その⑦ “氷司” オニゴーリ
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《《タウン》》
……ボテッ!!
ピカチュウ「あいたたた……」
ドーブル「な、なんだったのかしら、アイツ……」
ゴーリキー「わからん。あいつ……カラマネロは十八司でも相当の変人だったからな。俺たちを舐め腐ってるような、そんな感じすら受けたし……」
ピカチュウ「とにかく、帰ってきたんだな……タウンに……。……お前もか」
イーブイ「あいたたた……」
ゴーリキー「……とりあえず、奴が心配だ。最寄りの病院へと送り届けて来るよ」
サンドパン「……」ハァ、ハァ
ドーブル「……ピカチュウ。私のことを話していないのにぶしつけですが、今度はあなたに聞かせてもらいたい。あなたとサンドパンには、一体どんな因縁が?」
ピカチュウ「……あぁ、話すよ──」
(……)
ドーブル「……そんなことが」
ピカチュウ「でも、俺は奴にもう恨みなどないよ。だって……」
俺とこのサンドパン……名前は『トサ』と言うんだが、俺は奴に挑み、話した通り、無残にも敗北を期した。
俺「ポカブ……しっかりしろ! ポカブ……」
俺の相棒だったポカブは、死んだ。
それ程までに、奴と俺の実力差はあったんだ。
……でも。
お母さん「ねぇ。なんかお金と手紙が置いてあるんだけど。もしかしてこれ、アンタあてのじゃないの?」
俺「……!?」
奴の謝罪の言葉。10の力の俺を、100の力で倒してしまったことへの謝罪。それと医療代と慰謝料の金。
……実のところ、悪かったのは俺だったんだ。無謀にも、格上に立ち向かっていった、俺が。
それなのに……。
その件でとある女友だちと喧嘩をしてしまうんだが、それはまた、後の話だ。
──やがて。
「「号外~、号外~!」」
イーブイ「あら、号外だってさ。ふ~ん、今日はお尋ね者の情報も出ているんだね。……えっ、これは……」
一大ニュースであった。
町の主、ハリテヤマの謎のポケモンの襲撃による負傷。
その“謎のポケモン”……お尋ね者“創蛙”。
そして、その仲間とされる……あのサザンドラ。
それらのポケモンの顔写真が、掲載されていたのだ。
イーブイ「あ、あのサザンドラさんが……!? 確かに、そんなことしそうな顔で、それでもってとっても怪しかったけど……」
──その時。
「いえ、間違いはありませんよ」
ピカチュウ「ん、あんたは……?」
オノノクス「私は個人探偵。あの二匹の行方を遥か昔から追い求めてきたのです。オルゴールのことは既に調べが付いています。あの二人を元の世界へと返す訳には行きません」
ピカチュウ「アンタがオクタンの言ってた探偵だったのか。俺たちは次にアイスロックへと向かうつもりだ。そいつがいたら、捕まえてやるよ」
オノノクス「ありがとうございます……。いえ探偵といっても、全然成果の挙がらない無名なもので──」
イーブイ「見た目、こんなに強そうなのにね」
オノノクス「力があったとて、頭がついていかなければ、探偵という職業は難しいのですよ。今はまだ情報は微小なものですが、次にあった時には、ご協力できると思います」
ピカチュウ「そうか、ありがとう!」
やがて、オノノクスは町外れの方へ去って行った。
ピカチュウ「……さて、船“シャイニング号”でアイスロックへ渡ろうか。そのための準備を……」
サンドパン「……待て」
ピカチュウ & イーブイ「!!」
突然にも、サンドパンが二匹に声をかけたのだ。
サンドパン「私も不本意ながら、元の世界へと帰還すべく十八司に潜入していたのだ。罪滅ぼしとして、私もピカチュウたちと共に行く」
ピカチュウ(……)
サンドパン「痛めつけた上に、そんな私を救ってくれたお前。……私を殺そうとすれば、チャンスはあったハズなのに、お前は、そうはしなかった」
ピカチュウ「……恨んじゃいない。ポカブを死なせたのは、その後の手際が悪かった俺の責任だ」
サンドパン「……次の戦いでは、先の不甲斐なさを解消することを約束する。だから私を、仲間に──」
