第3章 第9話

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読了時間目安:25分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

華澄
「………」
阿須那
「………」


「お、おい…お前ら?」


俺は、帰って来たふたりと一緒にリビングにいた。
ずぶ濡れだったふたりを一旦風呂に入らせ、着替えさせて飲み物を出していたのだが…

ふたりの顔は予想を越えて重い。
まるで、悪夢でも見ているかの様に苦しそうな表情。
風路さんは無事に助けられたそうだが、ふたりは何故か詳細を語ろうとはせず、終始この重い空気を無言で放っていた。


阿須那
「部屋で、寝てるわ…しばらく、ひとりにさせて」


「あ、おい!」

華澄
「聖殿っ!! どうか…今はそっと」


俺が引き止めようとすると、華澄が珍しく声を荒らげて制止する。
あの華澄が、俺にこんな荒々しい叫びをあげるなんて。
俺は余程の事態と思い、配慮して阿須那の背中を見送る。
その背中は余りにも弱々しい…あの阿須那があんなになるなんて…


華澄
「本音を言いますと、拙者たちには何も解らないでござる」


「え…?」

華澄
「外に出て、誘拐犯を追う所までは記憶にあります」
「ですが、そこからの先の記憶がさっぱり無いのでござる」
「気が付いたら…阿須那殿が風路殿を助けていました」
「阿須那殿も、恐らく同様に状況が全く理解出来ていない」
「今回の事件、何があったのかがあまりに不可解すぎます…」


それでは、俺にも全く理解出来ないじゃないか。
当事者がこんななのだから、現場を見てない俺たちに解るわけがない。
ただ、華澄の首に今も残る痣の様な痛々しい傷。
それは、何かと交戦していたのは確実だと言う証拠だった。
だけど、華澄たちはそれを覚えていない…
一体、何があったってんだ?



(あれ…こんな事、前にもあった様な)


俺は、ふと旅行の時の事を思い出す。
確か初日の夜、俺も全く記憶に無い海岸で似た様な事を体験した気が…
だが、あの時は別に何かやりあったとかじゃなかった。
でも、気持ちは何となく解る。
あの時の俺も、こんな華澄の様な感じだったのかもしれない。
理解は出来ない、でも何かがきっとあった…
そんな感じの…曖昧さ。


華澄
「…申し訳ございません、拙者も少し休憩を頂いても?」


「あぁ…ゆっくり休めよ、お疲れさん」
「それと、あまり考え込むなよ?」

華澄
「…はい」


華澄は頷くものの、何とも言えない顔をしていた。
これは重症だな、華澄の性格だと割り切るのは難しいか。
俺は華澄の背中を見送り、テレビに目を向ける。
今も台風速報だ…明日には晴れるみたいだが、夜までは雨だとさ…



………………………



結局、その日はそれ以上何も無く、ただ退屈な時間だけが過ぎた。
阿須那も華澄も、今日ばかりはずっと部屋に閉じ籠り、我が家では久し振りに俺が晩飯を作る事になったのだ。



「とりあえず、簡単に焼きそば!」
「つーか、この天候で買い物行く気が起きない!!」

守連
「わ~い、焼きそば~♪」

女胤
「阿須那さんたちはどうしたのですか?」


ふたりはここにはいない。
今も部屋で寝てるのか、解らない事を考え続けているのか。
とりあえず、俺は大丈夫と女胤に返し、ふたり分の食事をトレーに乗せて2階へ向かった。



………………………




「まずは阿須那か」


俺は阿須那の部屋の前に立ち、まずは部屋のドアを開ける。
鍵はかかってなかった様で、すんなり部屋に入る事が出来た。
部屋は真っ暗でよく中が解らないが、阿須那が布団で寝ているという事だけは解る。

