その⑩ 大炎の魔狐 マフォクシー

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《《グラグラレスの町》》

ニンフィア(な、なに…? 町の雰囲気が、なんだか…おかしい……?)

ピカチュウ「……! お、…お前は、その……“お前”、なのか……?」

ニンフィア「えぇ、私よピカチュウ。それより、この町でなにがあったの?」

ナエトル「……あのポケモンは」

ピカチュウ「見る方が早いだろう。……あれを見ろ」

ニンフィア「あっ、あれは……二匹のポケモンが、交戦してる……。一匹は、ドーブル。もう一匹は、え、マフォクシー? もしかして──」

ゴーリキー「やぁ、嬢ちゃん。無事に帰って来れたようだな。あぁそうだ。あれは“炎司”マフォクシー。“大炎の魔狐”の異名を持つ……恐るべき女だ」

ニンフィア(『ナナホシー』……昔は二人で一人だった。それが、今では……こうして対立してしまうことになるなんて……)

ドーブル「……久しぶりですね、マフォクシー」

マフォクシー「ゴホン。ふん、久しぶりと言われる筋合いもないな。さて、どちらだ? 先に裏切ったのは……」

ドーブル「あなたが金稼ぎに走り、粗雑な作品を量産するようになったからですよ」

ナエトル「あの有名なナナホシーに、そんな過去が……」

ドーブル「道を踏み外したかつての盟友を打ち倒すため……。奇遇なことにこの世界に来ていたあなたを知り。私は、ここで得た新たなる仲間たちと……ここまで、旅をして来たんだっ!!」

マフォクシー「そうだな。今こそ……決着を付ける時だ」

マフォクシー「……ふんっ!!」


ボオォォ…。


ゴーリキー「!」


マフォクシーは、二匹の周囲に炎を渦巻いた。


俺「こ、これでは……」

ニンフィア「私たちが援助をすることはできない……!!」

ドーブル「これで、私たち以外が邪魔たてすることは不可能…。あくまで、二匹のみの戦いに拘るわけですか。
せめてもの礼儀です。かつて、私たちの好んでいた…少年漫画風に申しましょう」


(……)