ピカチュウ「ああ、いいぜサンドパン! お前も俺たちの仲間だっ!!」
イーブイ「……ピカチュウ」
サンドパン「ありがとう。……そして、今一度言おう。……すまなかった……」
こうしてサンドパンが、ピカチュウたちの仲間に加わった。
……そして一同は、アイスロックへと向かうのだ。
****
《《フレアグリン 北東部 寒冷地帯》》
イーブイ「うぅ、寒いね……」ブルブル
ドーブル「ここからはアイスロックへと続くことになるのだから、当然ですよ」
ゴーリキー「町はあるのか?」
ドーブル「えぇ、寒い場所を好むポケモンが集う町、『ブリザードライク』があるます。その町へと行きましょう」
ピカチュウ「俺、季節の中では冬が一番好きなんだ。なんていうのかな……一年の終わりって、ほら、冬だろ? 物悲しくなるんだ。雪は降って来るが年は終わる。過ぎ去るものと来訪するもの。……深い意味があるんじゃないかなって」
イーブイ「うん、私も冬は好きだよ。私には彼氏はいなかったけど……好きな人と冬景色を見ながら温泉にでも浸かれたら……どんなに幸せかなぁって。」
ゴーリキー「なんなら俺が彼氏になろうか? 嬢ちゃん」
イーブイ「アハハ、冗談みたいなのはその筋肉だけにしてね」
ゴーリキー(……笑顔で拒否された)
《《そして ブリザードライク》》
イーブイ「うわぁ。辺り一面……白、白、白っ! 雪が降り続いてるね。木々や屋根にも雪が積もってる!!」
ドーブル「屋根が三角屋根ですね。雪が振り続ける地域での、雪を屋根に残さないための知恵でしょうか」
イーブイ「あ、見て…雪だるまが作られてるよぉ! キャハハ、よく見たらユキノオーだ。かっわい~っ!!」
だが、そう呑気に観光をしている場合でもなさそうだ。
住人「アイスロックの名物……町の外れの“雪生塔”で十八司が暴れてるの。このままじゃ、崩れそうで怖いわ……」
住人「なんでも、『雪のオルゴール』とかなんとかを探してるらしい。ホント、迷惑だよ」
ゴーリキー「なるほどな。行くしか、ないよな……」
サンドパン「……あぁ」
かくして一同は、雪生塔へと向かうことになる。
****
《《雪生塔 頂上》》
イーブイ「……あの顔面は!」
オニゴーリ「オニオニ……我は“氷司”オニゴーリでオニ! お前たちか……相手になるぞっ!!」
ドーブル「……なんか、語尾からして実に雑魚っぽいです。オニゴーリになるくらいなら、ユキメノコになりたい」
ピカチュウ「その発言は全国のオニゴーリファンを敵に回すぞ。アニメでの活躍で好きな人も多いだろうし」
オニゴーリ「……甘く見やがって」
サンドパン「……リージョンフォームに、変形ッ!!」ボンッ
ピカチュウ「……おぉっ!?」
周辺の雪を纏い、サンドパンは戦闘態勢に入った。
オニゴーリ「……我の実力、見せてやるっ!!」ヒュンッ
サンドパン「つっ……」フラッ
オニゴーリの体当たりを、サンドパンは辛うじて避ける。
ドーブル「外見と口調から、少々油断をしていました。あの巨体で、なんという速さ……まるで、ドッチボールです」
オニゴーリ「ほら、ほら……ほらぁっ!!」ビュウンッ
サンドパン「……避けるばかりでは能がないか。こちらも攻撃あるのみ……“ブレイククロー”ッ!!」ガリッ
サンドパンは、自身の爪により、オニゴーリに対し攻撃を仕掛ける。
オニゴーリ「……ふんっ!」バリィッ
サンドパン「!!」
しかしなんと、オニゴーリの突進により……彼の爪は、砕け散ってしまったのだ。
オニゴーリ「どうした、ご自慢の爪が砕けたくらいで……もう降参かぁ!?」
サンドパン「……まだ、数有る中の一手が破かれたのみ。手札はまだ残っている……ニードルアーマーッ!!」ビィィィ
身体中の棘を強化し、そのまま回転を始める。
サンドパン「……ドッチボール対決、受けて立つ。 お前が凍てつく氷のボールなら…こちとら地の果て針地獄……ニードルボールだ!」グルンッ
オニゴーリ「面白い! 我に……球技で勝負を挑もうとはぁっ!!」グルルンッ
ズガアッ……!!