さて、とりあえずは起こすとするか。
俺はそう思い、右手にトレーを持ったまま、阿須那の布団の側に忍び寄る。
そして、阿須那の耳元に向かいこう一言。



「ぴんぽーん! どうも、黒船で~す」

阿須那
「誰や!? 何奴!? 名を名乗れ!?」


「よくぞ聞いてくれました~♪ 私の名前は!!」

阿須那
「って、何でやねん!? ここで◯リーでぇす!は無いやろ!?」
「つーか、何で人の部屋に勝手に入ってんねん!?」


うむ、とりあえずネタに反応してくれて何より。
何かここん所ネタ成分が少なすぎたからな、久し振りでオジさん張り切ってしまった♪



「とりあえず飯! 焼きそば作ったから食べろ」
「ちなみにちゃんと食わなかったらエロい事をする!」

阿須那
「えっ、それホンマ…? ちなみに、どの位エロいん?」


「では、まず上着を脱ぎます」
「そしてコーヒーを飲みます」
「ぶふー! 砂糖を塩を間違える!」

阿須那
「どの辺がエロいんや!? つーか、コーヒー吹く為だけに上着脱ぐなや!?」
「噴く事前提かい!!」


うむ、素晴らしいツッコミだ。
何気に阿須那の激しいツッコミはあまり経験が無い。
折角の関西弁なのに機会に恵まれなかったからな。



「とりあえず、ご飯と焼きそばと味噌汁!」
「お茶も置いておくからちゃんと食べろよ?」
「では、俺は華澄の部屋に夜這いに行く!」

阿須那
「誰が許すかっ!! 華澄だけ特別扱いかっ!?」


「冗談だ、華澄が股間に1番反応するのは認めるが、そこまで飢えてない…多分」

阿須那
「多分かい! まぁ、ええわ…そん時はそん時や」
(…そういう約定やからな)


何だか最後に妙な事を呟いた気がしたが、とりあえず阿須那は飯を食い始めた。
俺は少し安心し、微笑んで阿須那の部屋を出た。



………………………




「で、華澄さんの部屋の前ですが……」


俺はふと、押し倒された時の記憶を呼び覚ます。
い、いかん…思い出すと息子が目覚めてしまう!
しかし、流石にまた裸って事は無いだろ。


ガチャ…


華澄
「…っ!?」


「どーも、夜這いに来ました~」


場が静寂する。
オーノー…流石に俺もこれは予想出来なかった…
俺がトレー持って堂々と部屋に入ると、華澄さんはリアル生着替え中…
おっぱいは完全に美しい形でさらけ出されており、下はパンツを履く直前のギリギリライン…
やや前屈みの状態で華澄さんは緊急停止しており、完全に意識がどっかへ旅立っていた。



「…とりあえず、晩飯ここに置いとくから」
「食わないと本気で夜這いするからな?」


俺はそれだけ言ってトレーを足元に置く。
そして、何事も無かったかの様に部屋を出てドアを閉めた。
数秒後…華澄の絶叫が聞こえたのは、言うまでもない…

チクショウ…息子の覚醒がヤバイ。
やっぱ華澄はエロ可愛すぎる…! このままでは、いつか間違いが絶対起きる気がするぞ…?

しかし…それだけは何としても阻止せねば!
俺は股間の圧迫を気にしながら、一旦自室で瞑想し、心を沈める事にした…



………………………



守連
「あ、遅かったけど大丈夫だった~?」


「あぁ、チト自家発電に悩んでな…」


あくまでネタだ。
断じてやってないからね!? 華澄さんの喘ぎ声とか、絶対想像してないから!!
俺はそんなバカな心の叫びを読者相手に叫びつつ、ようやく食卓に着いた。


女胤
「まぁ! それでしたらいつでも私(わたくし)がヌイて差し上げますのに♪」


「ネタを素で返すな!」
「お前の場合、エロネタはマジだから返しづらい!」

守連
「聖さん、発電出来たの?」


「…やったら、色々失う事になるがなっ」


俺はとりあえずそれ以上ネタを引っ張らない様にした。
迂闊なエロネタは死を招く…


女胤
「ちなみに、どなたをオカズに?」


「そりゃ、やっぱ阿須那か華澄だろ~」
「阿須那の綺麗なスタイルはバックで激しく突くのが良さそうだし、華澄さんならやはり無難に正常位で優しく抱き締めて…ってコラァッ!?」
「つい答えちまったじゃあねーか!!」
「さりげない性癖暴露だよ!? つーかやってねぇ!!」


やはりエロネタに抗えなかったか…
ちなみに、絶対ヤッてないから!!
魔王に誓ってヤッてない!!


