第4章 第5話

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読了時間目安:26分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

アグノム
「………」

ゲンガー
「…第二大陸、クリアっすね」


俺様たちは巨大モニターを見て項垂れていた。
結局ほとんど山場も無く、あっさりとクリアされたのだ。
まぁ、まだまだ序盤戦…幸いにもほぼ予定通りだ。
第三大陸からは大陸規模は小さくなるものの、その分激しさは増していく。
ここまでで23日…想定では後77日か。


ゲンガー
「…切り札の方はどうっすか?」

アグノム
「目処が立たん…こっちの方が現状大問題だ」
「正直怪しい…正常動作するかも解らんから、最悪動作不良で使えんかもしれん」


俺様は、研究途中の切り札1号を手で転がす。
それは一見宝石の様な物で、透明な紫の球体。
そして、特長的なのが球体の中に入っている模様。
赤と黒の2色で構成された葉っぱの様なそれは、本来恐るべき力を秘めている。


ゲンガー
「それが、試作品っすか?」

アグノム
「正確には試作品じゃない、これ自体はれっきとした完成品だ」
「ただ、動作しない…いや違うな、どうやって使うのかが良く解らない」
「コイツには様々な伝承があるが、どれもイマイチで、これという確定した情報が無いんだ…」
「特に、人化したポケモンが使えるなんてトンデモは、更に聞いた事が無いしな」
「だが、人化しても道具が使えるのは証明済み」
「敵のピカチュウも電気玉の効果がちゃんとあるし、母さんの白玉だってそれは証明してる」
「後はこいつが動作すりゃ、もうひとつも楽勝なんだがな…」


ゲンガー
「あ、もうひとつあるんすか?」


俺は頷き、もうひとつもゲンガーに見せてやった。
今度のは黄色の宝石に赤と黒の葉っぱ模様。
コイツもとにかく動作確認が取れない。
やはり、実際に使わせた方が良いのかもしれんな…


アグノム
「こっちはミミロップ用だ、さっきのがお前用」

ゲンガー
「へぇ~、アタシ用か…じゃあ、これ貰って良いんすか?」

アグノム
「ああ、別に良いぜ…」
「俺が持っててもな~んにも解らんし、お前が色々試してくれ」
「ミミロップには俺が今から持って行く」


俺様はそう言い、やや気怠く飛んだ。
せめて、条件だけでも解れば良いんだがな。



………………………



アグノム
「おいミミロップ、妊娠したか?」


「だから、お前はいきなり来て何おかしな事言いやがる!?」
「ミミロップさんがそんな事になるわけ無いだろ!」


俺はいつものペースのアグノムに全力でツッコム。
ぶっちゃけ、このやり取りもいい加減疲れてきたわ…


ミミロップ
「私は正常です」
「ですが、聖様は恐らく私の体が好みではないのだと推測します」
「このシチュエーションではや23日、朝勃ち以外で勃起すら確認出来ませんので、かなり確率が高いかと」


「いや待ってミミロップさん!? 別に好みじゃないとかじゃないから!」
「むしろ、こちとら未成年でね? 18禁とか全く縁無いのよ!?」


意外にもミミロップさんは冷静に分析している様だった。
とりあえず、下手に勘違いされても困る、ここは何とか上手く対処せねば…


アグノム
「まぁ、お前が根性無しなのは知ってる」
「むしろあったら今頃、この城は妊婦だらけだ」


「解ってるならネタを自重しろ!!」
「後、根性無しと決めつけるな! 根性じゃなくて度胸だろここは!!」

ミミロップ
「では、いつでもどうぞ」


そう言ってミミロップさんは直立不動のまま俺を誘導する。
しかし、ここまで自家発電すら自重したこの俺に、そんな誘惑は通じない!


