その⑧ 破壊の化身 サザンドラ

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~夕食~

ピカチュウ「……このボルシチ、冷めきってないか?」

ドーブル「そこが売りなんだそうですよ。『カチコチに冷えた身体に、キンキンに冷めた料理をプレゼント!』ってのがキャッチコピーだそうです」

ピカチュウ「この宿がガラガラな理由がわかるような気がするよ」

ゴーリキー「ぶぇっくしょん! はぁっくしょん!!」

イーブイ「どうしたの」

ゴーリキー「ここの大浴場、全部水風呂さぁ! こんなんじゃ温まる訳ねぇよ!!」

サンドパン「俺は地面タイプだから、水は嫌いだな」

ピカチュウ「ここの住民は寒さに弱いのか強いのかわからんくなってきた」

ゴーリキー「おい、もう寝ようぜ。ピカチュウ……一緒に枕投げしないか?」

ピカチュウ「お前は修学旅行の学生か」


****


《《でもって 男部屋》》


ゴーリキー「ほらほら、どうしたピカチュウゥ!!」ボィーン

ピカチュウ「ちょっ、おま…ずるいぞ……腕が四本あるなんてっ!!」

ゴーリキー「アシ○ラマンなんか六本あるんだぞ。それに比べたら安い安い。ほれほれぇっ!!」ボィーン

ピカチュウ「おい、痛えぞこの枕! あっ、てめぇ…石が入ってんじゃねぇかっ!!」ボィーン

ゴーリキー「おい、てめぇこそ……なんじゃこりゃあっ!? 鉄パイプじゃねぇか、鉄パイプ!! よぉ~し、だったらこっちは──」ボィーン

ピカチュウ「うわっ、お前……なにを入れようとしてんだっ!?」

ゴーリキー「ハハハ、前に手に入れた、ヒードランの卵入りのカプセルボールさ。落としたら……地獄が待ってるぞぉ~~」ボィーン

ピカチュウ「ばか、やめろ、俺は虫が大嫌いなんだっ!!」

ゴーリキー「ハハ、可愛い可愛い。それにヒードランは虫じゃないさぁ~~」ボィーン

ピカチュウ「おい、ちょっと…落ちるって……マジヤバイって! う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」


****


《《一方 女部屋》》


サンドパン「あの男部屋のノリにはついていけない。ここでやっかいさせてもらうことにする」

イーブイ(……問題ないのかなぁ?)

サンドパン「……今日は……ありがとうな」

イーブイ「え、なにが?」

サンドパン「アンタ、わざとなのか天然なのか理解しかねるな。今日の十八司との戦いだよ。俺はただ、あのピカチュウに報いたいという一心で、希望だけはいっちょ前に捨てることができなかった」

ドーブル「……あなたは、一人ではなにもできなかったのかもしれない。だけど、勝利を収めることができた。私たちが居たから。力を合わせて団結したから」

イーブイ「……あ、私も、ピカチュウのことが好きだよ」

サンドパン「……」

イーブイ「ピカチュウは、私を護ろうとしてくれる。こんな、どうしようもない私を。ポケモンが好きということぐらいしか取り柄のない、勉強も運動もからっきしなこの私を」

ドーブル「……ポケモンそのものに成り果てた今、思うことがあります。ポケモンという存在は、本来出会うことのない筈の人たちを、結びつけてくれる。対戦や交換だけではなく、今のようにも……」

イーブイ「すごいね……ポケモンって。私たちが居なくなった後も、もしかしてポケモンは生き続けるのかなぁ」

ドーブル「始まりがあるからこそ、終わりもあります。いつかは、私たちの元からポケモンはいなくなるのかもしれませんね。だけど……」

イーブイ「?」

ドーブル「私たちは、まぁ……過程はともかく、ポケモンを通じてこうして知り合った訳です。友だちになれたのです。それは、恐らく永遠の形の一種と呼べるでしょう。」

イーブイ「なんか、難しい……」

ドーブル「私たちが朽ち果てた後も、歴史はそれを紡いでいく。私たちは、確かに存在していた。私がイラストを描くのも、その“生きた証”を残したいというのが……理由の一つなのかもしれません」

