第十八話 ベテランのわすれもの

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 「……にしてもあんな危険な事、よく出来るわね」
 「これが僕達“騎士団”の仕事だからね。……ねぇそういえば、シャサさんって子供がいるんだよね? 」
 「えっ、ええ……。“ルヴァン”の体制が変わってから、一度も帰れてなかったけど――」
 「その事でなんだけど、フィナルさん……、ライチュウがご家族の安全を確保して、“ラクシア”に連れてきてくれるって」
 「え……今なんて……」
 「フィナルさんが単独で、シャサさんの家族を保護して連れてくる、って」
 「嘘……。“リフェリア”は何でそこまで……」




――




 「じゃあ01、ルミエール、また後で」
 「うん。トゥワイスも」
 「02、ありがとう」
 暗い密室で待機して、いた僕達は、停電したのを合図に動き始、める。施設の電気が一時的、に使えなくなる、から、外に通じるこの部屋の扉、は、開かなくなる。だからって事で、僕がリツァと交代、して、分厚い鉄の扉を破った。……だけどただ、体当たり、では“戦闘乙型”のリツァ、の体でも破れない、から、僕の“気刃”で……。リツァの体だから、だと思うけど、“気刃”も三つ叉になって、いて、数も一つから三つになってた。……で黒緑色のソレを飛ばして扉に穴を開けて、その中から侵入した。僕達みたいな四足の種族が通れるぐらいの穴、だけど、僕達を入れても十人だ、から、すぐに全員侵入、できた。
 それで01とルミエール達も他の人たちに続いて、入ったから、僕はその途中で、二人を呼び止める。確か二人は、ファルツェアさんから別で、任務をもらってるから、今回の……、僕にとっての初めての任務、では、別行動って事になってる。二人に与えられ、てる特別任務は、僕とフロルっていうベイリーフ、二人の操作端末、を回収する事。だからリツァから教えてもらった僕は、今さっき、二人にソレがある場所をそのまま伝える。……でいつまでも立ち話、擦れる訳にも行かない、から、僕達は適当に切り上げて、それぞれ別方向へと、走り始めた。
 「リツァ、最初はどっちから、いくつもり? 」
 それで僕は前もって階段の場所を教えてもらって、たから、すぐに二階への階段を、見つける事が出来た。僕は生前“思念”を研究員に移して研究所を見てた、けど、流石に区画の外までは、見てなかった。だから地上の方は、脱出する時に通った一階以外、見た事も訊いた事も無い。だけど研究員として潜入してた、リツァがいるから、何も心配、してない。だから僕は、その確認の意味も含めて訊いてみる事にした。
 『階段から近いのは私の部屋だけど、シャサの方から行くつもりでいるわ。……と右の方に曲がって』
 階段を二段飛ばしで駆け上がりながら、僕は頭の中に響くリツァの声に、耳を傾ける。多分小さい種族に合わせて、造られてるからだとおもうけど、階段は幅が広かったり狭かったりする段が結構混ざってる。だから何回か狭い段に躓いて転びそうになった、けど、そこはなんとか踏みとどまる。あっ、って短くリツァが声をあげてたような気がするけど……。
 それで登り切ったところ、で、リツァはすぐに道を教えてくれる。左と右、二本の通路があった、けど、彼女が言うには、右の方、らしい。左には何があるのか分からない、けど、居住区だから、沢山の部屋が並んで、るんだと思う。……だけど流石に研究員の部屋だ、から、僕達が閉じ込められ、てた“大保管庫”みたいに、鉄格子で覆われて、はないと思う。
 「右、だね? 」
 『ええ。それで曲がってから四つ目、右側の扉が、私の部屋。首から提げてる社員証をかざして』
 流石に夜遅いから歩いてるけど、僕は声を潜めて返事する。階段から角を曲がるとまっすぐな通路になっていて、その両側に、等間隔で扉が、並んでる。どれも一緒で違いなんて分からない、けど、もしかするとリツァは、階段から何番目か、で覚えているのかも、しれない。それで教えてくれた扉、四つ目のそれの前で立ち止まってから、リツァが出してくれていた社員証を右の前足で、持つ。ちょっと高い位置にある、から左の前足を扉に添えて二足で立ち上がる。そして側の認証端末にかざし、扉の鍵を解除した。
