…
阿須那とも、白那さんのとも違うキスの感触。
櫻桃さんのは、悲しくも儚い…そんな印象のキスだった。


櫻桃
「…時間過ぎたね、ありがと」
「今日1日…付き合ってくれて」


「…はい」

櫻桃
「…頑張ってな聖、アタシも…多分頑張るから」


俺は頷く。
櫻桃さんの背中は、今は大きかった。
もう、心配は無い。

こんなごっこ遊びでも、櫻桃さんの心は多分救えたのだろう。
俺はそれ以上踏み込めない。
櫻桃さんもまた、あれが限界だったのだろうから…

俺は最後の最後で櫻桃さんに勇気を貰ってしまったな。
櫻桃さんはそれ以上何も言わずに部屋を出て行く。
俺は、改めて強く想った。
必ず、あの笑顔も守ってみせると…!



………………………



櫻桃
「ホント…ズルいよね、アタシ」
「ごっこなのに…本気になるなんて」










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、が、後悔はしていない』


最終章 『願い』

第1話 『恋人ごっこ…ゲンガーの本音』


To be continued…

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