アグノム
「さっさと押し倒さんかい、 この度胸無し!」


「…もう何でも良いです」
「用が無いなら出て行ってくれ!」


俺が諦めてそう言うと、アグノムはケラケラ笑って何か丸い物をミミロップさんに投げる。
ミミロップさんはそれを綺麗にキャッチし、マジマジと見つめた。


ミミロップ
「……?」

アグノム
「それは『ミミロップナイト』だ」
「お前に預けておくが、動作確認は任せた」
「もし、起動出来たらすぐに報告しろ」

ミミロップ
「…起動方法が解りません」

アグノム
「甘えるな、解ってたら最初から言ってる」
「お前にしか起動出来ないから、色々試せと言っているんだ」
「何なら性行為でもしてみろ、起動するかもしれんぞ?」


「アホかっ! 性行為でメガ進化とか流石に無理!」
「メガストーンはトレーナーとの絆に反応するってのが定説だろ?」
「自分の意志だけで発動するモンなのか?」

アグノム
「確かに、その伝承が1番多い」
「だが、歴史にはポケモンの意志だけで発動する事も確認されている」
「結局の所、本当の方法は誰にも解らないって事だ」


アグノムは小馬鹿にした様な顔でそう言った。
クソ…舐められてるな。
もっとも頭の回転で俺が敵うわけ無いのだが…


ミミロップ
「…了解しました、これはお預かりします」


そう言ってミミロップさんは胸の谷間にそれを押し込んだ。
鈴といい鍵といい、いくつ入るんだあのメガサイズの谷間はっ。


アグノム
「とりあえず、久し振りに訓練でもしてみるか?」
「今から地下闘技場に来いミミロップ」

ミミロップ
「それは出来ません、聖様が最優先ですので」


アグノムはそれを聞くと、ちっ…と舌打ちして俺を睨む。
にゃろう…そんな技では俺の防御は下がらんぞ?
俺はあからさまに嫌そうな顔をしてやった。
するとアグノムは眉をピクピクと震わせ、明らかにイラつく。
俺はニヤリと笑ってやる。
ほらどうする? 素直に頭でも下げるなら俺が命令してやっても良いんだぞ~?


アグノム
「オイ、今ならまだ優しいぞ?」


「ミミロップさん、構え」

ミミロップ
「了解しました、攻撃目標をアグノム様に指定」

アグノム
「うわぁぁぁぁぁん!! もう嫌じゃ~こんなメイドーーー!!」


結局、泣きながら飛び去ってしまった。
やれやれ、オジさんちょっと大人気なかったかな?
俺は息を吐き、ミミロップさんにこう言う。



「行って来て良いですよ?」
「別に俺がこの部屋から出れる訳じゃないし、ひとりでも別に大丈夫ですから」


正直独り暮らしは慣れてるからな。
何かあったら下にいるゲンガーさんが来てくれるかもしれんし。


ミミロップ
「…寂しくは、ないですか?」


「えっ? いや、別に…ずっといなくなる訳じゃないでしょ?」

ミミロップ
「……了解しました、これより一旦地下闘技場、訓練施設に向かいます」
「何かあれば、この鈴を…」


そう言って、ミミロップさんは胸の谷間から呼び鈴を出し、俺に渡した。
ミ、ミミロップさんの汗の臭いが…!
い、いかん、これはすぐに無心にならねば…
エロくな~いエロくな~い…


ミミロップ
「その鈴の音が聞こえる限り、私は例え手足が千切れようが聖様の元に必ず戻ります」
「ですので、ご安心を」


ミミロップさんが扉から出て鍵を閉めると同時、ダンッと凄まじい音が聞こえた。
恐らく、思いっきり床を踏んだ音だろう。
やっぱ相当脚力高そうだな…あれがもしメガ進化したら。



「…胸もギガサイズに進化するのだろうか?」
「いや、それはマズイ! ミミロップさんはあの身長とあのサイズだから美しいバランスなのだ!!」
「不必要に胸だけデカくなるのはロマンではない!!」

