第4章 第4話

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読了時間目安:29分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

アグノム
「命令だ、やれミミロップ!」


「絶対聞いちゃダメだ、んなアホな命令!!」

ミミロップ
「………」


俺たちは互いにミミロップさんに命令を出し合っていた。
何故俺がここまで必至にならなければならないかと言うと、よりにもよってこのバカが…!


アグノム
「良いからさっさとそいつの服引っぺがして、お前の膣で精液を搾り取れ!」
「これはポケモン娘がちゃんと人間の男と子供が作れるかの重要実験だぞ!?」


「とりあえずお前は、一般的な倫理観を覚えろ!!」

ミミロップ
「………」


アグノムはアグノムでバカらしい程に退かない。
確かに、実験家として見ればそれを証明したいのだろうが、それなら俺以外でやってくれ!

…いや、やっぱダメだ! どこの誰かも解らぬ種馬の毒牙にミミロップさんを捧げるわけにはいかない!!
やはり、ここは何とかミミロップさんを説得しなければ!


ミミロップ
「私は両者の命令を同時に遂行する事は不可能と判断します」
「ですので、客観的に見た場合の最良の選択として、待機を選択します」

アグノム
「何でじゃ!? 俺様の命令が最優先だろうが!?」

ミミロップ
「…否定します」
「アグノム様が私に出された命令は、聖様に一時的に仕える事」
「つまり、現時点での私のご主人様は聖様であり、アグノム様よりも優先度は上となります」

アグノム
「何~っ!? まさか、ここで俺様の完璧な調教が裏目に出るとは…!」
「くっそ~こうなったら命令上書きしたろか…?」

ミミロップ
「…敵性意志の有無を確認」
「聖様に危険が及ぶ可能性大、アグノム様を攻撃目標に設定します」

アグノム
「ま、待て待て待て!!」
「分かった! もう何もしないから!!」
「その構えた脚は下ろせ!!」


ミミロップさんはアグノムの言葉に敵意を覚えたのか、右膝を腰の辺りまで上げて何やら構えた。
それを見てアグノムは一気に顔を青ざめ、説得に入る。
よっぽど怖いんだな…ミミロップさんは相当強いのだと予想出来る。
自分で最高傑作とか言ってたし、戦闘能力も相当高いんだろうな…


ミミロップ
「…聖様、攻撃命令を」

アグノム
「ヒィィィィィィッ!?」


「あ~もう良いよミミロップさん、そんなに虐めたら可哀想だ」
「まだ10歳の子供なんだから、ここは大人の対応で」


俺がそう言うと、ミミロップさんは無言のまま脚を下ろす。
そして一歩後に退き、いつもの定位置で俺の命令を待った。
それを見て、アグノムはガタガタ震えながら安堵の息を吐く。


アグノム
「チクショウ…次のメイドは絶対俺様優先で調教してやる~」
「もう嫌じゃあ! 何で優秀なメイドに限って俺様を大事にせんのじゃあ~!?」


結局、泣きながら飛び去ってしまった。
ああいう所はちゃんと子供らしいよな…


ミミロップ
「………」


「…はは、とりあえずありがとうございます」

ミミロップ
「…お役に立てたのでしたら、とても光栄です」


ミミロップさんは相変わらず無感情にそう言う。
とはいえ、ミミロップさんはちゃんと考えて行動しているのは解った。
無感情、無表情だけど、決してロボットじゃない。
ミミロップさんは、ちゃんとした人間だ…
それが解ったのは収穫だな。
しかし、いきなり叫び合いだったから喉が渇いたな…


チリンチリン! ガチャ!


ゲンガー
「はいはい、これで良いのか?」

ミミロップ
「ありがとうございます…聖様、お飲み物をどうぞ」


「あ、ありがとうございます…よく解りましたね?」


完璧なタイミングで鈴の音が鳴ったな。
っていうか、何でゲンガーちゃんも都合良く持って来てんだ?
とりあえず俺は美味しい水を飲んで喉を潤した。



「ぶは…生き返る~」

ゲンガー
「全く、くだらない事を大声で叫ぶんじゃないっての…」


聞こえてたのか…って、そんなに近くにいたのか?
もしかしてと思い、俺は聞いてみる事にした。



「そういや、ゲンガーちゃんの厨房って近くなの?」

ゲンガー
「…25歳の目上に対して、ちゃん付けはねぇだろ?」
「まぁ、厨房ならこの部屋の真下だよ」
「アタシは耳が良いからバカ騒ぎはすぐ解るからね? 当然鈴の音もだ」


