メモリー25:「ボクを支える存在、チカ」の巻

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今回のお話で区切りとなる25話目となります。いつも読んでくださるみなさん、本当にありがとう。
 ペリッパー連絡所の掲示板で見つけた“たすけてメール”の依頼主、フシギダネを無事助けることが出来た。彼の先輩、フシギソウも早いところ見つけないとな…………。


 「なかなか見つからないね、フシギソウ」
 「うん、もしかしたらこの階にはいないのかもしれないね?バッジも光ってないし」
 「バッジが?」


 フシギダネを見つけた後も、地下2階での救助活動を続けていたボクたち。少ししてふと呟いたチカの言葉に、ボクの頭上に一瞬「?」が浮かんだ。その様子を見たチカが若干慌てるような素振りを見せ、このように説明をしてくれた。


 「このバッジは救助を求めてるポケモンがいる階にたどり着くと、光輝いて反応するシステムがあるの。もちろん“たすけてメール”にもどこで待ってるかは書いてあるときがあるけど、中にはどこで迷ってるかもわからないで困っているポケモンもいるから、そんなときに救助隊をカバーしてくれるんだよ?」
 「なるほどね。確かに救助隊が無駄に体力使ってダンジョンで倒れたりしたら、入り口まで戻されちゃって余計に救助が遅れちゃうもんね。光って無ければ次に進むことだけ考えれば良いし、それは助かるよ」


 昨日はレプリカのバッジだったせいで、色んな不自由を強いられたけど、今日はそれも無いから大分救助活動がスムーズになった感じがする。あとはこの調子が崩さないように気を付けていけば、そう苦労せずに依頼も達成できるはず。考え事をしながら歩いていたこともあり、階段も見つけることが出来た。まずはチカのアドバイスに従い、ボクは次の地下3階に進んだ。


 「よし、着いたぞ」
 「うん!バッジも輝いている。ここにいるのは間違いないね。早いところフシギソウを見つけないとね」


 地下3階もやはり前回と様子が変化していた。でもゴールが近いことで、ボクもチカも今までで一番モチベーションが高い。ボクの感情を表現しているしっぽの炎もユラユラ燃えていた。


 「ユウキさん、チカさん。僕も協力できることがあれば手伝わせてね!こう見えてもバトルは得意だから!」
 「ありがとう、フシギダネ。でもここは私たちに任せて。大丈夫、チーム“メモリーズ”はそんな簡単に負けたりしないから!」


 フシギダネは少し残念そうにしていたが、笑顔で説得してくれたチカのおかげもあって受け入れてくれた。困ってるポケモンたちの手助けをするのが救助隊の仕事。依頼主が先に倒れてしまっては元も子もない。それでなくても、昨日は依頼主までバトルに巻き込んでしまったボクたちだ。今日に懸ける想いはより一層強くなっていた。


 ………そんなことを考えながら、階段のあったフロアからしばらく狭い通路を歩き、さぁ次のフロアに入ろうかというときだった。突然自分から見て、斜め右方向から何やら音がしたのだ。


 (なんだろう、この音は…………なんだか気持ちいいや…………)


 ボクはだんだん眠気に襲われてきた。視界がボンヤリしてくる。そのうち気づいたらその場に倒れてしまった。


 「どうしたの、ユウキ!?しっかりして!」


 慌てた様子で叫ぶチカの声が微かに耳に届く。だけど体は重く、そこから動かすことが出来なかった。


 「一体何があったの!?ねぇ!」


 ……………私は一生懸命ユウキの体を揺すりました。ちょっと涙が出てきそうな感じを覚えながら。でも全く彼に変化は見られず、どうしていいか分からなくなってきました。そのときです。狭い通路の先から、ひび割れた幾つかのタマゴの集まりの種族………たまごポケモンのタマタマが笑いながら姿を現したのは。


 「ムダムダ。そいつはオレたちの“さいみんじゅつ”にかかったんだから。しばらくの間グッスリ夢の中だぜ?」
 「なんだって!あなたの仕業だったのね!」


 スヤスヤ私の前で眠るユウキを馬鹿にしたように笑いながら話すタマタマに、私は怒りが込み上げてきました。広めのフロアであればユウキの前に出て、電撃を浴びせて倒すって作戦が出きるけど、狭い通路にいる今はそれさえ実行出来ませんでした。


 「ククク。さぁ、どうするよ?救助隊さんよぅ?」
 「うるさい!!」
 「言葉だけか?予想以上に経験値が浅いんだな?普通ならここで“でんこうせっか”とかで反撃してくるのかなって思ったが」
 「いけない………」


 私は大声を出して、タマタマの小さく嫌な笑い声をかき消そうとしました。逆にそれで自分のバトルの経験値の低さを露呈することになってしまいました。ますますタマタマの嫌な笑みが濃くなりました。


 …………何かをされる!!背筋にゾクッとした寒さを感じるような直感的危機を感じた………そのとき!


