第3章 第6話

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読了時間目安:39分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください


「うわぁ…最悪」

光里
「雨だね~…どうしよ?」


そう、とある日の放課後。
俺たちは急な天候変化に悩まされていた。
俺は残念ながら傘を持ち合わせておらず、あまりのゲリラ豪雨を前に、校舎の入り口で立ち往生していたのだ。



「これ突っ切るのは無謀だろ…洒落にならんぜ?」

光里
「う~ん、でもすぐに止みそうにないもんね…」
「傘を持っていないのなら、このままバイトに向かわざるをえない!!」
「というわけで、私は鞄を盾に吶喊(とっかん)します!!」


そう言って光里ちゃんは鞄を頭の上にかざし、盾にして雨の中突っ切って行った。
鞄にはポリ袋を被せてあり、中身の心配は無い様だ。



(つか、ポリ袋なんて良く持ってたな…)


何かの用途で持っていたのだろうが、こんな事態を想定していたのか?
どっちにしても、俺にはあの勇気は無い。
俺はミミロルの様に臆病だからな。


ザァァァァァァァァァァァッ!!


正直、激しすぎる雨。
もうすでにかなりゲンナリしている…
校庭もすでにビシャビシャで水たまりだらけ。
ここまでだと、傘を持っててもあまり変わらない気さえしてきた。
とはいえ、焦る事はない。
部活もバイトもやってない俺に急ぐ理由が無いのだ。
正直、家に帰るのが早かろうが遅かろうが、さほどリズムは変わらない。
趣味もゲーム位しかないしな。



「………」


周りを見ると、俺と同じ様に往生している奴もそれなりにいた。
逆に光里ちゃんの様に特攻していく者もチラホラ。
そして、1番賢い奴は他人の傘に相合い傘で入れてもらってイチャイチャしてやがる…つか。



(リア充爆殺されろ! 見せ付けるな、うっおとしい!!)


あまりに腹が立ったので、俺は顔を引きつらせて思わず誤植してしまう。
つーか、何でこの学校はカップル多いのか…
俺のクラスでもそこそこ恋人持ちが多く、この学校は日本で見ても比較的カップルが多目なのではないだろうか?
まぁ、俺には全く影響無い話なのだが。



「………」


俺は考えてしまった。
阿須那に唇を奪われ、華澄にも求められ、女胤はビーストモード。
守連はそういう行動には出ないものの、きっと俺の事は好きだとは言ってくれるだろう。
だが、俺に答えを出す勇気は無い。
皆の事は好きだが、恋人となったらやはりひとりだ。
アイツ等だと愛人でも構わぬ!とか言い出しそうだが、やはり本音はひとりだろう。
そうなったら、どうなるのだろうか?
俺が選んだ先、選ばれなかった者はどうなるのだろう?
それを考えると、俺は恐怖すら覚える。
それだけはダメだと脳が警告を告げた。
はぁ…ダメだな、やっぱ俺は。



「聖殿」


「…あ」


気が付くと、俺の前に知った顔がいた。
低身長で、爆乳で、ポニテが特徴の美少女が、レインコートを着て俺の前にいる。
そして、やや心配そうに鋭い目で俺を見つめていた。



「華澄、心配して来てくれたのか?」

華澄
「はい…突然の雨、傘も持たずに出て行かれてましたので」
「とはいえ、これ程の雨風では傘はあまり役に立ちませぬ」
「なので、レインコートを買って来ました」


そう言って、華澄は新品のレインコートを俺に差し出す。
買って来たって、これ結構良い奴じゃないのか?
とはいえ、これが華澄の気遣いだし、華澄が後先考えずに金を使う事は無い。
俺はそう思って礼を言いつつ、それを受け取る。
そしてその場で開封し、俺はレインコートを広げた。


華澄
「少々窮屈かもしれませんが、上下セットで雨から守れます」
「鞄の方は透明のポリ袋を持って来ましたので、それで守りましょう」


俺がレインコートを着る間に華澄がポリ袋を取り出して鞄に被せる。
俺の鞄は良くある手に持つだけの奴だから、そんなに苦労はしないか。
やがてレインコートに身を包み、俺は華澄から鞄を受け取った。


華澄
「では、帰りましょう」
「道中、この華澄がいかなる災厄からも護り通してみせます」


それは心強い…と俺は真面目に思い、ふたり並んで帰路に着く。
雨は結局止む事無く、俺は華澄と一緒に仲良く下校した。
ちなみに背中から殺気が刺さりまくっていたが無視する。
俺はリア充では無いから爆発する事はない、ふははっ!