二匹の身体が、衝突し合う。
ゴーリキー「うおぉっ……なんという衝撃だっ……!!」ビリビリ
ドーブル「打ち勝ったのは、どっちなの……?」
ムクムク……。
サンドパン「う、うぅ……」
ピカチュウ「……サ、サンドパンッ!?」
オニゴーリ「……あ~あ、期待外れだなぁ」
地に伏せていたのは、サンドパン。
立ち誇っているのは……オニゴーリだ。
オニゴーリ「爪も駄目、棘も駄目ときた。呆れるばかりだ。最早お前の前には勝利など存在しない。待っているのは、壮絶なる“敗北”のみだ。さぁ、観念し……我の技を喰らい昇天するが良かろう」
サンドパン「……」
イーブイ「交代しよっ、サンドパン! 私がこんな奴……やっつけてやるんだからっ!!」
サンドパン「……いや、それではやはり駄目なのだ」
ゴーリキー「サンドパン……なぜ、そんな意地を……?」
サンドパン「……お前たちは、“友だち”だからだ」
ピカチュウ「!」
サンドパン「デザートサンでは、お前たちに危害を加えてしまった。友だちとして……恥ずべき行為。その私がお前たちの仲間となり、この初めての戦い……。どうしても、ケリは俺自身の手で付けたいんだ」
ピカチュウ「しかし、この絶望的な状況……。もう“希望”なんて……!!」
オニゴーリ「もう良いだろう……終わらせよう……。れいとう……ビイィィ~ムウゥゥッ!!!」ピキピキ
一同「!!」
サンドパン「……!」
ピキ、ピキィ……。
サンドパンの身体が、凍りついてしまった。
オニゴーリ「オニオ二、後はこの凍り付いた身体を踏み潰せば任務完了! 瞬時に凍り付いたもの程、脆いものはないからな、本当に呆気がない。少しは期待したのだが……損をしたわぁ!!」
ピカチュウ「もういい、俺がコイツを……」
イーブイ「いや、これはチャンス! ドーブル、サンドパンに…火を放つのよぉっ!!」
ドーブル「!」
ゴーリキー「な……なんだって!? 気でも狂ったのか、イーブイッ!! そんなことをしたら……サンドパンが焼け死んじまうぜっ!?」
イーブイ「大丈夫っ! サンドパン……あなたは確かにこう言った!! 私たちのことを……“友だち”だって!!」
オニゴーリ(なにを考えているのだ……この小娘は)
イーブイ「その“友だち”の手を借りることは、決して恥ずべきことなんかじゃないっ! “友だち”だからこそ、助け合って支え合って…ええぃ、上手く言えないけど、とにかく……私たちはあなたを助ける!!」
サンドパン(……)
オニゴーリ「ごちゃごちゃと、綺麗事をほざきおって……。コイツは踏み潰されて死ぬ、それで終わりだ! 小娘……現実を、この惨劇を……よぉ~く見ておけっ!!」
イーブイ(つまり、こういうことなの……。ゴニョニョ……)
ピカチュウ……(そういうことかっ! なんか昔、そういう展開を漫画で読んだことがあるぞ)
オニゴーリ「仲間の冥福でも祈っているのか!? ……死ねえぇぇぇっ!!!」ゴォォォ
ドーブル「では、いきますよ……ふんっ!!」ボォォ
オニゴーリ「!」
ドーブルは炎を具現化し、凍ったサンドパンの身体に向け、火を放った。
オニゴーリ「も、もしや……!」
ドーブル「普通の炎攻撃や、刺々ボールはあなたには通用しないかもしれない。しかし、それが合わさったら……どうなる……?」
オニゴーリ「小娘、これが狙いで……!!」
イーブイ「私は、ただサンドパンやドーブルのことを信じていただけ。それだけよ。私は……何もしていないじゃない」
サンドパン「むんんんっ……」ボオォォ
サンドパンの氷が程良く溶け、彼女の身体に炎が渦巻いた。
ドーブル「奇しくも身に纏う氷のおかげで、あなたに炎のダメージはそれ程伝わってはいない。さぁ、サンドパン……今こそ“あなた自身”の手で、トドメを刺すのよっ!!」
サンドパン「……ありがとう、皆。本当に感謝する。オーバーヒートォ…ニードルゥゥ…ボールゥゥゥッ!!!」
オニゴーリ「う……うおぉぉぉぉぉぉっ!?」
ドゴォッ……。
鋭い棘と燃え盛る炎を纏ったその“ボール”は……。
邪悪なる大敵 十八司 に向け………。
渾身の一撃を込め、突撃した。
オニゴーリ「……」
サンドパン(決まった、か……?)