女胤
「あ、あの…ところで私は?」


「お前、頭大丈夫か? お前をオカズとか◯イリアンクイーンでヌケと言ってる様なもんだぞ」
「流石に上級者すぎんだろ…」

女胤
「マイ! ガッ!! そこまで萌えられない!?」


まぁ、流石に言い過ぎたか。
女胤も間違いなく可愛いんだが、普段からエロ方面に特化した性格だから、逆に勃たなくなるという逆転現象がある。
…まぁ、その時になったらどうせいきり立つんだろうが。
男の性とは、かくも罪深い物である。

さて、焼きそばがすっかり冷めてしまった…
俺もちゃんと食わないとな…


守連
「………」


「…どした守連?」


何だか守連に見つめられていた。
な、何か今までに無いな…どうしたんだ?
俺は思わず箸を止め、味噌汁を飲んで守連と見つめ合ってしまう。


守連
「…聖さん、私の事はそういう目では見てくれないよね…って」


「ぶっ!?」


突然の言葉に俺は味噌汁を噴きかけた。
辛うじて口を抑えて難は逃れるものの、手が味噌汁まみれになる。
すかさず女胤がお手拭きを差し出し、俺はそれを受け取って口元と手を拭いた。



「守連、一体全体いきなりどうした?」
「今までそんな事、ツッコミもしなかったのに…」
「ネタだからマジレスしても意味無いぞ?」

守連
「でも、私の事はネタにもしてくれないよね?」
「私じゃ、やっぱり魅力無いかな…?」


予想外に守連は思い詰めている様だった。
いや、元々気にしていたのかもしれないな…
俺はコイツにはテキトーなネタを振る事はあっても、エロネタにする事は一切無かったのは確かだし。


女胤
「守連さんに魅力が無ければ、世の中の半分以上の女性は魅力が無いと思いますが?」

守連
「でも、聖さんはそういう目では見てくれない…」
「私、特別扱いみたいのは、ちょっと嫌かも……」


俺はそんな風に思った事は1度たりとて無い。
守連だけを特別扱いだなんて、考えた事無い。
それなのに、守連はそうなっていると思っているのか…?



「俺、そんな風に見えるのか?」

守連
「………」

女胤
「私には、守連さんが特別な扱いを受けている様には見えませんが…」


守連は頷く事も無く、ただその場で俯いていた。
俺は何となく気付いた。
守連はただの家族としてだけじゃなく、ひとりの女としても見てほしいのかもしれない。

そういう意味では、確かに俺は守連を別に考えていたかもしれないな。
他の3人は三者三様のアピールで俺の気を引こうとするが、守連には無い。
守連はいつもニコニコし、輪の少し外から仲の良い俺たちの事を常に見守ってくれているのだ。

そんな一歩退いた立ち位置が長くなってくると、俺は無意識に守連はその位置が定位置だと決めつけていたのかもしれない。

だが、俺にはまだ誰の想いも受け取れない。
それをすれば、きっと何かが壊れてしまう気がするから。
確信がある訳じゃないが、俺はそれがとにかく怖かった。



(強くなれ…か)


俺はふと苧環さんの言葉を思い出す。
俺にはきっと出来ると。
きっと、俺が信じて選んだ選択なら誰も傷付かないと。
本当に…そうなのだろうか?


守連
「…ゴメンなさい」
「私、変な事言っちゃったね……何、言ってるんだろ」


守連は箸を止めて、俯いていた俺に謝る。
守連が謝る必要はないのに…
俺は守連をしっかりと見てこう言ってやる。



「…守連、お前は俺だけが好きか?」

守連
「…え? う、ううん…そんな事無い」
「私がこの家に来て、そこから出会った全ての人が…私は好きだよ♪」


「だったら、俺もお前の事は好きだよ」
「お前だけじゃなく、阿須那に華澄に女胤」
「他にも初めて出来た友達とか、俺も皆好きだ」
「それでも、俺がお前を皆と違う扱いだと思うか?」


守連
「…うん、そうだよね」
「聖さんがそう言うなら、私は信じれるよ♪」


少しズルい言い方だったかもしれない。
でも嘘は言っていない。
守連の事は間違いなく好きだし大事にしたい。
そりゃ、エロネタ振るのはもろもろの事情でキツいから!

しかし…守連もやっぱり女の子か。
自分の事を少しでもよく見てほしいって願望が、少なからずあるんだろうな。
女胤もこの位謙虚なら、すぐにでも襲いたくなるって位には良い女なのだが。


女胤
「聖様、今何か言いました?」


「はてさて、何の事やら~♪」


俺はトボけて食事を再開する。
クッソ…味噌汁温め直そうかな? もう冷めてる…
結局、俺は完全に冷めた飯を食って済ます事にした。
守連ももうすっかりいつもの調子で、今はゲームに講じている。



………………………




「阿須那、飯食ったか?」
「食ってないならキスして舌突っ込むぞ」


ガチャ!