 『あれから何ヶ月も経ってるのに鍵が生きてるなんて、本当に研究以外の管理はずさんね……』
 僕もまさか開くなんて思ってなかったけど、裏でリツァが呆れたような声で呟いてる。本当にリツァの言うとおりで、さっき入ってきた入り口だけ警備を固めて、後はほぼ野放しの状態に、居住区の一階はなってた。だけど地下の研究区画のセキュリティは万全で、今日みたいに停電でも。起きない限りは、部外者は一切地下には入れない。そもそもリツァの話によると、前室に通された時点で、人事部のスリーパーに、催眠術? 洗脳みたいな事を、されるみたいだけど……。
 「だよね。……で、リツァの部屋って、何も無い、んだね」
 『鞄一つで潜入してたからね』
 それでリツァの部屋に入ると、そこは僕達の檻ぐらいに殺風景……。病室で見たベッド? と机、それから鉄格子が付いた小窓があるだけ、で、他に何も無い……。唯一あるのが、リツァの持ち物らしいメッセンジャーバッグが一つだけ……。リツァの家みたいに小物が沢山置いてある、って思ってたから、僕は結構ビックリ、したんだけど……。
 『……でトゥワイス。次は角を曲がってすぐの部屋に入って』
 それでリツァの鞄を提げてから、僕はすぐに、部屋から出る。確か左側から来たはず、だから、このまま右に進めば良いんだと思う。廊下自体もそんなに長くない、から、多分すぐ近く、何だと思う。
 「うん。ええっとリツァ、教えてくれた“魔法”、使えば良いんだよね? 」
 『ええ。“Rehydle”、こう唱えたら、シャサの社員証を出せるわ』
 「“Rehydle”……。できた」
 忍び足で廊下をすすんでる最中に、今度は僕が、リツァに話しかける。“魔法”はリツァの一部になった日に彼女が使って、るのを初めて見たけど、僕達“生物兵器”の“機能”とは少し違うと思う。リツァの体を治してる時、ビアンカも違う“魔法”を使ってた、けど、未だにアレがなんなのか、分からない。そもそもリツァだけじゃなくてルミエールとか団長さん、“リフェリア王国”の人は結構、炎を出したり水を吹き出したりも、してた。もしかするとそれも、魔法の一つなのかもしれない。
 それで扉五つ分ぐらい進んだ辺りで、僕はリツァから教えてもらった呪文を、唱えてみる。特に何も意識してなかった、けど、案外簡単に使う事が出来た。一瞬僕……じゃなくてリツァの首元に、小さな光がポッと灯る。消えるとその光の代わりに、リツァのと同じようなカードがそこに提げられる。けど一カ所だけ違う場所が、あって、顔写真はエーフィじゃなくてエネコロロ。他にも何か書いてあるけど、読み方、分からないんだよね……。
 「……」
 『トゥワイス、大丈夫? 』
 「んぇ? うっ、うん」
 それで僕が扉の前に着くまでずっと黙って、たから、それでリツァを心配させてしまったのかも、しれない。本当は間違えないように扉を一つずつ数えてた、だけだけど、急だったから変な声を出してしまった。
 「そっ、それでリツァ? この部屋で……、あってるよね? 」
 『ええ。トゥワイス、辛かったら代るけど、大丈夫? 』
 それであのエネコロロの部屋に入ったところで、体の持ち主の彼女が僕の様子を伺ってくる。確かに僕はあのエネコロロの事が嫌いだけど、正直言ってぼくはあのエネコロロの事がよく、分からなくなってる。ココでは僕達がボロボロになって……、尻尾とか足がちぎれても実験を、続けてきたのに、今……、僕が死んでからは、そんなのが嘘みたいに、リツァのことを気にかけてる……。それどころか僕が表に出ていても、機械を取り除くために切開した傷口の、様子まで訊ねてきてる……。それも心配するような、リツァに向けてるのと同じ表情だから、本当に気持ち悪くて仕方ない。
 「平気、だよ。裏に戻って、も、リツァの目で見える、か……ら? 」
 それでエネコロロの部屋はリツァのと違って、いろんな物が置いてある。本棚とかがあって凄く狭く感じるけど、多分広さ自体は、同じだと思う。確かエネコロロはベテランの研究員のはず、だから、本棚には研究の資料とか、そういうのが置いてあるのかもしれない。……だけど僕はそれよりも、机の上にある写真に、目が行ってしまう。
 『シャサの家族……、かしら? 随分古いけど……』