  …………ヒュー!ズガーン!………ヒュー!ズガーン!………ヒュー!ズガーン!!
 「キャッッ!!!」
 「うわっ!!」


 突然頭上から何かが落下してくる音が聴こえてきました。その正体がわからぬまま直後に爆発が起きたのです。私はとっさにユウキのことを身を呈して衝撃から守ろうとしました。



 「フシギダネ、大丈夫!?」
 「僕は大丈夫だよ!それよりもチカさんが…………」
 「ハハハ………大丈夫だよ、これくらい」


 私はなぜか笑いが込み上げてきました。確かに爆風で吹き飛んでいた小石のカケラなどがぶつかって痛みを至るところに感じるけれど、それよりもユウキをしっかりサポート出来たことへの嬉しさが勝ったからです。そして今の爆発音が聴こえてくれたのか、ユウキも目を覚ましてくれたので正直自分のことはどうでも良くなっていました。


 「お前!ボクの“パートナー”に何するんだあぁぁぁぁぁ!!“ひっかく”!!」
 「ひぃぃぃぃ!!」


 ユウキは私の具合を目にした瞬間、たちまち怒りに満ちた表情へと変わり、タマタマへと突撃。そのまま彼のタマゴのような体を粉々にするような威力で鋭く“ひっかいた”のでした。


 「ハァ………ハァ………ハァ………。絶対に今日こそはチカを苦しい目に遭わせないって決めたんだ。邪魔するな………」
 「ユウキ…………」


 タマタマが倒れた後に出た彼のその一言や殺気に満ちた表情に、私は少し引いてしまう部分がありました。思えば昨日も彼は、“でんじはのどうくつ”でしつこかったポチエナやコラッタたちを同じような表情で倒していた訳ですが、そのときダンジョン内に住むポケモンたちに必要以上の攻撃をしないって約束を忘れられた感じがしたのです。


 (確かにユウキの気持ちは嬉しいよ。私のこと一生懸命考えてくれて………。でも、やっぱり何か違うよ。なんだかずっと一人で抱え込んでる感じがするんだ。一緒にがんばろうよ?私だっている。早く気づいてほしいな)


 タマタマを倒したあと、ユウキは私が肩から提げてる道具箱をそっと両手で掴んで開き、中から“オレンのみ”をひとつ取り出しました。それを食べやすいようにするため、フッと小さく息を吹きかけるように、“ひのこ”を浴びせてから私に渡してくれたのです。 「ボクをかばってくれてありがとう」の一言を添えて飛びっきりの笑顔で。


 「ありがとう………」


 ユウキから“オレンのみ”を受け取り、私は感謝の言葉を伝えました。本当に普段のユウキの温かい優しさには感謝の気持ちしか感じられなかった。……………でも、昨日の口論や今の出来事を踏まえて、フシギダネにも“オレンのみ”を渡している彼と心の距離を少し離すことにしました。






 果たしてボクの行動は正しかったのだろうか。いや、いくら彼女を守るためとは言え昨日のチカとの約束を破ってしまったのだから、間違いだろう。タマタマを倒した後、ダンジョンの中を歩いていてもチカから話しかけられる頻度が減ったし、正直今のボクの唯一の癒しである彼女の笑顔もどこか不自然なように感じる。昨日の基地での言い合いもあったし、きっとボクは避けられてるんだろうなと思った。


 そのようなことを考えながら歩いていたら、なんだか気分が沈んでいく。だんだんとうつむき加減になり、歩幅も小さくなるのを感じる。彼女にきちんと確認をとった訳じゃないのでなんとも言えない。だけど、急に寂しさを感じてしまった。せっかく今日は順調だったのにこれでは台無しだ。


