第17話 新たな始まりはすぐ側にある
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
晴れてライバル関係になったソレイユとコメット。 これを境に、2つのチームは何かと競いごとをするようになった。 例えば依頼、ダンジョンの知識などだ。 コメットはかなり知識があり、ソレイユは不測の事態に対応しやすい。 たまに集まって話し合ったりもしながら、彼らは親交を深めていった。
そんな刺激的な日々の中、新たな始まりのきっかけが舞い降りる。
「......暑い......」
朝なのにカンカンと日差しが照りつける。 それもそのはず。 そろそろ8月に入ろうかという時期なのだ。 ユズは晴れているのは好きではあるが、今日はずっと[ねっぷう]を浴び続けている様に感じられ辛そうな顔を見せる。
「ユズ大丈夫?」
「大丈夫......ただ水がちょっと欲しい」
「ちょっと買って飲みながら行こっか、草タイプって大変だねぇ......」
近くの屋台から出来立ての冷たい木の実ジュースを購入し、それを飲みながら依頼板へと向かう。 暑い中での冷たいものはやはり至高。 2匹は幸せそうな、どこかフワフワした表情を浮かべながら歩き続ける。
「全く......朝から恥ずかしくないの? そんなだらしない顔で飲んで」
つんとした声に2匹は思わず顔をあげる。 そこにはイリータの姿があった。
「あ、おはよーイリータ......」
「おはよーじゃないわよ。 その顔をどうにかしなさい」
「ごめん、どうしても暑くって......」
「例え暑くても威厳を保つのが探検隊ではなくて? そんなポケモンをライバルにした覚えはないわよ」
「うう......」
完全に図星であり、ユズはうなだれる。 そんな中、キラリはある事に気付いて疑問を投げかける。
「ねぇイリータ、オロルは?」
「え、何言って......私の後ろにっていない!?」
すぐ後ろにいると思っていたのだろうか? 誰もいない後ろを見てイリータは驚愕する。 オロルはかなり遠くの方にいて、汗にまみれたその顔はまさに絶望のそれだった。
「......あ......つ......」
オロルは氷タイプ。 草にとっては光は大事だが、氷タイプはそうではない。 むしろ天敵なのだ。 要するにユズよりも辛そうである。
「オロル......大丈夫?」
「だい......じょうぶ......はは、今日いつもより暑いね......死にそう」
オロルは苦し紛れに笑って見せる。 オロルの抱える照りつける光の強さへの苦悩に、ユズは少し同情した。
「......さ、さーて、今日はどうしようかな? やっぱ依頼かなぁ?」
それを差し置いてキラリがウキウキしながら2匹に聞く。 彼らから学べる事は多いため、それが彼女のモチベーションにもなっているようだ。
だが、イリータは首を振る。
「悪いけど今日はパスよ。 それだけあなた達に言いに来たの。 もうすぐ遠征に行く事にしたから、今日からはその準備に当てるわ」
「......あの、遠征って?」
「え、もしかして知らないのかい......?」
ユズとキラリは頷く。 イリータがそれに対し呆れるかの様にため息を吐き、こう吐き捨てるように言った。
「......ほんっとに無知ね......」
「しばらくの間旅をするの!?」
ゆっくり話すのにピッタリな涼しいレストランで、あの甘過ぎるモモンタルトを食べながらキラリは叫ぶ。 それは店内全体に響き、周りの目に気付いた彼女は少し顔を赤くした。
「......まあ、そうだよ。 夏の探検隊の一大イベントと言っても良い。 僕らも正直分からない事が多いんだけど、しばらくここから遠い場所へ行くんだ。 街にはしばらく戻れないけど、依頼では普通行けない場所へ行く事が出来るんだ。 探検隊としては良い機会だと思うよ」
「そんなものが......で、2匹はそれ行くって事?」
「そのつもりよ。 実力を上げるにはうってつけだもの。 行かない手は無いわ」
イリータはいつもの様な自信たっぷりな笑顔をし、アイスティーを飲み干す。