サンドパン「生きた証……か」

ドーブル「その“生きた証”を生み出す同士の一人に、かつて十八司の“炎司”が居ました。『ナナホシー』……以前話しましたよね。彼女の目を覚まさせてやることも、私が今回の旅へと参加した目的の一つです」

サンドパン「俺は、皆と行動できて楽しい。目的はそれぞれ違うけれども、俺は罪滅ぼしのためだが……。皆……互いの目的を成就できるように、願おう。頑張っていこう」

ドーブル「さて、もう時間も時間です。男部屋の方はさっきカサカサとか言う音や悲鳴が聞こえてきましたが……気にしないでおきましょう。では、お休みなさい……」zzZ

イーブイ「はっやっ!」

サンドパン「俺も寝るか、あっ、言っておくが……。どうやら俺は、寝相がものすご~~~っ……く、悪いみたいなんだ」

イーブイ「え」

サンドパン「安心しろ。寝相で尻を触ったりはしないよ。まぁ、くれぐれも注意しておくことだ。じゃあ、お休み」

イーブイ「え、え、ちょっと」


──パチ。


辺り一面が、闇に染まった。


****


──翌日


ピカチュウ「おい、どうした……イーブイ。身体中、傷だらけじゃないか。目のクマも凄いことになってるし」

イーブイ「あ、あぁ……ちょっとね………」ゲッソリ

サンドパン「女にとって睡眠不足は敵と聞く。ちゃんと寝ないと、頭も働かないしな」

イーブイ(アンタのせいで眠れなかったんでしょうが……)

ゴーリキー「さて、朝飯はバイキング形式のようだが……。もう冷えた飯など食いたくはないからな。さっさと遺跡に行くこととするか」

サンドパン「……」

ドーブル「……ええ、そうですね」

ピカチュウ「……あぁ、わかってるさ」


イーブイ(……皆の顔つきが、変わった…………)


そうだよね、怖いよね。
私は知らないけど、そのレジロックのようなポケモンと戦うことになるだなんてさ……。


****



《《氷魂遺跡》》



ゴーリキー「……割りと、近かったな」

ドーブル「見たところ、造られてから相当の年月が経っているようですね。壮観です、いたるところが冷気により凍りついていますし」

イーブイ(ソ~ッ……)ペタッ

イーブイ「うわっ、冷たい……」

ドーブル「あまりむやみに触れない方が良いでしょう。皮膚が張り付きますよ」

ピカチュウ「この先に、『雪のオルゴール』が……。そして──」

ゴーリキー「“護り主”さんが、どっしりと待ち構えているという訳だ。挑み生きて帰って来た者は、居ないというな」

イーブイ「……」ゴクリ

サンドパン「あの時ばかりは不覚を取ったが……。今は、お前たちが居る。もう、負けるわけにはいかないな」

ピカチュウ「ああ、じゃあ……乗り込むぞっ!!」ダダッ


恐怖を乗り越え、一同は遺跡内へと侵入する。



《《遺跡内部》》



ドーブル(……妙、ですね)

ピカチュウ「どうしたんだ、ドーブル」

ドーブル「いや。なんでしょうか……なにか……。根本的な違和感を……感じませんか?」

イーブイ「いわかん?」

ピカチュウ「ぽんかんみたいなアクセントで言うなよ」

ゴーリキー「どういうことだ?」

ドーブル「恐らく、最深部には明確なる敵が潜んでいる筈なのです。それにしては、なんだか……。『殺気』とでも、言えば良いのでしょうか……。そういったものが、全く感じられないのです」