………………………



華澄
「…ふぅ、何とか辿り着きましたな」


「あぁ、ありがとな華澄」


俺たちは特に何も問題無く家に到着した。
玄関先で俺はレインコートを脱ぎ、それを華澄に渡す。
華澄も既にレインコートを脱いでおり、ふたつのレインコートを新しいポリ袋に入れた。
鞄の為に濡れたポリ袋も、新しいポリ袋に一緒に詰める。


華澄
「では、拙者はレインコートを乾かしておきます」
「聖殿はすぐにお着替えを、後で部屋に向かいますので」


「ああ、分かったよ」


俺はそう答えて部屋に向かう。
レインコートを着ていたから濡れる事は無かったが、逆に蒸し蒸しだった為、汗がヤバい。
とりあえず、着替えが先だな。



………………………




「ふぅ…」


俺は着替え終わり、ベッドの上で一息つく。
ホント華澄にはいつも助けられるな。
華澄がいなかったら、結局俺も無謀に突っ込んでいた事だろう。
逆に、ちょっと情けなくもある。
そんな華澄に俺は何もしてやれてない。
せめて、華澄に何かしてあげないとな…


華澄
『聖殿、入っても良いでしょうか?』


「ああ、良いよ」


俺が了承すると、華澄はゆっくり音も無くドアを開ける。
いつもながら緊張するな、もっとフツーに開けたら良いのに。


華澄
「聖殿、スポーツドリンクです」
「汗をかかれたでしょう? 適度に水分を…」


俺は華澄からペットボトルのスポーツドリンクを受け取る。
ちゃんと冷えてる…って事は、前もって買っていたのか。
俺はすぐに開栓し、一気に喉に流し込んだ。



「ぷはっ、何から何まですまんな…」

華澄
「何を言われます、拙者の全ては聖殿の為」
「拙者の望みは、聖殿の側に居る事です」
「聖殿の為なら、拙者は何でも出来ます」


華澄の言葉が胸に刺さる。
何でも、か…エロゲーなら即押し倒される台詞だな。
もちろん自称紳士な俺はそんな事は出来ない。
しかし、ここで少し面白い事を思い付いた。



「華澄、明日日曜で休みだよな?」

華澄
「はい、明日は1日中聖殿の側にいられます」


「なら、明日予定開けといてくれ」
「朝から一緒に出掛けるから」


俺がそう言うと、華澄は何も疑う事無く承諾する。
さて、面白くなって来たな♪
こうして、とある画策をした俺は明日に向けて色々仕込みをしておく事に…



………………………




「うっし、じゃあ行くぞ華澄」

華澄
「はい」


俺は華澄とふたりで商店街に向かう。
今日は日曜で流石にモロ混みになるだろうな…
仕込みも出来たし、後は店に着けばミッションスタートだ。



………………………



華澄
「ここは、阿須那殿の職場ですか?」


「そ、今日はお前にひとつの任務を与える」

華澄
「…! 任務…で、ありますか?」


阿須那の職場である『こすぷれ~ん』に俺たちは到着する。
そして、俺がテキトーに言った任務という言葉に華澄は目付きを変え、獲物を狙う獣の様な雰囲気を放っていた。
いや、そんな物騒な任務じゃないからね!?



「まぁ、とりあえず裏口に行こう」
「話は阿須那につけてもらってるから」

華澄
「阿須那殿に…? 一体何を…」


俺は考える華澄の手を引き、職員用の裏口に向かう。
まだ開店前だがすでに客は並んでおり、相当な事になりそうだと俺は思った。



………………………



風路
「あ、来た来た♪ いらっしゃい聖君!」
「話は聞いてるわよ? そっちのちっちゃなお姉さんね?」


裏口に着くと、風路さんが出迎えてくれる。
何気に私服は初めて見るな…意外にもフツーの秋服って感じだ。



「はい、彼女が『縹 華澄』(はなだ かすみ)」
「今日1日、よろしくお願いします!」

華澄
「えっ? え?」

風路
「オッケー♪ じゃあ1日バイト体験、頑張ろうね華澄ちゃん!」

華澄
「バ、バイトォ!? そ、それはつまり…せ、拙者が…」


「頑張ってコスプレして来なさい! それが華澄さんに与えるミッションだ!」


俺は笑顔でサムズアップをし、そう言い放つと華澄は呆然とした。
理解が追い付いていないな、まぁ内緒にしてたし。


風路
「あれ? もしかして話してなかったの?」


「その方が面白いと思って」


俺が軽く言うと、風路さんも成る程…と頷き同意する。
そして華澄は突然顔を真っ赤にしてガタガタ震え始めた。
コスプレした自分の姿を想像したな…?



「さて、とにかく頑張ってな華澄さん!」
「俺もカウンターで見守ってるから♪」

華澄
「は、はい…」


華澄は明らかに不安な様だった。
あの完璧超人な華澄さんも、こういうのは躊躇うのか…
とはいえ、何でもやると言った手前、華澄は断る事はせずに覚悟を決めた様だった。


風路
「それじゃ、聖君は先にカウンターに座っててくれても良いわよ?」
「今日は1日予約席で取ってあげるから♪」


「ありがとうございます、華澄さんの事よろしくお願いします」


俺が最後にそう言うと、風路さんは任せて!とポージングして答えてくれた。
風路さんが付いててくれるなら安心だろう。
さて、楽しみになってきた!



………………………



風路
「それじゃ、まずこれに着替えて」

華澄
「……ぐぁ」


予想してはいたのですが、ここまでとは…
拙者に渡された服は、何かヒラヒラの物が沢山付いた意味不明なタイプの服。
前に風路殿が着ていた物ではないですな。


風路
「今回の猫耳メイド服は上下別々の奴だから、普通に着るだけで大丈夫よ?」

華澄
「ね、猫耳ですと…?」


拙者が聞くと、風路殿は極めて笑顔のまま、頭に付ける猫耳のアクセサリーを拙者に見せ付けた。
拙者は意識が飛びそうになるのを抑え、とりあえずシャツを脱ぐ。


風路
「うぉ…解ってはいたけど、ここまでのモノとは…」

華澄
「はい?」


風路殿は拙者の胸を見て唸っていた。
うーむ、何か拙者の胸に気になる事でもあったのでしょうか?


