第1章 第4話

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:24分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください


「私は予言しよう! 後数日もしない内に、世界は滅びると!!」

守連
「えぇっ!? 私たち死んじゃうの!?」

阿須那
「んなわけあるかいな…いつものネタやろ?」


相変わらず、俺の開幕ネタは変にマジにされるな…
阿須那は流石にその辺、妙に現実的なのか、冷静にツッコンでくれる。
ある意味貴重なツッコミ役だな。



「…今日は仕事だよな?」

阿須那
「せやな、後数分したら用意して出るわ」


俺と阿須那は掛け時計の時間を確認する。
時間は9時前、いつもの時間だな。
阿須那は給料も良いし、外出用の服もあれから自分で別に買ったみたいだ。
ちゃんと俺に気を使ってくれるのが解る。
何だかんだで、阿須那は今の家には無くてはならない存在になってるよな…



「…辛いなら、そう言えよ?」

阿須那
「な、何やいきなり…? 別に、そんな事あらへんて」


阿須那はやや呆れた様にそう言う。
嘘は無さそうだ…まぁ、杞憂だったなら重畳。
万が一でも負担になってるなら、俺はすぐにでも辞めさせるつもりだからな。
だが、そんな俺の思考を読み取ったのか、阿須那は笑ってこう言う。


阿須那
「アンタが心配する必要はあらへんよ…」
「ウチは好きでこの仕事やっとる」
「それで、アンタに恩も返せる…これ以上の、厚待遇は無いわ♪」
「せやから、アンタは一切心配無用!」
「お金の事は、全部ウチに任しとき…」


それだけ言って、阿須那は俺の部屋を出る。
いつもの様に、着替えて仕事に出るのだろう。
阿須那はああ言ってくれるが、内心罪悪感はある。
負担は相当なはずだ、辛くないわけはない。
それでも、阿須那は心配するな、と言ってくれる。
所詮、俺は未成年の子供だ、こういった仕事の話なんてマトモに出来ない。
そんな俺が、阿須那に意見なんてする方がおかしいのだろうか?



(阿須那は、俺よりずっとスゴいよな…)


真にそう思う。
阿須那は、愚痴ひとつ言わず仕事に出ている。
俺への恩とは言うが、俺にそれ程の価値があるのだろうか?
阿須那は、俺を買い被っているんじゃないだろうか?
そんな、マイナス思考の俺は、どれだけ小さい人間なのだろうか…



(流されてる気はするな…)


コンコン…


阿須那が出て行った後、俺ひとりしかいない部屋のドアをノックする音が聞こえる。
わざわざこんな事をするのはひとりしかいない。



「…どうした華澄?」

華澄
『あ…とりあえず掃除が終わりましたので、報告を…』


俺はドア越しに答える。
華澄も、どんどん成長していくな。
掃除を教えた日から1週間、既に華澄は殆どの家事を覚えてくれた。
今や、俺が動かなくても動いてくれる有能さだ。
仕事振りも文句無し…
俺がやるより、華澄は綺麗にやってくれているな。



(俺、このままで良いんだろうか?)


何となく思う。
皆、文句を言う事なくやってくれている。
だが、それは俺に相応しいのだろうか?
皆、俺に尽くしすぎている気がする。



「ありがとな華澄…しばらく休んでて良いから」

華澄
『あ、はい…では、そちらにいてもよろしいでしょうか?』


華澄はそう言って来るが、俺はそれをやんわりと断る。
今日は俺もちょっと外に出たいと思ってる。
考える事は…あるからな。



「悪い、今から出かけるから…留守番、頼めるか?」

華澄
『あ、はい! 畏まりました! 聖殿が不在の間、この華澄にお任せを!!』


そう言って、疑いも無く華澄は答える。
若干、俺の心が痛む。
華澄は、疑いも無く俺を信じてくれる。
俺は、そんなに良い男か?
そんなはず無い…
俺はフツーの高校生で、普通の人間だろ?
何で、こんな美少女たちに無条件で信頼されてんだ?
俺は、この環境自体が異常だと思い始めていた…
そもそも、何でこんな事なってるんだっけ?
俺の部屋には、何があるんだ…?