知らない場所、ポケモン、そして待っているだろうお宝。 それは探検隊の気持ちを高揚させるというのは言うまでもない。例え想像するだけでもだ。
当然4匹も例外な訳ではない。 タルトを食べ終わると同時に、キラリは立ち上がった。
「くう〜っ! 遠征最高!! 当然行くよねユズ!」
「もちろん!」
ユズもそれに強く同意する。 その姿を見て、イリータとオロルは頷いた。 それでこそ我らがライバル、そう言いたげな様子で。
「で、どう準備してけばいいの? 私達も今日からやるよ!!」
「ええっと......まず役所に行って遠征場所を選択して、必要な物資を用意して、それでもう一度役所に行って最終確認のサインを貰う。 その後、役所が決めた日時に出発......って流れだね。 意外と面倒だけど」
「成る程......ってことは、もう2匹は遠征場所とかは決めてるの?」
ユズの疑問に、イリータは頷き口を開く。
「ええ。 北の方にある湿原よ。 かなり広いものだから、まだ調査し切れてないんですって。 それだけでも魅力的なのよ。 それにかなり涼しいところだから、オロルもさっきみたいにはならないでしょうしね」
「はは......お気遣い感謝するよ」
少し嫌味も込めて微笑むイリータに対し、オロルは苦笑する。 彼の中には体の弱いイリータにとっても涼しい方が良いだろうというお返しが浮かんだが、流石に言わないでおこうと口をつぐんだ。
「そっか......うん、ありがと2匹とも! そんじゃ早速役所行ってきまーす!!」
「ふえっ、キラリ待って!」
キラリの行動はケーキをゆっくり味わっていたユズにとってあまりに唐突だった。 口を大きく開け、残りを頬張って席を立つ。 2匹にお礼がわりの礼をした後、急いでキラリの後を追った。
......この涼しい場所から離れるのは少し憂鬱になったが。
「おお! 色々あるんですねぇ!」
ユズとキラリは役所の中にある「探検隊サポート課」にいた。 ここで探検隊に関する全ての事を手続き出来るのだ。 チーム結成の時もお世話になったものだ。そのおかげで職員の1匹、ドレディアと少し慣れ親しんだわけだが、そのドレディアが親切にこちらに合いそうな場所を短時間で調べて来てくれた。......それでも多い事には変わりないけれど。
「ええ。 お2匹方ならば、火山系を避ければ大丈夫なくらいですし。 謎に包まれた場所は数え切れない程ありますから。 新興のダンジョンを始め、ずっと秘密が守られ続けているダンジョンも」
「そうなんですね......」
「手続きは早い者勝ちなんですが、お2匹方はかなり早めに申請されたので選び放題ですよ。 特別な申請がない限り1つの場所に探検隊を被らせるのはあまり良くないという考えから、遅すぎると場所も絞られてしまうので......」
2匹は唸りながら届けられた大量の資料を凝視する。 どれも魅力的なものばかりだが、初めての遠征なのだ。 慎重に決めなければならない。
「......あ」
ユズがボソリと言葉を漏らす。 彼女の視線は、あるダンジョンの資料に集中していた。
それに気づいたキラリが、ドレディアに詳細を尋ねる。
「ドレディアさん、このダンジョン......」
「ああ、これは『虹色聖山』というダンジョンですね。 聖山という名の通り、麓に行くとご利益があるとされる山ですよ。 ただ、写真を見れば分かるとは思いますけど見た目が虹色な訳ではないんです。 なのに何故名前に『虹色』を冠するようになったのか......それが1番の謎なんですよね」
2匹は改めて写真を見てみるが......うむ、確かに虹色の感じは無い。 神聖なものは感じるが、見るからに普通の山だ。
「ほお......ユズ、ここに行きたいの?」
「あっ......うん。 なんというか、すこし気になるというか......」
ユズは少し俯きながら話す。
ーー少しモヤモヤするところがあるとはいえ、流石にこれはわがままだろう。 キラリにも行きたいところがあるかも知れないのに。
そんな思いが頭から離れないのだ。
(キラリの思いも尊重したいし、ゴリ押すのもな......)