オニゴーリ「う、うおぉ……」
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」
ピキピキピキピキィ……。
パリイィィン………!!
オニゴーリの身体に亀裂が走り……。
ボコォンッ!
そのまま、少爆発を遂げた。
落下していくオニゴーリの氷の破片は、煌めき、淡く、幻想的なものであった。
しかし、それは地面に吸い込まれるや刹那、瞬時に溶け込んでいくのであった。
“氷司”オニゴーリ ~撃破~
****
サンドパン「……逆転勝利と言ったところ、かな……」
イーブイ「サンドパン。あなたは、私たちの友だちだよ」
サンドパン「……あぁ、皆、本当にありがとう」
──その後ピカチュウたちは、町に戻り事情を話した。
住民「その『雪のオルゴール』のことなのですが……。もしかしたら、手掛かりはこの町のすぐ近くにあるかもしれません」
イーブイ「ほ、本当ですか!? ぜ、是非教えてくださいっ!!」
住民「この先の『氷塊遺跡』から生きて帰って来たものは、デザートサンの遺跡よろしく……やはり、誰も居ないのです。あの遺跡の最深部には、遺跡の護り主とも呼べる……鬼の様に強い存在が棲んでいるらしいのです」
ピカチュウ「あの、レジロックと同じ様な……」
住民「もしかしたら、あなたがたならば……。デザートサンの遺跡を突破し、今しがたあのオニゴーリを撃破した。そんなあなたがたならば、その存在をも突破できるやもしれませんね」
住民「あなたがたのおかげで、町に活気が漲りました。せめてものお礼です。お代は要りません。この町の宿に泊まって、英気を養ってください」
こうしてピカチュウたちは、ブリザードライクの宿へと宿泊することになったのだ。
……ボテッ!!
ピカチュウ「あいたたた……」
ドーブル「な、なんだったのかしら、アイツ……」
ゴーリキー「わからん。あいつ……カラマネロは十八司でも相当の変人だったからな。俺たちを舐め腐ってるような、そんな感じすら受けたし……」
ピカチュウ「とにかく、帰ってきたんだな……タウンに……。……お前もか」
イーブイ「あいたたた……」
ゴーリキー「……とりあえず、奴が心配だ。最寄りの病院へと送り届けて来るよ」
サンドパン「……」ハァ、ハァ
ドーブル「……ピカチュウ。私のことを話していないのにぶしつけですが、今度はあなたに聞かせてもらいたい。あなたとサンドパンには、一体どんな因縁が?」
ピカチュウ「……あぁ、話すよ──」
(……)
ドーブル「……そんなことが」
ピカチュウ「でも、俺は奴にもう恨みなどないよ。だって……」
俺とこのサンドパン……名前は『トサ』と言うんだが、俺は奴に挑み、話した通り、無残にも敗北を期した。
俺「ポカブ……しっかりしろ! ポカブ……」
俺の相棒だったポカブは、死んだ。
それ程までに、奴と俺の実力差はあったんだ。
……でも。
お母さん「ねぇ。なんかお金と手紙が置いてあるんだけど。もしかしてこれ、アンタあてのじゃないの?」
俺「……!?」
奴の謝罪の言葉。10の力の俺を、100の力で倒してしまったことへの謝罪。それと医療代と慰謝料の金。
……実のところ、悪かったのは俺だったんだ。無謀にも、格上に立ち向かっていった、俺が。
それなのに……。
その件でとある女友だちと喧嘩をしてしまうんだが、それはまた、後の話だ。
──やがて。
「「号外~、号外~!」」
イーブイ「あら、号外だってさ。ふ~ん、今日はお尋ね者の情報も出ているんだね。……えっ、これは……」
一大ニュースであった。
町の主、ハリテヤマの謎のポケモンの襲撃による負傷。
その“謎のポケモン”……お尋ね者“創蛙”。
そして、その仲間とされる……あのサザンドラ。
それらのポケモンの顔写真が、掲載されていたのだ。
イーブイ「あ、あのサザンドラさんが……!? 確かに、そんなことしそうな顔で、それでもってとっても怪しかったけど……」