パルキア
「あっはは、ゴメンね~オレのおっぱいじゃお気に召さないか…結構自信あったのになぁ~」


「大丈夫です、パルキアさん…」
「貴女のおっぱいも、最高です…!」


俺は遠くを見るような目線で、虚空を見つめてそう言った。
ふ…決まったな。


パルキア
「あはは…まぁ、ありがとうと言った方が良いのかな?」
「オレ、母親だけどまだ処女膜あるし、母乳も出ないからね~」
「ちゃんと初物だけど、食べる?」


「全力でご遠慮します! 流石に理性の限界!!」


パルキアさんは終始笑ってた。
良かった…少しでも、気が紛れたかな?
戦いが止められないなら、せめてパルキアさんの心の支えになってやろう。
俺に出来るのはまだその位だ…今のままじゃ、真相に辿り着く所じゃない。
せめて、自由に動けたら…


パルキア
「ところで、ミミロップは何処に?」


「えっと、アグノムに呼ばれて訓練所に行きましたよ?」

パルキア
「訓練所…地下か? 何かの実験かな…?」


パルキアさんは思い当たる節があるのか、頭を掻いてぼ~っと考えている。
そして、すぐに表情を引き締めて何かを呟いた。


パルキア
「…例の切り札、完成したのか?」


「…今、何て?」

パルキア
「…ゴメン聖君、信じてないわけじゃないけど、深くは聞かないで」
「万が一にでも失敗は許されないから…」
「今日はこれで…また明日」


そう言ってパルキアさんは空間を越えて部屋を一瞬で出る。
いつもながら神出鬼没だよな…あんな風にポンポン空間越えられたら、スゲェ便利そうだけど…
…悪用出来すぎる能力だよな。
パルキアさんの性格だから許されてる様なチート能力だ。
しかも移動だけじゃなく、別の空間を作る事も出来る。
他にも、色々応用出来るんだろうな…改めてスゴイ能力だ。
守連たちはそんなパルキアさんと戦わなければならないのか…



「…真相、か」


ラランテスさんは言った。
俺がいつか世界の残酷さに気付くと。
ぼかした言い方だが、かなり重要なワードかもしれない。
ラランテスさんも多分何かの縛りがあって真相に近い事は言えないんだ。

これはあくまで予想だ。
真相を誰にも話せない、呪いの様な物。
何処かのラノベの様な設定だが、多分ある。
じゃなきゃ、パルキアさんはきっと話してくれるはずだ。
言えないから、あんなに苦しんでる…
もちろん、それだけが理由じゃないとは思うけど。
パルキアさんにのしかかっている物は、もっと想像を絶する物なのかもしれない。



「…クソ、一体何があるんだ俺には?」
「いっその事、自殺でもしたら復活するのか?」
「なわきゃない…ここは確かに異世界ファンタジーみたいだが、俺の体は現実だ」


だが、試せる事は試した方が良い。
俺はそう思い、机にあったメモ帳を取る。
そして俺はそれに、ここに来てから今までの出来事を覚えている範囲で書き留めていった。
いわゆる、日記や手記といった奴だ。

まだ大した意味は無いかもしれないが、その内意味を持つかもしれない。
でも、これだけじゃすぐ無くなりそうだな…後でミミロップさんに追加を頼もう。



………………………



パルキア
「お、やってるやってる」

アグノム
「母さん、どうしてここに?」

パルキア
「聖君がここだって」


オレがそう言うと、アグノムは軽くため息を吐く。
そして、やや面倒臭そうに説明を始めた。


アグノム
「…今回はただの訓練だ」
「メガストーンが本当に使えるのかは解らない」
「だが、もし使えるのなら、これは最大戦力のひとつと貸す」
「俺様最大の賭けだよ…」

