第1章 第3話

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読了時間目安:26分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください


「…夏だ。そして紛れもなく、今は夏休みだ…!」

守連
「暑~い…」

阿須那
「だらしないなぁ…しゃきっとせいや!」


ちなみに、俺の部屋で冷房はかけていない。
かけられないのではない、かけたくないたけだ。
電気代だって馬鹿にならないからな…四六時中かけてたらすぐに請求が跳ね上がる。



「ちっ…今年は特に暑いな」


去年はここまで暑くなかった気がする。
俺は団扇を片手に、半袖半ズボンの格好をして耐えていたが、想像以上にキツイ。
今年は雨もほとんど振らなかったからな…



「つーか、まずお前が暑苦しい! 何でこの季節にコートなんだよ!?」

阿須那
「え~? こんなん普通やん」


絶対に違う。
室内気温は38度…窓開けっぱなしで換気をしててもこれなのだから異常な暑さだ。
俺は完全に開け放たれている窓から上体を出し、余りにも熱く日照っている太陽に晒される。



「ぐ…日差しが身体に突き刺さる」


俺は10秒と持たずに身体を室内に引っ込めた。
流石にキツイ…


阿須那
「そろそろ時間か…」


部屋の壁に掛けられている時計を見て、阿須那は読んでいた雑誌を床に置く。
そして九本の尻尾をたなびかせ、部屋を出て行った。
着替えてから仕事に行くのだろう。



(思ったより、問題は無いのか…)


あれから2週間、阿須那は特に問題も無く仕事を続けている。
むしろ、素の素材が良い為か、たちまちに売れっ娘となり、この辺りでは軽く有名人になっていたのだ。



(世の中解らん…)


俺はそう思いながら団扇を扇いだ。
温い風だがそれでも意味はある。
とはいえ、気のせいか…急に気温が下がった気がする。


守連
「はう…喉乾いた」


「もう飲み物も切れたか…しゃあねぇな」


俺は空になった最後のペットボトルを見ると、重い腰を上げる。
そして団扇をベッドに放り投げ、外に買い出しに出る事にした。
守連はとにかく従順で、俺には反抗もほとんどしない。
強いて言うなら、食にこだわりはある様で、ある程度の量は求めてくる様になった。
まぁ、ワガママみたいなもんだが、それ位ならまだ可愛い物だわな…



(そういえば、アイツも着替えさせれば外出は大丈夫なのか?)


とは思うものの、阿須那と違って守連は安心できん。
とりあえず何にでも興味は持つし、ただの腹ペコキャラに収まらない何かがアイツにはある!…はず。

とまぁ、そう言うわけで当面守連を外に出す気は無い。
まぁ、それでも外部に漏れてる会話ぐらいは流石に聞かれてるだろうけど…



(その位なら流石に問題無いだろ)


つーか、その辺まで気になってたら、もうストレス死するわ!
と言うわけで、俺はダルい体を動かして歩き出した…



………………………




「何だぁ? こんなに外涼しかったっけ?」


俺は外に出た途端、そう呟いた。
さっきまでとは明らかに違う気温。
暑苦しいどころか、汗が風に晒されて一瞬震えた程だった。



「…まぁ、いいか」


涼しい事に越した事はない。
今の内に近場のコンビニで飲み物を買おう。



………………………



ウィィン…


店員
「ありがとうございました~」


俺はコンビニで2Lの炭酸飲料を2本、後1Lサイズのアイスも購入。
これでもうしばらくは大丈夫だろう。
この時期にアイスはもはや必需品だ。
もっとも、守連が本気を出せば、こんなモンはあっという間に無くなるが。
まぁ、その辺は守連も自重してくれる様になったし、とりあえずは安心している。
守連だって、ちゃんと成長しているんだから。



「さてと、後は帰って昼飯の献立でも考えるか」


阿須那は向こうで食ってくるし、当面は守連の事だけだな。
とはいえ、アレがよく食うから侮れん。
本当にあの体でどこまで食うのやら…?
それでも出るとこは出ないのだから世の中不憫な物だ。
…その分、アイツは筋肉ある方だからそっちに回ってるのかもしれんが。