阿須那
「ちゃんと食ったけど是非お願いしますっ!」


「アホかっ、お前まで女胤化するな!」
「とりあえず、洗うから食器プリーズ」


俺は、部屋から飛び出して来た阿須那のボケをサラリと流して食器を受け取る。
ん、ちゃんと完食した様で何より。
阿須那はちょっと不満そうな顔をしてたが、そんなに舌入れてほしかったのか…?
まぁ、とりあえずネタも程々に俺は部屋を出た。
次は華澄っと…



「……何故こんなにも開けづらいドアなのか」


既にラッキースケベは2回目。
2度ある事は3度あるとは言うが、流石に1日2回は無いだろ…
とはいえ、今夜の俺様は油断はしない!
とりあえず先に声をかけることにした。
つーか、初めから声かけろっての俺様のバカ…



「華澄、飯食ったかー? 食器取りに来たぞー!」
「まだ食えてなかったら、口移しで無理矢理食べさせるぞ~?」


瞬間、バンッ!と破裂音に近い音でドアが開いた。
俺は一瞬怯んだが、華澄は顔を真っ赤にして食器を持っている。


華澄
「け、け、け、結構です!! ご覧の通り、か、か、か、完食致しました!!」
「く、く、く、口移し等、そんな役と…うわぁぁぁぁっ!? 違う違う違う!!」


華澄さんは面白い様にテンパる。
うむ、やはりエロネタは華澄さんが1番面白い反応するな。
その内間違いが起こりそうで本当に怖いが。



「とりあえず、食器は預かった」
「これから着替える時は施錠しとけよ?」
「知らない男が入って来たら何が起こるか解らん…」

華澄
「も、申し訳ありません…拙者の不注意でございました」


「あ~いやまぁ、今回のはノックもせずに突っ込んだ俺が悪い」
「これからはちゃんと声かけてから入るよ」


俺はそれだけ言って背を向ける。
さて、洗い物洗い物っと♪



………………………




「ふんふんふ~ん♪」

守連
「あ、聖さん…はいコーラ♪」


俺が洗い物を終え、リビングに戻って来ると守連がコーラを出してくれる。
嬉しい気遣いじゃないか♪ やっぱり守連もちゃんと見てくれてるんだな…
俺は守連からコーラの入ったグラスを受け取り、そのままソファに座った。
隣には女胤が先に座っている、俺は少し距離を開けて端の方に寄った。


女胤
「…聖様、よろしければ私の大事な所を撫でていただけませんか?」


「よしよし、女胤の大事な花弁を撫でてやろう」

女胤
「あぁん♪ そんな、本当に良いんですの!?」
「では、優しくしてくださいね…♪」


俺は喜んで体をくねらせる女胤の頭部の花弁を優しく撫でてやった。
ふむ、意外としっかりした花弁だな…直接触るのはあまり無かったが、この花でもやはり散ったりするんだろうか?
女胤にとっては髪の毛みたいな物なのかもしれんが…


女胤
「あ、あの聖様…出来れば下の方の花弁も」


「自分でやれ…」


俺は素っ気なくそう言い、コーラをグビッと飲む。
女胤は残念そうに唸るも、俺は無視した。
もうこの辺のネタも定例行事になってきたな…ある意味様式美だ。


『◯ーがたー! さんしろー! ◯ーがたー! さんしろー!』
『◯ーがーさーたーあ~あんしろ~~!!』



「ん? メールか?」


俺は何気に初めて流れるマニアックな着メロを聞き、スマホを見た。
ちなみにメールとか、初めて使うんだが…これで操作あってんのかな…?
俺はまずメールボックスとやらを開き、誰から送られたのかを確認する。



「何だ阿須那か…件名『今夜のオカズ(はぁと)』」
「何じゃこりゃ…ん? 添付ファイルがあるな」
「画像か、何の画像だ? つか、オカズ…?」


俺は、一瞬嫌な予感がしつつも、コーラを飲みながらファイルを開いた。
そして画像を見た瞬間。



「ぶーーーーーーーーーっ!?!?」

守連
「わ、汚いよ~! もう、どうしたの?」


俺は流石にヤバイと思ってスマホを見られない様に画面を隠す。
そして女胤からお手拭きを受け取り、口元と体を拭いた。
守連は汚れた床を雑巾で拭き取ってくれてる。



「あのアホ~!」(アホ~:阿須那の奴、何て事をするのかあのアホ~の略)

女胤
「何があったのですか? 凄まじい噴き方でしたが…」
「阿須那さんからのメールだった様ですが、何が書いてあったのです?」
「というか、今夜のオカズとか不穏なワードが聞こえてきたのですが…?」


女胤の雰囲気がやや変わる。
ヤバイ…絶対に言えない。
あのバカ、何て物を送り付けて来やがるんだ!