 「あ!フシギソウ先輩!!」
 『!?』


 突然聞こえてきたフシギダネの嬉しそうな声にボクとチカはビックリした。地下3階………いや、今日このダンジョンで一番広いフロアにいつの間にか入っていたようだ。狭い通路とは違って、全員が一列になって動く必要もない。そのためフシギダネが早く自分の先輩に再会しようと足早に動いていたようだ。


 「チカ!早く行こう!」
 「えっ!?う………うん!」


 ボクは何か嫌な予感がした。彼は既に自らの先輩の元へ脇目も振らず一直線。もし何か危険なことが起きても気がつかないだろう。チカにも急いで声をかけ、ボクはフシギダネの後を追った。…………と、そのときである。


  ビュウウウウウウーーーー!!
 「うっ!!」
 「わっ!!」
 「!!!?」


 突然フロア全体に強風が吹き荒れたのである。風圧で小さい体が持っていかれそうになって、ボクやチカはその場に踏ん張ろうとした。同時に顔や体に何かがバチバチ当たってるのに気がついた。


 (これは………粉?…………いや、鱗粉だ。)


 ボクは顔に当たった物をサッと指で拭き取って観察してみた。本来的には人間だったボクだが、今は本能的な部分も含めて感覚がヒトカゲに近い感じがする。初めて見るものだったにも関わらず、それがむしタイプの持つ鱗粉だと言うこと、強風がフロア全体に吹き荒れたことから、誰かが“ぎんいろのかぜ”を繰り出したのだと理解した。


 「フシギダネ!?大丈夫!?」


 チカの声がした。彼女はボクに比べて鱗粉が当たった場所の傷が深いような気がする。しかし、それよりもダメージが深刻だったのがフシギダネだ。彼自身はバトルが得意だと話していたけど、さすがにダンジョン内に住むポケモンに比べたら実力差や、技ひとつひとつのパワーの差は明らかだった。


 「ぐうぅ………こ、こんなところで倒れるもんか。僕はフシギソウ先輩と一緒に帰るんだ………!」
 「フシギ………ダネ」


 それでもフシギダネは前へ進もうとする。彼が再会したい先輩も“ぎんいろのかぜ”によるダメージを受けて苦しそうにしている。そこに何者かが攻撃をしてきた。


 「させるかよ!コイツは俺の縄張りを邪魔してきたんだからな!この前から救助隊だの外のポケモンだの邪魔者が多すぎるんだよ!“かぜおこし”!!」
 『うわあああああ!!』


 フシギダネとフシギソウを襲った相手。それはどくがポケモンと呼ばれる種族、ドクケイルだった。黄緑色の羽をバタバタ羽ばたかせて風を起こして、それをフシギダネとフシギソウにぶつけたのである。くさタイプの彼らにとって“かぜおこし”のひこうタイプは相性最悪。その為ダメージは大きくなり、更に苦痛が増した。


 「フシギダネ!?」
 「フシギソウ!?」


 そんな依頼主のピンチにボクとチカは焦りを隠せなかった。今日は依頼主のポケモンたちを無傷で救助したいって考えていたけれど、このままでは無傷どころか逆に倒されてしまうかも知れない。そうなれば救助失敗となってチーム“メモリーズ”の評判も下がり、ペリッパーが直接配達してくれる頻度が増す…………なんてことは夢物語だ。


 「やめてドクケイル!!!この人たちがあなたに何か危害を加えたの!?」
 「あぁ?なんだお前?赤いスカーフ…………?まさか救助隊か!?」
 「そうだ!ボクたちはポケモン救助隊!チーム“メモリーズ”!このフシギダネに頼まれてここまで来たんだ!!彼らにこれ以上攻撃するなんて許さないぞ!」
 「あぁ?なんで外から来た奴らにいちいちそんなこと指図されないといけないんだぁ?ただでさえ最近の自然災害でイライラしてるってのによぅ!?」


 チカとボクの言葉に、ドクケイルは聞く耳を持たなかった。そればかりかフシギダネとフシギソウのそばへ煽るように急接近する。その光景を見たチカが遂に我慢が出来なくなったようだ。


 「やめてよ!!なんでポケモン同士で傷つけ合わないといけないのー!!!」
 「!!?………うぎゃあああああ!!」


 チカの想いが絶対に回避できない技、“でんげきは”に乗ってドクケイルへとぶつかった。彼の悲鳴がフロア全体に響き、直後に黒焦げになってヒラヒラと落下してきた。


 「本当に嫌だよ、私。こんなたくさん技をぶつけるなんて。もっとバトルを少なくして解決したい…………。傷つけあったって何も得ることなんて無いんだから………」
 (チカ………)


