その⑤ “鋼司”ヒードランと“創蛙”の襲来

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~翌日~

ドーブル「もう私は大丈夫ですが、イーブイは衰弱しています。彼女は安静にさせて置いた方が良いと思います」

ピカチュウ「そうだな。その方がいい」

ゴーリキー「ちょっと、俺便所に行ってくるよ。少し待っててくれ」


****


ゴーリキー「ふぅ……」

用を済ませたゴーリキーは、水を流そうとするのだが……。

ゴーリキー「あれ、流れねぇ。よく見たら、紙もないし……どうすればいいんだ」

これでは、外に出ることができない。


「ククク……」


その時、どこからともなく、ポケモンの声が響いた。

ゴーリキー「なっ、もしや……新手の十八司かっ!? くそっ、こんな時に……」


「『こんな時』を狙ったのだ。裏切り者の格司よ、貴様は強い。だからこそ、一人になる機会を伺っていたのだよ」


ゴーリキー「まさか、お前は……鋼司!!」

ヒードラン「ごぼぼっ、ごぼっ! 久しぶりだな、我は鋼を司る……ヒードラン! 貴様の命、貰い受けるっ!!」カサカサ

ゴーリキー「尻も拭かせてくれないか……。だが、トイレにお前か。お似合いじゃねぇか」

ヒードラン「ごぼぼっ、ごぼっ! 貴様の減らず口もここまでだっ!!」

ゴーリキー「……なんだと?」

ゴーリキーが、ふと疑問に感じたその刹那。

ヒードラン「さあ我の子どもたちよ……あいつを倒すのだっ!!」


……ポポポポッ!


ゴーリキー「うぉっ、なんだこれはっ!?」

ヒードランは、口から白い球体の“何か”を連射した。

ゴーリキー「ふん、その程度の攻撃が俺に通じるとでも……」


パ カ ッ 。


ゴーリキー「なっ……!?」

それは……卵であったのだ。

子ども1「こぽぽっ!」パカッ

子ども2「こぽぽぽっ!!」パカッ

子ども3「……こぽぽぽぉっ!!!」パカッ

ヒードラン「さあ、やれいっ!」

ゴーリキー「くっ、これはまずいぞ……。これでは、仲間を呼びにいけねぇっ!!」


ゴーリキー「「……だったら、俺が倒すっ!!」」ビシィッ


密室内での闘いが、幕を開けた。


ゴーリキー「リキィッ!」バコン

子ども「ごぼおぉっ!?」グチャア

ヒードラン「ごぼほぼっ、愚か者めぇっ! いくらそいつらを潰そうとも、親である我を倒さぬ限り……いくらでも増え続けるっ!!」ポポポポ

ゴーリキー「なるほど、親不孝ならず子不幸者だ」

ゴーリキー(『1匹居たら30匹いると思え』だったか? なんとやらは。くそっ、厄介だなおい……)

ゴーリキー「しかし、そうも言ってられん……リキリキィッ!!」ドガドガ


プチッ、グチャアッ!


ヒードラン「ドラドラドラッ!」ポポポポ

子ども「こぽぽぽっ!!」パカッ

ゴーリキー(きりがねぇ……俺の体力が、その前に──)


ゴーリキー「リキィッ!」バゴッ


ヒードラン「ふははっ、どうしたぁっ!? 便器に攻撃に喰らわすとは……狙いが外れてるぞぉっ!!」

ゴーリキー(……)

ヒードランの言うとおり、便器にヒビが走る。

ヒードラン「さて、ここからは直々に我が止めを刺してやろう……光栄に思うがいい。マグマ…ストオォ~……ムゥッ!!」ボオッ

ゴーリキー「! ア……アチいっ!!」

ヒードランが放ったストームのため、室内に火が回る。

ヒードラン「どうだっ!? 特性がもらいびの我は、この炎の中でも容易に耐えることができるっ!! これで……後はお前が焼死体となるのを待つだけだぁっ!!!」

ゴーリキー「……」

ヒードラン「な、なんだ……? お前……なぜそう平然としていられるのだっ!?」

ゴーリキー「……水をせき止めて置くぐらい、しなきゃなぁ。やるのなら徹底的にやるべきだった。完全にトイレの中の水を抜いておくぐらいになっ!!」

ヒードラン「な、なにを……」

ゴーリキー「さてと……リキリキィッ!!」バコバゴォン

ヒードラン「……!?」


なんとゴーリキーは、便器に向かって乱打を始めたのだ!