おっと、まさかこのナリで風路さんより年上とは…
華澄もそうだけど、ポケモン娘って見た目で年齢解らんよな…


ゲンガー
「まっ、この見た目じゃ仕方ないか」
「とにかく、あんまり大声で騒ぐなよ?」
「まぁ、ミミロップがそんな大声で喘ぐとは思わないけど、子作りするなら少しは気を遣ってくれ」


「何でどいつもこいつもそこに行き着く!?」


結局、皆俺が盛ってると思い込んでいる様だ。
こちとら、未成年でちゃんと節度は守ってますからね!?



………………………



アグノム
「あ~あ、な~んか嫌になるな…」

ユクシー
「…もう弱音?」


俺様たちは指令室にいる。
巨大モニターには今も第二大陸を進行している奴らが映ってた。
俺様は椅子の背もたれに持たれかかり、ポテトチップスを食いながら愚痴る。


アグノム
「弱音を吐きたくもなるさ…むしろゲロ吐くレベルだよ」
「ここからはザコのレベルも跳ね上がってるってのに、ダメージひとつ負わねぇ…」
「癖のある魔物も多くなってるってのに、4人が全員でカバーしてやがる」
「やっぱ、分断して各個撃破が理想だな」

ユクシー
「…問題はそのぶつける戦力よ、何とかなりそうなの?」

アグノム
「…切り札の完成いかんだな」
「当然それが無けりゃ逃げるのが大正義だ」

ユクシー
「…お母さんの記憶を全て奪って撤退、か」


俺様は頷く。
これは最低条件だ…何がなんでも生きる道を選ぶ。
結果的に幸せは放棄するかもしれない、だが生きている限り未来はある。
勝算もまるで無いのに危険しかない橋を渡るなんて、母さんにはとてもさせられない。
これは姉さんも同じ考えだろ?


ユクシー
「…アグノム、ひとつだけ覚えておいて」
「…逃げた所で、未来なんて無いから」

アグノム
「…え?」


俺様は呆然とする。
姉さんは唐突にそんな事を言い出したのだ。
何で、それが解るんだよ?
予知つっても、そんな遠い未来までは見えないだろ?


ユクシー
「…忘れないで、母さんが何でこの選択を選んだのか」
「…それは、もう退く事が出来ないから」
「…私たちの未来はもう決まってる」
「…それを、母さんは知ってしまった」
「…だから、運命に抗う道を選んだ」
「…理に逆らうのではなく、理の一部になるという最後の絶望的な希望にすがって」


姉さんは静かに述べる。
俺様はそれ以上何も言えなかった。
つまる所…やるしかない、か…



………………………



ラランテス
「パルキア様」

パルキア
「ん? 珍しいね、ラランテスが直接オレの部屋まで来るなんて」

ラランテス
「…ひとつ、ご提案がありまして」


私は今回、ある提案をする為にパルキア様の部屋を訪ねた。
私の言葉を聞き、パルキア様はやや真剣な顔をなされる。
私は間を置かずにこう提案した。


ラランテス
「聖様に外出許可をお与えください…無論、条件付きで」

パルキア
「…それは何故?」

ラランテス
「配慮しているとはいえ、もう半月はあの部屋だけにおられます」
「流石にこのままでは気が滅入りましょう」
「ですので、この辺りで1度部屋から外出をさせた方が良い、と私は思いました」

パルキア
「………」


私の提案にパルキア様は悩んでいる様でした。
まぁ、聖様がどの様な精神をしているかは私には解りかねますが、聞けばまだ16歳の子供。
流石にあの軟禁状態では、悪い影響も少なくないでしょう。
出来れば、定期的にリフレッシュさせてあげた方が良いと私は判断したのです。


パルキア
「…ちなみに条件は?」

ラランテス
「外出は城下町まで、付き人は信頼に足る者に任せます」

パルキア
「…う~ん」

ラランテス
「…聖様の事を想うのでしたら、ここはご決断を」
「今は大丈夫でも、決して軟禁による悪影響は少なくないと私は予想します」


私が続けてそう言うと、パルキア様は頭を掻いて息を吐かれる。
どうやら決断された様ですね。


パルキア
「分かった…許可しよう」
「で、誰に付き人を? それが1番不安なんだけど…?」

ラランテス
「今回は私とミミロップ殿で担当します」
「幸い、私はまだ聖様とは会った事もありませんし、消える可能性は低いでしょう」
「ミミロップ殿は、ずっと聖様に仕えているメイド、聖様もある程度安心するはず」


