第2章 第3話

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読了時間目安:23分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください


「ふははははっ! 甘い! 甘すぎる!!」

守連
「む~ズルいよ~」


俺はリビングで◯ァミコンミニを起動させて遊んでいた。
今回守連とやっているのは定番のバルー◯ファイトだ♪
ちなみに、協力プレイに見せかけて奇襲を仕掛けるのは基本よ!!

しかし、意外にも守連はそれなりに器用なのか、操作はそれなりに出来てる。
これまででも何度かはやっていたみたいだし、それなりに操作は慣れてはいる様だった。
だが、ここは戦場! そう…この空気、肌触りこそが戦場よ!!


守連
「むぅ~」


「戦いにおいて、背後頭上を取られる事はすなわち死を意味する!!」


俺は敵を捌きながら守連の頭上をキープする。
こうすると守連は簡単には上に上がれず、近付いて来る敵に良い様に翻弄されるのだ!
そして、苦し紛れに飛び上がろうとした所で、俺は容赦無く守連の風船を割る。
守連はあえなくゲームオーバーとなった。


守連
「あ~またやられた~…まだ、1面なのに~」


「ふぅ、苦しい戦いだったぜ、この俺をここまで苦しめるとは…」

華澄
「聖殿、大人気ないでござるよ…守連殿はまだまだ初心者でござろう?」


そう言う華澄が、俺と守連にコーラ、オレンジジュースがそれぞれ入ったコップを渡してくれた。
俺たちは一旦休憩し、俺はコーラ、守連はオレンジジュースをそれぞれ飲む。



「ぷはっ! 勝利の後は美味い!」

守連
「ちょっと釈然としないけど、美味しいのは同感♪」

華澄
「ふふ、楽しそうで何よりです♪」


華澄は笑顔でそう笑う。
以前の一件からか、華澄は割とよく笑う様になった。
垢が抜けたとでも言うのか? 今まではどちらかと言うと少し仏頂面だったからな。
この笑顔だけでも、華澄は成長出来たのだと思う。
これからも、きっと皆を助けてくれるだろ。



………………………



女胤
(くっ…何なんですのあの雰囲気!?)
(そして、聖様から無言で放たれる、あの華澄さんへの全幅の信頼は!?)
(このままではマズイ…やはりここは、私(わたくし)の存在感を示しておかなければ!)


私はそう思い、◯ァミコンミニからスーパー◯ァミコンミニを代わりに起動させる。
ケーブルは共有ですので、差し替えるだけで出来るのは便利で良いですね。
そして、コントローラーを持ち、華澄さんへこう宣戦布告する。


女胤
「華澄さん、あなたに◯リオカートでの勝負を申し込みますわ!!」

華澄
「何故、拙者に?」

女胤
「華澄さんに勝てば、聖様の関心は私に移る!」
「ここで、貴女に私の実力を思い知らせて差し上げますわ!!」


私が夜中にも関わらず高らかに宣言すると、華澄さんはやや考えていた。
明らかに気乗りのしないと言う表情ですわね。



「止めとけよ、華澄はゲームやった事無いんだから」
「まぁ、◯リカーならそんなに難しくはないけどさ」

守連
「でも、◯リカー面白いよ~? 私は負けても楽しいし♪」

華澄
「…ふむ、それでしたらやってみましょう」
「操作方法を教えていただけますか?」


華澄さんは聖様から直々に操作方法を教わる。
おのれ…! こんな所まで聖様に…!?
私は怒りを抑えながらも準備を待った。
そして、改めて私と華澄さんのVSモードが始まる。



………………………



女胤
「私は◯ーチ姫で行きますわ」

華澄
「では、拙者は◯ッパ殿で」


「マジか…初心者に◯ッパは難しいぞ?」

守連
「せめて、◯コノコにした方が~」


聖様たちがそう言うものの、華澄さんはふるふると首を振る。
そこには絶対の意志が感じられた。
揺るぎ無い意志、これは油断は出来ませんわね!