 そこには二人のエネコロロと、小さなエネコが写っている。多分左があのエネコロロだと思うけど、左の前足をエネコの肩に添えて、にっこりと笑顔を見せている。その顔はどこか幸せそうで、僕が知ってる研究員のエネコロロとは別人に見える……。でその写真自体も結構年期が入ってるみたいで、写真全体が色あせてしまっている。
 「うん……。だけどこれって……」
 『多分十何年も前のものだと思うわ。シャサは二人の子供……、トゥワイス? 隣の写真、見てみて? 』
 「これ……? でもこれって……」
 何か凄くモヤモヤしてきた、けど、僕はリツァが言うままに、隣の、少し大きいフレームに入った写真を見てみる。その写真はさっきのとは違って、エネコが一人増えてる。多分大きい方は女の子だと、思うけど、リボンみたいな何かを耳に付けて、銀色のメダルみたいなものを首から提げてる。小さい方は研究員のエネコロロに抱えられてるから、多分まだ作……生まれたばかりなんだと思う。そのエネコロロもどこか誇らしげで、もう一人のエネコロロ、それから一緒に写ってるスリーパーも、嬉しそうに表情を緩めてる。……だけどこのスリーパー、若いけどどこかで見たような気が――。
 『もしかすると、若い頃のヒプニオ、人事部のスリーパーかもしれないわね。ってことはもしかすると、シャサとヒプニオって、同期……? 』
 リツァに言われて初めて気づいたけど、言われてみれば面影があるような気がする。僕自身は、その人事部のスリーパーには、会った事が無い、けど“思念”を移して見たり、リツァの記憶で見て知ってはいる。
 「……リツァ、あのエネコロロに、こんな一面があったなんて……」
 さっきの写真もそうだけど、僕はあまりにも幸せそうな顔をしているエネコロロに、訳が分からなくなってしまう。僕は知ってるエネコロロは、僕達の事を“生き物”として見ていない、残虐な研究員。強制的に僕達を戦わせたり傷つけたり……、死ぬ寸前まで痛めつけたりもしてきたのに……。それなのに写真に写ってる昔の彼女は、優しい表情で心があるように、見える。多分自分の子供だから、だと思うけど、愛おしそうにしてるし、他の誰かを想ってるようにも見える。人工的に作られた僕に親なんて最初からいない、けど、知らなくても、それが母親としての表情、っていうのは何となく分かる。だから僕は、僕が知ってるあのエネコロロは、本当のエネコロロじゃなかった、って思えてくる。……だけどこんな優しい彼女なんて全然想像出来ない、から、訳側からな、くて、凄くモヤモヤしてくる……。
 『多分だけど、この頃の“ルヴァン”は生物兵器の工場なんかじゃなかったのかもしれないわね……。私も見せてもらったから分かるけど、トゥワイスが知ってるシャサは、他の社員と一緒で洗脳されてたのかもしれないわね……』
 「ってことはリツァ。本当のエネコロロはこっち、で、僕が知ってるエネコロロ、は誰かに操作され、て、無理矢理僕達を痛めつけ、てたってこと? 」
 『それで間違いないと思うわ。……でもトゥワイスが殺されてから私が潜入するまでの間に何かがあって……、シャサの洗脳が解けたんだと思うわ。でないと私が知ってるシャサと、トゥワイスが知ってるシャサとでは別人みたいに違いすぎる。だから……』
 あのエネコロロが誰かに操られてたなら、あの残虐なエネコロロは、本当のエネコロロじゃない、って事になる。誰かを操る技術なんて“ルヴァン”には他にももってそうだから、もしかすると僕達生物兵器に埋め込んでる機械を使わなくても、誰かを思い通りに、動かせるかもしれない。そうなるとあのエネコロロ……以外の研究員も、自分の意思で動いて、ないってことになる。だから――
 「リツァ、絶対に作戦を成功、させて、エネコロロ……、シャサだけじゃなくて他の研究員達も、助けよう。僕達生物兵器だけじゃ、なくて、研究員達も、誰かに痛めつけられ、たり、脅されて苦しんで、るんだ……。本当はこの作戦に気が、進まなかったけど、僕は決め、たよ。絶対に成功、させるって。それで他の実験体とか生物兵器だけ、じゃなくて、研究員も解放、しよう。……だからもう、僕は迷わない。リツァ、絶対に……」
 『……ええ! 』
 こう心に決め、リツァに呼びかける。するとリツァは何かを考えてたみたい、だけど、すぐに力強く、返事してくれた。




  続く

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