パルキア
「成る程、それが勝算のひとつか」


オレの言葉にアグノムは頷く。
だけど、これだけじゃ足りないよね…
オレを合わせても、まだひとつ足りない。


アグノム
「最後のひとつは、それこそ時間がかかる」
「そして作れるのは多分ひとつだけだ」
「そっちはメガストーンと違って、今の所自分で生成しなきゃならない」
「メガストーン程難しい機構じゃないが、それでも時間は多分ギリギリだろう…」


パルキア
「間に合わなかったら、負けだろうね」

アグノム
「あってもようやく五分五分…いや、4:6で不利だ」
「本音はもうひとつ手が欲しいからな…」


アグノムはそう言って唇を噛む。
そっか、見付からないんだね…追加の手は。
俺たちは地下闘技場で相対するふたりの切り札を見た。


ゲンガー
「戦闘訓練とか、久し振りなんだけど」

ミミロップ
「………」


軽く体を動かして体を暖めるゲンガーに対し、いつでも構わないと言った風に直立不動で待機するミミロップ。
さて、見れるのかな? メガ進化…


アグノム
「あまり、期待はしないでくれ」
「俺様も、アイツ等を信じる事しか出来ない」

パルキア
「うん、分かってるよ」

ゲンガー
「そろそろ始めようか…で、これどうやって使うんすか?」


アグノムは浮遊しながらズッコケそうになる。
オレもあはは…と笑い、頭を掻いた。


アグノム
「アホッ! それを見付けるのが今回の訓練目的だ!」
「メガ進化は元来戦闘中にのみ発動する物だ」
「後はお前らの意志に賭ける!」
「伝承的に言うなら、絆を信じろ!」
「…バカらしすぎて反吐が出るがなっ」

ゲンガー
「絆、ね…それじゃミミロップにはちょっと無理じゃない?」

ミミロップ
「何故そう思うのですか?」


ん? 珍しくミミロップが反論したね…
いつもなら何も言わずにスルーするのに。


ゲンガー
「はぁ…? ミミロップ、アンタ何の感情も無いでしょ?」
「感情も無いのに絆とか、理解出来ないと思うけど…」
「それともアンタ、ぶっちゃけ絆とか感じる相手いるわけ?」

ミミロップ
「………」


ミミロップは何も言わなかった。
顔からは当然何も読み取れない…完璧なポーカーフェイス。
だけど、何だかいつもとは違う雰囲気に感じる。
まるで、沸々と怒りを煮え滾らせている様な…強いて言うならそれが1番近い表現。
まぁ、あくまで個人的にそう思うだけで、端から見たら何にも解らない。
そういった感情を彼女は出した事が無いからね。


アグノム
「アイツ、まさか何か変化を起こしてるのか?」

パルキア
「…変化?」

アグノム
「ヤバイかもしれない…母さん、姉さんを呼んでくれ!」
「下手すりゃ緊急事態だ!」


オレはアグノムの心境を察し、すぐにテレパシーでユクシーを呼ぶ。
これですぐに来るだろう。
さて、ミミロップはどんな答えを出す?


ゲンガー
「アグノム様~初めても良いんすか?」
「そろそろフラストレーション爆発しそうなんすけど?」

アグノム
「ああ、良いぜ始めろ」
「だが、目的を忘れるなよ?」

ゲンガー
「はいは~い♪ んじゃまずは先…」


ドガァッ!!


いきなりミミロップは飛びかかり、空中で斜め回転して右足を『ぶんまわす』…流石にゲンガーの反応が速かったが、危ないね~


ミミロップ
「…!」

ゲンガー
「ちょっ!? 今の殺す気だったよね!?」

パルキア
「お~い、ミミロップーちゃんと手加減しなよー?」

アグノム
「あのバカ、やっぱおかしくなってやがる…」
「オイ、ゲンガー! 『命を大事に』!!」

ゲンガー
「死ねクソ主人! つか、本気にならないと殺される!!」


もう、メチャクチャだった…
結局、互いにメガ進化は出来ず、今回の訓練は肝を冷やしただけだ。



………………………



ゲンガー
「もうやだ…死ぬかと思った」

アグノム
「自業自得だバカ…ミミロップだって怒る時はあるぞ?」

ゲンガー
「…だって、今までそんな事無かったじゃないっすか~!?」


確かにその通りだ。
今までミミロップは、ここまで露骨な怒り方をした事は無い。
ましてや、味方にそれを向けるなんて…
今回はゲンガーもちょっと口が過ぎたんだろうけど、意外な所でミミロップの逆鱗に触れるなんてね。
それとも……?


