第3章 第5話

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読了時間目安:28分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください


「魔法カード! 『◯者蘇生』!!」
「俺は墓地に存在するモンスターを特殊召喚する!!」
「再び現れろ! ピカチュウ娘『守連』!!」


守連
「私、死んでないよ~? でも、風邪も治って元気100倍♪」


俺のネタにしっかりツッコミながらも、どこぞのあんパンヒーローの様な事を言う守連。
しかし、本当に治って良かった。


華澄
「ふふ、喜ぶのは構いませぬが、聖殿は学校があります」
「早く朝食を食べませんと、遅刻してしまいますぞ?」

阿須那
「せや、折角温かい味噌汁が冷めてまうで?」
「守連もちゃんと座って食事し! そんで今日1日まではゆっくり休む事!」


阿須那の言葉を聞き、守連は素直に頷いて席に座る。
俺も同様に席に座り、少し遅れた朝食が始まった。
今朝はシンプルに焼き鮭定食だ♪



………………………




「うっし、それじゃ行ってきま~す」

阿須那
「あ、せや聖! 今日ちょっと店の方に来て欲しいねんけど、かめへん?」


「うん? 店って阿須那の働いてる店か?」
「良いけど学校帰りで良いのか?」

阿須那
「いや、時間は18時にするわ」
「そんで、守連たちも皆一緒に連れて来て欲しいねん」


皆も一緒に…?
18時っていやぁ、コスプレが終了する時間か。
何かあるのかな?



「まぁ良いや、じゃあその時間には訪ねる様にするよ!」
「行ってきます!」

阿須那
「あんじょうきばりや~」


俺はそんな阿須那に見送られ、学校に向かった。
はてさて、一体何が有るのかねぇ~?



………………………



光里
「え、今日お店で何かあるのか?」


「ああ、姉さんが店に来てくれって言ってたから、何かあるんじゃないかと」


俺は登校中、たまたま出会った光里ちゃんに店の事を聞いてみた。
しかし、一介のバイトに過ぎない光里ちゃんには何も解らない様だ。


光里
「う~ん、何だろね?」
「私、今日は20時までバイトする予定だから、もしかしたら一緒に何かやるのかも♪」


そうか、光里ちゃんはコスプレ以外の仕事もやってるんだな。
考えても見れば、コスプレ部隊は18時までだからそれだけだとあまり時間的に稼げないもんな。



「光里ちゃんって、料理とかするの?」

光里
「…それは聞かない約束だよボーイ」


成る程、出来んのな。
まぁ、喫茶店で働いてるからって上手くなるとは限らないか。


光里
「私は基本接客担当だからね…」
「夜はほとんどホールで動き回ってるし」
「風路さんがいる時なんか、ほとんどレジと掃除ばっかりだから…」


「やっぱ、風路さんて凄いの?」


俺が気になってそう聞くと、光里ちゃんはオーバーに手を振って凄さをアピールする。
が、全く伝わった気がしない!
まぁ、スゴイのはとりあえず解った。


光里
「凄いなんてもんじゃないよ~!?」
「風路さんは実質次の店長候補だし、店長の娘で実力は折り紙付き!」
「その仕事振りも懇切丁寧で、コスプレでは当然1番人気!」
「あの阿須那さんですら、まだまだ風路さんには絶対勝てないって舌を巻いてたもの…」


そうか、やっぱそんなにスゴイ人だったのか風路さん。
少し見ただけでも、他の人とは違うのはよく解ったからな。
あの阿須那が尊敬する位だ、相当な人なんだろう。


光里
「ん~? もしかして風路さんに気があるのかな~?」


「ばっ!? んなわけじゃねぇって!」
「前にちょっと話しただけだったから、少し気になって…」


嘘は言っていない。
風路さんが美人なのは認めるが、流石に俺なんかが恋愛対象に見ちゃいかんだろ…
だが、そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、光里ちゃんは語りだす。


光里
「まぁ、風路さん狙いなら相当難易度高いでしょうね~」
「少なくとも全パラ150以上は無いとフラグすら立てられないと思うよ~?」
「しかも、テストで常に上位を取る実力!」
「体育祭でも常に注目選手!」
「更に部活で世界に羽ばたける位じゃないと!!」


「そこまでの漢ならそれまでに何人のフラグ立てるのか…」

光里
「まさに・・・・凄い漢だ。だね!」


光里ちゃんはノリノリで両手を上げ、俺に背中を向ける。
うむ、とりあえず訳解らん!