パルキア様はそれを聞いて数秒考える。
そして、静かな口調で念を押す様にこう仰られた。


パルキア
「…本当に消えちゃダメだからね? 聖君、ホントに怖いから」

ラランテス
「肝に命じておきます」


私は帽子の鍔をつまみ、少し前方に下げてそう言った。
怖い、か…どれ程の少年なのでしょうか?
このパルキア様がそこまで恐れる程、愛しい方か…
改めて興味はあります。
その聖様を助ける為だけに、例の4人はここを目指しているという。
果たして、我々は勝てるのか?
それは、神のみぞ知る……ふ、空間の神の前で、そんな事を考えるのは失礼ですね。



………………………




「え、外出?」

パルキア
「そっ…たまにはそうしてあげないと聖君壊れるかも~って、怖~いお姉さんに脅されちゃったから♪」

ラランテス
「またそんなご冗談を…聖様が勘違いなされます」


パルキアさんはそれを聞いてハハハッと笑う。
隣にいる人は、初めて見る人だけど、まるで男装麗人だな。
燕尾服にシルクハットとまるで奇術師みたいな服装。
少なくとも、パルキアさんも信頼してる様な感じだし、この人もパッと見は良い人そうだ。



(っていうか、この城にいる人は皆悪人じゃない気がする)


俺は、少なくともそう思う。
大体半月はもうここにいるけど、それまでに会った人は誰ひとりとして悪人には見えなかった。
むしろ皆、俺やパルキアさんを何よりも大事にしてる感じだ。
そんな皆が、戦わなければならないのが守連たちだなんて、今も信じられない…何故争わなきゃならないのか?
こんなに優しい人たちが…何で、俺の家族と戦うんだ?


ラランテス
「聖様、やはり相当負担となっていた様子ですね」
「顔色が良くありません、すぐに出ましょう」
「パルキア様、お願い致します」

パルキア
「分かった…じゃ、聖君行ってらっしゃ~い♪」


パルキアさんが優しく笑って手を振ると、俺の視界は一瞬で切り替わる。
既に外に出た様で、俺は周りを見渡して周囲を確認した。
どうやら庭園の様で、大小様々な花々が広い空間に咲き誇っている。
素直に、綺麗な庭だと思った。


ラランテス
「まずは、ようこそ…大庭園へ」
「ここは、私が剪定を担当している庭園でございます」

ミミロップ
「………」


燕尾服の女性はミミロップさんの隣で礼をしてそう言う。
どうやら今ここに居るのは俺たち3人だけの様で、他の気配は感じられなかった。


ラランテス
「さぁ、まずは歩きましょう」
「ここは想像以上に広いので…はぐれぬ様、ご注意ください」


そう言って彼女は歩き始める。
俺はそれに付いて行き、その後をミミロップさんが付いて来る。
俺はとりあえず歩きながら燕尾服の女性に話しかけた。



「あの、貴女は何のポケモンなんですか?」

ラランテス
「…これはご失礼を、すっかり失念していました」
「私は庭師のラランテスと申します、以後お見知り置きを…」


ラランテスと名乗った庭師の女性は、申し訳なさそうに謝り、改めて自己紹介する。
丁寧なお辞儀の仕方で、いかにも礼儀正しい人の様だ。
…何か癒されるな~やっとマトモな人に出会えたみたいで。

ここん所、アグノムみたいな変態に目を付けられたみたいだし、気が休まらなかったからな…
かといってミミロップさんは基本無口無表情無感情の三重奏だし…
良い人だとは思うのだが、コメントし辛いのも現状だ。

ゲンガーさんはまだフツーっぽいけど、普段はメイドの仕事が忙しいのか会話はほとんど無い。
…むしろ避けられてるとも言えるな。

パルキアさんも、あれから1日1回しか顔を見せなくなった。
しかも、何だか会う度に違和感が増えていく。
特に酷かったのは、昨日連日で同じ事を聞いた時だ。
パルキアさんは苦笑して謝ってたが、どうしたのだろうか?
あれじゃ、まるで前日の事を忘れてるかの様な…


ラランテス
「いかがなさいましたか、聖様?」
「あまり、こういった場所はお気に召しませんか?」


「あ、すみません…そうじゃなくて」
「…色々、考える事があって」

ラランテス
「さしずめ、ここを目指す4人の安否…と言った所ですか?」


俺は一瞬動きを止める。
確かに、それも大事な事だ。
何よりも、俺は家族に会いたい。
アイツ等は、無事にここまで来れるのだろうか?