風路
「本当に反則的なスタイルよね、華澄ちゃん…」
「その小ささにここまでのモノを搭載するとは!」

華澄
「そんなに、拙者の胸は大きいのですか?」

風路
「そりゃそうでしょ! どう見ても90はあるわよ!?」
「その身長でそれだけのバストだったら多分Hカップでしょ?」


見事に当てられる。
凄いでござるな風路殿。
とはいえ、そんなに希少な物とは…道理で聖殿も注目してくださるわけだ。
拙者はとりあえず意を決し、めいど服とやらに袖を通した。
色は青と白のツートンでスカートはかなり短い。
袖はしっかりと手首の辺りまでで、袖口にもヒラヒラが付いている。
そして最後の難関、猫耳を拙者は身に着けた。


風路
「うんうん! やっぱり可愛い~♪」
「じゃあ最後はこれね、猫の尻尾~♪」

華澄
「ぐぁ…」


悪いとは思いつつも唸ってしまった。
確かに猫であれば尻尾があるのは道理…
どうやら下着の上から穿く物の様で、スパッツの様になっていた。


風路
「それはそのまま下着の上に穿いたら良いから」
「スカート短いし、スパッツなら見せてもそんなに恥ずかしくないでしょ?」

華澄
「確かに、それで尻尾も付けれて一石二鳥ですな」


どうにか着替えは終わった。
ここまで着替えに疲れたのは初めてでござる。
しかし、本当の地獄はここからだと、風路殿の言葉を聞いて拙者は背筋を凍らせた。


風路
「じゃあ、とりあえずこれだけでも覚えてね?」
「こすぷれ~ん♪ にゃ☆」

華澄
「………」


もはや拙者の正常な思考は遠い所へ旅立ってしまった。
ここは拙者の常識が通用しない場所なのだ。
阿須那殿は、この様な理解の及ばない戦場で毎日戦っておられるのか…!?


風路
「ちゃんと覚えてね? 今の動作がこの店のシンボルだから♪」
「こすぷれ~ん♪ にゃ☆」


念を押す様に風路殿が再度ポージングする。
拙者はとりあえず、見よう見真似でやってみる事にした。


華澄
「こ、こす・ぷれ~~~ん…に、にゃ……」

風路
「ダメダメ! ポーズよりもまず笑顔!」
「そんな顔でやってたら、お客さん気分悪くなっちゃうよ?」


即ダメ出しされる。
しかし、今の言葉を聞いて拙者は心を一気に引き締めた。
そうでござる…これは来てくださるお客様に対しての行動。
そこに躊躇や羞恥等挟んでは、失礼千万!
阿須那殿も、きっとそういった思いでやっておられるのだ。
拙者はそう思い、出せる思いの丈を込めてやり直す。


華澄
「こすぷれ~ん♪ に、にゃ☆」

風路
「おっ、ちゃんと出来たね~♪」
「まだまだぎこちないけど、最初だから仕方ないね!」
「基本、お客様に名前呼ばれたらそれで返してね?」
「今回は臨時のバイトだから、ホールで接客だけやってくれたら良いから」
「細かい事はやりながら教えるし、解らない事があったら気軽に聞いてね?」

華澄
「は、はいっ! ありがとうございます!!」


拙者は深々と頭を下げてそう言う。
すると風路殿は笑って拙者の頭に手を置いた。


風路
「緊張しなくても大丈夫♪ ここに来てくれるお客さんは皆良い人たちばかりだから」
「今日1日だけだけど、この仕事好きになってくれたら嬉しいな♪」

華澄
「風路殿も、この仕事が大好きなのですね…」

風路
「もちろん! だって、この店は私の家でもあるから…」
「この店も、来てくれるお客さんも、そしてコスプレも私は大好き♪」


風路殿はこれまでにない位の笑顔でそう言ってポーズを取った。
そして拙者にウインクし、ポーズを解く。


風路
「さっ! もうすぐ開店時間だから、行こう♪」
「多分、最初は圧倒されると思うから、私の側を離れない様に!」

華澄
「は、はいっ! よろしくお願い致します!」


こうして、拙者の任務が始まったのだった。
それは、拙者の想像を絶する、過酷な任務…



………………………



風路
「いらっしゃいませ~! こすぷれ~ん♪ にゃ☆」


「風路さーーーん!! また会えて嬉しいよーーー!!」

華澄
「あ…ぁ……」


そう、そこはまさに戦場でござった。
開店即座に全テーブルが埋まり、他の先輩方が対応に当たっている。
お客様の凄まじい熱気が届き、拙者は風路殿の背中を追う事しか出来なかった。



