その① 謎の“声”に導かれて

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読了時間目安:12分
ずっと、俺たちは不滅だ。

俺たちが生きている限り……繋がっているのだから──
《《某地方 とある町のとある家》》


「おーい、ご飯よ~。いい加減降りて来れば~?」


「うん、今いくよ。今行くから……ホントにさ」


と言いながらも母の呼びかけを無視し続ける俺は、実のところ、食事を摂る気にはなれなかった。



……理由は二つ。

とある事情でポケモントレーナーの道を諦めたことと、それがきっかけで友人とケンカ別れしたことだ。


俺「……ハァ」

俺の名前は……いや、名前なんてどうでもいいだろう。
しばらくは俺で通すことにする。

俺(ポカブ……なんで、なんで死んでしまったんだ……)

そう。相棒のポケモンが病死したのだ。
これではトレーナーの夢もへったくれもない。

俺(……これから、俺は)

この地方は実にトレーナーが多い。俺自身、トレーナーであることを誇りに思っていた。
そんな中でトレーナーじゃない俺は、これから、どう生きていけばいいのだろうか。

周りをトレーナーたちに囲まれながらも、今までの軌跡を完全に閉ざし、別の道を歩むことなどできるのだろうか?


……そりゃあこんな倦怠感にも、悩まされる。


俺(ホントに、どうすればいいんだ……)



──その時、だった。



『『おい……おい……そこの、お前』』



俺「……!?」


俺に呼びかける、不穏な声が一つ。


『『現実が、そこまで嫌か……? “そちら”の世界では、生きづらいのか……?』』


俺「だ……誰だ! おい、どこから喋ってる!?」

警戒心を剥き出しにするが。


『『私のことは気にするな。それより、今からいいところへと連れて行ってやる』』


俺「……は?」


『『お前はポケモンが大好きなようだ。だからこそ、そのように苦悩しているのだろう? とてもいいところだぞ……。何しろ……煩わしいトレーナーなど一人もいないのだからなっ!!』』


俺「だから……どういうことだっ、お前は誰なんだっ! おいっ、答えろぉっ!!」



シュン──



次の瞬間、部屋から俺の姿は……完全に消え去った。


****


… … ド ス ン ッ ! ! !


俺「あいてて……」

どうやら、遥か上空から落下したようだ。

俺(ここは……?)

見たところ、拓けた草原の様だが……今までに見たこともない場所だ。ここはどこなんだ。
ここが、あいつの言っていた『いいところ』なのか?
そもそも、あいつは誰なんだ?

色々な疑問が沸き立つのだが。

俺(おや……)

近くに水場がある。ちょうど喉が乾いていたところだ。
とりあえず喉を潤し、これからのことを考えよう。


──ゴクゴク。


俺(……ふぅ、旨い)

ん……水面に何かが映ってる。黄色いぞ、何だこれは。

俺「よいしょっと……」

俺が屈みこむとあろうことか、同時にその黄色い“なにか”も、俺と同じ動きを見せる。

俺「えっ……?」


その時だ。
見知らぬ人影が二つばかり、俺の元に近づいてきた。


それは……。


俺「えっ、な、何だぁ……お前たちっ!?」


……俺の前に立ち塞がったのは、人間ではない。

俺が良く知っていて、そしてだからこそ、目の前で発語することなど有り得ぬ筈である……。


ズルズキン「何を驚いている? 貴様も我々と同じく、ポケモンではないか!!」


──ポケモンたちの姿であったのだ。


俺「えっ、俺もポケモン!?」

ウソッキー「ククク……全くもってその通り。なぁ……人気者の“ピカチュウ”さんよぉっ!!」

俺「な、なにっ? 俺が、ピカチュウッ!?」

自分の姿を今一度、確認しても……。

俺(……ホントだ、ピカチュウの姿になってる!)

しかし、どうして、なんでっ!?