あれから、どれだけ俺の部屋を調べた所で、答えなんて出なかった。
当たり前だが、そんな事が解るならこんな事には初めからならなかったはずだ。
結局…俺には、何も解らなかった…



………………………




「………」


あれから、俺は宛も無く外を歩いていた。
季節は夏。
外気温は37℃と、絶賛真夏日だ。
ただ、意味も無く俺は外を歩いていた。



「あら…やっと見付けましたわ♪」


「…は?」


俺は思わず反応してしまう。
フツーに考えたら、別の人間への言葉だと思う。
だが、俺はそれを自分への言葉だと思ってしまった。
そして、それが運命的だと、俺は思ってしまったのだ。



「やっぱり、貴方様が私(わたくし)の…王子様♪」


俺は声をかけてきた女性を凝視した。
まず目立ったのは、頭の上に着けているオレンジ色の花。
かなり大きく、下手な帽子位の大きさで、頭部の横幅より大きい。
直径で言うなら、30cm以上あるだろうか?
そして全身黄緑のドレス。
腰でキツく縛ってあるのか、ウェストはかなり細い。
そしてバストは胸元がしっかり見えて強調している。
阿須那程ではないが、充分大きい。
85前後はあると踏む。
そして、この時点で俺は確信していた。
あぁ…またか、と。
だから、俺は頭を抱えながらこう言った…



「…お前は何ポケモンだーーー!?」



………そして数分後。



謎のポケモン女
「やっと見付けました、私の王子様…」


「もっと強い口調でお願いするでござる!!」

謎のポケモン女
「……は?」


思いっきり不振な眼をされる。
チクショウ…ネタに退かれるとは予想外じゃないか。
俺は苦笑いしながらも、真面目に聞く。



「で、今度の記憶喪失ポケモンは何だ? どうせ草タイプだろ?」


俺が投げやりにそう言うと、謎のポケモン女はクスス…と笑う。
その際に長い緑の髪がゆらりと靡き、優雅さを醸し立てる。
見た感じ身長は160cm程度で、阿須那より小さく、守連よりは大きい位
俺がそんな事を考えていると、コイツはこう言う。


謎のポケモン女
「…そこまで解っておられるのであれば、細かい説明はいりませんね?」


「とりあえず、自分の世界に帰ってください」


俺は素で答える。
正直、これ以上増えられても困る。
生活費は問題無いとは言うものの、それは今の人数の話だ。
これ以上増えると言うなら、阿須那が過労死しかねん!
流石にそれはゴメン被る。
なので、俺はやや怖めの表情で睨む。
だが、コイツは口元に右手をかざしてクススと…笑うだけだった。
コノヤロウ…全部解った風な顔しやがって!


謎のポケモン女
「まずは自己紹介を、私はドレディア…この世界での名はまだありません」
「なので、まずは私に名前を名付けてほしいのですが、よろしいでしょうか?」


コイツは勝手にそう言い放つ。
既に俺の家に転がり込む気満々じゃないか…
そして、それを断れない自分を俺は悔やむ。
解ってるんだ…こうなる事は。
だが、俺はひとつだけ聞きたい事があった。



「…ひとつだけ、先に聞かせてくれ」
「お前は…俺の部屋から出てきたのか?」


ドレディア
「…そうですね」
「私も理由は解りかねます…ですが、確かに貴方様の部屋で、私は意識を取り戻しました」
「…勝手に、こんな人間の姿になって」


彼女は自分の腕を見て、やや眼を細める。
内心、恨めしそうだ…こんな形は、別に望んでなかったかの様な…


ドレディア
「ですが、これはこれで好都合」
「折角、人間として貴方と意志疎通が出来るのです、ならばその恩恵は最大限生かすべき!」
「さぁ、私の主よ! 私に相応しい人間としての名を与えてくださいませ!!」


ドレディアは本当に強い口調でそう言う。
何か、コイツは今までの奴らとは違う…
明確に目的を持っている気がする。
コイツはただ流されて俺の前にいるんじゃない。
記憶喪失かどうかは置いておいても、明確にコイツは俺に何かしらの意味を求めてここにいる。
何なんだよホントに…
一体、何でこんな事になってんだ!?