 チカの目にうっすら涙が浮かんでる。救助隊を続けていけば、ますますこうしたバトルをたくさん経験しないといけないだろうけど、それはチカの「みんなが安心して暮らせる世界にしたい」という想いと反するものなのかもしれない。


 「私が望んでるのは強さじゃない。優しさなんだ。弱ってるポケモンを支えたいだけなんだ」


 チカは最後に一言小さく呟いた。






 「ありがとう、“メモリーズ”。おかげでフシギソウ先輩に逢うことが出来たよ!」
 「俺からもお礼を言わせてくれ。本当に助かった」
 「どういたしまして♪」


 ボクたちはフシギダネ、フシギソウを連れてダンジョンから脱出していた。二人一緒にバッジを掲げたとき、一体どこまで行くんだろうとボクはふと考えたが、どうやらペリッパー連絡所の掲示板付近のようである。一種の“テレポート”といったところなんだろう。


 (まぁ………危なっかしい所はあったけど、チカも笑顔で会話してるし、ひとまずは依頼成功ってことかな)


 ボクはそんなやり取りを少し離れた場所から見ていた。微かに苦笑いをしてこのようなことを考えながら。


 「カゴいっぱいにたくさん木の実も集められたし、これで栽培も出来そうだな?フシギダネ、お前もしっかりと面倒見るんだぞ?」
 「うん。この木の実たちが芽を出してくれたらみんなも危険なダンジョンにまで足を運ばなくて済むから、頑張るよ!」
 「さすがだな!」


 フシギダネとフシギソウは嬉しそうに会話を弾ませる。そのあとフシギダネから「どうもありがとう、“メモリーズ”」という言葉と共に、お礼として100ポケが渡された。その足で二匹はこの場を後にしたのである。


 「チカ、どこ行くの?」
 「連絡所の受付だよ。ここで無事に救助が出来たことを伝えるの。手紙を見ればわかるよ」
 「?…………わっ!なんか様子が変わってるや!」


 今までボクたちが手にしてきた手紙…………“たすけてメール”は依頼主の文章だけしか記入されてなかった。だが、今見ると空欄部分にバッジの形のスタンプが追加されていたのである。これは一体どういうことなんだろう。


 「それは“ふっかつメール”。依頼主を救助出来て、ここに戻ってきたときにさっきのメールが変化するんだよ。それを連絡所の受付に提出したら、チーム“メモリーズ”の評価も上がるって訳♪」
 「なるほど…………、そしたら少しは基地のポストにも“たすけてメール”が来やすくなるのかもしれないってことだね?」
 「うん♪」


 チカが満面の笑顔を見せながら大きく頷いた。…………と、なればボクも一緒に行かないとな。


 「“メモリーズ”。依頼成功お疲れ様だよ。今回の依頼で救助ランクを5ポイント獲得だよ!次もがんばるだよ!」
 「ありがとう♪」


 受付のペリッパーに“ふっかつメール”を提出したときに労いの言葉を受けたボクたち。チカは嬉しそうな笑顔を見せる。しかしボクは救助ポイントという言葉に「?」マークが浮かんで来てしまったので、早速彼女に尋ねてみた。


 「救助ポイントというのは、依頼を成功したときに貰えるポイントだよ。救助の内容や難しさで貰える量は違うんだ。私たちのように新しく救助隊を結成したときは“ノーマルランク”っていうランクなんだけど、どんどん依頼を成功させてポイントを積み上げていけば、よりレベルの高い救助隊として認められて“ブロンズランク”になるの。“ブロンズランク”の上にももっとレベルの高いランクがあるんだよ。そのランクが高ければ高いほど有名な救助隊として、みんなからも注目されるんだ♪」
 「なるほど………!それはワクワクするね!」


 チカは話が止まらなくなるほど、興奮ぎみにボクに説明してくれた。その話を聴くとなぜかボクまでワクワクしてくるのを感じた。感情を表現するしっぽの炎もユラユラしている。


 「でしょ!?“メモリーズ”が世界一の救助隊になれるように…………一緒にがんばろうね!」
 「うん!!みんなの記憶に残るようになる………それがボクたちの目標だからね!」