便器「イタイ」

次第に便器が崩れていき、そして……。

ヒードラン「そ、そうか、わかったぞ! お前の……その行動の真意がっ!!」

ゴーリキー「わかったところでもう遅いっ!!」プシュー

そしてトイレ内の全方位に、水が噴き出した!!


──シュウウウ……。


ヒードラン「あぁ……炎が消え去っていく……。便器を壊し、中に溜まっていた水で炎を消化するとは……お、己ぇ」カポッ

ヒードラン(ん……この感触、温もり………もしや!?)

ゴーリキーは、彼の顔に脱ぎたてホヤホヤのパンツを被せたのだ。

ゴーリキー「これで、お前の視界は塞がった」

ヒードラン「あ、あ……!!」

ゴーリキー「さて、俺はなぶり殺すのは性に合わねぇ。素早く片付けてやるから安心しな。命を粗末にした者の末路よ」

ヒードラン「ひっ……ゆ、許してくださぁ~ぃっ!!」


ゴーリキー「リキ……リキリキリキリキィッ!!」バゴバゴ


ヒードラン「げぐわぁ~っ!!?」


ド … … シ ャ ア ァ ァ ン ッ ! !


子ども共々、ヒードランの身体は吹き飛んでしまった……。


ヒードラン「……」ピクピク


“鋼司”ヒードラン撃破


………
……


ドーブル「遅かったですね、ゴーリキー……きゃあ! どうしてパンツを脱いでいるんですかぁっ!?」

ゴーリキー「あ、あぁ……すまねぇが……。ちょっと、紙を貸してくれないかな……」


****


《《診療所》》



ピカチュウ「じゃあな、イーブイ。俺たちはもう行くよ」

イーブイ「うん、わかった」

ピカチュウ「……」

イーブイ「……元気ないね、ピカチュウ。あのサンドパンのことを気にしてるの?」

ピカチュウ「……気づいてたのか、イーブイ。あのサンドパンと俺には、ちょいとばかり、因縁があるかもしれないんだ。再び戦うことになるかもと、少し……怖いんだ」

イーブイ「……ピカチュウ」

ピカチュウ「……そうだ、イーブイ。お前の本当の名前はなんて言うんだ? ……友だちとして、知っておきたくてな」

イーブイ「……私の、名前?」

ピカチュウ「ああ、お前の名前だ。人間の時の、本当のな」

イーブイ「……私の名前は、『依夢(イブ)』。変わってるでしょ?」

ピカチュウ「イブ……いや、可愛い名前だと思うぜ?」

イーブイ「ありがとう、ピカチュウ。このちょっと変わった名前で、昔ちょっとからかわれたこともあったんだけど……そうよね、もう昔の話よね」

ピカチュウ(あれ、イブって名前……どこかで、聞いたような……?)

イーブイ「あ、呼ぶときはこれからもイーブイでいいよ。本当の名前を呼ばれるのって……なんか恥ずかしいし」

ピカチュウ「あ、ああ、わかった」

ゴーリキー「お~い、ピカチュウ、もう行くぞ~。尻も拭けたしな。準備はバッチシだ」

ピカチュウ「じゃあな、イーブイ。俺たちはこれからオルゴールを探しに行って来る。お前はしっかりと休息を取ってくれよ」

イーブイ「うん……ピカチュウ。じゃあね」


バタン……。


こうしてピカチュウたちは、病室を後にした。


イーブイ「……」


イーブイ(このこと……話さなくてよかったのかな……)


彼女は、不可解に感じていた。
毒を喰らった他のポケモンたちと比べ、思った以上に身体に毒が回っていなかったのである。

イーブイ(んっ……あ、頭が……)

時折彼女の脳裏に響く言葉がある。
それは、彼女自身の古い記憶なのであろうか。



『『……イブさん。どうやら“例の男”までがこの世界にやってきたようです。まったく……“あのお方”はズボラなことで。では、貴女は別の、『対抗勢力』の──』』



イーブイ「……!」


****


《《その頃 タウン》》


「た、大変です……ハリテヤマさん!」

ハリテヤマ「ん、どうした?」

「この町にあるポケモンがやって来て、暴れてるんです!!」

ハリテヤマ「! 一体、誰だ?」

「なんでも、そのポケモンは……『創蛙』と名乗っていて……」

ハリテヤマ「……あの、伝説の──」

「ハ、ハリテヤマさん、早く逃げて下さい! 奴はあなたの『アレ』を狙っているようです! 直に……ここにもやって来ますっ!!」

ハリテヤマ「!?」


… … ガ シ ャ ー ン ッ ! !