(まぁ、阿須那のお陰で食費はむしろ余裕な位だがな…)


アイツ、初任給で下手な社員並に給料貰ってやがったみたいだからな…
やはり、アレも風俗に近いからか?
まぁ、水商売なのは間違ってないと思うが。
アイツの場合は、週6フルタイムで働いてるからな…
実質社員みたいなもんか…バイトならフツーそこまで詰めんし。

と、そんな事を考えながら帰ろうとすると、何故か横には妙な格好をした少女が…


少女
「………」

「………」


何故か、妙な格好の少女に睨まれていた。
いや、よく見ると妙というレベルではない。
いくらこの暑い季節とはいえ、仮にも小さな少女が青い水着(?)で外を彷徨くとは…
しかも、巨乳だと!? 身長は140cm前後に見えるが、そのあまりに目立つバストは規格外の大きさだった。
首にはピンクのマフラーをしており、口元は隠れて見えない。
だが、そんな空気を切り裂く様な鋭い眼が俺を睨み付けている。
ショートヘアよりもセミロング寄りな水色の髪だが、前髪が瞼の近くまで被っており、半分眼が隠れていた。
そして、足元まで到達しようかと言うポニーテールが印象に残る。



(うわぁ~何か面倒そう…)


つか、間違いなく面倒だろ。
俺は無言のまま目を背け、見なかった事にして歩き始めた。



「………」
少女
「………」


カツカツカツ…タッタッタッ



「……」
少女
「……」


俺は嫌な予感をさせつつも、チラリと背後を見る。
い、る…!?
何故つけられる?
一体何が目的なんだ?
まさか、俺の命を狙う暗殺者だろうか?
少なくとも、あんな目立ちすぎる暗殺者は暗殺に向いていないと思うが。
しかも素人にバレてたら意味ねぇだろ…
って…我ながら意味が解らねぇな。
だが、この状況はよろしくない。
なので、俺は即断する。



「よしっ!」

少女
「!?」


ダダダダダダダダッ!


俺は意を決して走り出す。
幸いここからならまだ家まで距離がある。
所詮は少女、俺の足に勝てるわけはない!
そう思い、俺は大人気ない程の全力疾走で走り去った。



………………………




「ぜぇぜぇ! チクショウ…!」


我ながら無謀だった。
こんな気温の中、スポーツに励むのは愚の骨頂だ。
しかも、俺には計5リットルと言う枷がついている。
そして中身は炭酸…どうなっているかは想像もしたくない。

とはいえ、後ろを見ても誰もいないかった。
何とかまけたようだな。
俺は、はぁ~…と大きく息を吐き、コンビニの袋を片手に家の鍵を開けた。



「ただいま~」

守連
「あ、お帰り~速かったね♪」


守連がいつもの様に玄関で出迎えてくれる。何気にこう言ってもらえるのは嬉しい物なんだ。
ひとりの時は帰っても無音だったからな。



(それだけ、寂しい生活してたって事か)


そういう意味ではコイツ等には割と感謝してる。
まだ1ヶ月経たない位だけど、ドタバタとしながらもそれなり楽しくやれてるとは思ってるからな。
コイツ等も問題はそんなに無いみたいだし、今の所は不満も言ってこない。


守連
「ところで、何でそんなに疲れてるの?」


「ああ…ちょっとスピードの向こう側にな…」


俺は右手を額に翳し、格好付けながらそう言った。
ふ、ちょっと厨二臭かったかな?


少女
「ふむ、流石は殿方…人でありながら見事な健脚でござった」


「ざぁけぇんなぁっ!!」


俺は思わず叫ぶ。
それもそのはず、気が付けばまいたはずの少女が俺の家で待っていたのだ。
一体どういうトリックだ!?