「おろ? ところでそこのロリ巨乳っ娘は誰?」
「ものスッゴいスペック感じるけど」

風路
「この娘は縹 華澄ちゃん♪ 今日1日だけの臨時バイト」

華澄
「あ、こ、こすぷれ~ん♪ に、にゃ☆」


拙者は何とかポーズを決めて見せた。
風路殿に比べれば下手くそにも程があるでござるが、その仕草が逆にお客様の脳を刺激したのか、お客様は身を捩って興奮し始めた。



「んっふ! その絶妙な羞恥心、いかにも初心者で逆にそそられますな~♪」
「頬の赤らみもグッド! 目付きは悪いものの、ギャップが萌え~!!」

風路
「ふふ、どう? 華澄ちゃん可愛いでしょ♪」


風路殿がそう聞くと、お客様は大袈裟に頷き、サムズアップしてYES!!と叫んだ。
そして、そんな光景を見られてか、今度は別の所から声が。


別の客
「華澄ちゃ~ん! こっち向いて~!!」

華澄
「は、はっ! ただいま!!」
「あぁ、じゃなかった~! こ、こすぷれ~ん♪ にゃ☆」


別の客
「ひゅーーー!! 微妙にドジな所もサイッコーーー!!」


途端に注目が拙者に集まって来る。
拙者は休む間も無く、皆様に笑顔を振り撒いていった。
まだまだ未熟者なれど、これでお客様が喜んでくださるなら何より。



………………………




「………」

光里
「華澄さん、凄いね」


カウンターでコーヒーを飲んでいる俺の側に光里ちゃんがやって来る。
俺は体の向きを変え、華澄の仕事振りを見た。
ぎこちないながらも、真剣な華澄。
戸惑いながらも、真っ直ぐな華澄。
思い付きで考えた企画だったけど、思ったより良い経験になったかな?


光里
「華澄さん、背は低いけどスッゴい胸してるよね~」
「あの身長で阿須那さん以上って何気に相当なんじゃ?」


「まぁ、身の回りじゃ聞いた事も見た事も無いわな…まるで漫画やゲームのキャラだ」
(ある意味間違ってないが)


何だかんだで、アレはゲッコウガの人化した姿。
人間離れしてるのは、ある意味そういう事なのかもしれない。


光里
「華澄さん人気あるな~」
「初日は物珍しさで声かけられる事は多いけど、華澄さんのは明らかに声が違うね」
「むぅ、ちょっと嫉妬してしまう自分が憎い…」


「はははっ、光里ちゃんでもそういう所あるんだ?」

光里
「そりゃあるよ、人間だもん」
「でも、やっぱり持って生まれたスペックは、覆しようがないよね…」


そう言って光里ちゃんはテーブルへと接客に向かった。
最後は何からしくなかったな。
人間だから、か…
だったら、華澄は、やっぱり人間じゃないのかな?
俺は、今も頑張って笑顔を見せる華澄を見てそう思った。
華澄は本当に人間の様だ…あれがポケモンだと言われてもきっと誰も信じない。
でも、人間じゃないんだ本当は。


風路
「華澄ちゃん、3番テーブル!」

華澄
「はっ! ただいま!!」


華澄はどんどん慣れていく。
まだまだ無愛想ながらも、接客の仕事は完璧に近い。
正確にテーブルへと赴き、正確に注文を受ける。
ちゃんとポージングも忘れず、ぎこちない笑顔でスマイル。

そりゃ、嫉妬もするわな…ここまで完璧超人だと。
今まででも華澄のスゴイ所は何度も見てきたが、やはり特筆すべきは学習能力だろう。
華澄は最初から何でも出来たわけじゃない。
むしろ最初は何も出来なかった。
だけど、俺がちょっと教えただけで後はすぐに自分の物にする。
覚えた後も研鑽を怠らず、知らない事も自分で勉強する。
気が付けば、何でも出来る様になってた。

今回の件も、あえて華澄の慌てる姿を見てみたいと思ったからだ。
いくら華澄でも、簡単にはこの仕事は出来ないだろとタカを括っていた。
だが、結果はご覧の通り…アイツは結局慌ててたのは最初だけで、もうすっかり仕事が板に着き始めていた。
周りの目もすぐに釘付けになっていく。
ちょっとこりゃ、ある意味マズッたかな…?
俺は時間を確認し、残り時間を計算する。



(後2時間か…結構あるな)


一応、1日とは言ったものの、正直前半だけやらせる予定だった。
華澄のやる気次第で後半もやらせるかは迷っていたが、これは止めた方が良い。
いくらなんでも目立ちすぎだ、これじゃ他の店員に迷惑になりかねない。
そして、俺が華澄を呼ぼうとした矢先、考えてもいない事が起こった。


一般人
「おいヤベェぞー!? バイク強盗だーーー!!」


外から大きな声が店内にまで響く。
一瞬店内は静寂に包まれ、次第に外へと視線が集まっていく。
そして、次第に聞こえるバイクが近付いて来る音。
間違いなく強盗の物だろう…だとしたら、俺はこういう時は何も出来ない。
所詮、パンピー学生の俺にバイクとケンカする術は無いのだから。
警察も既に誰かが連絡している様だし、俺の出る幕は何も無い。
だが、そう思った刹那、外に駆けるひとつの影があった。


強盗
「へっ! バカが! このまま街の外までトンズラだぜ!!」

華澄
「そうでござるか…では、それは返していただく!!」

強盗
「何だテメー!? 轢き殺すぞ!!」


華澄は一瞬で店外へと走り、近付いて来るバイクを見て正面から睨んでいた。
そして、正面から高速で突っ込んで来るバイク相手に、退く気配を見せない。
俺は叫ぼうと思うが遅かった、今更店を出ようとしてもバイクは通り過ぎる。
だが、華澄はそんな俺の心配を余所に、人間を越えた動きで地上から一瞬で消えた。


強盗
「げっ!?」


ギャギャギャギャギャ!!