 すべきこと全て終えて、ボクたちは仲良く話をしながら帰路についた。その道中でもチカはずっと目を輝かせて話をしている。そんな彼女の可愛らしい仕草ひとつひとつにボクは癒されていた。今日で“ヒトカゲ”になって3日目だけど、今日は本当に嬉しい。今までのような悔し涙、悲しい涙はなかった。つまりボクの誓い、夢がひとつ叶ったのだ。


 (やっぱり、チカって笑顔が一番似合うなぁ。疲れも癒されるし、しんどいものが吹き飛びそうだよ。がんばって良かった。これから先、こんなチカの笑顔をたくさん見られたら良いな。がんばろう)


 でもボクは彼女に伝えることがあった。あんまりにもチカのテンションが高いので、なかなか伝えるタイミングが見つからなかったけど、ちゃんと言わないといけないことを伝えようと思った。


 「ユウキ?どうしたの?」


 さすがにしっぽがレーザーの役目をしてるだけあって、すぐにチカはボクの足が止まったことに気づいたようである。後ろを振り返って不思議そうな表情でボクに尋ねてきた。


 「チカ、今日はゴメン」
 「?」


 ボクの言葉にチカの表情が曇る。ボクが伝えたかったのは、ダンジョンの中で約束を破ったことを謝りたい気持ちだった。そのことも含めて補足してボクは話した。


 するとチカは一言だけこう答えたのである。


 「もういいよ、そんなこと。どうせまた約束破られちゃうと思うし。私の考えとユウキの考え………多分違うんだろうなって思ったから」
 「そんな……………」


 それは今までで一番冷たい対応だったかもしれない。ボクは思いもよらない彼女の言葉に動揺してしまった。


 「でも、勘違いしないでね。私はユウキのことが嫌いになったとか、そういうことじゃないから。まだ出逢ったばかりでユウキのことをちゃんと理解してないだけかも知れないんだ。ちょっと様子見って感じかな?私も悪いと思うんだ。私の気持ちばっかユウキにわかって貰おうとしていたかもしれないから………」
 「チカ…………」


 チカは苦笑いしながら話を続けてくれた。ボクは安心感と彼女は彼女なりにもがいてることを知って、気持ちがぐっちゃになってなんだか涙が出てきそうだった。…………と、そんなボクを見て何かを感じとったのか、そっとボクに近づいてきて、いつものように優しい笑顔を見せてこう言ったのである。


 「それより、とりあえず帰ろう?ね?」


 ボクは大きく頷いた。彼女がそっと差し出してくれた右手は、そのまま僕の右手を握った。そこから温もりを感じたのは言うまでもない。なんだか恥ずかしい気分にもなったけど、このときはボクも彼女の優しさに甘えようと思った。


 それから……………チカは基地にたどり着くまでの間、ずっとボクに寄り添ってくれたのである。どれくらい癒されていたかわからない。でも、その間与えてもらった温もりは今もずっと忘れることは出来ない。


 …………そしてこのとき、改めてチカのことを悲しませないようにしようと決めたのだ。









 「…………今日はよくがんばったね、ユウキ。お疲れさま。ひとまず帰って休もうね」



 ボクたちが基地に着いたときも青い空が広がり、白い雲が浮かんで流れている。時折温かく心地よい風はボクたちの頬を優しく撫でてくれた。そんな平和な風景が広がるなか、大切なパートナーがまじまじとボクを見つめて、今日1日の頑張りを労ってくれる。救助活動の出発前とは対照的だった。


 「じゃあ、また明日!」


 チカは笑顔でこう言い残して、ボクのそばを離れていく。…………なんだかちょっぴり寂しく感じる。温かい光が離れていく感じ。


 「チカ!!」
 「!?…………どうしたの?」


 ………ボクは叫んだ。チカがビックリした様子で振り返る。


 「チカ…………!今日もありがとう!!」


 “ありがとう”。この言葉を彼女に伝えずにいられなかった。昨日も一昨日もそうだったけど、いつもボクは最終的にチカに支えられて助けられている。本当なら自分はリーダー。だからもっとチカのことを助けたり、守ってあげなきゃいけない。だけど、まだまだ力不足なせいで逆に助けられて支えられてしまってる。


