第124話 ポケモンリーグ準決勝戦 VSアヤノ[前編]

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 準決勝戦、マイとアヤノはそれぞれの扉の前で待機をしていた。マイは西の扉、アヤノは東の扉の前で互いに緊張をした顔持ちで妙に身体と心が固くなるのを感じる。

「だいじょうぶ、大丈夫。」

 言い聞かせるようにマイは何度もその言葉を繰り返す。スタッフの合図がでた。マイは扉を開けてバトルステージまでの短いのに長く感じる薄暗い通路を歩く。

「――!」
「な、なんなのこれ……」

 バトルフィールドに現れた二人のトレーナーは目を丸くした。バトルフィールドの形状が大きく変わっていたのだ。前回はだだっ広い平らな地面の中央に置かれた噴水があったステージだったが、今回はむき出しの土が所々あり、石ころだらけのやせたような荒れた土地。、まるでここで大きな戦争があったかのような環境だった。勿論、これもスタッフたちによって作られた人工のステージなのだけれど。
 太陽がドームに注ぐ光はとても強く炎症を思わせるようで、マイは目を細める。向かい側にいるアヤノも同じように眩しそうに手をおでこに当てていた。

『使用ポケモンは三体です、それではバトルを開始してください』

 機械的なアナウンスがドーム会場を飛び越してワカバタウン全体に響きわたる。それに負けないくらいの歓声もマイとアヤノの耳には届いていなかった。
 

「私はもちろん、この子から行くわ! フィア!」
(うわー、蘇るトラウマ!)

 ポケモンリーグ・シロガネ大会もいよいよ大詰めを迎えようとしていた。この戦いに勝てばマイはコウと決勝戦を行う。
 が、しかし。相手はアヤノだ。一度戦い敗れた相手、しかもたった一体のロコンによって負けてしまった。そんなトラウマが今まさにリプレイされようとしている。マイは口をあんぐり開けて手を口元に置いた。

「ルーちゃん、君に決めた! 素早さなら負けていない! 地震!」

 猟犬のように身体を緊張させるマイはほとんどヤケクソ気味でモンスターボールを投げ放つ。ズシリ、地面に力強い足が二本立つと後ろを振り向くガルーラは指で親指だけを伸ばし他の指を折り曲げるジェスチャーをする。それに応えるようにマイは声がひっくり返ったような声で指示を出す。
 ガルーラは全身の力を足に込めているのか目をきつく瞑った後、カッと開いて地ならしを何度も何度も繰り返す。

「岩と岩の間を飛んで回るのよ、電光石火!」
(やっぱり早い! 長い間ずっと地震を続けてくれればいいんだけど……やっぱりこの技は疲れるんだ……!)

 効果抜群の技だがこのロコンにそんな技だけで倒れるわけがない。バトルステージにランダムに配置された大きな岩の上を縦横無尽に飛び回りダメージを最小限に抑えてきた。
 いつかは疲れて地面に落ちる時が来ると考えたが、ロコンより先にガルーラに汗が見えてきている。

「さーて、そろそろ決めちゃいますか。フィア、遠吠え!」
「力を蓄えてきてる、一気に決めないと! 冷凍パンチ! それから雷パンチ!」

 ロコンが身体を震わせて吠えている間は動けない。周りの岩を無視してロコンに突っ込んでくるガルーラの拳が一も二もなく、右手は鏡のような青い氷が貼りついて、左手には静電気が発生してバリバリと鋭い音が鳴っていた。
 渾身の攻撃をロコンは受けながらもその場になんとか立ち止まる。

「これで最後だ! 気合いパンチ!」
「近寄ってきてくれてありがとう! フィア、大文字!」
「へあっ!?」

 そして最後だと叫ぶマイに合わせてガルーラは両拳にありったけの力を込めてロコンに振り下ろす。
 待ってましたと言わんばかりにロコンは大口を開けてガルーラの顔面に最大攻撃力で大文字を当てる。遠吠えをして力を増した大文字に耐えれる事のできなかったガルーラは目を回して倒れた。

「うーん、少しは成長したと思ったんだけれど……」
「うっさい! 炎には炎を! キューくん行って来て!」
「そこはラプラスを出すパターンでしょう!? んもう、怪しい光!」

 ゆっくりお休み、マイはガルーラにそう言ってモンスターボールに戻した。気持ちを切り替えて行こうとマイはすぐに次のポケモンを繰り出した。
 まさかの同じタイプのポケモンにアヤノは柄にもなくアドバイス付きで叫んでしまったが指示は忘れない。

「それをしっぺ返しだキューくん!」
「ええっ!? そんなの有りなの!? 催眠術で眠らせて!」
「それは経験済みだー! 寝言ォ!!」

 ロコンが尻尾を揺らすと光の球が出来上がる。その動きに合わせて光がキュウコンに近づくが今度はその光を尻尾で場外へと跳ね返していく。
 アヤノはマイのデタラメの攻撃から逃れようと、一旦眠らせるが西側のマイがほとんど絶叫に近い声を上げてキュウコンに命令をしたのだった。

「コォォオオンッッ!!」
「コンッ!?」
 
 底力のある、訴えるような叫ぶような声にロコンは身動きがとれなくなる。自分の声で起きたらしいキュウコンがマイに向かって甘く声を出した。

「おはようキューくん! さーて、アヤノこれで決めるぜー! わたしのキューくんはイケメンフェイスなんだからね! メロメロ!」

 キュウコンに両手を大きく動かして合図を飛ばす。寝言に思わずドキっとして動けないロコンに優雅に近寄るとキュウコンはウィンクをかまし、鼻先でロコンの頬に触れ、キスをする。これがイケメンのみに許される行為なのか。

「はあ!? うそ、フィアったらメロメロ状態になっちゃったの!?」

 アヤノの言葉通り、フィアはうっとりするほどの幸福感に満たされる顔つきでその場に腰を抜かす。

「それで動けなくしてから破壊光線だー!!」
「それ何だかとっても可哀想なんだけどー!!」

 口を半ば開いてエクスタシーなロコンはキュウコンが光のエネルギーを溜めている事にも気づかない。
 キュウコンの破壊光線に打たれたロコンは訳も分からずにその場に倒れているが目はとっても幸せそうだった。

「お疲れ様さま……ってわぁ!? ギャラちゃん!」

 ロコンをモンスターボールに戻すと一緒にギャラドスが鬼の形相でステージに現れた。予定外の事なのかアヤノは気が遠くなる。

「えっ、なんかお宅のギャラドスちゃんめちゃくちゃ怒ってませんか!?」
「ま、まあ……フィアとギャラちゃんは友達以上恋人以上家族以上の関係だから、奪われちゃったと勘違いして怒ってる……みたいな」
「寝取られ的なアレか……」

 キュウコンを親の目の敵みたいな眼光で睨むギャラドスにマイが一歩退く。流石に怖いらしい。その間、アヤノは冷静を取り戻して、分析する。
 マイにとっては相性は最低最悪。破壊光線で疲れ切ったキュウコンは逃げ切る事すら出来ない――

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