守連
「どうかしたの?」

少女
「何やら気が立っているご様子、差し支えなければ、拙者がご相談に…」


「その前にテメェは何者だ!?」


俺は全力で少女を指差して叫ぶ。
あえて初対面ではツッコまなかったが、コイツもまさしく守連たちと同類だ!
そう、野生の獣に近い臭い…コイツも間違いなくポケモンだ!!

ただ、守連や阿須那と違って見た目で何かがすぐに解らない…
青いビキニ型の水着に、ピンクのマフラー。
髪は青白くほぼ水色、そして腰まで伸びるポニーテール…
背は守連(150cm)以下で、かなり細身の体。
しかし、問題はそこでは無い!
こいつの恐ろしい所は、この子供とも言える風貌でありながら、阿須那をも凌ぐ程の山を2つ聳えさせている!
そう、例えるならまさしく伝説の山…!
恐ろしい…俺には全く想像もつかなかったモノ!
俺はその山を凝視し、額に右手を翳してうんうんと頷いた。


少女
「何やら、不穏な空気を感じるでござるが…」
「しかし、名乗らぬのはやはり失礼でありましょう!」
「…とはいえ、拙者には自分の事に関する記憶がほとんど無い故、何と名乗れば良いのか…」


ロリ巨乳の少女はそう唸りながら顔をしかめていた。
真面目な性格の様だが、詰まる所コイツも他と同じかっ。
って事はまさか…



「おい、守連! まさかコイツも俺の部屋にいたのか!?」

守連
「え? 私、今まで1階のリビングでテレビ見てたから解らなかったけど…」
「何か気が付いたらいたみたいだね」


守連はこの事態に何の危機感も抱かないまま、あっけらかんとしていた。
俺は少なくとも鍵は閉めてたし、守連にも釘を指しておいた程だ。
となると、家にどうやって入…



「しまったぁ!! 部屋の窓を開けっぱなしにしていたのかぁ!?」


つか、それ以外に原因が浮かばない。
コイツがどこから現れたか解らんが、少なくとも窓から出入りして俺を待ち伏せていたのだろう。



「…ん? 俺を、待ち伏せ…?」


俺は巨乳少女を見て考える。
そもそも、何で俺を待ち伏せていたんだ?



「…とりあえずひとつ答えろ、お前は何で俺を待ち伏せた?」


自分でも馬鹿らしい位、真剣な口調だった。
だが、この質問の意味は大きい。
下手をすれば今後のトラブルにも関わるだろう。
だが、俺の望む答えは、少女の口からは帰って来なかった…


巨乳少女
「…も、申し訳ございませぬ」


それは、純粋な謝罪だった。
彼女の鋭い瞳の奥には、明確な謝罪が含まれていた。
俺はそれを聞いて脱力する。
そう、コイツも結局記憶喪失なのだ…
恐らく、明確に俺を狙った(?)理由など、特に無いのだろう。


巨乳少女
「拙者…気が付いたら、ここの2階の部屋におりました」
「部屋には誰もおらず、窓が空いていたので、そこから外に…」
「しかし、どこを見れども記憶に無い光景だけ」
「自分の記憶すら曖昧な中、ふと貴方の姿を拝見いたしました…」
「そして、貴方の姿を見て、拙者は何故か心が震えました!」
「理由は解りませぬ…ただ、貴方だけが、拙者の拠り所になると…そう思ったのです!」


彼女は俯きながらも、握り拳を作ってそう独白する。
その声からは不安と安心が混在していた。
コイツはコイツなりにすがる思いだったのだろう。
そこに悪意なんて物は無い。
俺は信用しても良いと思った。

そして、解った事もある…やはりコイツは俺の部屋から出て来たんだ。
何でなんだ? 俺の部屋には何かあるのか!?
誰も現れた瞬間は見ていない。
なのに、何でそう都合良く誰もいない時にコイツ等は現れる!?
一体、何が起こってるんだ…?



(一体…何故俺の部屋なんだ…?)


