No.14 † 枷の下の素顔 †

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ポケモンスタジアムの『 スタジアム 』……大きな闘技場みたいな感覚で使われているこの言葉
元々は古代ギリシャ……世界で初めてギリシャで行われたオリンピックは、参加者は男性のみで、不正が無いよう全員全裸で競技をしていました。ギリシャの骨董品に描かれている何かの競技をしている男性達が全裸なのはそのためです。

そして、競技も 『 スタディオン 』 という、今でいう徒競走のような競技が1種目だけで、その競技場もスタディオンするためだけの広さしかなく……『 スタディオンをするための競技場 』 これが 『 スタジアム 』 の語源だそうです。

どうも、柔時雨です。

今回で14話目となります。
今回も前回に引き続き、バトルやゲットはありませんが
覘きに来てくださった皆さん、どうぞゆっくりしていってください。
タラッサの町を出て、次の町へ向かう街道沿いのポケモンセンター。
その裏庭のような、憩いのコミュニティスペースで、私は自分のポケモン達を出していた。

「準備はいいか?ヌル。」
「…………(。`・ ω ・) ” 」
「それじゃあ、キリキザン。ヌルに瓦割り!」
「( `・ ∀ ・)ゞ」

「待て待て待て待て!」

キリキザンが右手を大きく振り上げた直後、私達を呼びに来たのと思われるコルボーが、慌てた様子で駆け寄って来た。

「ん?どうしたんだ?コルボー。」
「それはこちらが訊きたいな。何やってんだ?お前……ヌルのトレーニングの様には見えなかったのだが?」
「あぁ……うん。進化して攻撃力が上がったキリキザンなら、ヌルの仮面……兜を割れるかな?って、思って……」
「なるほどな。でも、それはやめておいた方が良いと思うぞ……最悪なパターンとして、ヌルの兜が割れずに、瓦割りの衝撃でヌルの首だけが逝ってしまう恐れがある。」
「ぁ……確かに。でもな、私はヌルのQOLのためにも、兜を取ってやりたいんだよ。息苦しそうだし、エサを食べるのにもこの上なく邪魔そうだ。」
「まぁ、アーシェの言ってることも、解らなくもねえけどな。」

「無理に外そうとしなくても、進化する時になれば、おのずと外れるわよ。」

コルボーが来てからややしばらくして、ティアもコミュニティ広場に出てきた。

「ティア!」
「そういや、ティアは少なからずヌルの存在を知っていたな。他に何か情報はないのか?あるならアーシェに教えてやらんと……また奇行に走るぞ。」
「奇行って言うな!」
「私もそれほど詳しいわけではないの。ただ、エーテル財団の代表の御長男がヌルを持ち出し、アローラのポケモンリーグに現れた時にはヌルと同じ体で、マスクが外れたポケモンを連れていたとか。」
「そっか。じゃあ、ヌルのこの兜はいずれちゃんと取れるんだな?それを聞いて、ちょっと安心した。」
「安心したなら、そろそろヌルをボールに戻した方がいい。気付いてないのか?周りの連中のヌルを見る奇異な眼差しに。」

コルボーに言われて周囲を少し見てみると、広場に居た人達が各々談笑したり、何か作業をしている最中に、チラッチラッとヌルを見ているような気がした。

「言われてみれば……でもまぁ、私はヌルをボールに戻すつもりはねぇけどな。」
「アーシェちゃん?」
「別に他の人達にヌルを自慢するためじゃない。ヌルには今のうちから人の目に慣れておいて欲しいと思ってね。それに、ヌルにはもっといろんな物を見てもらいたいとも思ってるんだ。ボールの中からじゃなく、実際に大地を踏みしめて……」
「すまん。ちゃんと考えての行動だったのか。」
「いや、コルボーが言ったことも理解できるからさ、謝らないでくれ。ただ……それでもやっぱり、人工的に作られたポケモンにだって、幸せになる権利はあるハズだし、その権利は平等に与えられているハズだと思うんだよ。」ニコッ
「…………(。 ・ ω ・) 」
「ヌルが作られた経緯や過程……それは私は知らないし、知りたいとも思わない。ただ、こうして私の仲間になってくれたんだ……私は、他の皆と同等に、ヌルとも接していくつもりだ。」

私は自分の傍に歩いて来たヌルの頭……兜を撫でながら、思っていることをそのまま素直に呟いた。

そんな時、新しくコミュニティ広場に来た1組の金髪の男女のカップル(かな?)が、ヌルの存在に気付いたのだろう。
わざとらしく、私達に聞こえるように大声で騒ぎ始めた。