キラリの顔色を伺ってみる。 キラリは笑顔でこちらの方を見て言った。
「よし! そこ行こう!」
「うん、私ばっかりってのも......ってええっ!?」
断られるかと思ったのに、帰って来たのはまさかの肯定。 まあ、キラリらしいとも言えるが......。 それでもユズは少し混乱する。
「えっ、いいのキラリ......」
「うん!」
「でもキラリはいいの? 行きたいところとか......」
「うーん、正直絞れないんだよねー......。 それに、ユズが行きたいって思ったんでしょ? じゃあそれでいいんじゃないの? それが1番大事だと思うよー! 私もなんか気になるし! 虹色ってなんだろうねぇ!」
キラリはニカっと笑う。 ユズはその笑顔は嘘では無いと感じた。4ヶ月程の間ずっと一緒にいたのだ、流石にこのくらいはすぐ分かってしまう。
彼女自身の優しさもあるのだろう。 けれど彼女自身が、自分と一緒にそこへ行きたいと願ったのもあるのだ。
「......ありがとう」
「? 何?」
「なんでもないよ」
キラリ自身には自覚は無いようだ。 でも、それでいいのだろう。 その暖かさこそ、キラリの強さなのだから。
......自分には無い、強さなのだから。
(......あれ?)
いきなりフッと浮かんできた思いにユズは疑問を持つ。 そういえば、前もこんな事があっただろうか。 ......きっと、人間時代の自分を表しているのだろうが......そうなると、更に謎は深まるばかりだ。
「ユズー! そんじゃ準備しよ!」
「あっ......う、うん!」
声を掛けられて我に返る。 既にちゃちゃっと書類への記入を諸々済ませてしまったようだ。
(ま......いっか、今は)
頭を振って雑念を振り払う。 ユズはキラリの後を追っていった。
そんな刺激的な日々の中、新たな始まりのきっかけが舞い降りる。
「......暑い......」
朝なのにカンカンと日差しが照りつける。 それもそのはず。 そろそろ8月に入ろうかという時期なのだ。 ユズは晴れているのは好きではあるが、今日はずっと[ねっぷう]を浴び続けている様に感じられ辛そうな顔を見せる。
「ユズ大丈夫?」
「大丈夫......ただ水がちょっと欲しい」
「ちょっと買って飲みながら行こっか、草タイプって大変だねぇ......」
近くの屋台から出来立ての冷たい木の実ジュースを購入し、それを飲みながら依頼板へと向かう。 暑い中での冷たいものはやはり至高。 2匹は幸せそうな、どこかフワフワした表情を浮かべながら歩き続ける。
「全く......朝から恥ずかしくないの? そんなだらしない顔で飲んで」
つんとした声に2匹は思わず顔をあげる。 そこにはイリータの姿があった。
「あ、おはよーイリータ......」
「おはよーじゃないわよ。 その顔をどうにかしなさい」
「ごめん、どうしても暑くって......」
「例え暑くても威厳を保つのが探検隊ではなくて? そんなポケモンをライバルにした覚えはないわよ」
「うう......」
完全に図星であり、ユズはうなだれる。 そんな中、キラリはある事に気付いて疑問を投げかける。
「ねぇイリータ、オロルは?」
「え、何言って......私の後ろにっていない!?」
すぐ後ろにいると思っていたのだろうか? 誰もいない後ろを見てイリータは驚愕する。 オロルはかなり遠くの方にいて、汗にまみれたその顔はまさに絶望のそれだった。
「......あ......つ......」
オロルは氷タイプ。 草にとっては光は大事だが、氷タイプはそうではない。 むしろ天敵なのだ。 要するにユズよりも辛そうである。
「オロル......大丈夫?」
「だい......じょうぶ......はは、今日いつもより暑いね......死にそう」