華澄は向かって来るバイクをジャンプで飛び越し、すれ違い様に盗まれたバッグを取り返す。
そのまま空中で1回転し、華澄は華麗に着地した。
犯人は強く握り締められたバッグを無理矢理奪われたせいか、バランスを崩してバイクを横転させてしまう。
そのまま商店街の地面に車体を擦り付け、バイクは数10mは滑って行った。
犯人はその途中で振り落とされ、地面に倒れる。
そして、痛みで動けない所をすぐに他の人間に取り押さえられた。


華澄
「やれやれ、流石に拙者もやり過ぎましたか…」
「まさかあれしきの事でバランスを崩すとは予測出来なかったでござる」
「うむ、鞄も無事…少々取っ手が痛んでしまいましたが」


ワァァァァァァァァッ!!


突然の大歓声。
今この場にいる大勢の人間が華澄に注目していた。
そりゃそうだろう…あんな人間離れした動き見せられたら。
ここに集まっている大勢の声が華澄を囲んでいた。


男A
「凄いぜ華澄ちゃん!!」

男B
「まるでアニメみたいな動き!!」

女A
「貴女凄いのね!? 何か特別な訓練でもしてるの!?」

華澄
「え…あ、せ、拙者は……」

風路
「はいはーい!! ゴメンなさい! ウチの店の娘がご迷惑をおかけしてしまって、本当に申し訳ありませんでした!!」


狼狽える華澄を救ってくれたのは風路さんだった。
大勢相手に華澄の前に立ち、ギャラリーに平謝りして行く。
華澄は次々に頭を下げる風路さんの姿を、ただ呆然と見ているだけだった。


男A
「何言ってんの風路ちゃん! 華澄ちゃんは良い事をしたじゃないか!」

風路
「でも、今はそっとしておいてくれませんか?」
「この娘、とっても顔見知りで、こんな状況だと怖がっちゃうから…」


それを聞いてか、その場の全員が沈黙する。
華澄は相変わらず呆然としたまま。
そんな顔を見てか、人々は次々にこう言う。


男A
「ごめんな華澄ちゃん? 気が回らなかったよ…」

男B
「俺も、謝るよ」

女A
「ごめんなさいね、興奮しちゃって怖がらせたみたいで…」

華澄
「あ…いえ、拙者は……」

風路
「さぁ、まだ店は営業中! 早く店の中に戻って!?」
「警察も来たみたいだし、後は私が説明しておくわ♪」


そう言って風路さんは華澄からバッグを受け取り、警察の方に走って行く。
ポツンと残された華澄を俺は強引に店へと引き込んだ。
これ以上はもう良いだろ…



………………………



華澄
「………」


「気にするなよ?」


俺は華澄をカウンター席に座らせ、そう言った。
華澄は俯き、肩を落としたままだ。
華澄からしたら無自覚に飛び出したんだろう。
それがあれだけの人間に見られたんだ、冷静になって意識が飛んだって所か。



「誰もお前を責めてるわけじゃないんだ」
「皆、お前に感謝して喜んでたんだぜ?」
「鞄の持ち主も、きっと喜んでるよ」

華澄
「はい…申し訳ありません」
「この様に大勢の方に囲まれるのが、少し怖かったでござる」
「凶悪犯罪相手でも、何も恐怖は感じないのに…」


サラリと恐ろしい事を言う華澄さん。
あの突っ込んで来るバイクは、恐れるに足りんらしい…


華澄
「聖殿、今回の任務…」


「あぁ、俺から謝っておくよ…もう、奥に行きな」


華澄は頷き、店の奥へと消える。
流石に、今回はショックが大きいか?
だとしたら、完全に俺のミスだな…


光里
「華澄さん、大丈夫?」


「うん、ちょっと辛そうだから、先にあがらせてもらっても良いかな?」

光里
「うん、その方が良いよ」
「風路さんには私から言ってあげるから、華澄さんに付いていてあげて」
「きっと、華澄さんには聖君が必要だから」


光里ちゃんは意味ありげにそんな事を言う。
必要…か。
俺はある意味納得し、席を立つ。
そして華澄の消えた先に俺も向かった。
ちゃんと、苧環さんに謝らないとな…
そして、俺は心の中で華澄を誉めてやった。



………………………



勇気
「そう、外ではそんな事があったの」


「本当にすみません、何だか迷惑かけてしまったみたいで…」


あれから俺はキッチンに向かい、店長の苧環さんに謝っていた。
苧環さんは事件当時も料理を作っていた様で、外で何が起こってるかは解らなかった様だ。


勇気
「別に謝らなくても良いわ…それより、華澄ちゃんは大丈夫?」


「はい、表面上は…」

勇気
「表面上は、ね…だったら、今日はもうこれでお仕舞いにしましょう?」
「華澄ちゃん、きっとかなり参ってると思うわ」
「あの娘、強そうに見えて本当は弱いはずだから」


苧環さんは、まだ華澄とそれ程面識が無いにも関わらず、確信したかの様な顔でそう言った。
朝礼でいつも店員の状態を1発で見抜く洞察力の持ち主…とは阿須那から聞いていたけど。
でも、俺もそれは合っている気はした。
苧環さんの見立ては、多分間違ってないだろう。