その時、ちゃんこ屋の扉が壊され、とある一匹のポケモンが入り込んで来たのだ。


???「……」

ハリテヤマ「食事時だったって言うのに……まさか、ここのちゃんこが目的じゃないよな? それなら、いくらでも振舞ってやるのに。お代さえ払ってくれたらな」

???「……“創蛙”の名を、知っているでござるな?」

ハリテヤマ「知っているさ。伝説の存在。だが、お前が……そうなのか?」

“創蛙”「そう、そして拙者は十八司の一員“水司”でもある。この下らない世界から脱出を図るため、“創蛙”として……。お主のその、『草のオルゴール』を貰い受ける!!」

ハリテヤマ(……)

ハリテヤマ「ちょっと待ってよ……。俺、こないだまで怪我しててさ。そんな物騒なこと言うなよ……。いや、本当に、勘弁してくれ──」シュッ


──隙を、狙った。


……ガガッ!


ハリテヤマ「!」

ハリテヤマ(なんだ……早い! コイツ……俺の身体に水の塊をぶつけ、動きを封じ込めた……!!)

“創蛙”「貴様のオルゴールは……既に頂いた」

ハリテヤマ「!?」

“創蛙”「さて、止めでござる」シュッ

ハリテヤマ「っ……!」


ゲホッ……。


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「ハ……ハリテヤマさあぁぁぁ~んっ!?」

タウンのポケモンが負傷したハリテヤマを発見した時には、“創蛙”の姿は既になかった。

「お、おいっ、手当を急げ! ハリテヤマさんはまだ息があるっ!!」


****



《《ルイナ・リバー(川のダンジョン)》》



ドーブル「……この先に、遺跡があります」

ピカチュウ「だったらさ。また翼なり船なり具現化して渡れば良いんじゃないのか?」

ドーブル「それは、駄目なのです」

ピカチュウ「え?」

ドーブル「この川は神聖なものとされていて、そういう行為は神に反逆するのと同じことなのだそうです」

ゴーリキー「へぇ」

ドーブル「そして、この川の集落の民が、洗礼を受け川を渡る許可を持った船を所有しているのです。ただ、あの長老……」

ピカチュウ「どうした?」

ドーブル「少し……と言うか、中々の頑固者なのだそうです。果たして、得体の知れない私たちなぞに船を貸してくれるかどうか……」

ピカチュウ「得体の知れないとは酷いな。元トレーナー、画家崩れ、バカマッチョで話はつくだろ?」

ドーブル「……色々と、不安ですね。それに私は画家と言うより、以前私は漫画を書いていました。漫画家だったのです」

ゴーリキー「ほう、どんな漫画だ?」

ドーブル「時差が全くなかったり、適当に回転していたら時間が逆行したり、電荷を帯びた物体が通り過ぎた個所が半永久的に帯電していたりしていました」

ゴーリキー「それキ○肉マンやないか」

ピカチュウ「言葉の意味はわからんが、とにかく凄いストーリーだと言うことはわかる」

ドーブル「そうです。私には常識的なストーリーを作る才能がありませんでした。そんな時、私はある女性と知り合ったのです」

ピカチュウ「ある女性?」

ドーブル「それこそ、十八司の“炎司”……マフォクシーです」

ピカチュウ「……十八司が?」

ドーブル「彼女は天才でした。私が作画を、そして彼女が原作を務め、漫画を執筆することになったのです」

ゴーリキー「無敵のコンビだな、正に」

ドーブル「えぇ、まさにその通りで、私たちの漫画はデビュー作一発で、賞を貰うことができたのです。『ナナホシー』名義でしばらく漫画家として活動していました」

ゴーリキー「……あ、あんたがあの、ナナホシーだったのか!?」

ドーブル「はい、そうです」

ピカチュウ「俺もナナホシーの漫画は知っている。だが、とある時期を機会に……その名前はめっきり聞かなくなってしまった」

ドーブル「──はい、その通りです」

ピカチュウ「できればだが、教えてほしいな。お前とそのマフォクシーの間に、一体何が起きたんだ?」

ドーブル「……」

ピカチュウ「……今は言いたくないという訳か。だったらごめんな、聞かないよ」

ドーブル「すみません……。またいずれ、お話する機会があるかもしれません」


やがて一同、その長老の元へと足を運ぶ。

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