ラランテス
「…率直に言いますが、彼女たちは必ずここに辿り着きます」


「…何故、分かるんですか?」

ラランテス
「分かる…と言うより、決まっている事だからです」


ラランテスさんは確信を持って言っている様だった。
決まっているって…そんなシナリオみたいな物があるのか?


ラランテス
「彼女たちは、アグノム様の作ったプログラムに沿い、ここを目指しています」
「恐らく辿り着くのは後2ヶ月以上はかかると思いますが、それでも確実に辿り着きます」


「…じゃあ、その後は?」

ラランテス
「決戦が始まります」
「その時は、私もそこのミミロップも恐らく死ぬでしょう」


俺は、は…?と、口をポカンと開けて放心する。
この人は、何の迷いも無く死ぬと言った。
待てよ、守連たちがそんな残酷な事するわけ…


ラランテス
「理解なされておりませんね?」
「でしたら付け加えましょう…決戦が始まれば、双方どちらかが確実に死にます」
「確実に激戦になりますが、私たちは彼女たちに最後まで抵抗し、その戦力を削ぐでしょう」
「そして、その先に…私たちは存在しません」


「何でですか!? 何でそんな争いが起こるんだ!?」
「互いに死ぬまでやり合うなんてバカげてるでしょ!?」


俺の叫びに、ラランテスさんは一瞬眉をひそめる。
この人は多分解ってる。
そんな戦いはするべきではないと。
だが、ラランテスさんはなおもこう言った。


ラランテス
「1度動き出した歯車は、もう止まりません」
「パルキア様が宣戦布告をなされた日から、我々の取るべき道はひとつ」
「あの4人を何としてでも殺し、パルキア様たち家族を生き残らせる事…」


ふざけてる…何を言ってるんだこの人は?
そんなの、ただの殺し合いじゃないか。
アイツ等にそんな事出来ないだろ…
アイツ等は、そんな事絶対したくないだろ!?


ラランテス
「…聖様、私の事は恨んでくれても構いません」
「ですが、どうか…どうかパルキア様とその娘様たちだけは、嫌いにならないでいただきたい!!」


ラランテスさんは、その場で俺に土下座してそう言う。
何で、そうまでして戦うんだ…理由があるんだろ?
でなけりゃ、あの優しいパルキアさんが宣戦布告なんてするわけがない。
だけど、その答えが帰って来ないのは解ってる。
そして、この争いの中心には俺がいる事も……


ユクシー
「…ラランテス、余計な事を言わないで」


「…あれ? ユクシーちゃん? 目開いてどうしたの?」


気が付くと、背後にユクシーちゃんが目を開けて浮いていた。
だけどすぐに目を閉じ、やや苛立った様な雰囲気でラランテスさんの方を向く。
ラランテスさんは何故か地面に膝を着いていたが、すぐに立ち上がってズボンの砂を払い落とし、帽子の位置を整えた。


ラランテス
「申し訳ございません、ユクシー様」

ユクシー
「…ミミロップ、本当に怖いからお願い…脚を下げて」
「…聖さんに危害は加えないから」

ミミロップ
「………」


何だかユクシーちゃんの更に後で、ミミロップさんが脚を構えて戦闘態勢を取っていた。
な、何かあったのかな?
何か、急に頭真っ白になった気がしたけど…妙だな。



「…何の話してたんだっけ?」

ラランテス
「…いえ、他愛の無い雑談ですよ」
「ユクシー様も、ご一緒なさいますか?」

ユクシー
「…お願いだから、これ以上私の仕事を増やさないで」


ユクシーちゃんは、愚痴の様にそう言い、ひとりで飛び去ってしまった。
疲れてたみたいだけど、何か苦労してるのかな?


