その④ “毒司”スコルピと“地司”サンドパン

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【菱山】

この世界は、菱山(ダイヤード・マウンテン)と呼ばれる山脈により、五つのエリアに区切られている。

デザートサンへ向かうには、菱山のトンネルを進まなければならないのだ。



《《菱山付近の休憩所 北西部》》



ピカチュウ「ちょっと……高くないか、ここの飲み物っ!?」

ゴーリキー「なんだお前、知らないのか? こういう所だからこその値段なんだ。足元を見てやがるからな」

菱山のトンネル内も、巨大な不思議のダンジョンである。


毒司(ククク、呑気なものよのぉ。この毒司があいつらを始末してやるからに。頼むぞ、地司)

地司(……)


ピカチュウ「ところでさ、お前。お前の言ってた因縁ってのは、一体何なんだ?」

ドーブル「ああ、まだ話してなかったですね。私と因縁があるのは“炎司”。“大炎の魔狐”の異名を持つ老獪な女です」

ピカチュウ「……どんな因縁があったんだ?」

ドーブル「……それはまだ言わないでおきましょう。とにかく私はソイツを討伐すべく、此度の旅へ参加致すことにしたのです」

ピカチュウ「……そうかい」

ゴーリキー「ま、何度も言ってるが、俺はあんまり帰りたくもなかったが。仕方ねぇしな」

イーブイ「わ、私はあんまり皆と違って力はないけど……足手まといにならないように、頑張るよ!!」キリッ

ピカチュウ(……)

イーブイ「ん。ピカチュウ、どうしたの?」


****


数年前──


俺「ポカブ、どうしたんだよ……! なんで……!!」

???「……フン、弱いから……そこのポケモンは苦しんでるんだ。今すぐポケモンセンターに運べば……あるいは助かるかもしれないな」

俺(くそっ……どうして……こんなことに……)


俺は一人のポケモントレーナーに、敗北を期したのだ。


???「自分に負けはない……と思っていたのだろうが。現実はゲームのように、快進撃などありえぬのだ。覚えておけ、小僧……」

俺「ああ、覚えておくよっ! 絶対にお前のことなんて、忘れるもんかっ!!」

ポカブ『……』ゼェゼェ

………
……


ピカチュウ「いや……」

ピカチュウ(……アイツも、この世界に来ているのか? だとしたら……正直、怖い)

ゴーリキー「どうしたんだ? ピカチュウ」

ピカチュウ「あのさ、ゴーリキー。十八司内で一番強いポケモンって……誰かいるか?」

ピカチュウ(あの強さなら、十八司に。もしかしたら、首領格?)

ゴーリキー「……。俺は、もしかしたらあの“創蛙”。一番強いと言われている“水司”が、そうなのだろうと睨んでいる」

イーブイ「……そうあ?」



【創蛙】

ポケモンとなった住民の中でも、名実共に最強と謳われる一匹。しかし実際には彼の種族も不明であり、創蛙も誰かが知れずに呼び始めた呼称でしかない。

実際に活動していたところを誰も見たことはなく、もはや出来の良い創作話とされている。



ピカチュウ「そんなポケモンが……」

ゴーリキー「まぁ、本当に奴がそうなのかはわからないからな。ただ水司がカエルのポケモンってだけだし」

イーブイ(水タイプのカエルポケモンっていったら……。いや、いっぱいいるしなぁ)

ドーブル「では、菱山トンネルを進みましょう。敵さんが出てこなければいいのですが……まぁ、来るでしょうね」

ピカチュウ「あれから結構特訓したからな。前のような体らくにはならないよ」

イーブイ「うん、頼りにしてるからねっ!!」

ピカチュウ(調子、いいなぁ)

ピカチュウ「あぁ、そうだ。チーム名なんだけど……。前ドーブルが言ってた、『Forth』にすることにしたよ」

ドーブル「えぇ、Earth に降り立った4匹(Four)のポケモンたち。2つを掛け合わせた造語ですが……。ネーミング、安易だったでしょうか……?」

イーブイ「いや、うん。『Forth』! すごくいい名前だよ!!」

ピカチュウ「……まぁ、イーブイがこの通り気に入ってるから、それも理由なんだけど……」

ゴーリキー「せっかく探検隊として赴くのに、名前がないとしっくり来ないしな。ワハハッ! ……じゃあ、皆さん方」

ピカチュウ「……行こうっ!!」


こうして一同は、菱山トンネルを突き進むのだ。



《《トンネル内部》》



イーブイ「私も実際に来るのは初めてなの。なにせ、皆と違って戦いも強くなかったしね……」

ドーブル「……やたら薄暗いですが……いえ、イーブイ。別に弱くたって、大丈夫なんですよ。それ相応の対応を、見いだせれば」パッ

ドーブルは発光剤を具現化し、身体に塗りたくった。

ピカチュウ「おおっ、これなら明るいし、先に進める!!」


ドーブル「ん……?」


ピカチュウ「おい、どうしたんだ?」

ドーブル「いえ、なにかチクッと痛みが……。虫でもなにかいたのでしょうか?」

イーブイ「私も。マッシブーンとかかな……?」

ピカチュウ「だったら死ぬぞそれ」

ゴーリキー「え、俺は特に気付かなかったが」

ピカチュウ「そうだよな……俺も、何にも感じなかったぞ」

毒司(フン。一匹鈍感な筋肉バカがいたようだな。そしてアイツは電気タイプ。“せいでんき”の特性があるから、触れるこの作戦は通じ難い。おい、地司、お前は先に行ってて例の事、やっててくれ)