ドーブル「『……受けて立ってやるっ!!』」


周囲に炎が燃え盛る中、二匹の戦いは始まった。


ドーブル「……みずてっぽうっ!!」シュシュッ

マフォクシー「……ひのこっ!!」ボオォッ


ボシュウッ……。


二匹の攻撃が、相殺し合う。


ピカチュウ「まずは小手調べか」

ニンフィア「互いの力量を、確かめあってるようにも見えるね」

ドーブル「フフ、枝の炎を飛ばすとは……」

マフォクシー「お前こそ、筆を用いているではないか。今でも似た物同士なのだな、私たちは」

ドーブル「あぁ、だからこそ……私たちは、良いパートナーだったのかもしれませんね。できれば、過去形では言いたくなどなかったです」

マフォクシー「生き物は、過去には決して戻れないのだ。だからこそ、過去に固執し続けるお前が酷く滑稽に見える」

ドーブル「過去があるからこそ、現在があるのです。そんなことも忘れてしまったあなたは……とても醜く映りますね」


ドーブル「……フンッ!!」バゴォッ

ドーブルは岩を具現化し、マフォクシーに突き出した。

『ストーンエッジ』である。

マフォクシー「炎よ、我を包み込めっ!!」ボオォッ

ドーブル「!」


シュウゥ……。


マフォクシーの纏った炎は……岩を、蒸発させた。


マフォクシー「炎を自在に操るからこそ、“大炎の魔狐”なのだ」

ドーブル「肩書は、伊達ではないというわけですか。中々いいものですね。この追い詰められた感覚。“戦ってる”と言うべき感覚です」

マフォクシー「頭と口は、相変わらずよく回るようだ。さて、ならば……この攻撃には、どう対処する……?」


ボオォォ……。


ピカチュウ「うぉ、なんだあれはっ!?」

ニンフィア「狐の形をした、炎だね。なんか、見てて美しい……」

ゴーリキー「だが、その美しさの中には……。漆黒なる、殺意が潜んでいる……」

マフォクシー「この炎は、意志を持っていてな……。どこまでも、どこまでも……お前を追い詰める。喰らえっ!!」


炎狐『グルルゥワアァァッ!!』


ニンフィア「ド、ドーブル…危ないっ!!」


ゴオォォ……。


『炎狐』が、ドーブルの身体を激しく包み込んだ。


ニンフィア「ドーブルッ!!?」


炎狐『ぐ、ぐるがあぁぁぁぁ~っ!!』


ピカチュウ「な、なんだ……炎狐が、消え去って行くぞ……?」

ドーブル「あなたの目は、節穴ですか? 私は、『みずの○ごろも』を身に纏っていた。これは、いわば水の塊です。だから……炎狐は消滅したのですよ」

ピカチュウ「だから、ゲーム違うっての」

ドーブル「例えあなたが何度でも炎を生み出そうと、これがある限り……あなたは私には敵わない」

マフォクシー「……ガッカリ、だな」

ドーブル「なにが、です?」

マフォクシー「本当に節穴だったのは、どっちの方だったのか……それをお前は、思い知ることになるだろう。」


──その時で、あった。


炎狐『ぐるがあぁぁぁぁ~っ!!』ボコォッ


ドーブル「!」


突如、地中より……もう一匹の炎狐が現れた。


ピカチュウ「馬鹿な! 炎狐は、確かに消滅したはずだっ!!」

ゴーリキー「まさか……。もしや……!!」

マフォクシー「私は、炎狐が一匹だと言った覚えはない。もう一匹密かに生み出し、地中に潜めておいたのだ」ボオォッ

ドーブル「し、しまっ…。」


ドーブル(……グウゥッ!!)


炎狐が、ドーブルの身体にモロに被弾した。


マフォクシー「かつての仲間として、敬意を払おう。ここまでの旅路、実にご苦労なことであった。仲間たちとは……大いに楽しめたか?」

ドーブル「……マフォクシー……いや、マコ。あなたは、悪夢に取り憑かれてしまった」

マフォクシー「……なにが、言いたい?」

ピカチュウ「マコ……。それが、本名か」

ドーブル「マコ。あなたと漫画を描いていた頃のこと……覚えていますか?」

マフォクシー「フン。そんな昔のことなど……」

ドーブル「…最初は、上手くいかなかったですね。ストーリーを考えることも、絵を描くことも、ああまで難しいとは思わなかった」

マフォクシー「……」

ドーブル「原稿料だって折半で、食べることも難しかった。怒られましたね、色々と。『お前たちの漫画はメチャクチャだ!』とか。『君たち、このままだと打ち切りだよ』とか」

マフォクシー「──昔のこと、だ」

ドーブル「私は、今でも昨日のことのようにはっきり覚えていますよ。でも……あの頃が、一番楽しかったように思えます」

マフォクシー「……なぜ?」

ドーブル「あの頃……。試行錯誤していた頃……精一杯足掻いていた頃……模索していた頃……。あの頃が、一番自分たちの描きたいように描くことができましたからね」

マフォクシー「私にとっては、苦痛でしかなかった」

ドーブル「フフ、やっぱり忘れてないじゃないですか。嘘つきですね……ホントに」

マフォクシー「!」

ドーブル「話を続けましょうか。その後……デビュー作『闘将!炎狐女!!』が、見事にヒットすることになる。まぁ、最初の頃は順調でした。それなりの知名度も得て、生活も安定しましたしね」

ニンフィア「あー、知ってるよ。炎狐女。昔、古本屋で買いました。各地を人助けの旅に周る……マフォクシーの話です」

ピカチュウ「新品で買え」

ドーブル「そこからですよ、あなたが変わってしまったのは……。“ヒット”が“大ヒット”に変わり、“それなり”の知名度が“物凄い”知名度になってからの話です」

マフォクシー「私が、変わった……」

ドーブル「アニメ化。ゲーム化。映画化。一躍、私たちは時の人となった。ブームが廃れる気配も、全く見えてこなかった」

ニンフィア「凄かったよねー、あの時の人気は」

ドーブル「そう、あなたは“名声”に、溺れてしまった。明らかに、あなたには漫画を描くことに対するやる気が見られなくなってしまった。原作も、粗末なものになってしまった」

