第十六話 作戦要項

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 「ただいま。実家に帰ってくるのも久しぶりね」
 「そういえば三年ぶりぐらいだっけ? リツァが結婚して以来だから」
 「そのくらいね。……にしても本当に変わらないわね。あの襲撃があっても――」
 「この声……、姉ちゃん! おか……ってその目、尻尾も、どうしたの? 」
 「色々あってね……。リルも無事で安心したわ」
 「安心したって……、それよりも姉ちゃんだよ! 目もそうだけど、尻尾が三本もあって……」
 「ええ。もうエーフィじゃなくなったけど、三本とも動かせるのよ」
 『リツァの弟、お兄さんと凄く、違うね』




――




 「……リフェリス、ウールも、私の事なのに巻き込んで、ごめんなさい」
 「今に始まった事じゃないでしょ」
 「そうそう。それに僕達の仲でしょ? 尻尾が三本あっても、リツァはリツァだよ。それに前にリツァには手伝ってもらったから」
 あれから何日か経って、私達は今、“セレノム王国”の“キルトノ”の街に来てる。まさかすぐにこの街に戻ってくるなんて思わなかったけど、私自身の事だから避けては通れないって思ってる。本当の目的はこの街じゃなくて“ルヴァン”だけど、今日はその前の打ち合わせと、“騎士団”のメンバーとの合流。明日が“作戦”の決行日だから、最終確認を兼ねて……。
 ちなみにあの後私とトゥワイスは、何回か戦闘訓練とか能力の確認をして過ごしていた。トゥワイスは“浮遊”出来なくなって凄く落ち込んでたけど、そこはマリーがなんとかしてくれた。そのとき私は裏に引っ込んでたけど、二人だけにしか分からなそうな話をしていた。多分トゥワイスが生きてる時の話だと思うけど、あれは二人とも……、想い合ってるかもしれないわね。多分考えすぎだと思うけど……。
 あと私自身にも他に分かった事があって、尻尾とか能力、それから埋め込まれてた機械以外にとんでもない事が分かった。私が戦闘乙型の“生物兵器”に改造された、って分かってからは開き直っていたけど、シャサから教わってなかった事も沢山分かった。私の頭の中に受信機が埋め込まれてる、って事は分かってたけど、驚いたのはそこじゃない。多分私が潜入していた“研究三課”の範疇じゃなかったんだと思うけど、そこで改造される前に、耳を疑うような前処理をされていたらしい。……わたしだけじゃなくて、戦闘乙型は、性能を格段に引き上げるために、心臓を二つ、余分に移植されているらしい。尻尾だけじゃなくて心臓まで三つある事になるけど、これは攻撃性能だけじゃ無くて、受けた傷を早急に治すためでもあるらしい。これはトゥワイスとマリーに教えてもらったことだけど、もし私が前足を切り落とされても、乙型の場合二、三日もあれば完全に元に戻ってしまうらしい。そう考えると、“ルヴァン”は恐ろしいものを作ってる事になるのよね……。その“生物兵器”の私が、こう思うのもどうかと思うけど……。
 「ありがとう」
 「……にしてもリツァ、尻尾が三本もあるって、どんな感じ? 」
 と話を元に戻すと、私のもう一人の情報屋仲間のチルタリスが興味深そうに聞いてくる。彼は好奇心の塊みたいなものだけど、どうやら彼は私の増えた尻尾が気になるらしい。フワフワな翼で私の左側の尻尾をつつきながら、私の事をお構いなしに触り通してくる。彼の事は信頼してるから何とも思わないけど、もしこれが見知らぬ異性なら、アイアンテールではたき落としていたと思う。……もしそうなったら、大分加減しないと大変な事になると思うけど。
 「そうね……、上手く言葉に出来ないけど、尻尾が分かれたような感じ、かしら」
 説明するのにいい言葉が見つからなかったけど、ひとまずパッと思い浮かんだ言葉を並べてみる。厳密に言うと尻尾が三本に分かれた訳では無いけど、生憎私にはこのぐらいの言葉しか用意できなかった。強いて言うなら新しく生えてきた、って言う言い方も出来るけど、これはこれで勘違いさせてしまうかもしれないからやめておいた。何となく私の思い込みのような気がしなくも無いけど……。
 「尻尾が分かれた? ロコンが進化して尻尾が増えるみたいな感じ? 」
 「そうとも言えそうね。……ってウール、流石に触りすぎよ。っくっ、くすぐったいじゃない」
 一応彼、それからリフェリスにも教えてあげたけど、それでもやっぱりウールの興味は尽きないらしい。左の尻尾にじゃれているウールの頭を右のしっぽで撫でてみると、彼はそっちの方に気がそれる。今度は自分の尻尾を彼の目の前で振ってみると、勢いよくそれに跳びついてくる。好奇心旺盛な子エネコみたい、って思ったのはここだけの話だけど、今の彼はそう言われても仕方ないのかもしれない。それであまりにも彼のふわふわな翼がくすぐったすぎて、私は堪えきれずに吹き出してしまう。