華澄
「拙者と女胤殿では、経験が違い過ぎます」
「でしたら、多少のリスクはあれども、最高速は速い方が良いと判断致します」
「後は、やりながらで覚えてみるでござるよ」

女胤
「それでは、◯リオサーキット1でスタートですわ!!」


両カートが位置に着き、シグナルが点灯する。
私はひとつ目のシグナル点灯に合わせ、タイミング良くアクセルボタンを押す。


ピィーーー! キュイィンッ!!



「あぁっ! あの野郎大人気なくロケットスタートしやがった!?」

守連
「華澄ちゃん何も知らないのに~」

女胤
「アッハハハハハハッ!! 勝負とは非情!」
「こうなれば、もはやこっちの物ですわ!!」
「そして、この女胤に精神的コントロールミスは無いと思っていただきますわ!!」


早くも既に私の独走体勢。
このコースは既にやり尽くしています、もはや2度と追い付けませんわね!
私はドリフトを駆使し、完璧なコース取りでカーブを曲がって行く。


華澄
「ふむ、成る程…ジャンプをそう使えば良いのでござるな」


隣で華澄さんが、そう呟く。
そして次の瞬間。


ギュギュギュギュギュッ!!



「おおっ! 華澄の奴もうドリフト覚えやがった!!」

守連
「華澄ちゃん、スゴ~イ♪」

女胤
「ふ、たかがにわか仕込みのドリフト!」
「この私の美しいライン取りを見せて差し上げますわ!!」


私は慌てず、華麗にカートをドリフトさせて行く。
そして、ミニターボを発動させ、更に速度を上げる。
忠実にインコースを走り、どんどん差は広がって…


ギャルルルルルッ!!


女胤
「げぇっ! 赤甲羅ー!?」

華澄
「おお…自動で追尾してくれるのですな? それではこれにて失礼を…」


そう言ってスピンした私のカートを一気にドリフトで抜き去って行く華澄さん。
や、やりますわね…この屈辱は返させていただきますわっ。


女胤
(とはいえ、コインを得ただけでは挽回は難しい)


1ラップでは録なアイテムは得られませんでした。
しかし、下の順位なら良いアイテムが来やすいのがこのゲーム!
私は華澄さんを追走しつつ、2ラップ目のアイテムを取る。
手に入れたのは…やった、赤甲羅!!


女胤
「食らいなさい! 半径20メートル赤甲羅をーーー!!」


私の渾身の赤甲羅が華澄さんを襲う。
しかし…


ピュンッ!



「やりやがったー! バナナで直前ガードだーー!!」

守連
「スゴ~イ、あんな使い方もあるんだ~?」


や、やりますわね…華澄さん、赤甲羅が直撃する瞬間にバナナを後方に発射して相殺するとは…
と言うか、気が付いたら追い付く所か突き放されている。
流石に◯ッパの最高速度に、◯ーチ姫で追い付くのは無理ですわ!


華澄
「ふむ、成る程これは面白いですな…確かに、やり甲斐があります♪」


余裕すら持ち初めた華澄さんは笑っていた…ここまでミスがほとんど無い!
本当に初心者なのですかこの人は!?
そして3ラップ目、私のアイテムは…


女胤
(スター!! これなら一気に!?)


私はすぐにアイテムを発動させ、華澄さんに一気に近付いて行く。
そして、ラインを正確に見極め、体当たりで華澄さんをふっ飛ば…


ピョオォンッ!



「今度は羽で回避したー!」

守連
「運が良かったね~♪」


くぅ…!? またしてもかわされるとは…!
ですが、これでも順位は私の方が上!
ファイナルラップでケリをつけて差し上げますわ!!


女胤
(しかしここでコインですか…流石に期待は出来ませんでしたね)


後は華澄さんの取得アイテム次第。
今度は何です!? 赤甲羅、それともスター!?



「キノコか…でも、そんなに差は無いからワンチャンもあるな」

守連
「でも、使い所が難しいね~」


キノコですか…でしたらスターで引き離した分の距離差は絶大!
今のラインを守りさえすれば、そう簡単には抜かせませんわ!
そして最後のS字カーブを私は極限ギリギリのラインで攻める。
完璧ですわ! これなら絶対に…


キュイィンッ!!