考えれば考える程馬鹿らしい。
こんな非現実が既に目の前にあるのに。
俺は急に冷静になって、大きなため息を吐いた。
そして、いい加減腕がダルくなっていたので、荷物をリビングに持って行く。

守連と巨乳少女も後をちょこちょこ付いて来た。
ピカチュウバージョンかっ!
いやHGSSでも出来たな…
何でこの要素復活してくれないのか…好きな機能だったのに。
(その後、レッツゴーで復活しました!!)



………………………




「ほれ、ちっと溶けかけてるが、食え」


俺はそう言って、守連と巨乳少女をリビングの椅子に座らせ、買ってきたばかりのアイスを皿に盛ってやった。
すると、それを見た守連はぱぁ…と笑顔を見せ。


守連
「わぁ~今日はチョコバニラだ~♪」

巨乳少女
「こ、これは拙者にも…?」


「当たり前だろ…どうせお前もコイツと同じで、行く宛無しだろ?」
「だったらもうなる様になれだ」
「多分、何とかなんだろ…」


俺は適当にそう言って椅子に座り、アイスを食い始める。
溶けかけてるものの、その温度は十分俺の頭を冷やしてくれた。
守連も幸せそうに頬張っている。
巨乳少女はやや躊躇いながらも、スプーンを使ってアイスを掬い、震える手でそれを口に運んだ。


巨乳少女
「!! …美味しい」

守連
「うんうん、 だよね~♪」


巨乳少女は余程美味しかったのか、頬を赤らめながら涙目に微笑んでいる。
そんな顔を見て、守連も一緒になって笑った。
俺は、そんなふたりを見て思った事がある。



(受け入れてみよう)


俺の部屋に何があるのかは解らない。
だけどコイツ等は決して悪気がある訳じゃないみたいだ。
むしろ、被害者なのかもしれない。
だったら、俺は少しでもコイツ等の支えになってやろう。
きっと、これからもトラブルだらけなんだろうが…
それでも、何とかやっていってみせるさ!



「それで、結局お前は何のポケモンだ?」
「勘ではゲッコウガ臭いが…」

少女
「おお、見事に当たっておりまする…流石の眼力」
「拙者、確かにゲッコウガでございます」


やはりか…マフラーの形状からもしやと思ったが
元々ゲッコウガは人型に近い体型だからな。
ピンと来る要素がそこしか無かった。
って言うか、あのマフラーって本家では確か…



(って、アイス食ってるの見たら、解るわな)


本来、ゲッコウガのマフラーに見えるのは、いわゆる『舌』なのだが、コイツの食事シーンを見たら舌ではないのは解った。
だが、逆に気になってしまう事が…



「ちなみに、そのマフラー…何で出来てるんだ?」

ゲッコウガ
「…? これでありますか?」
「ふむぅ…何なのでしょうか?」


ゲッコウガは自分のマフラーを触りながらそう疑問に思う。
ふむ、やはり記憶喪失もあって、自分の服装に関しても解らない事だらけと言うことか。



「…まぁ、それは良い」
「で、お前の名前をどうするかだな…」

ゲッコウガ
「えっ? 拙者の…名前?」


ゲッコウガはポカン…と口を開けてそう言った。
どうせコイツも家で匿うんだ、名前がいるだろうからな。
しかし…



「…マキシマム仮面かアダン位しか候補が無いな」


ゲッコウガ
「あ、いや…その、拙者、別に…何でも、構わないので…」


コノヤロウ…露骨に嫌そうな顔するなよ!
目茶苦茶罪悪感だらけじゃねぇか…
気のせいか、守連がガッツポーズを取っている…ヤロウ、根に持ってやがったな!?