マフォクシー「……」

ドーブル「これではいけない、と思った。だから、私はあなたとコンビを解散したのです。しかし、あなたの目は……覚めることはなかった」

ニンフィア「ナナホシーが解散したのは……。そんな理由があったからなのね……」

マフォクシー「……だから、なんだと言うのだ。“金”は、人を狂わす。確かにその通りだ。だから……漫画描写でもそうだが、貧乏人は大抵聖人君子に描かれ、金持ちはいつも“ワルモノ”にされる」

ドーブル「漫画を描くことの面白さ。それを、もう一度あなたに知ってもらいたいのです」

マフォクシー「戯れ言を……。漫画家など、所詮は数ある中の職業の一つに過ぎない。漫画家になったのは、そう……“たまたま”だ」

ドーブル「…たまたまでしょうか。本当に……そうだったのでしょうか。」

マフォクシー「……お前の昔話に付き合ってやるのもここまでだ」


ボォォォ──


ゴーリキー「この技は……炎司の最終奥義……“だいもんじ”だ!!」

マフォクシー「さよならだ、ドーブル。来世があるとしたら…次は、異なる形で巡り会えればいいな」

ドーブル「私は……絵描きという仕事に誇りを持っています。あなたもそうだったはずです……“生きた証”を永遠に残そうという、同士としてですね」

マフォクシー「……さらばだ」

ドーブル(……マコ)


ボ オ ォ ォ ォ ォ … 。


マフォクシーのだいもんじが、ドーブルを包み込んだ。


ニンフィア「ド、ドーブル……。……ドーブルウゥゥゥゥ~ッ!!!」

ゴーリキー「クッ……。俺たちが、不甲斐ないばかりに……」

マフォクシー「安らかに、眠れ──」

炎が、消失していく。


──だが。


マフォクシー「……!」

ピカチュウ「なっ……。ド、ドーブルの……」


跡地に、ドーブルの焼死体は存在しなかったのである。


ドーブル「……フフ」


ドーブルは、生きていた。

……彼女の身体は、清廉潔白の如く透き通っていたのだ。


マフォクシー「お前自身が……。……“水”になることで…炎を耐え抜いた……。しかし、そんなことが」

ドーブル「私は、天に祈った。……自分の冥福ではなく、彼女の目が覚めることを。彼女の悪夢が、晴れることを。……その瞬間、私の身体は変幻していたのです」

ドーブル(そして、正真正銘この攻撃こそが、私の全てを傾けた総攻撃になるでしょう)

ピカチュウ「ドーブル……よかった……だが、なにをする気だ?」

ドーブル「…ふんっ!!」トピュッ


ドーブルは、巨大な水塊へと姿を変貌させた。


ドーブル「この攻撃……通用するともそうでなくとも……。これで、勝負が決まる……!!」

マフォクシー(ドーブル……)