パルキア
「ミミロップ~どうして怒ったの?」

ミミロップ
「…怒ってはいません」
「ただ、何故かムカつきました」

パルキア
「あっはは…それは怒ってるって言うんだよ?」


ミミロップは、やはり感情を持ってしまっていた。
危惧はしていたんだけど、やっぱり聖君がそうさせてしまったのか。
これはマズイね…まだ77日もあるのに、これ以上彼女を側には置いておけない。


パルキア
「ミミロップ、もう聖君の世話はしなくて良いよ」

ミミロップ
「理由をお聞かせください」

パルキア
「それが理由だよ」


ミミロップは無表情に?を浮かべる。
まだ自分で解ってない内は良い、だけど今後それが発展していけば…


パルキア
「君はもう危険な状態に入っている」
「今までムカつきました、なんて感情、湧き出した事ある?」

ミミロップ
「…ありません」
「ですが、今の私のご主人様は聖様です」
「約束しました…聖様の元に戻ると」


これは本当にマズイ。
ここでミミロップが消えるなんて、絶対に認められないのに。


パルキア
「…どうしてもって言うなら、力ずくになっちゃうよ?」
「ここで君を失うわけにはいかないんだ…」

ミミロップ
「構いません、例え手足が千切れようが聖様の元に戻ります」

ユクシー
「…その必要は無いわ」
「…母さん、ミミロップを信じてあげて」
「…ミミロップは、消えないわ」

パルキア
「…根拠は?」


いつの間にか背後に現れたユクシーは、確信めいた言い方をする。
根拠が無ければ、この娘は口を挟んだりしない。
何故消えないと言い切れるのか?


ユクシー
「…聖さんが鍵を握っている可能性がある」

パルキア
「…?」


聖君が、鍵? それは何の事なんだ?
オレが理解出来ずにいると、ユクシーは続ける。


ユクシー
「…メガ進化は絆の象徴」
「…ミミロップはその足掛かりになる」
「…危険な賭けでもあるけど、彼女なら必ず消えずに残ると思う」

パルキア
「それは推測だ、根拠になり得ない」

ユクシー
「…ミミロップ、貴女は聖さんの所にいると消えてしまうかもしれない」
「…だったら、貴女はどうする? 消えてしまってでも聖さんの所に行く?」

ミミロップ
「……消えません」
「何故なら、私が聖様の元に戻るのは約束であり、信頼だからです」
「そこに私が消える要素は無いと断言します」
「…少なくとも決戦までは」


それは難しい所だ。
つまり自信はあるけど、実際どうなるかは解らない。
コントロールしてみせるって事か…スゴイねミミロップは。
オレなんか、下手したら毎日消えてる計算なのに…


パルキア
「…まぁ、良いよ」
「だったら、好きにすると良い」
「その代わり、ちゃんとメガ進化出来る様になってね?」

ミミロップ
「お任せください、必ずや聖様との絆で進化してみせます」

パルキア
「頼んだよ……ん?」


今、少し不穏なワードが混じってた様な。
オレは振り返ると、すでにミミロップがその場にいない事に気付く。
あらら…本当に大丈夫なのかね?