──すると。


???「「な、なにやってるの君っ! は……早く逃げるのよぉっ!!」」ガシッ


俺 改め ピカチュウ「うわっ、な……何するんだよ!!」


……ダダッ。


突如、とあるポケモンが俺の元に駆け出してきた。
そして俺の身体を掴むや否や、その場より逃げ出したのだ。

ウソッキー「チッ、逃がすかっ! 獲物に逃げられたとなっちゃ、我ら“十八司”の恥だ!! ズルズキン、奴等を追うぞっ!!」

ズルズキン「おうっ!!」


****


《《草原の地下道 付近》》


ピカチュウ「ハァ、ハァ……お、お前……なんで俺を……。そ、それに……お前もポケモン、イーブイだ……。ど、どうなっているんだ……この世界は……」

イーブイ「えへへ、あなたも元の世界からこっちに来たんでしょ? わかってるんだから!!」

ピカチュウ「……! ……よ、よかった、仲間がいたか……」

イーブイ「そう、私も人間。あなたもね。そしてこの世界は……あなたと同じように、ポケモンとなった人間が住むところなのよ!」バァーン

ピカチュウ「な……なんだとっ!?」

イーブイ「ひとまずあの地下道へ隠れましょう。私が知っている限りの情報を……あなたに話すから」



イーブイも、俺と同じように不思議な声に導かれ、この世界へとやってきたのだと語った。
あの声の主が何者なのかはわからないが、この世界には同じようにポケモンへと変貌を遂げた人間たちが大勢やって来て、何もなかったこの世界に、独自の文化を築き上げた。

先程の輩は『十八司』。
彼らもまた人間たちであるが、ほとんどがかつて人間世界で悪行の限りを尽くしていた、悪人の集団でもあるらしい。
あまり関わり合いになりたくない集団だということは、わかる。

……ハァ、関わり合いどころか、要らぬ因縁をつけられそうなのだが。



ウソッキー「待てぇっ、逃さんぞボケェッ!!」ダダッ


イーブイ「ぎゃあっ、話してたらもう来ちゃったじゃない! は、早く逃げよっ!?」

ピカチュウ「……10分前ぐらいは、ダラダラできていたのになぁ……」


そして俺とイーブイは、地下道へと逃げ込んだ……。


****


《《地下道内部》》


ピカチュウ(……なんで、こんなことに)

イーブイ「ところでさ、ピカチュウ。“不思議のダンジョン”って、知ってる?」

ピカチュウ「……だんじょん?」

イーブイ「私たちだって生きている。お腹は空くし、怪我だってする。“不思議のダンジョン”には資源が至るところに存在していて、ポケモンたちはそれぞれグループを作り、その資源を回収して生活しているの」

ピカチュウ「この地下道も、そうだって訳か?」

イーブイ「うん、話早いね。この世界には、その不思議のダンジョンがいたる所に存在しているの!」

ピカチュウ(……テンション、高いなぁ)

イーブイ「……でも」

ピカチュウ「でも?」

イーブイ「あの十八司がその資源を独占しようとしている。いたる所の不思議のダンジョンで、私たちのような弱いポケモンをカモにしているの。そして、来たばかりの私はまだグループを作れていない。だから……」

ピカチュウ(まさか)



イーブイ「「なにかの縁だと思って……お願い、ピカチュウ。私と……一緒にグループを作ってっ!!」」



ピカチュウ「!!?」

イーブイ「お願いっ!!」

ピカチュウ「いや、ちょっと待て! 俺はこの世界に来たばかりで、まだ右も左もわかっちゃいない。いきなりそんなことを言われても……」

イーブイ「……無理なのは、百も承知だからっ!」

イーブイ「それに、お前は! 出会ったばかりのこんな男を……信用できるのかっ!?」

イーブイ「……大丈夫だよ。今話してみた感じでも、あなた、悪い人じゃない。心の優しい人。それはわかるよ」

ピカチュウ「……!」

イーブイ「……やっぱごめんね、いきなりホントに、こんな話持ちかけたら。そりゃ……」


ピカチュウ(……)