女胤
「えっ…!?」


何と華澄さんはキノコの強制加速を使い、S字カーブの内側。
つまり、道では無い道を無理矢理真っ直ぐ、突っ切って行った。
平たく言えば、ショートカットですわね。
そして、悠々と私の前に行き、華澄さんは無事ゴールしました。



「ブラボー! やったぜ華澄!」

守連
「スゴ~イ、もう私より上手いね~♪」

華澄
「いえいえ、運が良かった故」
「勝負は時の運、今回は拙者が勝ちましたが、次をやったら解りませぬ」


勝っても謙虚な華澄さん。
そんな華澄さんの光に隠れ、私は無様に影となってしまった…
ガクリとその場で項垂れ、私は敗者の味を思い知ったのですわ…



………………………



阿須那
「ただいま~…やっ~と着いたわ…」


「おう、お帰り! 初めての夜勤だったけど、大丈夫か?」


まずは聖が玄関に出迎えてくれる。
他の連中もリビングでゲームやってるみたいやな。


阿須那
「まぁ、正直かなり疲れとる…今日は風呂入ったらすぐ寝るわ」


「飯は?」

阿須那
「食って来た」


それだけの会話を交わして、ウチは部屋に戻る。
後は着替え持って風呂や。
明日からも、頑張らなあかんからな…体はしっかり休めて早よ万全にせな!



………………………



阿須那
「ふぅ~さっぱりしたわ…! 聖、コーヒー出して!」


「ああ、それならそこに…ってぇ!?」


コイツは何を考えているのか、バスタオルも巻かず裸で彷徨いていた。
そう言えば、いつも阿須那は知らない間に風呂に入ってたから、出て来た所は見た事無かったな。
つーか! これはマズイっての!!



「アホッ! まずは服着てからにしろ!!」
「裸でリビングに出るな!!」


俺は顔を真っ赤にし、目を逸らしながらそう言った。
そんな俺の反応を見てか、阿須那は薄ら笑う。


阿須那
「何や~? 恥ずかしがる事無いやん♪」
「ウチの裸位、いつでも見せたるで?」

女胤
「お黙りなさい! この、痴女め!!」


阿須那がそのまま俺に近寄ろうとする所、女胤がバスタオルを投げる。
それがしっかり阿須那の顔面に命中し、阿須那は怯んだ。


阿須那
「ぶはっ! いきなり何やねん!?」

女胤
「何やねん!? ではありませんわ!!」
「良いからさっさと服を着なさい!!」
「常識を弁えなさい貴女は!!」


そう言って女胤は阿須那を更衣室に押し込んだ。
やれやれ…とんだ事件だな。
俺はひとりになったリビングで考える。
もう守連は部屋で休んでるか。
華澄もゲーム機を片付けて洗い物に向かったな。



(バイトか…)


俺は華澄が言っていた話を思い出す。
内容は新聞配達で、一応朝のみの配達、時給は1000円位。
勤務時間は朝の2時半~5時半の3時間。
つまり、1日で3000円の収入。
週6でやると言っていたから、月8~9万円の収入か。
ぶっちゃけ、助かるとかそう言うレベルじゃない。
流石にこれなら阿須那の収入と俺の仕送り合わせれば食費はほぼ大丈夫だろう。

だけど華澄にはその分、家事は休んでもらわないとな…
流石に早朝からスタートして夜まで面倒見てもらったら大変過ぎる。
普通は家事やってる人間がやる仕事じゃないからな。



「まっ、アイツの事だからパトロールに近い物なんだろうが」


華澄は前の一件以来、何か事件が無いかを常に気にしていた。
今回のバイトも、ついでに街を見回る為でもあるんだろう。
改めて華澄には頭が下がるな…


阿須那
「何なん? 難しい顔して」

女胤
「何か、心配事でも?」


気が付けば、ふたりが椅子に座っていた。
阿須那も今度は服を着てるな…よしよし。
べ、別に残念な訳じゃ無いんだからね!?



