「な、何だ!?急に大声を出し始めて…気でも狂ったのか!?今のうちにゴルダック、水の波動だ!」
相手のゴルダックは、額の宝石を光らせたまま、両手で三角の形を作り、シウバに向けて水の波動を放つ。それをシウバは火炎放射で相殺して、目の前が水蒸気で真っ白になる。
「うわっ!?これじゃあ敵が見えない…油断するなゴルダック!」
フッ、真っ先に声を発してしまったな。それだけで十分シウバは、相手のポケモンに向かって攻撃ができる。
「シウバ、ブレイズキックをおみまいしてやれ!」
シウバが燃える足を構えたまま、水蒸気に向かって進む。白い煙に丸いトンネルが空き、相手のゴルダックの顔面にブレイズキックが直撃した。
「ギャー!!俺のゴルダックがー!!」
「へっ、やっぱりお前が戦う姿はカッコいいぜシウバ!」
蹴りを決めて勝利が決まった後、シウバは華麗に着地してコチラに戻ってくる。そして俺に向けて、右手を前に出してきた。
「…あーはいはい、勝利のハイタッチね」
昔から俺が癖でやっていたハイタッチを、まさかポケモンの方からしてくるとは思っていなかった。シウバとハイタッチした後、治療のためにフランを先に出しておく。
「くっ…どうやら僕の負けみたいだね。ありがとう、良いバトルだったよ。
どうやら僕はジム戦で連勝していたせいで、少し調子に乗っていたみたいだ」
「…それに気づけただけでも良かったな。人間勝ち続けてる間は、反省するよりも次に勝つことしか考えないからな」
エリートトレーナーと握手を終えた俺は、フランとシウバを治療するために、リュックから医療道具を取り出す。シウバにまんたんのすりを使って、フランにげんきのかけらとすごいキズぐすりを使ってあげる。
「フラフラ〜イ♡」
「わっ、治療中だから動くなってフラン!」
愛情表現のように頭をスリスリしてくるフランを何とか止めて、二匹の治療を終える。もう十分な大人になったのに、フランはまだ甘えたい年頃なのか?
改めてフランに荷物を持たせて、ハンスとリーリエを追うためにトキワの森へ入る。結構長い時間バトルしてたし、もうニビシティに到着してるかも?
「ん、あの金髪ポニーテール…リーリエか?何か抱えてるっぽいけど…」
キョロキョロ周りを見回して、どうやら誰かを探しているようだ。まさかハンスとはぐれたのか?アイツ何やってんだよ…。あ、こっちに気づいた。
「グランさん、ちょうど良かったです!この子の親を探すのを手伝ってくれませんか?ハンスさんも探しに行ったんですけど戻って来なくて…」
リーリエが大事に抱えてるポケモンは、カントー地方では珍しい分類に入る、さいほうポケモンのクルミルだ。急な展開に驚いたが、気を取り直してポケモンの親探しを手伝うことになった。