「…ああ、分かった! お前の名前は華澄(かすみ)だ!!」
「…それで良いか?」


ゲッコウガ
「あ…は、はいっ!!」
「そ、それで構わないであります!」
「華澄…拙者の、名前…華澄!」


ゲッコウガは俯きながら、握り拳を固めて自分に与えられた名前を噛み締めていた。
まるで、新たな使命を受けて、自分を鼓舞する様に。
そして、改めて俺の顔を見据え、鋭い瞳をキッと見せてこう言う。


華澄
「この華澄! 例え命に代えましても、貴方を御守りしてみせます!!」


…と、胸に手を当てて片膝を着き、非常に恥ずかしい台詞を言うのだった。
いや、予想はしていたけど、やっぱコイツ…



(やっぱ、ニンジャじゃねーか!!)


しかし、それも忍びポケモンのサガかっ!
とりあえず、こうして俺の家には更に居候が増えたのだった…



………そして数日後。




「スモウパワーには参ったな!!」

華澄
「スモウ、でござるか? それは一体…?」


開幕の俺のネタにマジで考える華澄。
いや、これは色々オープニング的なアレだから、マジに返されても困るのだが。


ミーンミンミン!!


外ではやかましい位に増殖しているセミの鳴き声。
室内気温は絶賛39℃!
もはや溶けてマグマッグになろうかという温度だ。
って、そこまで暑いわきゃ無いんだが…



「阿須那は今日は休みだっけ?」

阿須那
「せやで、ここんとこ働き詰めやったからなぁ~」


そう言って相変わらずのコートを着たまま、汗もかかずに答える阿須那。
やっぱ、炎タイプとかの恩恵みたいな物は有るんだろうな。
守連だって電気使えるし、華澄も水を吐ける。
阿須那の炎はまだ見た事無いが、確実に使えるだろう。
まぁ、現実的に火炎放射とかされても即お巡りな訳だが…



「お前は逆にコート着てないとダメなタイプなのか?」


いつも気にはなっていたので、いっそ聞いてみる事にした。
今更っちゃあ今更だが。
すると、阿須那はうーんと唸りながら、顔を上に上げ…


阿須那
「ん~何でやろね? ウチもよう解らん」
「でも、何か最初っから着てたのもあってか、着とかなあかんみたいな、そんな気がするねん」


何だそりゃ…?と、俺は呟いて考えてみる。
本能的な物だろうか?
まぁ、本人は暑い訳じゃないし良いっちゃ良いんだが…
別に外出する時は着替えてるし、あのコートも洗濯中は着てないしな。



「はぁ~こう言う時、プールとかにでも行きたいものだが」


俺は自分の部屋に居座っている3人を見渡す。
うん、無理!
華澄はまだしも、他ふたりは水着姿で誤魔化すのがキツい。
つーか、下手に見られて俺が変態認定されても困る。
とはいえ、俺ひとりで行くのは流石に気が引けるしな。
と言うわけで却下だ。


華澄
「プールでござるか…確かに拙者も水浴びをしたいでござるな~」


確かに、華澄は蛙モデルのポケモンだからな。
本来水中の方が適正は高かろう。
今でもほぼビキニ状態の華澄だが、暑さはそれなりに辛いのか、汗はしっかりかいていた。
ちなみに、華澄のマフラーは調べた所、何故か保冷剤の様な物で出来てるらしく、冷蔵庫で冷やしておくと首に巻いた時、涼しくなると言う素晴らしい物らしい。
とはいえ、流石にこの暑さではそんなに保たない様だが…


華澄
「はぁ~~~」


ビュゥゥゥゥ…


華澄は温くなってきたのか、マフラーに息を吹き掛けていた。
いや、アレはただの息じゃないな。
隣にいる俺でも解る位の冷気だった。
コイツ、『凍える風』なんて覚えてやがるのか…?
チクショウ、素早さが下がるじゃないか。



(…で、あからさまにしんどそうなのはコイツか…)

守連
「あう~暑いよ~」
「やっぱり、こんな暑さが続いたらダレるよ~」


そう言いながらベッドでぐで~っとへばっている守連。
全身汗だくで、まぁ俺と変わらん位の状態の様だ。
暑いのは仕方ないからな…さて、どうするか?