 「ウール、そのぐらいにしといたら? リツァの尻尾、真ん中以外は結構敏感みたいだから」
 こんな調子のウールを見かねたのか、リフェリスが助け船を出してくれる。尻尾で弄んでいた私も私でどうかと思うけど、リフェリスが右の翼で彼との間に割って入ってくれる。見かねたと言うよりは呆れた、って言った方が正しいのかもしれないけど、一応これが私達三人のいつものやりとり。今回は偶々スキンシップみたいな感じになったけど、私がウールを弄び、彼が子供みたいな表情を見せる。それをリフェリスが呆れながらも止めに入る……。大雑把に言うと、こんな感じかしらね。
 「あっ、いたいた。ウールさん、それからお二人も、待たせてすまないね」
 と港町の真ん中でふざけ合っている私達の元に、別の誰かが声をかけてくる。私は今日会うのが初めてだけど、その彼はウールの名前を呼びながら駆け寄ってくる。私がその方に緑色の目を向けてみると、そこには一人のオオタチ……。
 「申請した僕達側が待つのは義務みたいなものですからね、情報屋としては当然の事をしただけだよ」
 彼が来たのに気づくと、ウールは急に気持ちを仕事に切り替える。彼は普段実年齢より幼く見えるけど、一度スイッチが入ると、こうして年相応の対応をするようになる。それにオオタチの彼とのアポイントを取ってくれたのも、公私の二面性があるチルタリスの彼。彼の働きと情報網が無ければ、もしかすると今回の作戦はこんなに早い時期に遂行される事にならなかったかもしれない。
 「いえいえ。……で見たところオオスバメの貴方とエーフィ? の貴女が、リフェリアの情報屋ですね」
 「まぁそんなところだね。“ラクシア”のリフェリスと――」
 「尻尾が三本も生えてて驚かせたかもしれないけど、元エーフィのリツァ。タダチさん、今回の件ではよろしくお願いしますね」
 オオタチの彼は私を見て一瞬驚いたような表情を見せたけど、これが普通の反応って私は思ってる。“ラクシア”では“騎士団”の隊員達が知らせてくれてたけど、そもそもオッドアイで尻尾が三本生えてるのは異常な事。“ラクシア”でも“ルヴァン”でもないここでは口が裂けても言えないから、出来れば私が失敗作の“生物兵器”って事には触れない方が良いのかもしれない。
 ……でも仕事の関係上黙ってる訳にもいかないから、ひとまずぺこりと頭を下げて自己紹介する。一応彼が今回の協力者って事になるから、ね……。
 「うん、こちらこそ、調査協力に感謝しますよ」
 「……で、リフェリス達の“リフェリア王国”の主導での調査になるけど、要項にはは目を通していただけました? 」
 それでリフェリアじゃなくて“セレノム王国”の情報屋の彼は、ココに集まった私達の中で仕切り始める。その要項っていうのは今回の調査内容の詳細、それをウールが書面にまとめたものだけど、私もそを一通り読んで内容を頭にたたき込んだつもりではいる。砕けた敬語で問いかけるウールは、さも当然のようにオオタチの彼に話しかける。
 「はい。今日中にリフェリアの騎士団の皆さんと合流し、日暮れと共に“ルヴァン”社に向けて“キルトノ”を発つ。深夜に訪問し、俺が担当と話している間に、ウールさん方、“騎士団”の皆さんが一斉に調査する」
 「そういう運びになってたと思うわ。タダチさんは“騎士団”の副団長の一人、ウールとリフェリスと行動。元団長が電源装置を止めている間に、私と“騎士団”員が研究区画に潜入する。予備電源が作動する三分間の間に侵入を完了させ、中で交戦。その後任務を開始し、タダチさん達は混乱に乗じて脱出する。こういう流れになってたわね」
 すると彼は一枚の書面に目を通しながら、その内容を順番に読み上げていく。途中で私が確認のために、暗記した内容を唱える。予定の中にある任務の中で、私は“騎士団”員の三分の一を連れて、地下の研究区画に誘導する事になっている。私は自分が収納魔法で隠し持ってたセキュリティカードを使って、残りの二班はフィナルさん、それからもう一人の団長が、私の予備のカード、それからシャサのカードを使って同時に侵入する。“ルヴァン”の研究区画は停電すると全ての扉が手で開けられるようになるから、復旧するまでの三分間に、団員達の潜入を完了させる。それからは置きっぱなしになってる私の荷物を回収してから、私自身の制御端末を回収する。余った時間で私も戦闘に参加し、社員の洗脳を解く。あわよくばヒプニオとか……、重役を探し出して、交戦して気を失わせる。そうすれば一斉に洗脳が解けるはずだから、団員達の調査も捗ると思う。
 「そう把握してますね。……じゃあ“騎士団”の方々が到着し次第、改めて話しましょうか」
 「そうね」
 それで大まかに作戦内容を確認してから、私達は適当な場所に移動する事にした。




  続く

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