ドレディア
「…申し訳ございません」


「…え?」


突然の謝罪。
俺は意味が解らず、呆然としていた。
そんな俺の顔を見て、ドレディアは悲しそうな顔で言葉を続ける。


ドレディア
「…私の存在が、そこまで貴方様を苦しめるとは思っていませんでした」
「もう既に、私と同じ様な存在が貴方様の元にいるのですね?」
「それを予測出来なかったのは、間違いなく私の不始末」
「貴方様への負担を考えられなかった、私の不出来」


そう言って、胸に手を当て、自分を戒める様に語る。
何なんだ、コイツ…?
何で、そこまで初対面の俺にそんな言葉を言える!?
おかしいだろ…記憶喪失で、初対面で、何でそんなに気遣われる!?
俺は…一体何なんだ?
俺に、何か知らない記憶でもあるのか!?
俺がコイツ等に懐かれるのは、何かの理由があるのか!?
だが、そんな事をいくら考えても、答えなど出ない。
結局、流されるだけだ…コイツを受け入れる事で。



「…お前も、何も知らないんだよな?」

ドレディア
「…はい」


しっかりとそう答えた。
ここまでの態度を見ても、やや苦しそうな顔をしていたしな。
本当は、疑問に思っているのだ。
守連たちだって本当はそうだろう。

本当は記憶喪失に不安はあるはずなのだ。
それでも、俺の側にいる事が安心だと確信出来る。
俺に何故そんなフェロモンがあるのかは解らない。
ただ、コイツ等は共通して俺に引き寄せられてる。
そして、全てが俺の部屋から現れる。
もしかしたら、まだ増える可能性もあるのか!?
そう考えると、頭が痛くなってきた。
これだけ増えたら体裁とかどうこう言えるレベルじゃなくなる。
ある程度、割り切って考えないとな…
俺はそう開き直る事で、少しリラックスした。
解らない事を考え続けるのは無駄も良い所だ。
今は解る事を片付けていこう。



「…良いよ、もうなるようになれだ」
「お前の名前は、女胤(なたね)…それで良いか?」


ドレディア
「女胤…はい、問題はありません」
「それが貴方様の名付けてくれた名なら、私はそう名乗りましょう」


チクショウ、そんな反応されたらネタ振った方が良かった様に思えるじゃないか…
だが、今回ばかりはそんな余裕も無かった…



「…チクショウ、生活費がまた苦しくなりそうだな」

女胤
「それなら心配はありませんわ」
「主に対して負担は決しておかけしません!」


女胤は根拠が有るの無いのか分からないが、そう言い切る。
コイツも働くのは何とかなるのか、確信めいた表情だった。
嫌な予感の方がするが…


女胤
「ご安心を!! 必ず貴方様を助けてご覧にいれます!!」


「はぁ~まぁ、良いや…とりあえず行く所は無いんだろ?」
「余り人目に付かないようにしろよ?」

女胤
「ふふ、問題はありません。この姿を見られた所で、変わった趣味だと思われるだけでしょうから」


コイツは、ある意味確信犯的な言葉を放つ。
一体、どこまで記憶喪失なのか…
俺はこれ以上ツッコム気も起きず、無言で歩き始めた。
それを見て女胤は余裕の笑みで付いて来る。
チクショウ…今回はシリアスに寄せすぎたな。
はっきり言って、ネタを振る余裕が全く無かった…
だからこそ! ここで俺はネタを振ろう!!



「ぶっ殺すと心の中で思ったのなら! 既に行動は終わっているんだ!!」


とは言うものの、本気でやったら殺されるのは俺なんだがな!
ぶっ殺した、なら使っても良い!



………そして帰宅後。




「紹介しよう、ボナンザだ!」

女胤
「全然違うじゃありませんのー!?」


いきなりの恒例ネタに激しくツッコマれる。
中々の鋭さだ、貴重な逸材だな。
この激しさは阿須那にも無い物だ。
俺はそれなりに満足してうんうんと唸った。


阿須那
「で、このボナンザはんは何なん?」
「草タイプっぽいけど、ボナンザなんてポケモン聞いた事あらへんで?」

女胤
「まず、ボナンザから離れてもらえます!?」
「私はドレディア! 主より与えられし真名は『女胤』ですわ!!」


女胤は阿須那のマジレスにマジギレして強く名乗った。
うむ、やはりこれ位のネタを振らんと調子が出んな!
最近はちょっとネタが少なかったからな。


華澄
「それで、その…ドレディアマナハナタネデスワさんは、何ポケモンなのですか?」
「ややこし過ぎる名前でござるな…?」

女胤
「まずあなたのクサレ脳ミソをブチまけて差し上げましょうか!?
「ドレディアがポケモン名! 名前が女胤ですわ!!」

華澄
「ほう、そうでしたか…それは失礼」
「拙者は華澄と申します…よろしくでござる」
「女胤ですわ殿」

女胤
「いい加減にしなさい!! ですわは口調ですわ!」
「女胤だけで良いのです!!」


女胤は息を切らしながら、ツッコミ続ける。
華澄は特に表情を変える事はなく、成る程…と覚え直していた。
真面目過ぎるのも考え物だな。

阿須那に至ってはもはや聞き流してコーヒー(ホット)を飲んでいた。
ちなみに今は夕方で、全員リビングに集合している。
俺と女胤以外は椅子に座ってくつろいでいた。
阿須那も今日は早上がりだったのか、既に帰宅済みだった様だし。