阿須那
「そんなに暑いなら、クーラー点けたらええやん」
「ウチも次の給料近いし、電気代なら今月は割と余裕やと思うで?」


「確かにな、お前には大変感謝しているよ」
「しゃあない! 今日ばかりは流石に解禁だ!!」


俺はそう言って遂に封印を解く事にした。
使わぬと決めてた故に、コンセントすら外しておいたエアコンを俺は遂に起動させる。


ブゥゥゥゥゥゥ…


エアコン特有の機械音がし、次第に風が吹き出される。
久し振りだし、冷えるには少し時間がかかるかな…
ちなみに、フィルターはちゃんと掃除しているので臭いはそこまで問題無い。
その後、俺は全開だった窓を締め切り、鍵をかける。
そしてエアコンの設定を26度に設定し、しばらく落ち着いた。



………………………



守連
「あ~♪ 快適~~~」


守連は御満悦の様で、頬を緩ませてそのまま俺のベッドでゴロゴロしていた。
コイツ…段々珍獣化していってる気がするな。



「お前、食って寝て食って寝てばっかだが、その内ライチュウに進化するぞ?」

守連
「えっ! 嘘!? 石使わなくても進化出来るの!?」


「バカ者、真に受けるなっ」
「モノの例えだ、ライチュウみたく太るぞ、的な…」

阿須那
「って、別にライチュウはそこまで太くないやん…」


ごもっともで…
やっぱアニメ版のマチスのライチュウがインパクト強かったからなぁ~
実際にはライチュウの方がピカチュウより素早さも上だし、能力で負けてるとこ無いからな。
(なお、相棒補正があると余裕でピカチュウが抜き去る模様)


華澄
「………」


「どうした華澄? 何コップとにらめっこしてんだ?」


気が付くと、冷たい緑茶の入ったコップを華澄が凝視していた。
で、俺がそう言ってやると、華澄はキッと俺を見て言葉を放つ。
その顔は真剣そのもので、俺もちょっとドキリとした。
別にときめいたわけではない。
ただ、華澄の細く鋭い瞳はマジに睨まれるとチト怖い…


華澄
「聖殿…拙者も、やはり働いて聖殿の役に立ちたいでござる!」


「何でまた急に?」


まだ華澄が来て1週間程だが、そんなに思い詰めてた様には感じなかったのに…
それでも、こう言い出したって事は、思う所があったって所か?


華澄
「阿須那殿が多大な貢献をしている中、拙者だけが何もせず、ただ食わせて貰っているなど…」


だってさ、ねぇ聞いてる守連さん!?
あ・な・た・だけよ!? 食っちゃ寝食っちゃ寝してるだけの人!!
と、俺は無言の圧力を守連に与えるが、ベッドで安らかに眠っている等の本人は聞いてすらいない様だった。
うぐぅ…解ってたけどね!
それに、守連は筋トレしてるみたいだし、そもそも太る要素が全く無い。
小さな体だが、そこそこに威圧的な筋肉だからな。



「…まぁ、気持ちは解るがな」
「無理にお前が稼ぎに出る事はないんだぞ?」

華澄
「ですが…っ!」


反論しようとする華澄に俺は手をかざして制止する。
そして俺は言葉を続けた。



「まぁ、聞け…良いか? 現状、阿須那のお陰で金銭的な問題は殆ど無い」
「衣・食・住、基本的な部分は不足してないんだ」
「つまり、阿須那が音をあげない限り、お前が無理に働く事は無い」

阿須那
「ちなみに、ウチの事は心配あらへんよ?」
「仕事は楽しくやってるさかい、苦に思ってる事はあらへん」
「むしろ、楽しく仕事できて、お金もようけ貰える」
「あんな有難い仕事、中々無いわ♪」


阿須那は、今時の仕事が続かない若者に聞かせてあげたい台詞をサラッと言い放った。
やはり仕事を好きになれるのは1番良いんだろうな…
ずっと付き合っていく物なら尚更だろう。
阿須那はその辺も問題無いみたいだし、これからも頼りにさせてもらえそうだ。