ラランテス
「ふう…さて、また歩きましょうか?」
「今日は、城下町まで行くつもりですので」


「町ですか、そこにも他のポケモン娘が?」

ラランテス
「いえ、そこはアグノム様が作り出した仮想現実です」
「1度、見ておくと良いでしょう」


そう言ってラランテスさんは足早に庭園を進んで行く。
どうやら、この庭園は城の入り口側らしく、庭園を出るとすぐに城門が見えた。
そして、俺は改めて城を見る。
そこには、本当に映画やゲームの中でしか見た事の無い、大きな城が聳え立っていたのだ。

俺はパルキアさんに空間移動で部屋に連れ込まれたから外観を見たのは初めてだな。
スゴイ城だったんだな…これだけ大きいなら、何人位メイドいるんだろ?



「ミミロップさん、城にはどの位メイドがいるんですか?」

ミミロップ
「計30名です」
「ゲンガーさんを長とし、その下に私を含むそれぞれの区画担当者が存在しています」
「聖様の部屋が存在する区画はゲンガーさんの区画でもありますが…」
「今の私はアグノム様の命令により、聖様の部屋のみを担当となっています」


そりゃスゴイ…
あのゲンガーさんがメイド長だったのか…ホントに見た目で判断出来ないな。
ってか、メイド長なのに料理やった事無かったのかよ!
大丈夫なのか? この城のメイド事業…



「気になったんですけど、コックって他に居ないんですか?」

ミミロップ
「本来ならば私の役目です」
「ですが、先程も申し上げた通り、今の私の担当は聖様の部屋のみです」
「ですので、急遽ゲンガーさんが担当する事となりました」
「ちなみに、ゲンガーさんは普段から仕事嫌いかつ面倒嫌いなので、料理などやる気がありません」


「色々ダメじゃねぇか!? そんなんでメイド纏まるのか!?」


少なくともトップが仕事嫌いは話にならないだろっ。
それで人望あるのかあの人?


ミミロップ
「…補足しますが、ゲンガーさんは仕事嫌いでも仕事が出来ないわけではありません」
「むしろ仕事振りが有能過ぎて、最終的にメイド長にまで上り詰めた方です」
「本人は何度も辞めたいと愚痴っていましたが」


「社畜だなオイ! 社会の鏡かっ!?」
「仕事嫌いなのに仕事は完璧だからトップとか、エリート真っ青じゃねぇか!」
「むしろ、何がゲンガーさんをそこまで仕事にかき立てるんだ!?」


フツー辞めるだろ?
仕事嫌いでも働くのは当然だが、辞めたいと思う様な職場にいるのも辛いだけだろうに。


ミミロップ
「…何だかんだ言っても、あの人はアグノム様が好きですので」
「アグノム様もゲンガーさんは1番のお気に入りですから、信頼もされています」
「…つまり、仕事は嫌いでも続ける理由はあると言う事ですね」


成る程、そういう事か。
仕事は嫌いでも、好きな人の為になるから頑張れるのか…
だけど、それで仕事嫌いなのにメイド長にまでなっちまうなんて…改めてスゲーな。


ラランテス
「ここで働く者は、皆パルキア様たちが好きでここにいます」
「理由は様々ですが、皆運命に導かれる様に、ここに集まったのですから…」


「気になったんですけど、この城っていつ出来たんですか?」

ラランテス
「…城自体の事は、私も良く存じません」
「少なくとも、パルキア様が人化なされた時にはここに居たそうなので…その時にはあったという事になりますね」
「ちなみに我々は、それぞれ別の空間から集まりました」
「皆、パルキア様の優しさに心を打たれ、パルキア様に付いて行く道を選んだのです」


「別の空間って、異世界って事?」

ラランテス
「さて、詳しくは説明しかねますが」
「少なくとも、パルキア様の空間転移によって世界を移動したのは確か」
「ただ、異世界という程の空間転移は恐らく不可能だと思われます」


何だか難しい話になってきたな。
だけど、これを紐解けば、何で人化が起こったのとかも解るんじゃ?
俺はそう思い、もう少し踏み込んでみる事にした。



「ラランテスさんは、人化してからパルキアさんに会ったんですか?」

ラランテス
「いえ、実は記憶が無いのです」
「私が人化した時は、既にこの城の中でした」
「その時、初めて見たのはここの庭園」
「そして、私が主と確信出来るパルキア様が笑っていたのを、今でも思い出せます」


ラランテスさんは嬉しそうな顔でそう語った。
似ている、俺たちに。
俺たちの出逢いも、運命だったのかもしれない。
守連、阿須那、華澄、女胤…皆記憶は無いのに俺を慕ってくれた。



(だけど、じゃあ人化はいつ起こるんだ?)
(むしろ何故人化する? そこに何か理由はあるのか?)