──その時。
「いえ、間違いはありませんよ」
ピカチュウ「ん、あんたは……?」
オノノクス「私は個人探偵。あの二匹の行方を遥か昔から追い求めてきたのです。オルゴールのことは既に調べが付いています。あの二人を元の世界へと返す訳には行きません」
ピカチュウ「アンタがオクタンの言ってた探偵だったのか。俺たちは次にアイスロックへと向かうつもりだ。そいつがいたら、捕まえてやるよ」
オノノクス「ありがとうございます……。いえ探偵といっても、全然成果の挙がらない無名なもので──」
イーブイ「見た目、こんなに強そうなのにね」
オノノクス「力があったとて、頭がついていかなければ、探偵という職業は難しいのですよ。今はまだ情報は微小なものですが、次にあった時には、ご協力できると思います」
ピカチュウ「そうか、ありがとう!」
やがて、オノノクスは町外れの方へ去って行った。
ピカチュウ「……さて、船“シャイニング号”でアイスロックへ渡ろうか。そのための準備を……」
サンドパン「……待て」
ピカチュウ & イーブイ「!!」
突然にも、サンドパンが二匹に声をかけたのだ。
サンドパン「私も不本意ながら、元の世界へと帰還すべく十八司に潜入していたのだ。罪滅ぼしとして、私もピカチュウたちと共に行く」
ピカチュウ(……)
サンドパン「痛めつけた上に、そんな私を救ってくれたお前。……私を殺そうとすれば、チャンスはあったハズなのに、お前は、そうはしなかった」
ピカチュウ「……恨んじゃいない。ポカブを死なせたのは、その後の手際が悪かった俺の責任だ」
サンドパン「……次の戦いでは、先の不甲斐なさを解消することを約束する。だから私を、仲間に──」
ピカチュウ「ああ、いいぜサンドパン! お前も俺たちの仲間だっ!!」
イーブイ「……ピカチュウ」
サンドパン「ありがとう。……そして、今一度言おう。……すまなかった……」
こうしてサンドパンが、ピカチュウたちの仲間に加わった。
……そして一同は、アイスロックへと向かうのだ。
****
《《フレアグリン 北東部 寒冷地帯》》
イーブイ「うぅ、寒いね……」ブルブル
ドーブル「ここからはアイスロックへと続くことになるのだから、当然ですよ」
ゴーリキー「町はあるのか?」
ドーブル「えぇ、寒い場所を好むポケモンが集う町、『ブリザードライク』があるます。その町へと行きましょう」
ピカチュウ「俺、季節の中では冬が一番好きなんだ。なんていうのかな……一年の終わりって、ほら、冬だろ? 物悲しくなるんだ。雪は降って来るが年は終わる。過ぎ去るものと来訪するもの。……深い意味があるんじゃないかなって」
イーブイ「うん、私も冬は好きだよ。私には彼氏はいなかったけど……好きな人と冬景色を見ながら温泉にでも浸かれたら……どんなに幸せかなぁって。」
ゴーリキー「なんなら俺が彼氏になろうか? 嬢ちゃん」
イーブイ「アハハ、冗談みたいなのはその筋肉だけにしてね」
ゴーリキー(……笑顔で拒否された)
《《そして ブリザードライク》》
イーブイ「うわぁ。辺り一面……白、白、白っ! 雪が降り続いてるね。木々や屋根にも雪が積もってる!!」
ドーブル「屋根が三角屋根ですね。雪が振り続ける地域での、雪を屋根に残さないための知恵でしょうか」
イーブイ「あ、見て…雪だるまが作られてるよぉ! キャハハ、よく見たらユキノオーだ。かっわい~っ!!」
だが、そう呑気に観光をしている場合でもなさそうだ。
住人「アイスロックの名物……町の外れの“雪生塔”で十八司が暴れてるの。このままじゃ、崩れそうで怖いわ……」
住人「なんでも、『雪のオルゴール』とかなんとかを探してるらしい。ホント、迷惑だよ」
ゴーリキー「なるほどな。行くしか、ないよな……」
サンドパン「……あぁ」
かくして一同は、雪生塔へと向かうことになる。
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《《雪生塔 頂上》》