ピカチュウ「殺気、ね……」

ゴーリキー「殺気はさっきも感じなかったな」

ピカチュウ「ただでさえ寒いのに、そーいうのは止めた方が良いと思います」


そして、最深部へと到着した一同だが……。


ゴーリキー「……なんだ? お前」

イーブイ「あ、あなたはっ……!!」


──最深部には、二匹のポケモンが居たのだ。


「じゃきぃ……」


一匹は、ポケモン『レジアイス』。
そして。


サザンドラ「……お前たちか」


あの、サザンドラであった……。


サザンドラ「最早、会うこともないと思っていたが……久しいな」

イーブイ「あ、あなた……タウンでハリテヤマさんを襲ったポケモンの……仲間……。わ、悪い奴なんでしょっ!? し……知っているのよぉっ!!」

サザンドラ「そう解釈するのは勝手だが。悪い奴か……フフ……。傍から見れば……確かに、“悪い奴”だな」


──その時。


カラマネロ「カラカラ」ボワンッ

一同「!!」

あのカラマネロが、またもや突如として現れた。

カラマネロ「おやおや、サザンドラさん……これはまた、お久しぶりですねぇ」

ピカチュウ「お、お前も来るだなんて。もうメチャクチャだ。しかしお前……知っているのか……? アイツのことを……」

カラマネロ「カラカラ……旧知の仲ですよ、本当にね。ねぇ……」

サザンドラ「揃いも揃い、変わらなさ過ぎること……この上ない。ねちっこいな、お前」

カラマネロ「始まりは、あなたと“あのお方”と、この私でしょう。そりゃあ……ここまでねちっこくもなれますねぇ」

イーブイ「な、なんのことを話してるの……?」

カラマネロ「直にわかりますよ。……えっと、イブさんでしたっけ」

イーブイ「!?」


な、なんで。私の、本名を……。


イーブイ(ピカチュウたち以外には、話していないはずなのに……)


カラマネロ「カラカラ……なにも、わからないでしょうね。それでいい、それでいいんです」

イーブイ「あなた、いや、あなたたち……一体、何者なの……?」

カラマネロ「さて。旧友とも話せましたし。私はお暇するとしましょうか」

イーブイ「しっ……質問に応えてよぉっ!!」

カラマネロ「……では」ボワンッ

イーブイ「あ、ちょっと待ちなさいよ!!」

カラマネロは、消え去って行った。


レジアイス『レジィ~ッ……』


サザンドラ「あぁ、全く………だ」

イーブイ「え……?」

「お前たちと、こうして再び巡り会えたのだ。これも、なにかの“縁”だと思うことにしよう。……ハアァァァ──」


コオォォ……。


ゴーリキー「な、なんだ……? この、遺跡が……」

サンドパン「震えて、いるようだ……。凄い……気だ……」


『『レジィィィィィィィィ~ッ!!!!』』


“敵”であると認識し、レジアイスはサザンドラへ襲いかかる。

サザンドラ「……あやつに魂を吹き込まれし、木偶人形よ。今一度、俺がキサマを打ち倒し……“使命”なるものから開放してやろう……」


サザンドラ「「……ふんっ!!」」


ピカチュウ「!」



ド  ゴ  オ  ォ  ォ  ッ  …  !  !



ピカチュウ「う、うおぉぉっ……!?」


ビリビリ……。


サザンドラの攻撃により生じた衝撃波が、一同を包み込んだ。

レジアイス『レ、レジィィィィィ~ッ!!』


ドサァ……。


一同「……!」


一同は、絶句する……。無理もない。
あれだけの苦戦を強いられたレジロックと、同等の強さを有するであろう、レジアイス。

それが……得体の知れぬポケモンの一撃により、呆気なく倒されたのだから。


サザンドラ「……くれてやる」

イーブイ「え……?」

サザンドラ「それだ、それ。奴を今しがた撃破した際……落下したのを、見ただろう?」

イーブイ「それってもしかして……この、宝、箱……?」

レジアイスは、倒された瞬間……レジロックと同様に、宝箱を落としていたのだ。

サザンドラ「お察しの通り……それには『雪のオルゴール』が入っている。そう、プログラムされているからな」

イーブイ(プログラム……?)

サンドパン「なぜ、俺たちに……?」

サザンドラ「言ったろう、なにかの“縁”だと。お前たちの実力では、コイツを倒すことすら手を焼くだろうからな。ほんの……“親切心”だ」

ゴーリキー「その“親切心”とやら……お前の仇とならぬが良いがな」

サザンドラ「減らず口だけは立派なようだ。その根性で、まぁ……これからの健闘を祈っている。……じゃあな」スタスタ

イーブイ「ま……待ってっ!!」

サザンドラ「……?」

イーブイ「そ、“それ”……あなたの、でしょう……?」


サザンドラは、とあるものを戦いの最中に落としていたのだ。


ピカチュウ「これは、未使用のモンスターボール……。しかし、ずいぶんと傷だらけな、ボロボロの状態だ。こんな古臭いものを……どうして……?」

サザンドラ「“古臭い”、か……確かにな。……だがな。この世界とこのボール、似ているとは思わないか?」

ゴーリキー「……?」

サザンドラ「古褪せた、ボールと世界。互いにポケモンを閉じ込め、あまりに良い気になり過ぎている。とは言っても、ポケモンの悪の組織のように、モンスターボール自体を否定するつもりはない。……忌まわしきは、この偽りの世界だ」