………………………



光里
「それじゃ、聖君またお店でね♪」


「ああ、18時前には着くと思うよ」


俺たちは例によって校門で別れる。
流石にまだ2時間は余裕があるな。
さて、どうしたものか…
俺はとりあえずいつも通り宿題に励む事を決め、帰路に着いた。
何があるのかは気になるが、それは行って確かめれば良い。



………………………




「………」


相変わらず自室で宿題をこなす俺。
とはいえ、あくまで最低限の勉強でしかないから、予習復習とかはそんなにしてない。
授業の範囲ならちゃんと理解してるし、それ程成績は悪くないからな。
良くも悪くも中堅で、特に目立つ事は無い。
俺は某S市の連続殺人鬼とは違い、一々3位を狙う愚か者でもないのだ!



「さて、大体終わったしどうするかな?」
「一応、守連の様子を見に行くか」


俺はそう思い、部屋を出て守連の所に向かった。
俺の隣は華澄の部屋で、その更に隣が守連と女胤の共同部屋だ。
俺はドアの前に立ちノックする。



「守連いるか?」

守連
『あ、聖さん~どうぞ~♪』


守連の元気そうな声が聞けて俺も頬が緩む。
どうやらもうほとんど大丈夫みたいだな。
俺はドアを開けて中を見た。


守連
「う~ん、やっぱり女胤ちゃんはこっちの服の方が良くない?」

女胤
「そうでしょうか? 皆に合わせるのでしたらカジュアルな方が良いと思うのですが…」


どうやら、お出掛け用の服選びをしている様だった。
前の女胤はフォーマルだったからな。
今回はカジュアルで行くつもりなのか、悩んでいる様だった。
守連的にはフォーマルの方をお勧めしている用だ。


守連
「ねぇ、聖さんもこっちが良いよね~?」

女胤
「この際、聖様が選んだ方を着て行きますわ」


「だったらカジュアルな方が良いだろ」
「今回は皆でだし、ひとり浮いた服を着るのは逆におかしく見えるぞ?」


俺がそう言うと、守連は仕方なく納得した。
まぁフォーマルが似合うのは否定しないが、ああいう正装は普段着る服じゃないからな。
女胤も部屋着は流石に基本カジュアル系か初期装備の緑ドレスだし、まぁどっちかと言うと難しい問題ではあるのだが。


女胤
「では、こちらで行きましょう」
「それでは、着替えて準備しますが、見ていかれます?」


「おっと、そこは紳士的に出て行かせてもらう!」
「まぁ、まだ時間あるしぼちぼちで良いからな?」


俺がそう言うとふたりは頷く。
俺はそれを確認すると、とりあえずリビングに降りる事にした。
この時間なら華澄も起きてるだろ。
華澄は朝が早いから、飯時以外は割と寝てるからな…



………………………




「あれ? 華澄いないな…出掛けてるのか?」


俺は下駄箱を確認してみるが華澄の靴はある。
という事は、寝てるのかな?
だとするとそろそろ起こしてやった方が良いな。
アイツも準備あるだろうし、ちゃんと俺が気を使ってやらないと。
そう思い、俺は華澄の部屋に向かった。



………………………




「華澄~起きてるか?」


俺はドアを軽くノックして訪ねてみるが、返答無し。
珍しいな…華澄なら寝ててもすぐ起きるのに。
…まさか、華澄まで風邪にかかったんじゃ!?
俺はそう思うと、いても立ってもいられなくなり、鍵のかけられていなかった華澄の部屋のドアを乱暴に開け放つ。
そして、華澄が寝ているであろうベッドの側に駆け寄った。



「華澄!?」

華澄
「ん…あ、聖殿…?」
「これは失礼…どうやら寝過ごしてしまいましたか?」


どうやら、本当に寝ていただけの様だった。
俺はその場で膝から崩れ落ち、大きく息を吐く。
杞憂で良かった…


華澄
「聖殿、どうかなされたのですか?」


「ああいや、もしかして華澄まで風邪になったんじゃないかと思って」

華澄
「そ、そうでしたか…申し訳ありませぬ」
「聖殿にご心配をかける等、拙者の不義でござるな…」
「さて、では拙者も着替えますので聖殿は……っ!?」


それは、まさにスローモーションの様だった。
華澄は勢い良く体を起こし布団から出ようとした矢先、バランスを崩して俺の方に倒れ込んで来たのだ。
…素っ裸のままで。
当然、咄嗟の事に俺が反応出来るわけもなく、俺の顔面に華澄の豊満な両胸が覆い被さって来る。
甘い臭いだ…それが、俺の最後の感想だった。


ドシィィン!!