イーブイ「……あの顔面は!」
オニゴーリ「オニオニ……我は“氷司”オニゴーリでオニ! お前たちか……相手になるぞっ!!」
ドーブル「……なんか、語尾からして実に雑魚っぽいです。オニゴーリになるくらいなら、ユキメノコになりたい」
ピカチュウ「その発言は全国のオニゴーリファンを敵に回すぞ。アニメでの活躍で好きな人も多いだろうし」
オニゴーリ「……甘く見やがって」
サンドパン「……リージョンフォームに、変形ッ!!」ボンッ
ピカチュウ「……おぉっ!?」
周辺の雪を纏い、サンドパンは戦闘態勢に入った。
オニゴーリ「……我の実力、見せてやるっ!!」ヒュンッ
サンドパン「つっ……」フラッ
オニゴーリの体当たりを、サンドパンは辛うじて避ける。
ドーブル「外見と口調から、少々油断をしていました。あの巨体で、なんという速さ……まるで、ドッチボールです」
オニゴーリ「ほら、ほら……ほらぁっ!!」ビュウンッ
サンドパン「……避けるばかりでは能がないか。こちらも攻撃あるのみ……“ブレイククロー”ッ!!」ガリッ
サンドパンは、自身の爪により、オニゴーリに対し攻撃を仕掛ける。
オニゴーリ「……ふんっ!」バリィッ
サンドパン「!!」
しかしなんと、オニゴーリの突進により……彼の爪は、砕け散ってしまったのだ。
オニゴーリ「どうした、ご自慢の爪が砕けたくらいで……もう降参かぁ!?」
サンドパン「……まだ、数有る中の一手が破かれたのみ。手札はまだ残っている……ニードルアーマーッ!!」ビィィィ
身体中の棘を強化し、そのまま回転を始める。
サンドパン「……ドッチボール対決、受けて立つ。 お前が凍てつく氷のボールなら…こちとら地の果て針地獄……ニードルボールだ!」グルンッ
オニゴーリ「面白い! 我に……球技で勝負を挑もうとはぁっ!!」グルルンッ
ズガアッ……!!
二匹の身体が、衝突し合う。
ゴーリキー「うおぉっ……なんという衝撃だっ……!!」ビリビリ
ドーブル「打ち勝ったのは、どっちなの……?」
ムクムク……。
サンドパン「う、うぅ……」
ピカチュウ「……サ、サンドパンッ!?」
オニゴーリ「……あ~あ、期待外れだなぁ」
地に伏せていたのは、サンドパン。
立ち誇っているのは……オニゴーリだ。
オニゴーリ「爪も駄目、棘も駄目ときた。呆れるばかりだ。最早お前の前には勝利など存在しない。待っているのは、壮絶なる“敗北”のみだ。さぁ、観念し……我の技を喰らい昇天するが良かろう」
サンドパン「……」
イーブイ「交代しよっ、サンドパン! 私がこんな奴……やっつけてやるんだからっ!!」
サンドパン「……いや、それではやはり駄目なのだ」
ゴーリキー「サンドパン……なぜ、そんな意地を……?」
サンドパン「……お前たちは、“友だち”だからだ」
ピカチュウ「!」
サンドパン「デザートサンでは、お前たちに危害を加えてしまった。友だちとして……恥ずべき行為。その私がお前たちの仲間となり、この初めての戦い……。どうしても、ケリは俺自身の手で付けたいんだ」
ピカチュウ「しかし、この絶望的な状況……。もう“希望”なんて……!!」
オニゴーリ「もう良いだろう……終わらせよう……。れいとう……ビイィィ~ムウゥゥッ!!!」ピキピキ
一同「!!」
サンドパン「……!」
ピキ、ピキィ……。
サンドパンの身体が、凍りついてしまった。
オニゴーリ「オニオ二、後はこの凍り付いた身体を踏み潰せば任務完了! 瞬時に凍り付いたもの程、脆いものはないからな、本当に呆気がない。少しは期待したのだが……損をしたわぁ!!」
ピカチュウ「もういい、俺がコイツを……」
イーブイ「いや、これはチャンス! ドーブル、サンドパンに…火を放つのよぉっ!!」
ドーブル「!」
ゴーリキー「な……なんだって!? 気でも狂ったのか、イーブイッ!! そんなことをしたら……サンドパンが焼け死んじまうぜっ!?」