イーブイ「……偽りの、世界……」

ピカチュウ「難しい話はよくわからないんだが……」

サザンドラ「まぁ……このモンスターボールは、俺が散々“あやつ”と呼称する、とある者との思い出の品なのだ。例え、ああまで変わり果ててしまっていてもな……“思い出”だけは、色褪せることなどない」

イーブイ「友だち、だったんですね……その人とは……」

サザンドラ「……トモダチ……」

イーブイ「友だちは、大切にしなきゃ駄目だと思います。例えば、ここに居る、ピカチュウ、ゴーリキー、ドーブル、サンドパンは、同じポケモン好きの……私のとても大切な友だちです。代わりなんて、絶対にいません」

ピカチュウ「イーブイ……」


サザンドラ(イブ……)


イーブイ「どうして、その友だちと……。その……喧嘩でも、してしまったのですか……?」

サザンドラ「喧嘩、か……似たようなものだがな。それにしても、俺としたことが……フフ、“落としもの”をしてしまうことになるとはな」

イーブイ「私も、落としものは沢山してきたよ。財布、携帯、トレーナーパス、モンスターボール……数々に渡り、色々ね」キリッ

ピカチュウ「流石に抜け過ぎだろ。しかも、そんなドヤ顔で言われても」

サザンドラ「そうだ、“落としもの”だ。……きっかけは、些細なことだったな。今にして思うと。“あの日”以来……“あやつ”は変わってしまった」

ドーブル「何か……色々複雑な事情がある様ですが」

サザンドラ「つい、色々と喋ってしまい格好は付かんが……これ以上の詮索はするな。……俺がこの世界に舞い降りたのは、“あやつ”に引導を渡すためなのだ」

ゴーリキー「……終わってしまった友情って奴なのかな」

サザンドラ「そう。最早……どんなに願っても、元に戻ることは叶わぬのだよ」

サンドパン「だから、引導を渡すのか。それは……かつて友だちだったものとしての、義務とでも言うべきことなのか……?」

サザンドラ「義務なのか、権利なのか……或いは、その両方なのか。それを知るには、月日が経ち過ぎた」

ピカチュウ「……」

サザンドラ「俺は既に、オルゴールは入手した。だから、もうここには用は無い。さて……今度こそ、行くとする」

イーブイ「サザンドラさん……。あなた、本当に……悪い人、いや……ポケモンなの……?」

サザンドラ「フフ。……相変わらず、おめでたい頭だ」

イーブイ「なっ……なにをぉっ!?」カアァッ

サザンドラ「……じゃあな」


そう言って、サザンドラは去って行った。


イーブイ「もう……頭きたっ! ピカチュウたち、戻りましょっ!!」プンスカ

ピカチュウ「……あ、あぁ」

ゴーリキー「あのサザンドラとやら。随分親切にしてくれたが……。案外、心優しい奴なのかもしれないな。不器用なだけで」

イーブイ「どこが心優しいのよ、あんな奴っ!!」

ドーブル「……」

ドーブル(レジロックの身体には、『001‐Regi』と。そして、今のレジアイスの身体には、『002‐Regi』と。そう、掘られていた……。カラマネロは、『ゴーレム』と呼んでいましたが……)

もしかして、この『ゴーレム』たちは……。あのカラマネロのような存在によって、造り出された存在……?


****


『雪のオルゴール』を思わぬ形で入手することになり、氷が溶けるが如く終わりを迎えた……アイスロックの旅路。


だが──


“サザンドラ”、“カラマネロ”、“ゴーレム”、“あやつ”……。

様々な謎は、解けずに残ることとなる。


果たしてピカチュウたちは、旅路を続ける中において、これらの謎を結び付けることができるのであろうか。

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