その② “無司”ブニャットと“闘司”ゴーリキー

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《《ポケモンたちのタウン》》


草原が広がり、清き水が湧き出ている。
雲一つとてなき大空。立ち並ぶ露店。
中央の広場では、ポケモンたちが談笑を交わしている。


この世界は山脈に囲まれ、五つのエリアに分かれている。


中央には草木溢れ、タウンの存在するフレアグリン。
北西には砂漠広がるデザートサン。
北東には氷河に閉ざされたアイスロック。
南西には火山帯のマグマランド。

どのエリアも、不思議のダンジョン化が進んでいる。


そして、南東のアンホワイトには十八司のアジト……。
《ブラックタワー》がそびえ立つのだ。


ピカチュウ「……なんか、腹減ってきちゃったな」

イーブイ「あ、だったら、知り合いの店があるんだ。そこに行こう。とっても美味しいんだ! 『ハリテヤマのちゃんこ鍋』って言うお店なんだけど……」

ピカチュウ「適材適所っていうが、その通りだな」



《《ハリテヤマのちゃんこ鍋屋》》



オクタン「あらぁぁん、いらっしゃいん……イーブイィ」

出てきたのはこの店の従業員、オクタンである。

イーブイ「あれ、おばさん。店の主人は今日はいらっしゃらないんですか?」

オクタン「あぁん、マスターは今ん、不思議のダンジョンにぃ資源を回収しに行っててねぇぇ……」

イーブイ「アハハ、マスターですか。なんかカフェみたいな感じですね。ちゃんこ屋なのに」

オクタン「ちゃんこだけじゃないんぅ。キムチ鍋、もつ鍋、すき焼き、しゃぶしゃぶ、何だってあるさぁぁん、好きなものを言っとくれぇん。あと……その子は誰なんだいぃぃ?」

ピカチュウ「あぁ、俺は最近、いや最近過ぎるな。ここに来た、まぁ新入りだよ」

イーブイ「ふ~んぅぅ。あなたもあの声に導かれぇ、この世界にやってきたという訳ねぇぇん」

ピカチュウ「そういう訳だ。よろしく頼むぜ、ねっとり声のタコさんや」

イーブイ「ここの主人のハリテヤマはタウン一の実力者。彼がいるからこの町には十八司がうかつには近寄れなかったんだけど……いないと、不安だね」


──しばらくして


オクタン「はいっ、できたわぁぁんっ!!」ドドンッ

出されたのは、一食分に小分けされた鍋物。
煮込み具合、味付けもピカチュウ好みの味であった。

ピカチュウ「……アンタも、料理旨いんだな。俺もこんな料理の上手いお母さんが良かったよ」

イーブイ「ピカチュウのお母さん……ライチュウとか? アハハハ!」

ピカチュウ「バカに、するなよな」

オクタン「そうよ坊や、お母さんを馬鹿に馬鹿にするもんじゃないわぁぁぁぁんうぅぅぅぅ」

ピカチュウ「あ、あぁ……えぇ」

ピカチュウ(お母さん……今どうしてるんだろう。あの時のご飯、どんな味だったんだろう)


****


食べ終えたピカチュウとイーブイは、その晩、タウンの宿屋へと泊まるのだ。

ピカチュウ(……)

特にすることもなくピカチュウは、情報収集のために宿屋の文献を眺めていた。

ピカチュウ「……うぉっ、この世界にも漫画があるのか。しかも、人間の世界と同じものまであるぞ」

少々、目的が脱線してしまっていたが。

???「ハハ、兄ちゃんも読んでるのか。その漫画」

ピカチュウ「ん、アンタは?」

ピカチュウに呼びかけたポケモンは、ゴーリキーだ。

ゴーリキー「いや、なんでもないさ。うん、アンタの読んでるものは……そうか、アンタもその漫画が好きなのか」

その漫画とは、キ○肉マン であった。

ピカチュウ「格闘漫画は好きだったからな。あとは○キとか、タ○とか」

ゴーリキー「ハハ。兄ちゃんも読んでるのか。結構古い漫画だけど、どれも未だに連載してるからな」

ピカチュウ(……おや、これは。十八司に関する文献か)



【十八司】

それぞれの属性を司る18名のポケモンにより構成される過激派グループである。

先程のウソッキーは“岩”、ズキズキンは“悪”を司る。

最近急激にこの世界の各地に蔓延り、勢力を拡大しているのだが、その行動の裏には資源確保の他に……もっと大きな何かがあるのではないのかと疑われている。



ピカチュウ(そろそろ夜も更けてきたな。風呂に入って、さっぱりするかな)

ピカチュウはカイリキーと別れ、大浴場へと向かう。


****


《《大浴場》》


ピカチュウ(……あぁ~……良い湯だ。てか俺以外誰もいないのな。貸し切りのようでなんだか気分が良い)


……その時である。


「「キャァ~~~ッ!!?」」


ピカチュウ「!!?」


宿内に、悲鳴が響き渡った!