イーブイ「大丈夫っ! サンドパン……あなたは確かにこう言った!! 私たちのことを……“友だち”だって!!」
オニゴーリ(なにを考えているのだ……この小娘は)
イーブイ「その“友だち”の手を借りることは、決して恥ずべきことなんかじゃないっ! “友だち”だからこそ、助け合って支え合って…ええぃ、上手く言えないけど、とにかく……私たちはあなたを助ける!!」
サンドパン(……)
オニゴーリ「ごちゃごちゃと、綺麗事をほざきおって……。コイツは踏み潰されて死ぬ、それで終わりだ! 小娘……現実を、この惨劇を……よぉ~く見ておけっ!!」
イーブイ(つまり、こういうことなの……。ゴニョニョ……)
ピカチュウ……(そういうことかっ! なんか昔、そういう展開を漫画で読んだことがあるぞ)
オニゴーリ「仲間の冥福でも祈っているのか!? ……死ねえぇぇぇっ!!!」ゴォォォ
ドーブル「では、いきますよ……ふんっ!!」ボォォ
オニゴーリ「!」
ドーブルは炎を具現化し、凍ったサンドパンの身体に向け、火を放った。
オニゴーリ「も、もしや……!」
ドーブル「普通の炎攻撃や、刺々ボールはあなたには通用しないかもしれない。しかし、それが合わさったら……どうなる……?」
オニゴーリ「小娘、これが狙いで……!!」
イーブイ「私は、ただサンドパンやドーブルのことを信じていただけ。それだけよ。私は……何もしていないじゃない」
サンドパン「むんんんっ……」ボオォォ
サンドパンの氷が程良く溶け、彼女の身体に炎が渦巻いた。
ドーブル「奇しくも身に纏う氷のおかげで、あなたに炎のダメージはそれ程伝わってはいない。さぁ、サンドパン……今こそ“あなた自身”の手で、トドメを刺すのよっ!!」
サンドパン「……ありがとう、皆。本当に感謝する。オーバーヒートォ…ニードルゥゥ…ボールゥゥゥッ!!!」
オニゴーリ「う……うおぉぉぉぉぉぉっ!?」
ドゴォッ……。
鋭い棘と燃え盛る炎を纏ったその“ボール”は……。
邪悪なる大敵 十八司 に向け………。
渾身の一撃を込め、突撃した。
オニゴーリ「……」
サンドパン(決まった、か……?)
オニゴーリ「う、うおぉ……」
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」
ピキピキピキピキィ……。
パリイィィン………!!
オニゴーリの身体に亀裂が走り……。
ボコォンッ!
そのまま、少爆発を遂げた。
落下していくオニゴーリの氷の破片は、煌めき、淡く、幻想的なものであった。
しかし、それは地面に吸い込まれるや刹那、瞬時に溶け込んでいくのであった。
“氷司”オニゴーリ ~撃破~
****
サンドパン「……逆転勝利と言ったところ、かな……」
イーブイ「サンドパン。あなたは、私たちの友だちだよ」
サンドパン「……あぁ、皆、本当にありがとう」
──その後ピカチュウたちは、町に戻り事情を話した。
住民「その『雪のオルゴール』のことなのですが……。もしかしたら、手掛かりはこの町のすぐ近くにあるかもしれません」
イーブイ「ほ、本当ですか!? ぜ、是非教えてくださいっ!!」
住民「この先の『氷塊遺跡』から生きて帰って来たものは、デザートサンの遺跡よろしく……やはり、誰も居ないのです。あの遺跡の最深部には、遺跡の護り主とも呼べる……鬼の様に強い存在が棲んでいるらしいのです」
ピカチュウ「あの、レジロックと同じ様な……」
住民「もしかしたら、あなたがたならば……。デザートサンの遺跡を突破し、今しがたあのオニゴーリを撃破した。そんなあなたがたならば、その存在をも突破できるやもしれませんね」
住民「あなたがたのおかげで、町に活気が漲りました。せめてものお礼です。お代は要りません。この町の宿に泊まって、英気を養ってください」
こうしてピカチュウたちは、ブリザードライクの宿へと宿泊することになったのだ。