女胤
「華澄さん、どうかなされたの…っですかぁ!?」

守連
「…わぁ~だいた~ん」


狙い済ましたかの様なタイミングで、女胤たちが殴り込んで来る。
とても誤解を解ける自信が無い。
どっからどう見ても、華澄が裸で俺を押し倒している様にしか見えんだろうからだ。
だが、俺は逆に心を沈めて落ち着く。
でないと俺の息子が怒髪天を突く事になってしまう。
流石にそれだけは死守せねば!!


華澄
「……ぅ、うわぁぁぁぁぁっ!? 申し訳ございません聖殿~!!」


まさに電光石火の速度で華澄はベッドの布団に潜り込んだ。
そして、その中に身を隠しガクブルしていた。



「あ~その、華澄さんや?」

華澄
「失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した!!」


「ストップ華澄さん! それ以上はトラウマになる!!」


もはや華澄にはトラウマになってそうだが。
あの華澄がネタに走るとは…
やはり俺相手の事となると華澄は本当に普段見せない態度を取る事あるよな…


華澄
「よりにもよってあんな形で聖殿の劣情を煽ろうなど万死に値する!!」
「あぁ…聖殿の肉棒が股間に降れた時、拙者は拙者はぁ!!」
「腹を切ってお詫びいたすーーー!!」


「勘弁して華澄さん!! それ以上は俺の体裁も大破する!!」
「とりあえず落ち着けって! なっ!?」


俺は今にもスタートボタンを押して自決しそうな華澄を必至に説得する。
今の時代、自決しても怒りモードになれないんだぞ!?


華澄
「うぅ…聖殿~…」


「も、もう今回の事は忘れよう!?」
「とりあえず、そろそろ時間だから華澄もちゃんと着替えて!」
「阿須那が待ってるから!」


華澄は布団にくるまったまま、顔だけ出して涙目で頷いた。
ついにはクルマユに進化したか…
俺たちはとりあえず華澄が落ち着いたのを確認して部屋を出る事にした。
とんだハプニングだったな。


女胤
「あの、聖様…」


「次のテメーの台詞は、私の裸も抱いてください、だ!!」

女胤
「よろしければ、私の裸も抱いてください……ハッ!?」

守連
「あはは~女胤ちゃん無様だね~♪」

女胤
「あの守連さんに毒を吐かれた!?」


おっと、これは意外だな。
もしかしたら、守連も内心頭に来てたりしてるのだろうか?
まぁ、前みたいな空気ではないし、そこまでは怒ってない様だが。
とりあえず、とんだラッキースケベを俺は乗り越え、皆で阿須那の店を目指すのだった。



………………………



守連
「阿須那ちゃんのお店って、喫茶店なんだよね?」


「ああ、18時からは普通の飲食店だからコスプレは見れないと思うがな」

華澄
「…ふむ、ならば阿須那殿は何を目的に?」

女胤
「行ってみれば解るでしょう」
「あの阿須那さんに限って罠は仕掛けないでしょうし」


サラリと罠とか言うなっての。
つか、普通の飲食店だと言っとるだろうに。
俺たちはそれぞれ疑問に思いながらも、やや早い時間に店に到着した。



………………………



守連
「あ、ここだね~『こすぷれ~ん』って書いてある♪」


間違いなくこの店だ。
まだ夜という程暗くはないが、それでも日は落ち始めている。
後1時間もしない内に日は暮れるだろう。
俺たちはとりあえず店に入る事に…


風路
「あっ、ちょっと待って聖君!」


「あ、風路さん…コスプレ服って事は、まだ入れないんですかね?」


俺がそう聞くと、風路さん申し訳無さそうに頷く。
風路さんの今日の服はナースだ。
胸元が開いて強調されており、風路さんの素晴らしいスタイルが見て取れる。
色もあえて純白と清純さが感じられるな。