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《《数ヶ月前 トレーナーズスクール》》


友だち「元気出しなよ。そんなんじゃ、ポカブちゃんだって、浮かばれないよ……」

俺「うるさいな、ほっとけよ。お前はポケモンが死んでないから、そんなことが言えるんだ」

友だち「ち、違うよ! 私そんなこと、別に思って」

俺「……じゃあ黙れよ! 女の癖に、しゃしゃり出るなよ! 俺はお前のそういうところが、嫌いなんだよっ!!」

友だち「……!!」

数ヶ月後、その友だちはとある街へと転校して行った。
後悔したところで、あんなことを言った時点で、遅かった。

……あの時の俺は、どうかしていた。
そして今また、俺は女に冷たく当たっているんだと痛感した。


…………もう、繰り返したくない。


………
……


ピカチュウ(……だったら)

イーブイ「え、どうしたの……?」

俺「……別に、なんでもない。よし、わかった、イーブイ。お前とグループを作る。そうすることにするよ!」

イーブイ「……! やったあっ、ありがとう!!」

ピカチュウ「名前は、そうだな……。ま、あとから決めればいいか」

イーブイ(遂に、私も……グループをっ……!!)ウキウキ

ピカチュウ「……まぁ、詳しい話は後でな。それに、もうすぐ出口のようだし……」

イーブイ「あぁ、なんか、ドキドキしてきたよ!」ドッキドキ

ピカチュウ(……わかりやすい)


《《そして 地下道 出口》》


ピカチュウ「!」

ウソッキー「クックク……」

しかしそこには、ウソッキーが待ち構えていたのだ……。

ズルズキン「へへへ……」

そして背後からは、ズルズキンが迫る。

ウソッキー「うへへへ。挟み撃ち作戦、大成功だ」

ズルズキン「冥土の土産に教えといてやろう。俺様の異名は“悪司”。弱っちいポケモンをボコボコにするのが生きがいなのさ。ククク……この瞬間がたまらねぇぜ」

イーブイ「いきなり、万事休す!?」

ピカチュウ「戦うしか、ないのか……」


──しかし。


「「……やめろ、“十八司”」」


ウソッキー & ズルズキン「??」


… … ド ガ ッ ! !


ウソッキー「グ……グウゥ……」

ズキズキン「い……痛ってえっ! てめぇ……何者だっ!!」


ピカチュウ(だ、誰だ……!?)


サザンドラ「そこを、通してもらおう」


突如として現れたそのポケモンは、“サザンドラ”であった……。


ウソッキー「ふ……ふざけるなよっ!! こんなことをして……“十八司”に歯向かって!!!」

イーブイ「サ、サザンドラって……いかにも悪役っぽいポケモン……」

サザンドラ(……)

サザンドラ「見た目で判断するな。お前も殺されたいか?」

イーブイ「ひ……ひぇっ……」

ズルズキン「よ……よくもやってくれたなぁっ! これでも喰らえやぁっ!!」ビュッ

敵は、サザンドラに“とびひさげり”を見舞うが。

サザンドラ「……くだらない」ガシッ

ズルズキン「!!?」


だがサザンドラは飛びかかったズルズキンの脚を掴み、そのまま身体を、地面に叩きつけた!


ダ ダ ァ ン ッ ! !


ウソッキー「くそぉ……痛え……」

ズキズキン「ひ、ひとまず俺たちは逃げ去るが……お前らっ、覚えとけよっ!!」ダダッ

二匹は、そのまま反対方面へと逃げ去って行く。

ピカチュウ「てか俺、何もしてないんだけど……」

イーブイ「あ、ありがとう、サザンドラさん……」

サザンドラ「礼には及ばない。私もこの先に進みたかったからな。それに、今の“十八司”……。あの下らない存在を容認しているあやつを、私はなによりも許せないのだよ」

イーブイ「“あやつ”……?」

サザンドラ「……つい、口が滑った。それでは、私は先に行く。もう、会うこともないだろうが……」

サザンドラ(……こんなところで)

イーブイ「……?」

イーブイ(私のことを、チラッと見たような……?)

サザンドラ「……では、な」


サザンドラは、先へと行ってしまった。


ピカチュウ「……不思議な奴だなぁ」

イーブイ「そうね。……それよりピカチュウ、見て。この先には、ポケモンたちのタウンが広がっているんだよっ!!」

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