「…華澄が、バイトするって言い出してな」

阿須那
「はぁ!? 何のバイトなん?」

女胤
「新聞配達だそうですよ? 日も明けぬ早朝から出ると言っていましたね」

阿須那
「…大丈夫なん?」


阿須那は相当心配そうにそう聞く。
何だかんだで気にはしてたんだな。
俺はとりあえず笑ってこう言う。



「華澄なら大丈夫さ、家事は元々俺がやってたし、守連も少しなら出来る様になった」
「女胤も掃除や洗濯なら出来るし…料理は、まぁ…ちょっとアレだけど」


そう、女胤の料理は致命的にマズイ。
何故悪いのかよく解らないが、大丈夫そうなのに致命的にマズイのだ。
前のカレーの件もあるし、とりあえず今後女胤は料理をしない様に俺は指示をした。
やる気があるだけじゃダメな典型例なんだろうな。


女胤
「くっ…よもや私にこの様な弱点があろうとは!」


女胤は悔しがるものの、料理のダメさは自覚している様で安心した。
無自覚だと、理解せずに料理をしたがるメシマズは多いからな。


阿須那
「…ほな、昼はウチが見たるわ。仕事のシフト変えるから」


「良いのか? つか、そんなの簡単に出来るのか?」


俺が不安そうに聞くと、阿須那は笑って大丈夫や!と答える。
成る程、自信はあるのか。
なら、そうしてもらおうかな?
何だかんだで、夏休みが終わったら俺も家に常時いれなくなるからな。
阿須那が解決してくれるならその方が良いだろう。


阿須那
「まぁ、任しとき♪ せやけど、いきなりは無理やから、とりあえず明日店長に言うてみるわ」
「いける様なったら、昼はほとんど家におれると思うから」


「分かった、任せるよ」


俺がそう言うと、阿須那は笑って部屋に戻る。
笑ってはいるが、やはり疲れてるのだろう…
背中からは覇気は感じるものの、体が付いて行っていない様にも見える。
それでも、そんな素振りは微塵も見せず、阿須那は2階へと上って行った。
明日も、また疲れて帰って来るだろうな。


女胤
「聖様」


「何だ?」


女胤は急に真剣な眼差しで俺を見て言う。
こう言う時のコイツは、ロクな事を言わない気がするが。


女胤
「私も働きたいでござる」


「華澄の真似してもダメです、しかも似てない」


どうせそんな事だろうと思った。
コイツまで働かなくて良いっての。
既にコイツもそれなりには役に立ってるし、別に稼ぎに出なくても良いと言うのに…


女胤
「ですが、このままでは何故か負けた気がしてならないのです!!」


本音をぶちまけたな。
コイツは何かと勝ち負けにうるさい。
しかも、割とよく負けるから悪循環だ。
直接的なケンカは無いものの、やや火種を巻く性格があるからな。
守連が抑止力になってなけりゃ、今頃どうなってたか…



「まぁ、お前は気にするな…手伝いでも役には立ってるから」

女胤
「さ、聖様…有り難いお言葉!!」
「この女胤、聖様の為に未来永劫尽くしますわ!」
「さぁ、とりあえず今から夜のお相手を…」


「誰がだ? アバズレの姉ちゃんか? それとも大魔人か?」

女胤
「どっちも居ますわよ♪」


「両方いらん!! もう寝るぞ…」


俺はそう言ってさっさと部屋に戻る。
つーかこんな古いネタ、読者解るのか!?



………そして、次の日



女胤
「聖様、もう朝でございますよ?」


「ん~もう朝か?」


俺は女胤に揺さぶられ、意識を覚醒させる。
枕元のスマホを取って時間を確認…朝の7時か、実に健康的だな。
とはいえ、俺はまだダルい頭を抱えながら、渋々起きる。
まぁ、寝起きは悪くない方なんだけどな…


女胤
「もう、阿須那さんが朝食を作ってくれてますので、よろしければどうぞ」


女胤は優しくそう促してくれる。
コイツもネタが絡まなければ気立ての良い女だよな。
せめて、変な勝負癖さえ無ければなぁ~



「分かった、すぐ降りるから部屋を出てくれ」

女胤
「よろしければ、今から朝勃ちも処理して…♪」


そう言って、女胤は人差し指と親指で輪っかを作り、口を開けて口元にかざす。
止めい生々しい!?
色々と危険な年頃なんですから刺激しないで!!