風路
「ゴメンね、この時間は切り替わりの時間だから」
「後10分もあれば終わるから、ちょっと店先で待っててね?」
「今日、阿須那ちゃんに呼ばれたんでしょ?」
「18時には再開店出来ると思うから♪」


「はい、こちらこそ早く着きすぎてしまって、すみません」

風路
「良いの良いの! 今日は聖君たちは特別なお客さんだから!」
「楽しみにしててね? きっと阿須那ちゃん張り切ってるから♪」


そう言って最後にウインクし、風路さんは店内に戻って行った。
その際、入り口の札がOPENからCLOSEDの札に変えられる。
とりあえず、待つしかないか。



「トイレとか大丈夫か?」

守連
「うん、私は大丈夫」

華澄
「同じく」

女胤
「大丈夫ですわ」


なら、特に移動する事もないか。
俺たちはその場で雑談でも交わしながら開店時間を待った。



………………………



風路
「お待たせしました~! 今より開店でーす!!」


そう言って風路さんは大声で外に叫ぶ。
見ると、俺たち以外にも客が並んでおり、皆待っていた様だ。
ここの料理は絶品らしいから、楽しみにしてる人も多いんだろうな。
俺たちは風路さんに案内され、店内に入った。


風路
「予約客4名入りまーす! 聖君、こっちよ…」


「予約扱いだったんですか?」

風路
「そ、お義父さん直々に♪」


「あれ? 姉さんが予約取ったんじゃなかったんですか?」


俺がそう聞くと、風路さんは何故か一瞬固まる。
だけど、すぐに苦笑して首を横に振った。
俺は少し?と思ったが、とどのつまり、今回の予約は店長が取った物で、阿須那はそれで何かをするという事だろう。
俺たちは1番奥、厨房側に最も近いテーブルに着席した。
そして、まず足りない物に気付く。



「あれ、メニューは?」

風路
「ゴメンなさい、今日はメニューは固定にさせてもらうの」
「その代わり、代金はお義父さん持ちだから、気にせずにお腹一杯食べてね♪」

守連
「わぁ~タダだって♪」

華澄
「それは有り難い…何が出て来るか楽しみでござるな」

女胤
「ところで、当の阿須那さんは?」

風路
「阿須那ちゃんは厨房」
「多分、今日は終わるまで出て来れないと思うわよ?」


成る程…という事は阿須那が料理を作っているって事か。
一体、何が出て来るんだろ?
固定って事は、こちらから好きな物を注文する事は出来ない。
水は最初に出て来るから良いが、一体…?
俺たちは期待と不安を胸に抱きつつ、最初の料理を待った。



………………………



風路
「お待たせしました、先ずは『ストゥッツィキーノ』です」
「皆さん未成年ですので、食前酒は省かせてもらいますね」


そう言って風路さんが持って来たのは、バゲットと呼ばれるパンだ。
ひとり一切れ程度だが、ニンニクとオリーブオイルが添えられている。
これを塗って食べろと言う事か。


守連
「ハム…うん、美味しいね~♪」

華澄
「ふむ、オイルとニンニクで味付けですか」

女胤
「まずは前菜と言った所でしょうか?」

風路
「残念、これは前菜じゃなくて付け出しよ?」
「おつまみと言っても良いわ、基本的に席に座ったら自動で出て来る物なの」
「本来なら食前酒を飲んでからが1番良いんだけど、そこは未成年なんで仕方ないよね…」


風路さんは笑顔でそう説明してくれる。
成る程、つまみね…
風路さんは皆が食べ終わる頃に次の料理を取りに行った。
バゲットを食べ切った俺は、おもむろに店内を見渡す。
まだ夕飯時には早いのか、客はまばらではだった。
光里ちゃんが他の店員と一緒に接客しているのが見えるな。
光里ちゃんもそれなりに忙しそうだ。


風路
「お待たせしました、今度こそ前菜の『アンティパスト』でございます♪」


そう言って次に風路さんが持って来たのはサラダ。
基本的なレタスとゆで玉子、人参やツナが散りばめられている。
量は割と控えめで、軽く腹に入るかと言った所だ。



「へぇ…ドレッシングだけだけど、結構良いな」

女胤
「はい、食べやすい大きさですし、前菜として十分ですね」

守連
「う~ん、でももうちょっとちゃんとしたのを食べたいかも」

華澄
「守連殿、焦らずに」
「これは前菜な以上、後からちゃんとした量の主菜が来るはずです」


華澄はそう言って守連を嗜める。
そう、これはまだ前菜。
ここからどんどん主菜へと移っていく。
そして、俺はこの時点で気付く。



「風路さん、これもしかしてコース料理ですか?」

風路
「当たりよ、それもフルコース」
「量はそれなりに適正になる様に店長が調整してくれるけど、どうしてもお腹一杯になっちゃったら言ってね?」
「その時は、打ち切らせてもらうから」