「やっぱり、苧環さんから見ても、そう見えますか?」

勇気
「やっぱり…って事は、聖君もそう思ってたのね?」


「…はい」


俺は呟く様に答えた。
そう、華澄は確かに強い。
単純な身体的スペックは、人間と言うカテゴリを完全に超越してるだろう。
そして、恐らく守連たちもそうなのだ。
やはり、根本的に彼女たちの能力は人間ではない。
だけど……


勇気
「良い事を教えてあげるわ、聖君」
「恋する女はね、周りが見えなくなる事が多いの」
「そういう時、想われてる男性は決して弱くてはダメ」
「恋するか弱い女の子は、強くあろうとする想い人の背中を見て、より強く恋するのよ?」


「…強く」


俺は、正直弱い。
自分でも理解している位には弱い。
でも家族の皆は、そんな俺の弱さを受け入れてくれるのだ。
しかし苧環さんは、それは決してダメと言った。
俺は、強くならなきゃダメなのか…?


勇気
「聖君、貴方が悩んでいるのは解るわ…でも、強くなりなさい」
「だけど、それは単に力が強いとか…そんな話じゃじゃないのよ?」
「例え、体を張って守れなくても良い」
「ただ、自分を想ってくれるその娘の事は、何がなんでも絶対に信じてあげなさい」
「そして誰よりも強く、『想い』なさい…」
「そうすれば、例え自分がどんな選択をしたとしても、きっと好きな人を傷付けたりはしないわ」
「きっと…貴方なら、大丈夫」


苧環さんは優しくも厳しく、そう俺に教えてくれた。
そして、最後の方は何故か何かを悔やむ様な声色だった気がした。



「…ありがとうございます、苧環さん」
「俺、期待に応えられる程、今は強くないですけど」
「それでも大事な皆の事信じて、好きで居続けます」
「例え、世界が皆を否定しても、俺は皆を守ってみせます」

勇気
「良い返事よ、大丈夫…貴方ならきっと守れるわ♪」
「さぁ、早く華澄ちゃんの所に行ってあげて?」
「それと、これが今日の分の日当だから」


そう言って苧環さんは懐から財布を取り出し、そこから5000円札を取り出して俺に差し出した。



「えっ? 2時間勤務でこれは多くないですか?」

勇気
「それは、私の言葉に対して真摯に答えてくれた、貴方への報酬も入ってるわ」
「それに対してだと、むしろ少ない位だけどね♪」


そう言って苧環さんはウインクする。
俺への分も、か…こりゃ、一層期待に応えなきゃならないな…
俺は苧環さんから金を受け取り、もう1度深く礼をする。
そして、華澄が待っているであろう裏口に早足で向かった。



………………………



華澄
「……あ」


「ゴメンな、ちょっと遅れた! まだ、つらいか?」


俺が心配してそう聞くと、華澄はふるふる…と弱く首を横に振って否定した。
強がってるのは見え見えだな…やっぱり、つらいんだ。



「華澄、つらいならつらいと言え…俺にバレバレの嘘は吐くな」

華澄
「!? も、申し訳ありません……ですが、大丈夫です」
「拙者は、聖殿が信頼してくださるなら、何度でも立ち上がってみせます!」


華澄はそう言って自分を鼓舞する。
口調も少し強くなり、本当に大丈夫なんだと俺にアピールしていた。
俺は少し安心する。
やっぱり、華澄は本質的には芯の強い娘なのだと。
ただ、それは危うい強さでもあるだけに、1度でも弱みが出たらすぐに折れてしまう側面もある。
俺は、そんな華澄の支えになれる様に、ちゃんと強くならなきゃならないと、やはり思った。



「よしっ、それでこそ華澄だ! これ、苧環さんからの報酬」

華澄
「!? こ、こんなに?」


「苧環さんからの、華澄への評価だよ」
「それだけ華澄の事、気にかけてくれてたんだ」


本当は別の理由もあるのだが、それは伏せておく。
華澄にはこう言った方が良いだろうしな…
とりあえず、華澄はそれを受け取って少し俯く。


華澄
「…拙者のあの仕事振りで、こんなにも」
「これは、より一層研鑽を深めなければ!」


どうやら、華澄も火が点いて来た様だな。
これなら、もう大丈夫だろう。
俺はそう思うと、ふと空腹感に襲われた。
そういえば、結局何も食ってなかったからな…
今から店内で食うのも良いが、華澄が注目されるのも問題だし、場所を変えるか。



「華澄、とりあえず昼飯にしよう」
「近くに手頃な定食屋があるから、そこで食べようぜ?」

華澄
「分かりました、聖殿がそう仰られるのなら拙者は従います」


すっかり、いつも通りになったな。
とりあえず俺たちは、目的の定食屋に向かった。
同じ商店街にあるから、そんなに時間はかからないだろ…



………………………




「さて、何頼むかな…」

華澄
「おお、和食もちゃんとありますな…では、拙者は『秋刀魚おろし定食』に致します」


そう言って華澄は券売機のボタンを押す。
本当に華澄はこういう時、即断即決だよな。
基本的に迷う事が無い。
俺は少し悩んだ末、結局無難にカツ丼セットにした。
うどんが一緒に付くし、量も手頃だ。
俺たちは食券を手に持って、空いてる席に座る。