ユクシー
「…ごめんなさい、ちょっと自信無い」
「最悪、記憶消すから…それで我慢して」

パルキア
「あ、あはは……はぁ~」


結局、何ひとつ確信は無いギャンブルめいた賭けとなってしまった様だ。
もうホントにミミロップを信じるしかない。
頼むから消えないでよ~?
消えたらもう母さん諦めるから…
自分で言ってて空笑いが出る。
ホント…いっその事諦めて告白したいな…聖君に。



………………………



ミミロップ
「ただいま戻りました」


「うわっ、ミミロップさん服ボロボロじゃないですか!?」
「よっぽど激しい訓練だったんですね…先に着替えてお風呂に入った方が良いですよ?」


俺はやや急ぎ足で戻って来たミミロップさんに開口一番そう言った。
ミミロップさんの今の姿は、服が所々破れて散ってしまっている。
紳士な提督諸氏には中破グラと言った方が解りやすいか。
流石にこのままの姿でいられたら息子が限界を迎える!


ミミロップ
「…失礼しました、すぐに入浴し、着替えて参ります」


そう言ってミミロップさんはすぐに部屋を出て行く。
その際、鍵を閉める所か扉を開けっぱなしで行ってしまった。
何か珍しいな、ミミロップさんがあんなドタバタするなんて。


アグノム
「何やってんだか、アイツは…」


入れ替わりでアグノムが入って来た。
流石に扉は鍵を閉められ、部屋には俺とアグノムだけになる。
そういえば、このツーショットは何気に初だな。


アグノム
「ミミロップ相手に勃たないからって、俺様に発情するなよ?」


「するかっ」

アグノム
「まぁ、冗談だ…それより、お前ミミロップに何かしたか?」


突然、アグノムは真剣な顔でそう聞く。
だが、当然俺には何の心当たりも無い。
これまでお触りすら俺はした事無いのだから。



「別にいつも通りだぞ? ミミロップさんには断じて手は出してないし、触ってもいない」
「ミミロップさんも毎日同じ感じだし、特に今日まで変には感じなかったけどな…」

アグノム
「今日まで…?」


「つーかさっき、扉開けたまま出て行くとか初めてだったから…」
「あぁ、そういや…今日初めてお願いはしたかな」
「アグノムの所に行ってやれって」
「そしたら、何でか変な事聞いたんだよな…」
「寂しくはありませんか…とか」

アグノム
「………」


アグノムは何か頭に手を当て難しそうな顔をしていた。
何か思い当たる節でもあるんだろうか、思案を巡らしている様だ。


アグノム
「…とりあえず、礼を言う」


「はっ!? お前悪いモンでも食ったのか?」

アグノム
「舐めんなっ! 俺様を何だと思ってる!?」
「その必要があれば、ちゃんと感謝ぐらいはするわっ」


アグノムはそう言ってすぐに部屋を出て行ってしまった…
やれやれ、素直に感謝されてりゃ良かったか?



………………………



ゲンガー
「…ま~だ考えてんすか~?」

アグノム
「…どうあっても腑に落ちない」
「アイツの『意志』は俺様が掌握してる」
「アイツには自分の意志で何かを決める事は無いはずなんだ」


俺様はミミロップの言動をひたすら考察する。
だが、どうしてもミミロップの行動原理が解りかねていた。


ゲンガー
「ん~そんな考える事っすか?」
「どう考えても聖様が原因っしょ?」

アグノム
「…何でそれが解る?」


俺様は何か掴んでいそうな言い方をするゲンガーに聞く。
すると、ゲンガーは面倒臭そうにこう答えた。


ゲンガー
「ミミロップ自身に決定は出来なくても、聖様が決定したらそれが行動原理になりません?」
「少なくともアグノム様が聖様に命令権奪われた時点で、ミミロップは本来アグノム様が出す決定を聖様が出してるわけですよ」

アグノム
「…そうか、そういう事か」


確かに筋は通っている。
ミミロップが俺様どころか母さんにまで歯向かったのは、全て聖との約束が原因。
アイツの意志を俺が奪ったが為に、アイツは聖の存在が逆に大きくなってしまっているのか…?