そう言って風路さんは再び厨房に入る。
次の料理が出て来るのだろう。
俺たちはゆっくりとサラダを食べ切り、次の料理を待った。


風路
「お待たせしました『プリモ・ピアット』となります」


次に風路さんが持って来たのはパスタ。
シンプルなペペロンチーノで、量も少な目、満腹にはまだ遠い位だろう。
逆にまだまだ料理は出て来ると言う事だ。


守連
「うん、美味しい♪」

華澄
「唐辛子とオリーブオイルを絡めただけのシンプルな物ですが、確かにこれは美味しいでござる」

女胤
「量も適切で丁度良いですね♪」


「華澄はまだ大丈夫か?」

華澄
「はい、良く考えられております」
「拙者の様に少食の者に対し、他の方よりも少な目に盛られております」
「拙者たちの食事事情が解ってなければ、こんな事は出来ますまい」


言われてみれば、俺たちの皿を見比べると、微妙に違いがある事に気付く。
少食の華澄には少な目に、逆に大食いの守連には少し多目にと。
やはり、これは阿須那が作ってくれているのだろう。
俺たちの食事事情を知ってる阿須那が気を効かしてくれているのだ。


風路
「さぁ、次は『セコンド・ピアット』です!」


次に持って来られたのは、リゾットとシーフードだ。
量はまたそれぞれの量に合わせられており、ここまで来るとかなり腹には溜まりそうだった。



「うまっ! こんな味のシーフード食った事無いぞ!?」

女胤
「リゾットも素晴らしいですわ!」

守連
「美味し~♪ 今度は量もある~♪」

華澄
「ふむ、拙者にもこの量ならまだ大丈夫ですな」


それなりに腹に溜まったものの、まだ俺たちは大丈夫だった。
ここまで来たんだから、ちゃんと最後まで食ってやりたいものだ。
特に、阿須那が作ってくれてるなら…


風路
「さぁ、次は『ピアット・ウニコ』ですよ!」
「少々重めの肉料理ですが、大丈夫ですか?」


三つ目の主菜は、肉料理。
いわゆるステーキで、いかにもな感じの匂いだった。
ここまで来ると流石に腹八分目位までは来そうな気がする。
守連はまだ余裕と言う感じだが、女胤はそこそこキツそうだった。
華澄は1番辛そうだが、肉の量も半分有るか無いかだ。
華澄が辛くなるのは解ってたって感じのチョイスだな。
味は文句無し、柔らかさも油のとろみも俺好みだ。
皆も味に文句は無さそうだった。


風路
「次は季節物の『スタジオーネ』です!」
「今は秋と言う事で、キノコをメインとした山菜に、トリュフを振りかけた炒め物です♪」



「トリュフって、こんなの初めて食うぞ俺!?」

守連
「あ、美味しい~♪ キノコの香りがスッゴい良い~♪」

女胤
「量も良い感じで収まる位ですね。華澄さんは大丈夫ですか?」

華澄
「はい、少々辛いものの、何とか完食出来そうです」


俺たちは苦戦しながらも完食する。
まだ結構あるんだろうか?
フルコースって、思ってたよりもかなりキツいな…


風路
「ゴメンなさい『フォルマッジィ』が遅れちゃって!」
「本当なら主菜の最後に聞くべきだったんだけど…」


そう言って風路さんは色んな種類のチーズを持って来た。
俺たちはそれをひとりひとつだけつまみ、口に運ぶ。
俺が食ったのはモッツァレラで、モチモチとした食感が特徴だった。