オロルは苦し紛れに笑って見せる。 オロルの抱える照りつける光の強さへの苦悩に、ユズは少し同情した。
「......さ、さーて、今日はどうしようかな? やっぱ依頼かなぁ?」
それを差し置いてキラリがウキウキしながら2匹に聞く。 彼らから学べる事は多いため、それが彼女のモチベーションにもなっているようだ。
だが、イリータは首を振る。
「悪いけど今日はパスよ。 それだけあなた達に言いに来たの。 もうすぐ遠征に行く事にしたから、今日からはその準備に当てるわ」
「......あの、遠征って?」
「え、もしかして知らないのかい......?」
ユズとキラリは頷く。 イリータがそれに対し呆れるかの様にため息を吐き、こう吐き捨てるように言った。
「......ほんっとに無知ね......」
「しばらくの間旅をするの!?」
ゆっくり話すのにピッタリな涼しいレストランで、あの甘過ぎるモモンタルトを食べながらキラリは叫ぶ。 それは店内全体に響き、周りの目に気付いた彼女は少し顔を赤くした。
「......まあ、そうだよ。 夏の探検隊の一大イベントと言っても良い。 僕らも正直分からない事が多いんだけど、しばらくここから遠い場所へ行くんだ。 街にはしばらく戻れないけど、依頼では普通行けない場所へ行く事が出来るんだ。 探検隊としては良い機会だと思うよ」
「そんなものが......で、2匹はそれ行くって事?」
「そのつもりよ。 実力を上げるにはうってつけだもの。 行かない手は無いわ」
イリータはいつもの様な自信たっぷりな笑顔をし、アイスティーを飲み干す。
知らない場所、ポケモン、そして待っているだろうお宝。 それは探検隊の気持ちを高揚させるというのは言うまでもない。例え想像するだけでもだ。
当然4匹も例外な訳ではない。 タルトを食べ終わると同時に、キラリは立ち上がった。
「くう〜っ! 遠征最高!! 当然行くよねユズ!」
「もちろん!」
ユズもそれに強く同意する。 その姿を見て、イリータとオロルは頷いた。 それでこそ我らがライバル、そう言いたげな様子で。
「で、どう準備してけばいいの? 私達も今日からやるよ!!」
「ええっと......まず役所に行って遠征場所を選択して、必要な物資を用意して、それでもう一度役所に行って最終確認のサインを貰う。 その後、役所が決めた日時に出発......って流れだね。 意外と面倒だけど」
「成る程......ってことは、もう2匹は遠征場所とかは決めてるの?」
ユズの疑問に、イリータは頷き口を開く。
「ええ。 北の方にある湿原よ。 かなり広いものだから、まだ調査し切れてないんですって。 それだけでも魅力的なのよ。 それにかなり涼しいところだから、オロルもさっきみたいにはならないでしょうしね」
「はは......お気遣い感謝するよ」
少し嫌味も込めて微笑むイリータに対し、オロルは苦笑する。 彼の中には体の弱いイリータにとっても涼しい方が良いだろうというお返しが浮かんだが、流石に言わないでおこうと口をつぐんだ。
「そっか......うん、ありがと2匹とも! そんじゃ早速役所行ってきまーす!!」
「ふえっ、キラリ待って!」
キラリの行動はケーキをゆっくり味わっていたユズにとってあまりに唐突だった。 口を大きく開け、残りを頬張って席を立つ。 2匹にお礼がわりの礼をした後、急いでキラリの後を追った。
......この涼しい場所から離れるのは少し憂鬱になったが。
「おお! 色々あるんですねぇ!」
ユズとキラリは役所の中にある「探検隊サポート課」にいた。 ここで探検隊に関する全ての事を手続き出来るのだ。 チーム結成の時もお世話になったものだ。そのおかげで職員の1匹、ドレディアと少し慣れ親しんだわけだが、そのドレディアが親切にこちらに合いそうな場所を短時間で調べて来てくれた。......それでも多い事には変わりないけれど。