ピカチュウ(い、今のは……女湯の方向からだっ! そしてこの声は、イーブイのもの……い、一体何がっ!?)ダダッ


そしてピカチュウが女湯に駆けつけると、そこでは。


イーブイ「あっ、ピカチュウ……! た、助けて……!!」

イーブイが、とあるポケモンに襲われていたのだ!!

ピカチュウ「お、おい……お前は誰だっ!?」

ブニャット「ケケケ。アタイは十八司のメンバー。ノーマルタイプを冠する“無司”ブニャット様よ! 我が同胞が襲われたと聞いてなぁ。お礼参りに来てやったという訳さっ!!」

ピカチュウ「なんだと……? 言いがかりは大概にしろよ、俺たちが襲われた立場なんだぞっ!!」

ブニャット「そもそもお前、女湯に入ることになんの躊躇もなかったのか!? このド変態めっ!!」

ピカチュウ「そもそもポケモンは服を着ないだろっ!!」

ブニャット「じゃあダゲキとかお着替えピカチュウは一体何なんだっていうのさ!!」

イーブイ「あの、話を脱線させないで……」

ブニャット「とにかく覚悟するんだな! このブニャット様が……貴様をあの世へと送ってやるよっ!!」

ピカチュウ(くそっ、なんだってこんなことにぃっ……)


かくして、ピカチュウとブニャットの闘いが、少々締まらない形ではあるが幕を開けたのだ。


ピカチュウ「え、えっと……そうだ、ピカチュウと言えば……“10万ボルト”ォッ!!」

ブニャット「ほぅ……」

しかし、ピカチュウの攻撃は、イーブイの方へと向かってしまった。

イーブイ「き、きゃんっ!!」ビリビリッ

ピカチュウ「あ……すまんっ、イーブイ!?」

ブニャット「ハーハハハッ! アンタ、戦いはど素人のようだ。そんなんでこのアタシを倒せるとでも思ったのかい? 
この……ド下等がぁっ!!」

ピカチュウ「な、なんだとぉっ!?」

イーブイ「い、いけないっ、ピカチュウ。それは敵の“ちょうはつ”…罠よっ! 素直に受け止めては駄目だっ!!」

ブニャット「そうさっ、アンタはこの高貴なるアタシには決して敵わないのさ! 例えアンタが何十匹いたとしてもねぇっ!!」

ピカチュウ「テメェッ、その言葉そっくり返してやる! さっきから無性に力も湧いてくるしなぁっ!!」

そして、ピカチュウはブニャットに攻撃を仕掛けるのだが……。

ピカチュウ「グ、グへェッ!?」ドガッ

ブニャットに攻撃は届かず、逆に自滅する破目となってしまう。

イーブイ「だから、それがアイツの狙い……“いばる”なのよぉっ!!」

ピカチュウ「グ……グウゥ……そうだったのか……。どおりで……頭が混乱してる訳だ……」

ブニャット「さて、そろそろ止めを刺すとするかねぇ……」

ピカチュウ「…! ま、待て……」

ブニャット「坊や、冥土への土産に覚えておくんだね。戦いに、待ったもクソもないんだよ……」


「「いや、待ってもらおうか。アンタ」」


ブニャット「!!?」


… … ド カ ッ ! !


ブニャット「グハラァッ……」

次の瞬間、素早い拳がブニャットに炸裂したのである。

イーブイ「え、な、なんなの?」

そしてピカチュウたちの前に……。

ゴーリキー「やれやれ。悲鳴の元に駆けつけたら……。これはちと、厄介なことになってしまったかな」

ピカチュウ「ア、アンタはさっきの……!?」

ブニャット「き、貴様は……“闘司”ゴーリキー! よもや、我ら十八司を裏切るのかぁっ!?」

イーブイ「え、こ……この人も敵なのおっ!? も……もうやだぁっ!!」

ゴーリキー「いや、心配するな譲ちゃん。俺は確かに十八司だが、何となく暇で入っただけだし……それにもう、脱退を余儀なくされるだろう。コイツをやっつけてしまうことになるからな」

ブニャット「自惚れるなよ、闘司! 裏切り者は……排除するのみだっ!!」ガキガキィッ

イーブイ(……“みだれひっかき”っ!!)