残念ながら全ての面でアウトな画像なので、詳細な説明は絶対に出来ない。
あえて重要なワードだけ抽出するなら…阿須那、裸、くぱぁ…辺りだろうか?
いくら俺相手とはいえ、完全に変態に足突っ込んだなアイツ。
つか、よく確認してなかったが、もしかしてこれ合成画像か?

流石に阿須那が女胤以上の暴挙に走るとは考えられんからな。
だとすると、見事に作戦は大成功だな。
今頃阿須那は腹抱えて笑ってるだろう。
だとしたら、反撃をさせていただく!



「女胤…ちょっとじっとしてろ」

女胤
「えっ!? さ、聖様…近いですわ……」


「擦り合う位が丁度良い」


俺は艶やかな顔で頬を紅潮させる女胤に頬を擦り寄せ、スマホのカメラを起動させた。
そして、さも今から女胤が俺を押し倒すと言う様なシチュエーションの姿を俺は撮影する。
さて、後は加工してから返信だ。


女胤
「聖様、あぁ…♪」


「よし、協力ご苦労」
「多分色々あると思うから先に謝っておく、ゴメン」

女胤
「…え?」


俺は残りのコーラを一気に飲み、グラスを守連に渡して部屋に戻る事にした。
そして、それから数分後、ドタバタとした足音が1階に向かって行くのを自室で確認する。
俺は部屋の中で顔芸と共にほくそ笑んだ。



(…計画通り!!)



………………………



阿須那
「くぉらぁ女胤~!! 良い度胸しとるやんか、ウチの聖に手ぇ出すたぁ!?」

女胤
「誰が貴女の聖様ですかっ!? それに手は出してませんわよ!!」

阿須那
「何言うとんねん! この写真が証拠や!!」


阿須那さんが私に見せた写真はスマホの画像だった。
これは確かさっきの…?
そこで、私は聖様の言葉を思い出す。
先に謝っておくと、ゴメンと…


女胤
「成る程、そういう事ですか…」
「阿須那さんも堕ちましたわね…こんな合成画像に騙されるなんて」

阿須那
「へっ!? 合成…?」


阿須那さんはキョトンとしてスマホの写真を凝視する。
画像の内容は流石に詳細は隠させていただきますが、強いて言える言葉が有るとしたら…

今から私と聖様で子作りします♪な画像ですわ。
当然、そんな狂喜乱舞な事実が、残念無念にあるわけもなく、当事者の私から見れば合成なのはバレバレ。

聖様ももう少し説明してくだされば…下手したら家が吹き飛ぶ所でしたわよ。
まぁ、聖様の事ですから今頃3段笑いで高笑いしている所でしょうが…


守連
「ところで、合成画像って何?」

女胤
「別々の画像と画像を重ね合わせて作られた、新たな画像…とでも言いますか」
「今時のスマホでしたら、素人でも簡単な物は作れますよ?」
「まぁ、とはいえ…守連さんのガラケーではちょっと難しいですが」


守連さんは、そーなのかーといった顔で納得していた。
ほ、本当に解ってらっしゃるのでしょうか?
不安になる答え方でしたわね…


阿須那
「はぁ…まんまと騙されたわけか」
「くっそ~仕返しやったんか…もっと過激なん送ったったら良かったかなぁ…?」

女胤
「阿須那さん、もう少し距離感を大切になされたらどうですか?」

阿須那
「えっ…距離?」


阿須那さんがキョトンとした顔で聞き返すと、私ははいと答える。
そして、現状の私の意見を率直に述べました。


女胤
「今の阿須那さんは、少々距離を縮めすぎだと思います」
「愛情が強いにせよ、それは聖様の求める距離では無いと思いますよ?」
「聖様は、阿須那さんの事を好きだからこそ、聖様が決められた一定の距離から、決して縮めようとはしてません」
「そして、その距離は等しく私たち4人に与えられた一定の距離」
「その距離を悪戯に縮めては、聖様が苦しんでしまいます…」