「ええ。 お2匹方ならば、火山系を避ければ大丈夫なくらいですし。 謎に包まれた場所は数え切れない程ありますから。 新興のダンジョンを始め、ずっと秘密が守られ続けているダンジョンも」
「そうなんですね......」
「手続きは早い者勝ちなんですが、お2匹方はかなり早めに申請されたので選び放題ですよ。 特別な申請がない限り1つの場所に探検隊を被らせるのはあまり良くないという考えから、遅すぎると場所も絞られてしまうので......」
2匹は唸りながら届けられた大量の資料を凝視する。 どれも魅力的なものばかりだが、初めての遠征なのだ。 慎重に決めなければならない。
「......あ」
ユズがボソリと言葉を漏らす。 彼女の視線は、あるダンジョンの資料に集中していた。
それに気づいたキラリが、ドレディアに詳細を尋ねる。
「ドレディアさん、このダンジョン......」
「ああ、これは『虹色聖山』というダンジョンですね。 聖山という名の通り、麓に行くとご利益があるとされる山ですよ。 ただ、写真を見れば分かるとは思いますけど見た目が虹色な訳ではないんです。 なのに何故名前に『虹色』を冠するようになったのか......それが1番の謎なんですよね」
2匹は改めて写真を見てみるが......うむ、確かに虹色の感じは無い。 神聖なものは感じるが、見るからに普通の山だ。
「ほお......ユズ、ここに行きたいの?」
「あっ......うん。 なんというか、すこし気になるというか......」
ユズは少し俯きながら話す。
ーー少しモヤモヤするところがあるとはいえ、流石にこれはわがままだろう。 キラリにも行きたいところがあるかも知れないのに。
そんな思いが頭から離れないのだ。
(キラリの思いも尊重したいし、ゴリ押すのもな......)
キラリの顔色を伺ってみる。 キラリは笑顔でこちらの方を見て言った。
「よし! そこ行こう!」
「うん、私ばっかりってのも......ってええっ!?」
断られるかと思ったのに、帰って来たのはまさかの肯定。 まあ、キラリらしいとも言えるが......。 それでもユズは少し混乱する。
「えっ、いいのキラリ......」
「うん!」
「でもキラリはいいの? 行きたいところとか......」
「うーん、正直絞れないんだよねー......。 それに、ユズが行きたいって思ったんでしょ? じゃあそれでいいんじゃないの? それが1番大事だと思うよー! 私もなんか気になるし! 虹色ってなんだろうねぇ!」
キラリはニカっと笑う。 ユズはその笑顔は嘘では無いと感じた。4ヶ月程の間ずっと一緒にいたのだ、流石にこのくらいはすぐ分かってしまう。
彼女自身の優しさもあるのだろう。 けれど彼女自身が、自分と一緒にそこへ行きたいと願ったのもあるのだ。
「......ありがとう」
「? 何?」
「なんでもないよ」
キラリ自身には自覚は無いようだ。 でも、それでいいのだろう。 その暖かさこそ、キラリの強さなのだから。
......自分には無い、強さなのだから。
(......あれ?)
いきなりフッと浮かんできた思いにユズは疑問を持つ。 そういえば、前もこんな事があっただろうか。 ......きっと、人間時代の自分を表しているのだろうが......そうなると、更に謎は深まるばかりだ。
「ユズー! そんじゃ準備しよ!」
「あっ......う、うん!」
声を掛けられて我に返る。 既にちゃちゃっと書類への記入を諸々済ませてしまったようだ。
(ま......いっか、今は)
頭を振って雑念を振り払う。 ユズはキラリの後を追っていった。