「とりあえず出て行け! 」

女胤
「もう、私でしたら何も気にしませんのに♪」


「俺が気にするわ!! いいから出て行け!!」


俺は強く言うと、女胤は残念そうに部屋を出て行く。
全く、アイツこんなにHENTAI属性だとは。
このままでは本気で俺の童貞がヤバイじゃないか。
いや、俺みたいな年頃の高校生には、むしろそんな展開はエロ本の中の世界なのよ!?



「はぁ…着替えよ」


全く、女胤には困ったもんだな。
何とか役に立ってはいるものの、露骨に俺の童貞を狙ってやがるみたいだし。
俺は大きくため息吐きながら、パジャマから部屋着に着替えた。
そして、部屋から出てリビングに降りる。



………………………




「皆、おはよ~」

守連
「うん、おはよ~♪」


守連はいつもの様に笑顔で挨拶する。
コイツはいつも幸せそうだな…ある意味見ていて幸せになる。
最近は料理も覚え始めているし、家庭の事はそこそこ任せられる様になったな。


阿須那
「おはよっ、よう寝れたか?」


阿須那はエプロン姿でキッチンから出て来る。
今日の朝食は阿須那が作ったのか…華澄がいない所を見ると、寝てるのかな?
流石に朝2時から勤務だからな…皆、気を使って起こさない様にしてくれてるんだろ。



「ああ、少し寝足りないけどな…ふむ、ご飯と焼き鮭と味噌汁か…」
「定番だけど、朝食には良いな♪」


俺はそう言って、椅子に座る。
それを見て、阿須那もエプロンを外して近くのハンガーにかけた。
そして椅子に座って全員を見渡す。


阿須那
「ほな、皆一緒に!」


阿須那がそう言うと、皆一斉に手を顔の前で合わせ。


一同
「いただきまーす!」


こうして、我が家の朝食が始まった。
守連は大盛りのご飯を片手に鮭を美味しく頬張る。
相変わらず良い食いっぷりだな。

阿須那は普通に鮭をご飯に乗せて一緒に食べている。
阿須那はオンザライス派か。

女胤は…いつもの事だが食うのが遅い。
少食、と言うわけではないのだが、どうにもペースが遅い。
おっとり系でもあるまいに、何故なのか?


女胤
「…!」


女胤は鮭の身を細かくほじくり、骨を探していた。
あぁ、コイツそもそも和食が苦手なのか。
箸の正しい持ち方も解って無さそうだしな。



「女胤、箸の持ち方が悪いぞ! こう持て!」

女胤
「は、はいっ! も、申し訳ございません…」


女胤は俺に指摘されて、箸の持ち方を矯正する。
まだまだ慣れて無い感じなのか。
よくよく考えたら、コイツは1番遅れて来てるんだから、解らない事が多いのは仕方ないのか。
今やパーペキの華澄ですら、最初は何も知らなかったんだからな。


女胤
「MMMM~!」


「妙な呻き声をあげるな…鮭の骨なんてたかが知れてるんだから、普通に食いながら確かめろ」


結局、女胤は1番遅くまで食事に時間がかかった。
コイツも真面目にはやってるが、流石にもう少し助けてやった方が良いか?



………………………



女胤
「…はぁ」


「珍しく落ち込んでるな」


朝食後、ひとりリビングで箸を握っている女胤。
その女胤は、今まであまり見た事の無い顔だった。


女胤
「聖様…女胤は、いらない娘ですか?」


「何で、そう思う?」


女胤は事の他、参っている様だった。
いつもならここでふざけてネタでも飛び出してくるかと思ったが、女胤は真面目に話す。


女胤
「私は、何も出来てません…」
「阿須那さんの様に働いて、家庭を支える事も出来なければ、華澄さんの様に、家事の全てを出来るわけでもない」
「ましてや、守連さんの様に聖様を癒す事も出来ていない!」
「私は、聖様に本当に必要なのですか…?」