守連
「ねぇ、聖さん…」


「あん? どうしたペット1号」

守連
「ペットじゃないよ~」


俺がボケると守連は泣きそうになりながらツッコム。
うむ、やはりツッコミは勢いだな!



「で、何だ守連? 飯はもうちょっと待て」

守連
「お腹は空いてるけど違うよ~」
「ナタネデさんはどこの部屋に泊めるの?」
「各ひとりづつで、もう空き部屋無いよ?」

女胤
「とりあえず、サラリと人の名前を間違えるのはおよしなさい!!」


守連は素でボケて女胤にツッコマれる。
だが、守連は特に気にした風も無く、俺の言葉を待っていた。
うーむ、守連がそんな事を把握していたとは。
俺の見てない所でちゃんと行動してるって事か。
ペット1号改に格上げしてやらんとな。



「じゃあ、部屋割り変えるか…相部屋でも良いかお前ら?」

華澄
「異存無いでござる」

阿須那
「ウチはひとりが良い…仕事あるからリズム違うし」

守連
「私は大丈夫~♪」

女胤
「無論、聖様の命であれば!」


阿須那以外は問題無し、と。
まぁ、確かに皆リズムはバラバラだからなぁ~
その辺も考慮して考えるか。



「なら、阿須那は今のままで」

阿須那
「りょ~」


阿須那は気の抜けた返事で答える。
それなりに疲れてるんだろうな…
ちゃんとその辺も見てやらんとな。



「華澄も今の部屋で良いだろ、お前も家事で朝早いし」

華澄
「心得たでござる」


華澄はいつも朝6時には起きて皆の朝食を準備してくれてる。
既に我が家のオカン状態だ。
なので、華澄にはなるべく自由な時間を与えたいし、ひとり部屋の方が良いだろう。


守連
「じゃあ、私とナタネデさんが相部屋だね~」

女胤
「だから女胤!!」


もはやツッコミしかやってない女胤。
守連と一緒で胃に穴が開かないか心配だ。
当の守連はニコニコ笑顔で女胤を見ていた。
コイツはコイツで楽しそうだな。


守連
「じゃあ私、女胤さんの布団用意しておくね♪」

女胤
「あら、それなら私も行きますわ」
「これから一緒に住む以上、自分の事は自分でやります」

守連
「じゃあ、一緒に行こ~♪」


そう言って守連は女胤と一緒に2階へと上がって行った。
やれやれ、守連も意外にしっかりする所はしてるんだな…


阿須那
「…で、大丈夫なん?」


「何がだ? 生活費なら別口で考えるからお前は気にするなよ」
「お前は自分に出来る配分でやれ」


俺がそう言ってやると、阿須那はそれ以上何も言わなかった。
表情からは特に何も読み取れない。
とりあえず、それで良い…という感じか。


華澄
「では、拙者は買い物に行くでござる」
「今夜はひとり増えたゆえ、追加で買って来るでござるよ」


「おう、悪いな」

華澄
「お気になさらず…聖殿が決めた事なら、拙者は従うでござるよ」


華澄はそう笑って言ってくれる。
どうして…とは今は聞けなかった。
何かがある…それは間違いない。
だが、それを考えるのは後で良い。
今は、コイツ等をしっかりと見てやらないとな…
なる様になる以上、ちゃんと現実を見ていかないと。


華澄
「それでは、すぐに行って来るでござる!」

阿須那
「あ、華澄ー!? 外出用の服、新しく買うてあるからそれ着て行きー!!」


そう言って阿須那は、既に出て行こうとしていた華澄を大声で引き止め、戻って来た華澄に大きめの紙袋を差し出す。
相変わらず気が利くな…でも、どんな服なんだろ?