ゲンガー
「…ポジティブに考えたらどうです?」
「これ、本当にメガ進化に繋がりそうですし」
「原因解ったなら対処も出来るっしょ?」

アグノム
「…お前の気楽さが羨ましいよ」
「でもまぁ、そう考えた方が楽だな」


ゲンガーはそうそう!と同意する。
ここの所思いつめてたからな。
奴らは第三大陸でも大して苦戦してない…
予定では2週間は稼いでくれないと困るんだが。
本当に不安しかないぜ…



………………………




「………」

ミミロップ
「…何をしているのですか?」


「ん? 日記ですよ…今日から始めようと思うんです」
「まぁ、どっちかって言うと手記なんだけど」
「ここに来てからの事を、俺なりに解釈して、感想とか、思った事を書き留めていこうと思って…」


意味があると思いたい。
今は意味が無くても、きっと何かの役に立つ。
俺はそんな風に思いながら、今日の事を書き記す。
よし、今日はここまで…明日からはしっかりと見聞きした事を記録していかないとな…


ミミロップ
「聖様」


「ん? どうかしました?」

ミミロップ
「…その手記には、私の事も書き記されていますか?」


ミミロップさんは、またいつもは聞かない事を聞いてきた。
何か、今日はどことなく積極的な気がするな。
俺は、少し気恥ずかしくなり、頬を掻いてこう答える。



「もちろん、書いてますよ?」
「ミミロップさんだけじゃなく、パルキアさんや、エムリットちゃん、アグノムにユクシーちゃん…」
「それに、ゲンガーさんやラランテスさんの事も…」
「俺は絶対に忘れません…ここで体験した事は」
「皆、良い人ばかりだ…」
「争いなんか、起こらなければ良いのに…」


ミミロップ
「…聖様、どうか約束してください」


「え? な、何を…?」


俺は突然そんな事を言ったミミロップさんに注目し、そう聞き返す。
ミミロップさんは、相変わらず表情を変える事なく、無感情にこう言う。


ミミロップ
「…最終的に、何があっても」
「決して、諦めないでください」


「え…?」


まるで、それは絶望的な何かが迫っているかの様だった。
いや、俺はその正体を知ってる。
パルキアさんたちにとって、絶望的な存在。
それは、俺の家族だという事を…


ミミロップ
「…私は聖様を信じます」
「聖様なら、きっと絶望しないと…」
「私は…信じます」


「…ミミロップ、さん」


ミミロップさんは、それでも無表情だった。
でも、決して無感情に言ったわけではない。
ミミロップさんは、俺みたいな弱者を信じてくれると言うのだ。
ミミロップさんの期待に、俺は答えられるのか?
いや、答えなければならない。
俺は、信じてくれると言ってくれる人の為に、強くなると決めたのだから…



………………………



守連
「…今度は海しかないよ~?」

阿須那
「…前の大陸はひたすら砂漠」
「次は極端に海しかあらへん!?」
「ええ加減にせえや!? もうちょっと、マトモな陸を歩きたいわ!!」


阿須那殿は相当参っている様だった。
砂漠の暑さは耐えれても、水は耐えれませんか…
まぁ、気持ちは解らんでもありませんが、もっと重症なのは…


女胤
「も、もう限界ですわ…」
「砂漠も海も、見たくありません…」
「雨は何処!? 森は!?」
「こんな世界嫌ですわ~!?」


拙者は、女胤殿の背中を擦り、落ち着く様に慰める。
こちらの気持ちも解らんでもありませんが、これはそう言う旅。
今も拙者たちを待っているであろう、聖殿を救う為の旅なのでござる。
その為ならば、拙者は決して諦める事はしない!
例え、何が襲いかかろうとも聖殿を救ってみせる!!


華澄
(聖殿、決して絶望などせぬ様…)
(拙者たちが、必ず助け出すでござる!!)










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はしていない』



第5話 『ご注文はミミロップさんですか?』


To be continued…

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