地司(あぁ……)ザクッ

地司と呼ばれたポケモンは、地面へと潜り進んでいった。


──やがて


ピカチュウ「お、光が見える。出口だな。……しかし」


ヒュウゥ……。


砂、砂、砂。
一面に広がる砂景色。吹きすざむ砂嵐。


ゴーリキー「うおっ、砂嵐が強いな。ここを抜けると、町が見えるのか?」

ドーブル「いえ、まだです。ほら、目の前に海原が広がっているでしょう? この海を超えてこそ、デザートサンへと辿り着くのです」

ピカチュウ「かあぁ~、まだ先に進むってのかぁ。でも、どうすんだ……船もないのに」

イーブイ「……なんか私。ちょっと、気分が悪くなってきたみたい……」

ピカチュウ「ん、大丈夫か?」

……しかし、他の面前も。

ゴーリキー「……ハァ、ハァ……」

ドーブル「……うぅぅ」

ピカチュウ「……おい、どうしたっていうんだ、皆! 俺は……なんともないってのにぃっ!!」


──ボコッ!


ピカチュウ「!?」

そしてピカチュウの前に、とある二匹のポケモンが現れる。

ピカチュウ「つっ……なんだぁ、お前らっ!!」

……スコルピと、サンドパンだ。

スコルピ「砂漠の蠍には気をつけな。俺は“毒司”スコルピ。光に出で刺し、闇に潜み好機を待つのよ」

サンドパン「……」

スコルピ「ああ、そいつは“地司”サンドパン。おっと、地司と呼ばれるのをコイツは嫌がってたな」

サンドパン「……俺は、人様に呼ばれることは嫌いなんだ。それが肩書であれ、なんであれでな……」

ピカチュウ「!」

ピカチュウ(……もしやとは、思うが)


****


──数年前


俺『お前っ、バトルするんならよぉ、名前ぐらい聞かせろやっ!!』

???『……俺の名前など、これから負ける奴に名乗ってなんとなる。それに俺は、人様に名前を呼ばれることは嫌いなんだ……』


あの時負けたトレーナーに、言われたことと。
ポカブが死ぬ要因になった……トレーナーに──


****

ドーブル「……ピカチュウ」

その時、声も絶え絶えに、ドーブルが語りかける。

ドーブル「免疫を具現化し身体に取り込み難を逃れたのですが、満身創痍です。それより、こいつらから逃げましょう……。1 vs 2 は分が悪い……」

ピカチュウ「えっ、ど、どうやって……?」

ドーブル「こうするのです……えいっ!!」ボワン


ドーブルは、自身の背中に巨大な翼を具現化させたのだ!


ピカチュウ「なぁ、おい……まさか……?」

ドーブル「そのまさかです。しっかり捕まっていて下さい……」

ピカチュウ「だから、心の準備ってもんが……!」

ドーブル「知っちゃこっちゃありません」バサッ

ピカチュウ「「う、うわあぁ~っ!!?」」

スコルピ「!」


そしてドーブルはピカチュウたちを掴み、空中へと舞った!


ドーブル「では、このままデザートサンへと向かいますっ!!」ビュウゥッ

ドーブルは大きく翼を羽ばたかせ、更に加速する。

スコルピ「くそっ、あいつら、ここまで追い詰めたんだ。……逃がしてたまるかっ!!」

サンドパン「……待て」

スコルピ「地司!?」

サンドパン「現状奴等を追う術を我々は持たぬ。こうなったら、我々もデザートサンまで追うしかあるまいよ」

スコルピ「……地司、今日は珍しく良く喋るな」

サンドパン「……」

サンドパン(あの、ピカチュウ……もしかして)


──ボコッ。


サンドパンたちもまた、デザートサンへと向かうのだ。



【世界構成】

中央の島、フレアグリンには『菱山(ダイヤード・マウンテン)』が連なる。そして海を大きく四つに分断するのは『渦の十字(クロス・メイルシュトローム)』と呼ばれる渦潮地帯であり、これらの存在のため、五つの大陸は自由に交易ができない状態である。

フレアグリンの菱山からはみ出したエリア(角端地)に広がる海を渡り、砂漠、寒冷地、火山帯、荒地と、各々の大陸へと渡るのだ。

しかし現状、菱山から荒地のアンブラックへと渡ることは困難を極める。十八司により封鎖されており、十八司以外のポケモンが訪れることができないからだ。



《《デザートサン サンドバァの町》》


……ドサッ!!


ピカチュウ「……痛ってぇ! おい、もう少し優しくおろせないのか!?」

ドーブル「そんなことを言っても……いられません。……グフッ!!」

ピカチュウ「だ、大丈夫か?」

ドーブル「私の具現化能力にも、限界があるのです……」

イーブイ(……)

ゴーリキー「ハァ、ハァ……」

ピカチュウ「大丈夫か、お前ら……。と、とりあえず、最寄りの診療所かなにかに、行こうか……」


ピカチュウたちは付近の診療所で治療を受け、一夜を過ごすことにした。
また聞き込みによると、この辺りにはとある遺跡があり、そこには誰一人立ち寄ったことはないのだという。

もしかしたらその場所に、『砂のオルゴール』は存在するのかもしれない……。

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