だが。


……ワッシャ!


ブニャット「……!!」

イーブイ「す、凄い! アイツの攻撃を……素手で受け止めたっ!!」

ゴーリキー「いや、早まったと後悔している。だって痛いからな……かなり。まぁ、これでお前に攻撃ができるがね」

ブニャット「あっ……あぁ……!!」



「「……リキリキリキリキリキリキィッ!!」」ドカドカ



彼は怒涛のパンチラッシュを、ブニャットに見舞った!


ブニャット「うげぇ~っ!!」バッゴオ~ン

彼女の身体は宙に舞い壁に激突し、そのまま……。

ブニャット「……」

気絶してしまったようだ。

イーブイ「あ、ありがとう……ゴーリキーさん」

ゴーリキー「礼には及ばない。それより、これからが大変だぞ。コイツをぶっ倒したことにより……これから十八司は本気で俺たちを抹殺しに掛かるだろう」

ピカチュウ「おっ……おい! 俺『たち』って、もしかして、俺も入っているんじゃないだろうなぁっ!! な、何てことしてくれたんだぁっ、お前ッ!?」

ゴーリキー「助けてやっといてその言い草も酷いな。だから罪滅ぼしとして俺もお前たちと行動する。戦力が増えて困ることもないだろう?」

ピカチュウ「あ、あのさぁ……」


──その時。


オクタン「ちょっといいかしらぁん、各々がたぁん」

ピカチュウ「あ、オクタン……なんでここに?」

オクタン「ひとまず休業ってところでねぇん、ここで骨休み……私骨ないんだけどぉん……オホホホホホホホォン!!」

ピカチュウ「……」

オクタン「それで、皆さぁん、旅をするっていうのならぁん……『オルゴール』って、ご存知かしらぁぁんぅ?」

イーブイ「……オルゴール?」

ゴーリキー「……ああ、知っている。最近なぜ十八司がここまで勢力を伸ばしているのか、お前たちは不思議に思わないのか?」

イーブイ「え、だから資源を独占しようとしているだけじゃないの?」

ゴーリキー「いや、奴らの目的……それを俺は知っている。そこのご婦人もご存知のようだが」

オクタン「ええ、十八司の真の目的、それは……元の世界へと、帰還することよぉぉぉんぅぅぅぅ」


ピカチュウ & イーブイ「!!?」


(……)


ピカチュウ「どうして、そんなことを知ってるんだ?」

オクタン「その人は元十八司だからともかくとして、私が知っている訳は、まぁ……趣味が高じて、とある探偵に調査してもらったからだけどぉん……」

イーブイ「ガバガバなんだね十八司」

ゴーリキー「……ただ逃げるだけで、そんなつもりはなかったんだけどなぁ。言われたら仕方ない。『オルゴール』について、俺の知っていることを、お前たちに話すよ」



十八司はとあるダンジョンにて、古びた石碑を発見した。
そこに示されていた文は次の通りだ。

《この世界に眠る5つのオルゴールを集めし者よ、
 暗黒の地にこれを捧げるべき。
 さすれば、閉ざされし世界は再び開かれん》



ピカチュウ「なんかありきたりだなぁ~……。いかにも『これ集めたら次進めますよ』っていうRPGのお約束みたいな」

ゴーリキー「あまり気にするな。それより、次の十八司がどこから襲ってくるかわからない。それも気にしなければ、な」

イーブイ「なんか、大変な旅になりそうだね……。それ以外に、オルゴールの手がかりもなさそうだし」

ピカチュウ「まぁでも、元の世界には……帰りたいしなぁ、ゴーリキーに乗っかるしかない」

ゴーリキー「……とりあえず、今日は休もう。さすがに連続で襲って来ることはないと願いたい」

イーブイ「そうだ、ちゃんこ屋のハリテヤマさんも朝には帰って来るんじゃない? ハリテヤマさんにも応援を頼んだら、きっと頼りになるよ!」


一同は、宿屋で夜を明かし身体を癒やす。
そして、その朝……。

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