事の他、重症な様だった。
確かに、個別の評価で見たら、女胤はほとんど何も出来ないのかもしれない。
だけど、コイツだって出来てる事はあるし、それで役にも立っている。
俺はその辺の評価を率直に述べた。



「女胤、お前は十分役に立ってるよ」
「働いて家にいない阿須那よりも、家事は手伝ってくれてるし」
「いつも家事で忙しい華澄よりも、俺の側にいてくれてる」
「守連に比べたら、お前の方がよっぽど家事の呑み込みは出来てるし……まぁ、料理以外は」


最後だけ誉められなかったが、まぁ概ね伝わっただろ。
女胤はそれを聞いて、俺の予想も出来ない反応をした。


女胤
「さ、聖様~~~!!」


「ぐえっ!?」


何と女胤は泣いて俺に抱き付いてきた。
しかも凄まじい力で。
俺はあまりの苦しみに意識を失いそうになるも、女胤の肩を叩いてタップする。
しかし、女胤には伝わらなかった様だ。


女胤
「申し訳ありません! 申し訳ありません! 申し訳ありません!!」
「私、何も出来ないと思ってずっと不安でした!」
「皆さんの様に、聖様のお役に立てていないと不安でした!!」
「ですが、それでも! 聖様の為に何かしたいとずっと思っていたのです!!」
「こんな…こんなダメな私でも、聖様は役に立っていると言ってくれました!!」
「私…ここにいて良いんですよね?」
「聖様の側にいて…良いんですよね?」


最後は力無い台詞だった。
その際に、俺も苦しさから解放され、女胤に抱き締められたまま、俺は女胤の頭の花を撫でてやった。
何気に綺麗だよな…ドレディアの花弁って。
女胤も手入れは欠かしていないのか、その花弁は本当に綺麗だった。



「良いも何も無いだろ…? どうせ、どこにも行く事出来ない癖に」
「お前はここに居りゃ良いよ…それが1番良いんだろ?」
「お前が嫌と言わない限り、俺はお前を置いてやるから…」


俺は少々恥ずかしがりつつも、そう言ってやった。
我ながら恥ずかしい台詞だ。
だけど、コイツにはそれが最大の恩赦の様だった。


女胤
「はいっ…! 私、聖様の側にずっといます!」
「何があっても、誰が何と言おうとも!!」
「聖様だけが、私の愛する人…」


女胤は消え入りそうな声でそう言って、俺を強く抱き締める。
だけど、俺はあえてこう言ってやった。



「違うだろ…? 俺だけじゃない」
「守連や、阿須那、華澄だって大事な家族だ」
「お前は、それすらも愛せないのか?」


俺の言葉に女胤はハッ!?となって俯く。
こういう所なんだよな…コイツの悪い所は。
良くも悪くも、俺が第一…他の奴には目もくれない。
これじゃあ、上手く行く筈がない。


女胤
「…そうですね、やはり私は最低な女の様です」
「何時でも自分本意…聖様の為と言いつつ、自分の欲求を満たす事しか考えていない」
「何と…矮小な」


「ちょっとづつでも直せば良いさ」
「俺に対する思いを、皆にも分けてやれば良い」
「俺が1番ってのも良いけど、皆の事もちゃんと好きになってやれ」
「そうしたら、きっと皆幸せになれると思うから」


俺が最後にそう言うと、女胤は俺から離れて震えながら言葉を繋いだ。
その言葉は今までで1番重く、女胤の成長を表す物だった。


女胤
「はい…好きになってみせます!」
「聖様が愛する皆様を…ですから聖様?」


「何だ?」


俺は出来るだけ優しく聞いてやる。
今なら、大抵の事は聞いてやれる気がするぞ。


女胤
「今から子供作りましょう♪ 私、もう子宮が疼いてて何時でも受精出来ますわ♪」


「こ、こ、この……! この、HENTAI!!」
「もう嫌じゃ~!! 誰かこの人捕まえて!?」


それは、健全な少年が守る最後の扉だった…










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はしていない』



第3話 『ドレディアはダブルでのサポートが割とメイン』


To be continued…

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