結局、そこは解らない…解らないがそうなる。
そこには何か法則が有りそうなのに、何の糸口も見えなかった。
ただ、今の所確かなのは、人化すると記憶が消えるという事。
パルキアさんは、後から思い出したと言ったけど…
それは、パルキアさんだけなのか?
そして、パルキアさんは恐らく真相を知っている。
だけど、それを俺には教えられない…そこにも何かがあるんだ。


ラランテス
「…聖様も、いずれは知る事になりましょう」
「世界の、残酷さを…」


「残酷さを…?」


それは、何か重要な言葉に聞こえた。
世界の残酷さ…一体、それは何なんだ?
世界の何が、残酷なんだ?


ラランテス
「さぁ、もう行きましょう」
「時間は有限です、日が暮れてしまいます」


「確かに、俺も気になるし行きますか…」


俺はこの先がどんななのかちょっとだけ期待しながら、ラランテスさんを追って城門を潜る。
すると、そこには想像を越える広さの城下町が広がっていた。



「うわ、スゴイなコレ」
「でも…何か人少なくないですか?」
「こんなに建物あるのに、ほとんど人がいない」


そこは妙を通り越して逆に不気味だった。
静かすぎるのだ…この城下町は。
っていうか、町の人もこっちには目も向けない。
そして、まるでパターンの様に同じ所をグルグルしていた。


ラランテス
「既にお気付きになられたと思いますが、この空間は作られた物です」
「パルキア様が創った空間に、アグノム様が超能力によって作り出した、仮想現実の世界」
「アグノム様いわく…RPG世界とか」


それを聞いて納得した。
ここはいわばRPGのマップだ。
町というマップに、町人というキャラクターが置かれている。
恐らく話しかければ定型文を返してくれる事だろう。
見た目からしてそんな感じがした。



「…この世界、触ったり感じたりも出来るのか」
「っていうか、この壁も本物みたいな硬さだな…」

ラランテス
「一応、ご注意を」
「万が一の時は命に関わる可能性もございます」


俺はゲッ…となって壁から遠ざかる。
つまり罠みたいな物もあるって事か。
そして、それはつまり…



「守連たちが、この世界で戦っている」

ラランテス
「…はい、ですが今の所は余裕を持ってクリアしている様です」
「このままなら、特に問題無くここまで来られるでしょう」


「…着いたら、どうなるんですか?」

ラランテス
「…さて、それは私には解りかねます」
「ただひとつ言えるなら…我々はあくまでパルキア様の為に行動致します」
「…最終的に決めるのは、パルキア様です」


つまり、戦えと言われたら戦うという事だ。
あの優しいパルキアさんがそうまでして戦う理由、俺はそれが知りたいのに、誰も教えてはくれない。
きっと、最後までそうなのだろう。
だったら、俺は俺に出来る事をやるだけか。



「…俺、説得します、パルキアさんを」
「こんな戦い止める様に…アイツ等と、争わない様に」

ラランテス
「…お止めはしません」
「願うなら、私とてその方が良いと思います」
「…出来るのでしたら」


ラランテスさんは帽子の鍔を前に傾け、表情を隠して言った。
暗に無理だと言われている様だった。
多分、そうなんだろう。
それが出来るなら、俺はあんな所にいない。
でも、だったらパルキアさんは…今どんな顔してるんだ?

もしかしたら、泣いてるんじゃないのか?
本当は戦いたくないんじゃないのか?
本当は皆仲良く一緒に暮らしたいんじゃないのか?

でも、それが出来ない理由がある。
世界の一部になる。
俺は逆に考えた…それはつまり。



(パルキアさんたちは、世界の一部じゃない、異物…?)