華澄
「ほう、それではお言葉に甘えて…」


「…Tシャツにジーンズか、意外にも手堅く攻めたな」


華澄が袋から出したのは、青のTシャツに黒のジーンズだった。
素材は伸縮に強いタイプで、華澄の様に動き回るタイプには丁度良いだろうな。
で、さらに出てきたのは…


華澄
「こ、これは…?」


「…下着だな、ブラジャーにパンツ」


それは見事なまでの下着だった。
我ながらこれは流石に直視し辛い。
華澄用なのでパンツは小さいサイズだが、ブラジャーは思いっ切りデカイ奴だ。
アンバランスさが際立つな…


阿須那
「とりあえず、サイズは目測で選んだから、着心地悪かったら言うてや?」

華澄
「はい…それでは」


パサ…



「って、バカ者ォ!?」
「こんな所で脱ぐな!! 部屋に行け! 後、胸隠せ!!」

華澄
「あ…は、はいぃっ!? これは、し…失礼致しましたぁぁっ!!」


そう言って華澄は服を持ってダカダカダカ!と2階へ向かって行った。
かなり狼狽えてたな…華澄は何気に恥ずかしがるタイプか…
しかし、良い物を見せてもらった…脳裏に刻んでおこう。


阿須那
「ふっふ~ん♪ ホンマは生着替え見たかったんやろ?」
「何なら、内緒でウチのを見るか?」


「我が生涯に一片の悔い無し!!」
「ってアホか!! 流石に精神的にヤバイわ!?」
「仮にも未成年だぞ俺!」
「見たいのは否定しないがっ」


我ながら苦しいか。
だが、阿須那は解ってて言っているのか、妖艶な笑みを浮かべて俺の側に寄ってくる。
そして耳元で一言。


阿須那
「ウチなら何時でも構へんで? 部屋の鍵は開けとくさかい、その気になったらいつでも来ぃ…」


それだけ言って阿須那も2階へと向かって行った。
ひとりリビングに残された俺は脱力し…



「俺、次の戦いに勝ったら童貞捨てるんだ…」
「って、アホか…んな美味い話があるかっ」
「どうせ、からかってるだけだろ…」


いかんせん、あの阿須那だからな。
俺の事は弟みたいな物と思われてるかもしれんし、遊んでるだけだろう。
俺はそう思うと、やれやれ…と呟いて冷蔵庫に向かった。
とりあえず飲み物だ。



………………………



華澄
「聖殿」


「お、似合ってるじゃないか♪」

華澄
「そ、そうでありますか…? 何分初めて着る服ゆえ、どうとも」


華澄は新しい服を身に付け、軽く手足を動かしてみせた。
サイズも大丈夫そうだ。
代名詞のマフラーも装着済みで、違和感は無いな。
しっかし、本当にゲッコウガ要素が皆無だな。
人間になった事で肌の色は肌色だし、マフラー取ったら人間にしか見えん。
しかし、そこはちゃんとポケモンなのか、華澄も実は舌がしっかりと伸びる事を最近知った。
まぁ、蛙モデルだからな…初見は少々焦ったが。



「で、下着は大丈夫だったか?」

華澄
「あ、はい! ほぼ、問題無く」
「…それでは、夕飯の時間が遅くなってしまうので、早速行って来るであります!」


「財布も持ったか?」

華澄
「はい、抜かり無く! では、これにて!!」


そう言って華澄はニンジャの様に颯爽と買い物に向かった。
冷静に考えても、アイツはゲッコウガだからな。
身体能力は相当高そうだ。
さて、俺は俺で部屋に戻りますかね…



………………………




「………」


俺はふと阿須那の部屋の前で立ち尽くす。
いやいやいや! 流石に無いって!!


守連
「どうかしたの~? そこは阿須那ちゃんの部屋だよ?」


「いや、童貞を捨てるかどうかを真剣に悩んでいた」

女胤
「童貞…? あの雌狐! 何を吹き込んだ!?」


俺の何気ないボケを受けて、女胤は怒りを露に阿須那の部屋に乗り込もうとする。
俺は流石にヤバイと思って女胤を羽交い締めにして止める事にした。
だが、女胤の力は俺の腕力を超えようとしている。
意外に力あるなオイ!?
流石はポケモンと言う所か。



「どうどうどう! まぁ、誤解だから落ち着け」


実際には誤解でもないのだが。
女胤は俺の言葉を聞いて、少しながらも落ち着いた様だった。


女胤
「…全く、この家の風紀はどうなっているのか」


「つか、ボケに対してマジレスするな」
「お前、少しツッコミが過ぎるぞ?」


女胤のツッコミはやや過剰っぽくもある。
ある程度は必要な物の、ここまでツッコミ続けると不安にもなる。
女胤は他の連中とちゃんとやっていけるのだろうか?