華澄
「…ですが、拙者は」


「だから、外に出て働く事はないんだって!」
「お前は家で働けば良いじゃんか」


俺がそう言うと、華澄はキョトン…としてしまった。
意味が解ってないな。



「だから、家事でも炊事でも好きにやりゃあ良い」
「普段は俺が好きでやってるだけで、手伝ってくれるならこっちからお願いしたい位なんだから!」

華澄
「あ…は、はい!!」


一瞬戸惑いながらも、華澄は笑顔でハッキリと返事をする。
真面目ではあるものの、こういう所で頭が回らないのも華澄らしいと言うべきなのか…
とはいえ、とりあえず華澄には色々教えてやらんとな。



………………………




「とりあえず、いきなり料理とかは難易度高いだろうから、まずは掃除だな」

華澄
「は、はい! い、一体どうすれば!?」


「まぁ、そう固くなるな」
「俺がいつもやってる様にやりゃ良い」


俺はそう言って、吸引力の変わらないただひとつの掃除機を持ち、スイッチを入れる。
掃除機特有の駆動音が鳴り、俺は軽く床を掃除していく。



「こんな感じだ、これで全部屋の床を掃除するんだ」

華澄
「ぜ、全部屋でありますか…!」


そりゃそうだ。俺は定期的にひとりでやってるからな。
華澄がこれ位でも覚えてくれりゃあ、もっと自由な時間が増やせるってもんだ。


華澄
「おおお…っ!」


華澄は掃除機の性能に感動したのか、唸りながら床を丁寧に掃除していった。
まぁ、流石に床だけならそんな時間もかからんだろ。
俺はそのまま華澄に掃除を任せ、キッチンに向かった。



………………………




「ふんふんふーんっと♪」


俺は軽く和蕎麦を水で洗っていた。
今日のお昼はざる蕎麦だ!
人数多い時はコスパも良いからな。
ちゃっちゃと出来る所もポイントだ。
さて、華澄の掃除が終わる頃を見計らって出すとしますかな。
俺はそう思い、洗い終わった蕎麦の水をしっかり切り、それを一旦冷蔵庫に仕舞った。

そして、30分程して華澄の掃除は終わり、12時過ぎ位に俺たちは昼食を取る事にした。



………………………



華澄
「成程…これはそんなに簡単に出来るのですな」


「そっ、袋から出してサッと水洗いするだけ」
「必要なら冷蔵庫で冷やしてから食べれば良いし」


俺たちは食事を採りながらそう会話する。
真面目な華澄は蕎麦を食うのも忘れて、真剣に聞いて覚えていた。
実際、華澄は俺が言った事はキチンと覚えているし、忘れる事も無い。
従順と言えばアレだが、少々窮屈にも感じる所は若干ある。
だが、それもコイツの個性だし俺はどうこう言うつもりは無かった。


守連
「はむ~~~♪ 冷たくて美味しい~♪」

阿須那
「確かにっ、こういうのもええなぁ~」


ふたりも味に文句は無い様だった。
って言っても、安物の10円蕎麦に蕎麦つゆかけただけなんだが…


華澄
「ざる蕎麦…うむ、覚えましたっ」


華澄もそう言って蕎麦をすすり始めた。
味も気に入ったのか、笑顔で平らげていく。
俺もその顔に満足して楽しく昼食を取った。
これで華澄もしっかり役に立ってくれるだろうな…
俺はそんな華澄を見て嬉しくなる。
今まではひとりで全部家事はこなしてたから、それなりキツくなってきてたんだよな…
そこに華澄が家事を手伝ってくれるなら、こんなに助かる事は無い。
何だで、家事ってのは戦場だとマジに思うからな…










『とりあえず、彼女いない歴16年の俺がポケモン女と日常を過ごす夢を見た。だが、後悔はしていない』



第3話 『最終鬼畜全部メインウェポン』


…To be continued

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