俺はそんな恐ろしい事を考えてしまった。
世界の異物、つまり悪性ウィルスの様な物。
当然、それは駆除される対象。
パルキアさんたちは、もしかしてそんな立場にいるのか…?
きっと、誰も答えはくれないだろう。
だから、俺は密かにこう思った。



(もし、それが世界の選択なら、俺は絶対にそれを許さない!!)
(パルキアさんたちを、ただ駆除しようとする世界なんかクソだ!!)
(神がいるなら、どうかあの家族を救ってくれ…)
(守連、阿須那、華澄、女胤…お前たちも、解ってくれるよな?)
(皆で力を合わせて、何とか救えないのか?)


それは、あくまで希望的観測。
そして、そんな曖昧な物程、すがるのは怖い。
それでもしダメだと解ったら、もう立ち上がれないからだ。

俺は覚悟しなきゃならないのかもしれない。
だけど俺は弱い…だから、俺は強くならなきゃ…!
皆を支えられる心を持たなきゃ…!
好きでいてくれる、皆の為に!!


ラランテス
「…そろそろ戻りましょう」
「聖様、どうか思いつめぬ様」
「辛い時はご相談ください、私で良ければ、いつでもお相手になりますので」


「ありがとうございます…その時は是非」

ミミロップ
「…聖様」
「私も、時が来るまでは必ず聖様の側にいます」
「ですので、いつでも…ご命令を」


「ありがとう、ミミロップさん」


俺はふたりに礼を言って歩き出す。
出来る事はまだ少ない。
多分、俺には戦いは止められないんだろう。
だけど、悲劇的な結末なんて誰も望んでないはずだ。
俺は、何とか和解の道を探さないと、と心の底で思った。



………………………



パルキア
「…それは、無理だよ」


「…ですよね」


俺は次の日、パルキアさんを説得しようとするが、結果は解りきっている事だった。
パルキアさんは、その道が存在しないと確信している。
だからこそ、戦う事を選んだんだろうから…
だけど、俺はパルキアさんに聞いておきたい事があった。



「…パルキアさん」

パルキア
「何だい? おっぱいでも触りたくなった?」


俺は我慢してスルーする事にした。
こんな所でエロネタに屈するわけにはいかない!!



「…本当は、戦いたくないんじゃないですか?」

パルキア
「………」


パルキアさんは数秒俯いて黙ってしまった。
俺は確信する。
やはり、本当は戦いたくないのだと。
そして俺は決心する、ならば真相を探そう…と。

パルキアさんたちが何故戦わなければならないのか。
何故その相手が守連たちなのか。
俺はその深くに潜んでいる世界の謎を解き明かす。
俺には、それ位しか希望が思い付かない。



「パルキアさん、俺絶対に諦めませんから」
「何度でも、こうやってパルキアさんを説得します」
「無理だと解ってても、続けます」
「パルキアさんが、理由を語ってくれるまで」

パルキア
「…聖、君」

ユクシー
「…今日はここまで」
「…それ以上、お母さんに余計な事を言わないで」


「余計な事だと!?」
「パルキアさんは明らかに戦うのを躊躇ってる!」
「だったら、戦わない方が良いのは確実だろ!?」


俺は、10歳の子供相手にマジギレした。
だけど、ユクシーちゃんは眉ひとつ動かさず、冷徹にこう言い放つ。


ユクシー
「…戦いたくないって誰が言ったの?」
「…貴方の勝手な妄想で決めつけないで」
「…私たちは貴方の様な甘い覚悟で生きてない」
「…貴方の様な弱者にどうこう言われる筋合いも無い」
「…私たちの代わりに、死ぬ事も出来ないくせに…!」


「…!?」


それは、俺の心臓に突き刺さる様な言葉だった。
確かに、俺にはそんな覚悟は無い。
戦争の最中に善悪論を説く愚か者だ。
きっとパルキアさんは覚悟を決めてる。
いや、恐らくこの城にいる全ての人間が覚悟している。
ユクシーちゃんの言葉は、まるで憎悪が込められている様だった。
まるで、俺が1番悪いかの様に…


ユクシー
「…ミミロップ、お願いだから脚を下げて」
「…謝るから、ごめんなさい、言いすぎたわ」

ミミロップ
「………」


どうやら、またミミロップさんが構えていた様だ。
流石にユクシーちゃんも怖いのか素直に謝った。
しかし、あのユクシーちゃんがあそこまで言うなんて。
覚悟、か…
俺は最悪の事態を予想してしまう。
互いが互いを滅ぼし合い、誰も生き残らない、絶望の結末を…










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はしていない』



第4話 『避けられぬ、戦いへの覚悟』


To be continued…

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