女胤
「も、申し訳ありません…言葉が過ぎた様です」
「ですが、これはあくまでも主を思っての事!」
「私は、聖様の為に…」


「あ~解った解った!!」
「お前がそういう気持ちなのは予想出来たよ…」
「だけどな、ここでは皆仲良くしろ!」
「俺はお前たちが喧嘩する所なんて見たくないんだからな…?」

守連
「うんうん♪ そうだよね~皆仲良くの方が良いよね~♪」


守連は笑顔でそう言う。
その顔を見てか、女胤もため息をひとつ吐いて納得した様だった。


女胤
「申し訳ありません、言葉が過ぎた様です…ですが」

阿須那
「何なん? 人の部屋の前でそないにダベって~」


流石に気になったのか、阿須那は部屋から出て来てそう言った。
女胤は少々罰が悪そうに阿須那を見るが。


女胤
「…阿須那さん? 貴女、聖様に妙な言葉を吹き込んだ様ですわね?」

阿須那
「はぁ…? 妙な言葉?」
「別にええやん…コミュニケーションちゅう奴や」


女胤の言葉に対して、阿須那は鬱陶しそうに答える。
ヤバイな…これ一触即発なんじゃ…?


女胤
「…まぁ、言いたい事は沢山ありますが、私もまだ新参者」
「ここはあえて退いておきますわ…ですが!」
「聖様を、たぶらかすのは今後止めていただきます!!」

阿須那
「あ~ハイハイ…僻むのは勝手やけどな~」
「ウチと聖の仲を羨むなら、もっとはっきりしいや~?」
「あんさんよりかは信頼もあるはずやからなぁ~?」


阿須那は勝ち誇った様にそう言う。
その顔を流石に見逃せなかったのか、女胤はワナワナと震えていた。
ヤバイ…これ、何かひと悶着ある?
だが、俺がそんな心配に答えるかの様に、たったひとつの言葉が場を支配した。


守連
「阿須那ちゃん、女胤ちゃん?」

阿須那
「!? な、何…?」

女胤
「守連さん、何か?」


そう、言葉を放ったのは守連だった。
だが、その言葉は事の他重い。
女胤だけは気付いていない様だが、守連は笑っている。
笑っているが、怒っているのだ。
そう、怒っている。
普段ほんわかで、人畜無害な守連が、笑いながら怒っていた。
俺は、内心震える。
もしかして、守連は…?


守連
「…阿須那ちゃん、女胤ちゃん?」
「ふたりは、仲良く出来ないの?」


それは、凄まじいプレッシャーだった。
阿須那も、女胤も、その空気を感じ取った様で、空気が張り詰めたのが解る。
絶対的な存在感。
普段、ペット同然の守連から、殺気に近いプレッシャーをふたりに放っていた。


阿須那
「い、いや別に…仲良く出来ひん訳や無いよ?」

女胤
「そ、そうですわ! 私たちは普通に話し合いを…」


苦しい言い訳に感じた。
コイツらは明らかに守連のプレッシャーに押し負けている。
この場にいる俺も寒気を感じる程だ。
守連が笑顔で放つ重圧は、洒落にならない物だった。


守連
「じゃあ、仲良く出来る?」

阿須那
「そ、そりゃあ…勿論」

女胤
「か、簡単な事ですわ!!」


ふたりは守連のプレッシャーに負けてそう言う。
そして、ふたりで目配せをして、互いに示し合わせたかの様に仲良さそうな握手を交わした。
それを見て守連も満足したのか、後はいつもの口調で。


守連
「うんうん♪ やっぱり仲良しが1番だよね~」
「阿須那ちゃんも、女胤ちゃんも仲良くね?」


最後は普通の笑顔だった。
だが阿須那と女胤は空笑い。
まさか、守連は…この家のボス?
俺ですら、ただ笑い飛ばす事は出来そうになかった。
そして、俺は後に気付く事になる。
守連に秘められた。空恐ろしい性能を……










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はしていない』



第4話 『ドレディアにはサブウェポンが無さすぎる…』


第1章 『ポケモンが人間になっちゃった』




…To be continued

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。