守連
「うん、デザート感覚だね♪」

華澄
「確かにこれならまだ大丈夫ですな」

女胤
「食後に頂くのは丁度良いですね♪」

風路
「ちなみに、デザートはこの後にあるからね?」
「すぐに持って来るから、待っててね♪」


「…まだ来るのか」

女胤
「流石フルコースですわね…」

守連
「デザート~♪」

華澄
「ふふ、守連殿は余裕のご様子ですな」


結局、まだフルコースは終わらない。
とはいえ、流石に終わりは見えて来たか…


風路
「お待たせしました♪ いよいよデザートの『ドルチェ』ですよ?」
「イタリアンでは定番のティラミスですけど、どうぞ召し上がれ♪」


今度こそ最後であろうデザートが到着する。
小振りのティラミスで、香りからして美味そうだ。
守連はすぐにでも食べ始め、ご満悦状態だった。


守連
「ん~♪ もう最高~毎日食べたい位♪」

女胤
「ココアパウダーの相性がやはり良いですわね♪」

華澄
「うむ、しっとりとした食感が拙者も好みでござる♪」


最後のデザートを食べ切り、俺たちは思い思いの感想を述べ合う。
やはり、皆が皆同じ舌ではない、同じメニューであれば好き嫌いは若干あった様だ。


風路
「皆さん、まだコースは終わってませんよ?」
「『カッフェ』になります、皆さんは未成年ですので、これが最後になりますね♪」
「本来なら、この後に食後酒が控えているけどね♪」


成る程、俺たちは例によって未成年だから、か。
俺たちは食後のコーヒーを味わう。
そして、俺はすぐに気付く。



「これ、阿須那のオリジナルブレンドだ…」

華澄
「そうなのですか?」


俺は小さく頷く。
前に1度だけ飲ませてもらった事があった。
その時は阿須那は自信が無く、俺に味見を頼んだのだ。
そして、俺はそれを飲んでただ一言正直に言った。



「うん、苦いな」

女胤
「ブラックですからね…守連さんには辛いのでは?」

守連
「大丈夫~ミルクと砂糖貰った~♪」


そうか、あったのな…って、そりゃそうか。
俺は苦いと思いながらも、そのコーヒーをちゃんと飲み干した。
苦い…苦いけど、これは阿須那の味なんだ。
だったら、俺はこの苦さを覚えておかないと。


勇気
「皆お疲れ様! 今回のコースはどうだった?」


突然現れたのは屈強な体をした、ガチムチのコックだった。
しかし、口調はオネェ口調で、いかにもソッチの世界の人ですというオーラは十分感じられる。


風路
「こちらが、この店の店長」
「阿須那ちゃんの師匠で、私のお義父さんでもあるわ♪」


勇気
「初めまして、私は店長の『苧環 勇気』(おだまき ゆうき)よ♪」
「貴方が、阿須那ちゃんの弟の聖君ね?」


「あ、は、はいっ」


俺は突然笑顔で語りかけられ、圧倒されてしまった。
向こうからは至ってフツーに話しかけたのだろうけど、想像以上に威圧感がある。


勇気
「今回の料理、正直に言ってどう思った?」


「えっ? そ、そうですね…」
「俺たちの事を、良く考えてくれた料理だと思いました」
「わざわざ俺たちの中で、少食の華澄と大食いの守連とで量を調整してくれたのは、素直に嬉しかったです」


俺の言葉を聞いて、店長は嬉しそうにうんうんと頷いた。
それなりに期待に応えられる答えを出せたんだろうか?


守連
「こんなに沢山の料理食べたの初めてだよ~♪」
「味も色々あって、楽しかった~♪」

華澄
「拙者は少食ゆえ、少々量に苦戦はしましたが、概ね味に文句はありませんでした」
「ただ、出来れば自分にあった量を食べたかったでござる」

女胤
「私も、量は何とかなりましたが、やはり少々辛い所がありましたね」
「ですが、味は満足しました、これならまた食べたいと思う位には」


それぞれがそれぞれの感想を述べる。
そして、それらを聞いて店長は俺たちを真っ直ぐ見た。
その後、数秒程沈黙があった後、店長は口を開く。


勇気
「皆、ありがとう♪」
「その言葉を聞けたのなら、私は大満足よ」
「今日は本当にありがとう、無理を言って来てもらって」



「いえ、それよりこの料理って阿須那が作ったんですよね?」

勇気
「ええ、そうよ」


「阿須那は、合格ですか?」

勇気
「…そうね」


店長は俺の言葉に驚く事無く、やや厳しい表情で考えていた。
俺は、何となく解った。
多分、今回のコースは阿須那を試す為の料理なのだと。


勇気
「…聖君、今日はこれで帰ってもらっても良い?」
「私も他のお客さんの為に、まだ料理を作らないといけないから」
「阿須那ちゃんも、まだまだ料理を作っているわ」
「だから、今は阿須那ちゃんを信じてあげて♪」
「そして、今夜…ゆっくり話を聞いてあげて」