私の意見に、阿須那さんは黙ってしまう。
自分でも思う所はある…という顔ですね。
でしたら、尚の事です。

聖様が自ら距離を縮めようとしない限り、私たちがその距離を無理矢理縮めるのは禁忌。
決めるのは聖様で、私たちは周りをしっかりと追い続ける事が重要なのですです。


阿須那
「…はっ、アンタにまでそんな事言われるとは」
「ウチもヤキが回ったか…悪かったわ、謝っとく」

女胤
「いえ、自分で気付いたのでしたら、むしろ反省を」
「聖様にとって、阿須那さんも大事な家族なのです」
「今は、その距離で満足するべきかと」


阿須那さんは頭を掻きながらため息を吐いた。
そして、納得したのかそれ以上は何も言わずに、背を向けて2階へ上がって行く。


女胤
「………」

守連
「女胤ちゃん、凄いね」

女胤
「守連さん…どうしたんですか急に?」


守連さんはニコニコしながら私を賞賛する。
私からすれば、何が凄かったのかが解りませんでしたが…


守連
「女胤ちゃんが、ちゃんと皆の事考えてくれてるから♪」
「女胤ちゃんはいつも聖さんにはあんなのだけど、ちゃんと聖さんとの距離はしっかり守ってるもんね♪」

女胤
「…まぁ、私からすれば聖様は最も愛する人ですから」
「愛する人がその気で無いのなら、私はそこから先には進めません」
「様々なアプローチはかけますが、その全ては聖様がお決めになる事」
「私が願うのは、決して聖様が間違った選択を選ばない事です」
「その為に、私たちが聖様を守らなければ…」


守連さんも頷いた。
そう、私たちが共通している確かな目的。
それは、何よりも聖様が幸せになる事です。



………………………




「そして、次の日…って、やっと晴れたか」


俺はカーテンの隙間から漏れる朝日に目をすぼめる。
流石に今日は学校だ…
俺はさっさと着替えて1階に降りる。



………………………



阿須那
「ほいっお弁当! …昨日何回ヌイた?」


「誰がヌクかっ! せめて合成じゃないのにしろ…あからさまにお前の体じゃないのが解るとすぐに萎えたわっ」
「とりあえず行ってきます!」

阿須那
「そら残念…まっ、行ってらっしゃい♪」


俺は阿須那に見送られ、学校に向かう。
気温も一気に下がったな…衣替えが丁度良い。
暑すぎず寒すぎず、この位が1番過ごし易いな。



………………………



光里
「え~? じゃあ結局、阿須那さんと華澄さんが助けちゃったんだ…」
「大丈夫だったの? 怪我とかしてなかった?」


「何とかね…ああ見えて、姉さんも華澄さんも運動神経良いから」
「素人の誘拐犯位なら一捻りってとこかな」

光里
「う~ん、確かにそうかも…前の華澄さんとかスゴかったもんね~」
「空中で一回転してバイクかわすなんて、普通じゃないし…」
「華澄さんって、何か習ってたりするの?」


おっと、流石に華澄さんの実力に疑問を持ち始めたか。
さて、ここはテキトーに設定作って誤魔化しとく方が良いだろう。



「華澄さんは現代に脈々伝えられてる、一子相伝の忍者の末裔なんだ…」
「ちなみに、本当は秘密だから他言無用」
「バレたら首が飛ぶかもしれん…」

光里
「えっ、嘘!? もう聞いちゃったよ!?」


「まぁ、後半は嘘…とはいえ、本当に凄腕の忍者だから、あれ位は朝飯前ってとこ」


光里ちゃんは本当に感心していた。
意外に純真だよな光里ちゃんって…考え方は結構現実的なのに。
結局、そのまま忍者談義で俺たちは登校してしまった…



………………………



キーンコーンカーンコーン!!



「さって、終わったし帰るかね」

光里
「あっ、ゴメン聖君! 私、今から職員室行くから先に帰ってて!」
「急ぐから、ゴメンね…」


「気にしないで良いよ、じゃまた明日♪」


光里ちゃんはうんっと元気良く頷いて手を振りながら走って行った。
今日は黒か…意外にアダルティック。
っていうか、光里ちゃんのスカート短すぎないか?
夏服の時は気にもしなかったが、冬服だと寒そうにも見える。
校則では別に引っ掛からないのか、長さは皆自由だけど…やっぱミニスカの方が動き易いからだろうか?



「まっ、ファッションは人それぞれか…」
「さて、今日も寄り道せずに真っ直ぐ帰りますかね…」


俺はそう思ってやや早足で帰路に着く。
今日は特に事件も無かったし、安全なもんだ…
とはいえ、油断は出来ない。
ひょっとしたら、俺もいつ被害者になるかも解らないのだから…
だが、きっとその時は皆が助けてくれるのだろう。
そんな予感だけ、俺は確信出来た…










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はしていない』



第9話 『家族の距離感』


To be continued…

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