 「本当にゴメン。全然チカの気持ちを汲み取れなくて。いつもキミに負担ばかりかけてしまって………」
 「ユウキ………」


 チカがボクの考えを否定するように、「そんなことない」といった悲しそうな表情で小さく首を左右に揺らしている。知らず知らずボクはついさっきの決意をまた破っていた。


 「……………ゴメン。また嫌な気分にさせちゃって。ボク………がんばるよ。もっともっと」
 「ユウキ、やめて!そんなに抱え込ないで!」
 「わわわわわ!?チカ!!」
 「私たち、同じ“メモリーズ”の仲間なんだよ?一緒に力合わせて頑張ろうよ………ね?」
 「わかったから!わかったよ!!」



 ボクの苦笑いしながらのガッツポーズに、チカが泣きながら叫び、そしてギュッと抱きついてきた。その訴え方に動揺して顔を背けて、必死に制止した。種族が違うとはいえ、女の子に抱きつけられるとやっぱりドキドキする。しっぽの炎の燃え方も不安定な感じがする。普段が大人しめだけに、余計に彼女のそのギャップの激しさにはまだ慣れない。………まぁ、多分無理だろうな……………。


 「それじゃ、また明日!」


 だんだん空が夕焼けに染まってきた頃、チカがボクの方を見て大きく手を振る。ボクは道具箱を肩から提げてる…………そんな彼女の事を同じように姿が見えなくなるまで、手を振って見送り続けた。


 「…………ありがとうね、チカ」


 彼女の姿が見えなくなると、小さく笑ってもう一度感謝の言葉を伝えるボク。でも、先ほどのような寂しさは全く感じない。なんだか温もりを感じていた。まだ全然人間から“ヒトカゲ”になった理由はわからない。でもチカに出逢えて本当に幸せである。チカのように優しくて温もりがあって、辛いときに癒せる………まるで雨や風に晒されて散りそうな植物を、鉛色の空から射し込む一筋の太陽の日差しのような…………そんな天使のようなピカチュウを超えるポケモンが、自然災害の影響で傷ついたこの世界に……………どうして存在すると言えるのだろうか?


 それくらいボクの中で、チカという存在は眩しく光輝いているのである。






 「……………ただいま♪」


 ユウキと別れたあと、今の自分の居住地にしてる幹に大きな穴が開いた木へと戻ってきた私。昨日は彼と言い合いになったせいもあってまだ抵抗があったけれど、今日はすんなりと中に入ることが出来ました。


 「今日はユウキがちょっと変な感じがしたけど救助活動も上手くいったし、ポケモン広場のことも案内できて良かったな」


 道具箱を抱えるような感じで、横になった私。目をつぶりながら今日1日の出来事を振り返っていました。途中で彼とも少し言い合いになったりしたから大満足って訳じゃないけど、昨日や一昨日のような悲観的な感情は全く感じませんでした。


 「それだけでも進歩だよね?この調子でもっと嬉しいことがたくさんあると………いいな………Zzzz…………Zzzz…………」


 気がついたら私は深い眠りに落ちていました。


 ……………それからどれくらいの時間が経ったのでしょうか……………。



  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
 「キャッ!!何!?何なの!?地震!?」


 夜も大分更けて来た頃でした。突然下から突き上げるような激しい揺れが襲い掛かって来たのです。このままではこの木も折れて下敷きになってしまう…………直感的にそうやって感じた私は穴の中を飛び出しました。もちろん大切な道具箱を抱えて。


 (お………おさまった…………)


 外に飛び出してから少しして地震は収まりました。でも寝ているときの大きな揺れにスッカリ動揺してしまった私。呼吸は短い間隔で激しいものでした。幸い木は倒れませんでしたが、さすがにその日は戻りませんでした。別にも頑丈な木があったので、そこに身を寄せることにしたのです。


 (ユウキは…………大丈夫だったのかな?)


 再び道具箱を抱えるようにして眠りにつく私。そのとき頭の中に彼のことが浮かんできたのですが、眠りには勝てませんでした。



  チュンチュン。チュンチュン。
 (よし、今日も救助活動頑張らないとね!)


 次の朝、暖かい朝日が木々の間から射し込み、小鳥のさえずりがする“げんきのもり”の中を私は歩いていました。今日も大きな夢である世界一の救助隊を目指すために。


 ……………そしてこのとき、私とユウキの3つ目の記憶も始まろうとしていたのです。


       …………………メモリー26に続く。






 




 







 








 







 
 
 


 


 








 


 


 

 


 


 



 







 







 










 
これで第3章は終わります。次回から第4章「ハガネやま」編。お楽しみに。

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