店員
「いらっしゃいませ! 『秋刀魚おろし定食』に『カツ丼セットですね』? セットの方は、うどんとそば、どちらになさいますか?」


「じゃあ、うどんで」

店員
「了解しました、どうぞごゆっくり♪」


そう言って店員は厨房にメニューを告げる。
後はとりあえず待つだけだ。
華澄も落ち着いたのか、水を飲んでゆったりしていた。


華澄
「聖殿、この店にはよく来ていたのですか?」


「いや、もう何年も来てない」


基本的に俺は外食しないからな。
独り暮らしの時は自炊した方が金銭的にも楽だし。
学校でも弁当持参が基本だ。


華澄
「そうなのですか、では今日は何故?」
「時間はかかりますが、家に戻れば阿須那殿が何か用意してくださるでしょうに」


「それだと阿須那の手間が増えるだろ?」
「俺たちは楽だが、阿須那の折角の休日の時間をあえて削るのか?」


俺がそう言うと、華澄はキョトンとしていた。
まぁ、そうだよな…華澄さんの観点だと、そもそも自覚無いよね!
阿須那も気にはしないだろうが、やはり失う時間は貴重だと俺は思う。
ただでさえ平日はフルタイム出勤なのだから、折角の休日はしっかり休まないと。
華澄は俺の為なら本当に自己犠牲が過ぎるからな…


華澄
「迂闊…確かに、軽率でございました」
「阿須那殿の時間は、確かに他に代えられぬ物」
「この場合、拙者が作ると言えば良かったですな…」


「ハイそれもダメ! まず、自分なら良いって言う考えは捨てよ?」

華澄
「え?」


華澄は本当に無自覚だった。
この辺が華澄の弱点なんだろうな…
自分がどうなっても構わないというのは、俺にとっては裏切りに近い。
俺の事を想ってくれるなら、まず自分の事も大事にしてほしいモンだ。



「いいか、華澄? 俺の事優先は、今後止めろ」

華澄
「えっ…!?」


「お前はもっと自分の時間を作るべきだ」
「それが俺の為になるかは二の次」
「まず、自分だけの為に何がしたいか考えてみろ」
「俺をダシに目的を決めるな!」


俺が少々強めにそう言うと、華澄は呆然とする。
本当に浮かんで来ないらしい…らしいっちゃあらしいが。
やっぱ俺が何とか道を示してやらないと、まだ危う過ぎるのか…?



「とりあえず、自分だけの趣味を見付けてみろ」
「誰に介入する事も無い、自分だけの趣味だ」
「例えば模型製作だとか、映画鑑賞だとか、コスプレだとか」

華澄
「趣味、ですか…」


「何かやってみたい事は無いのか?」
「ちなみにエロいのは無しな!」


俺がそう釘を指すと、華澄さんは以前の恥ずかしい発言を思い出したのか、オクタン並に赤くなってしまった。
かなり黒歴史になってる様だな…


店員
「お待たせしました! 『秋刀魚おろし定食』と『カツ丼セット』です!」


華澄が考えてる間に料理が到着する。
俺はとりあえず考えるのを止めさせて食事を促した。



「ほら、とりあえず食おうぜ?」
「味は悪くないし、ご飯足りないならおかわり自由だから」

華澄
「あ、はい! おかわりは大丈夫でござる、拙者は食が細いので…」


確かに華澄がおかわりしてる所は見た事無いもんな。
俺は納得し、カツ丼とうどんを食べる事にした。
まぁ、味はフツーに美味い。
少なくとも俺が作るよりかはまだ美味いだろう。
華澄も味に問題は無さそうで、美味しそうに秋刀魚の身を食べていた。



………………………



華澄
「…聖殿、ひとつお頼みしてもよろしいですか?」


「良いぜ、何でも言ってくれ」


食事後、どうやら何か思い付いた様で、華澄は真剣な顔をしていた。
自分だけの趣味、何か考え付いたかな?


華澄
「映画を見てみたいでござる…もしよろしければ、皆で」


「映画って劇場でか? 今、何やってるんだっけか?」

華澄
「いえ、劇場でなくとも家でも構いませぬ」
「ビデオ、という物があると聞きました」
「それを入手したいのです」


俺が思い出そうとしてると、華澄はそう言い直す。
そうか、そういう事な。
それなら、手っ取り早いのはレンタルビデオだけど…
古い奴とかなら中古漁っても良いが。



「って、よく考えたら家に再生機がねぇ…今更だが対応してる据え置きゲーム機とかも持ってなかったからな~」

華澄
「でしたら、思い切って買ってみますか?」
「ゲーム機でしたら守連殿たちも楽しめますし、3万円位までなら、皆で出し合えばそれ程負担にはならないかと」


俺は成る程と思い、承諾する事にした。
となると、DVD見るなら最低でも◯S2か3か4だな。
って、予算考えたら2か3だろう。
4は流石にまだ高い。
ゲーム機だけで予算ギリギリになってしまっては本末転倒だからな…