マフォクシーは、自身の周囲に炎のバリアーを生み出す。

ドーブル「う、うおぉぉっ!!」バッ


そしてドーブルは空中に舞い、狙いを……マフォクシーに定めた。


ドオォォ…。


ドーブルの身体は急加速し、その姿は一筋の光となる。


ピカチュウ「ド、ドーブル……。マフォクシーに突撃し、全てを終わらせるつもりだ……」

ゴーリキー「この勝負……。どちらが勝つんだあっ!?」



ボ ゴ オ ォ ォ ォ ォ ン … 。



炎と水。 

それらが、互いに衝突し合うのだ。


ピカチュウ「う、うわあぁぁぁっ!!」ドサァッ


その衝撃により、一同は吹き飛ばされてしまう。


ピカチュウ「うぅ……た、立っているのは……」


……立って、いたのは。


マフォクシー「……」

ニンフィア「マフォクシーが……立って……」


ドサァ…。


ニンフィア「……え?」


マフォクシーは、そのまま倒れ込んでしまった。


ドーブル「……」ハァ、ハァ


一方、ドーブルは重症を負いながらも……。
マフォクシーの前へと、立ち尽くしていた。


渦巻いていた炎は消えてしまっている。



ドーブルはどうやら、“勝利”、したのだ。



マフォクシー「……ルト」


ピカチュウ「る、ると……?」

ドーブル「マ、マコ……。今、確かに……私の、名前を……?」

マフォクシー「う、うわぁぁぁぁぁぁん! 自分、馬鹿だから…それで、ちょっと言葉知ってるから……。似合わない気取った口調なんて、しちゃったりして……!!」

ドーブル「……マコ!」

ピカチュウ「ハ、ハァ……。これが、コイツの本当の喋り方なのか……?」

マフォクシー「うん、私……わかってたのっ! 自分が名声とお金に溺れて……どんどん駄目になっていっちゃったって!! 好きだった漫画も、心から愛することができなくなっちゃったんだって!!!」

ドーブル「……あなた、本当は……」

マフォクシー「あなたからコンビ解消の話をされて、私……もうどうでもよくなっちゃった! でもって、この世界に来た後……十八司って言うおかしな集団に入って悪いこといっぱいすれば……自分のことを捨てられるって思ったのっ!!」

ゴーリキー「でも、実際は……そうではなかったと言うわけだな」

ドーブル「……悪行を心から楽しむことができるのは、それこそ一部の本当に性根の腐った、救いようのないどうしようもない輩だけです。大抵は、その後強烈な懺悔感に苛まれることになる」

マフォクシー「いつの間にか、“炎司”なんて呼ばれちゃってて……慕ってくれるポケモンたちも増えちゃって……。もう、引き返せなかったの……」

ドーブル「そう、あなたは優しすぎた。それが、あなた自身を苦しめることになったのでしょう」

ニンフィア「なぜ、マフォクシーさんはグラグラレスに来たの?」

マフォクシー「十八司の最高権力者……。“水司”にして…“創蛙”である、あのポケモンが……。『次にあのポケモンたちはマグマランドに向かう、因縁のあるお前が片付けろ』って言うから……」

俺「創蛙……」

マフォクシー「……そこで、私……少し“期待”してたの」

ニンフィア「期待……?」

マフォクシー「ルト。あなたなら、あなただったら……こんなダメダメな私を倒して終止符を打ってくれるって……。そして、そんな私を見事に打ち砕いてくれた……ルトの、バカバカァ~ッ!!」ポコポコ

ドーブル「ちょっ、マコ……痛いっ………痛いって!!」

ピカチュウ「おいおい、負けた側に怒られてるぞ」

マフォクシー「私はもう……十八司を脱退する。真っ向な方法でこの世界から帰還を図る。……ルト、私……稼いだお金……一体何に使ってたと思う?」

ドーブル「え、な、なにって……」

マフォクシー「……漫画専門学校への、資金援助よ」

ドーブル「!」

マフォクシー「私はもう無理かもしれないけど、これからの漫画界……後進の育成のために、私が力になれたらって……」

ドーブル「い、いや、マコ。無理じゃない、無理じゃないんだ!!」

マフォクシー「え……?」

ドーブル「その思いがあれば、まだ引き返せる……取り戻せるっ! マコ、また二人で…、『ナナホシー』…組まない? マコとルト、二人で一人なんだから……」

マフォクシー「ルト、あなた……。こんな私に、堕落した私に……もう一度、チャンスをくれるというの……?」

ニンフィア「私も、またナナホシーの漫画読みたいしね。読者として、応援してるよっ!!」

マフォクシー「み、皆……。こんなに酷いこと、したのに……本当に、ありがとう……」


“炎司”マフォクシー ~和解~

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