それだけを言うと、店長は厨房へ戻って行った。
何となく、嫌な予感はするな。
だけど、俺は正直に言ったつもりだ。
それがアイツの為になると信じて…


風路
「…聖君、そんな顔しなくても大丈夫」
「きっと、今回の事がどう転がっても、阿須那ちゃんは大丈夫だから」
「あの娘はそんなに弱くない、きっと貴方の為ならどこまででも強くなれる」
「だから、信じてあげて?」


「はい、すみません風路さん」
「俺、自分では信じているつもりでしたけど、やっぱり不安は多くて」
「でも、今度こそ安心して信じます!」
「阿須那が、まだ強くなれる様に…」


俺がそう言うと、風路さんも満足したのか笑顔で俺たちを送ってくれる。
今はこれで良い…
後は、アイツが帰って来てから、ゆっくり話そう。
俺はそう思い、今日の思い出を噛み締める事にした。
明日はどんな料理が出て来るかな…?



………………………



勇気
「阿須那ちゃん、自分ではどう評価する?」

阿須那
「アカン…全然ですわ」
「正直、もっと良く出来る所はあった…」
「後半のペースに意識が追い付かんかった…」
「ホンマなら、もっと負担無く食べさせてあげられたはずなんに…」


ウチは営業終了後、片付け終わった厨房で店長にそう述べる。
初めてのフルコースとはいえ、甘い所だらけや。
もっと冷静になって料理を作れんかったんはウチの未熟さや。


勇気
「そうね…今回のフルコース、採点するなら」
「10点満点中、5点ね」

阿須那
「………」


店長の採点をウチは噛み締める。
自己採点なら3点や…
味は問題無かったかもしれん。
せやけど、食べる人の事が考えられてへんかったら、それは料理や無い。
まだまだ、学ぶ事だらけやな…


勇気
「貴女は、既にそれなりの料理を出せる様になったとはいえ、まだ学び始めたばかり」
「これからも、失敗をバネに頑張りなさい!」

阿須那
「はい! 今日はありがとうございました!!」


ウチは深々と頭を下げる。
店長は笑って頷く…その顔は、思ったよりも満足そうな顔をしてた気がした。


勇気
「さ、早く帰りなさい…家で聖君たちがきっと待ってるわ♪」

阿須那
「はい、お疲れ様です!」


ウチはすぐに更衣室に向かい、着替えて帰る事にする。
今日は緊張もしたし、ホンマ疲れた…はよ風呂入って寝たいわ。
晩飯も今日は食いそびれたし、どないしよかな?



………………………



阿須那
「ただいま~…」


「お帰り、大変だったみたいだな? 今日も1日お疲れさん…」


俺は帰って来た阿須那を早速労う。
そんな俺を見て、阿須那は驚いている様だった。


阿須那
「聖、こんな時間までどないしたん?」
「いつもやったらもう休んでるやろに…」


「結果は、どうだった?」


俺がそう聞くと、阿須那はピクッ…と動きを一瞬止める。
やっぱ、あんまり良い結果じゃなかったみたいだな。


阿須那
「気付いとったんか…まぁ、察しの通りやで?」
「明日から、また頑張らんと…」


「あんまり落ち込んでない様で何より」
「で、晩飯は食って来たのか?」
「それとも先に風呂に入るか?」

阿須那
「いや、食うのはアンタや~♪」


と、ベタなネタを阿須那はやる。
両手を掲げて襲う体勢だが、もはやそんな気力も続かないのか、すぐにダレて肩を落とした。


阿須那
「アカン…もう限界や、風呂入って寝る…飯はええわ」


「分かった、じゃあ俺は先に寝るぞ?」
「何かあるなら言えよ?」


俺がそう言うと、阿須那は片手だけ上げて大丈夫とアピールする。
相当疲れてるなありゃ…
俺は阿須那の背中を見送り、やがて背を向けて2階の自室に向かった。
そして、今日も鮮明に記憶に残る1日が終わりを告げる…










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はするはずがない!』



第5話 『阿須那の試験! イタリアンフルコース!!』


To be continued…

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