まぁ、まずは価格調査か。
とりあえず駅前のゲームショップに行ってみよう。
通販という手もあるが、それだと少し時間かかるしな。



………………………



華澄
「これが、そうなのですか?」


「そ、定番の奴だな…中古だから動作保証が気がかりだけど」
「安く済ませるなら2だ、中古ゲームも手頃に手に入るしオススメ」
「3なら更に色んなゲームが出来るけど、その分値段が上がる」
「もっとも、こっちならブルーレイ対応で高画質にもなるが…」
「まぁ、この辺はちょっとした誤差だけどな」
「4は今の所論外、予算ギリギリになっちまうし」
「ってなわけで、2か3で選べ」

華澄
「では3にしましょう、この値段でしたら、予算的にも少しは余裕が出ますし」


流石華澄さん、即断即決ですな。
俺は中古の旧型◯S3を持ってレジに向かった。
ついでにコントローラもセットで買っておく。
このままだと、ひとつしか付いてないからな…女胤たちなら対戦もしたいだろうし、もうひとつはあった方が良い。


華澄
「あ…」


「ん? 何か欲しいのでもあったか?」

華澄
「はい、映画のビデオが…中古品ですが、色々有ります」


華澄が見ている先はワゴン品だった。
いわゆる格安ビデオだ。
もう売れなくなって投げ槍価格だから基本安い。
これならすぐ買ってすぐ見れるし、良いかもな。



「見たい奴とかあるのか…?」

華澄
「はい、この実写版の◯ビルマンとやらを…」


「オーケー華澄さん、まずそれはそっとワゴンに返しておこう」
「それはまだ華澄さんには早い…」


俺がそう言うと華澄さんは残念そうにそれをワゴンに戻す。
何でいきなり難易度高いの選ぶかな~?


華澄
「では、こっちの実写版◯ラフォーマーズは?」


「何してんだテメーーー!?」
「って、まずその辺からは一旦離れよう!?」
「もうちょっと有名所で、評価も良い奴!」

華澄
「おお、◯ラゴンボールがあります! これなら有名ですし大丈夫でしょう!!」


「気を付けて華澄さん! そいつお父さんじゃない!!」
「何でわざわざ実写版選ぶのよ!?」
「つか、このワゴン魔境過ぎるだろ!? マトモなのあんのか!?」


俺は思いっきりツッコミながらワゴンを漁る。
ダメだロクなの無い…ほとんどクソ評価受けた映画ばっかりじゃねーか!?


華澄
「む? これは◯トリートファイターですな」


「ん? ◯トⅡの映画か…チェイサー!の奴だっけ?」

華澄
「えっと…主演◯ャン・クロード・ヴァンダムと書いてありますな」


「ハラキリの方かい!! まぁ、無難にネタにはなるが…」


ちなみに実際にハラキリの方は『家庭用の』ゲーム版だけだ。
映画ではフツーの軍人。
後、主人公は何故か◯イル『大佐』な。



「とりあえず、それにするか? 笑いの種にはなるぞ」

華澄
「笑い…なのですか? まぁ、とりあえずこれにしましょう」
「初めての映画鑑賞…楽しみでござる♪」


華澄さんは凄く楽しみな様子で笑っていた。
うん、その無邪気な気持ちは大切に持ってほしい。
多分30持たずに色々崩れると思うが。
とりあえず、精算しよう。
華澄の手持ちで足りる様だし、後は持ち帰るだけだ。



………………………



華澄
「…ドキドキ」

守連
「わぁ~◯S3だ~♪」

阿須那
「へぇ、映画か~? おっ、◯トリートファイターやん!」

女胤
「しかし、実写版ですか…これは、◯ュウが主人公じゃありませんの?」


「まぁ、見てのお楽しみだ」


こうして、俺たち家族の初の映画鑑賞が行われた。
ヒジョーにマニアックなチョイスで。



………………………



華澄
「うむぅ…」

守連
「あはは~スゴいね、この映画」

阿須那
「アホかっ! 色々ツッコミ所だらけやろ!?」
「何でラスボスが◯イソンやねん!?」


「将軍を付けろやこのデコ助がぁ!?」
「これは、海外版だから名前の響きが問題で急遽変更されたせいだ」
「◯ガは本来女性の名前で合わないからだとさ…」

女胤
「しかし、◯ンギエフが敵役とは今考えると違和感有りますわね」
「◯ィージェイなんてただの小悪党じゃありませんの」


やはり予想通り賛否両論の様だった。
俺的にはネタと割り切れるから面白いんだけどな。
っていうか、この映画はむしろ笑い飛ばす映画だろ。
真面目に考える方が無粋なのだ。


華澄
「まぁ、しかし原作ゲームを考慮に入れないのであれば、特に破綻してるわけでもありませんし」
「一応、まとまったストーリーであるとは思います」
「…素人の意見ですが」


「とりあえず、楽しめたならそれが1番良い」
「映画鑑賞なんて当たり外れを探すのも楽しみだからな」

華澄
「うむぅ、やはり次こそは◯ビルマンを…」


「それは止めとこう! もっとフツーの探そうよ!?」


華澄さんはどうしても気になる様だった。
出来ればもう少し良い映画を観てからにしてほしいものだ…
とはいえ、これにて映画鑑賞は終了。
俺たちは一旦本体を片付けた。
今は華澄さんの笑顔を見て、良しとしよう…
華澄も、これでもう少し自分の為に何か出来るようになれば良いが…










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はするはずがない!』



第6話 『猫耳萌えっ娘メイド華澄ちゃん☆』


To be continued…

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