「うわっ!?何だ、あれ!」
「きっも~い!!」
「ポケモン?ポケモンなのか!?」

「アーシェちゃん、気にすることないわよ。」
「あぁ。言わせたい奴には言わせておけ。」
「うん……」

「お前のこと言ってんだよ!シカトしてんじゃねえぞ!」

そう言いながら男性は拾い上げた石を、ヌルに向かって投げつけてきた。
同時に、それに気づいたワカシャモが、飛んできた石を強烈な蹴りで粉砕した。

「はぁ?何だ、アイツ……生意気だな。」
「おもしろそ~!私もやろっと!」

1回目の投石をワカシャモに阻止された男性と、一緒に居た女性が足元にあった石を幾つか拾い上げて、再び投げつけてきた。
今度はキリキザンも瓦割りで、フカマルも龍の怒りで、飛んできた石を撃ち落とす。

私が指示を出したわけじゃない。
ヌルと一緒に外に出ていた3匹が、仲間のヌルを守るために、自分達で考えて行動してくれた……そのことが、とてつもなく嬉しかった。

「ちっ……何だよ、バカみてえにキモい生き物守っちまってよぉ!」
「つまんなぁい。ねぇ、もうあんなの放っておいて、行こうよ。」
「そうだな。一気にシラけちまったぜ。」

好き勝手やるだけやって、金髪のカップルは機嫌悪そうにその場から去って行った。

「あいつ等……!」
「酷いわね。謝罪の1つも無いなんて……」
「そいつぁ仕方ないだろ。あいつ等は自分が悪いと思ってやったわけじゃねえからな。まったく、お里が知れるというやつだ。」
「ワカシャモ、キリキザン、フカマル!ありがとうな。お前達のおかげでヌルが怪我をしないで済んだよ。」
「「「 ( `・ ω ・)b 」」」
「おぉ……頼もしいな、アーシェのポケモン達。」
「本当に、このヌルも悪用されないで良いトレーナーに…………っ!?アーシェちゃん!」
「ふぇ?」

ティアに呼ばれて、視線をヌルの方に向けると……ヌルの体が青白い光に包まれていた。
身体そのものの大きさは変わらないが、パキンッ!という乾いた音がしたかと思うと、それまでヌルが着けていた兜が真っ二つに割れて私の足元まで転がって来た。

光の中で鶏冠……たてがみ?がなびき、光が掻き消えると、それまで謎だったヌルの本当の姿が明らかになった。

機械っぽい顔に、美しい白銀の毛並み……兜から解放された頭部の分だけ少し大きくなり、心なしか、体の色も少し薄くなったような気がした。

「ヌ……ヌル……?」
「これが、ヌルの真の姿ってやつか……これは一応、進化ということでいいのか?」
「えぇ。この子の名前はシルヴァディ。初めてヌルをこの姿にした少年によって名付けられたそうよ。」


【 シルヴァディ 】
じんこうポケモン / 高さ : 2.3m / 重さ : 100.5kg / ノーマルタイプ
パートナーとの信頼で覚醒して進化した姿。
制御マスクを自ら破壊して、スピードが大幅にアップ。
特殊メモリを装備することで、伝説のポケモンのように、自在にタイプをチェンジする能力を発揮して戦う。
湧きあがるエネルギーで銀色に輝く。


「そっか……ふふっ、おめでとう!そして、ありがとう。シルヴァディ。」
「ん?ありがとう?何でお前が礼を……?」
「あぁ。この姿になったってことは、ちょっとでも私のことをトレーナーとして認めてくれたんだって思うと、嬉しくって……だから、ありがとう。」
「なるほど……そっか。」
「うふふ。良かったわね、アーシェちゃん。」
「うん!シルヴァディの期待に応えられるよう、これからも精進しねぇとな。」

そう言いながらシルヴァディの頭から首、背中にかけてのラインを撫でていると、私のポケモン達が集まり、ヌルの進化を各々祝福していた。

「「「「 ( ≧ ▽ ≦ ) 」」」」
「……若干、見た目が可愛いから格好良いに寄ってきたけど、こうして自分のポケモン同士が仲良くしている光景を見るのは、やっぱり嬉しいな。」
「えぇ、本当に。此処までの道中で築いた団結力がそのまま映し出されているようで、素敵だと思うわよ。」
「…………」
「どうした?コルボー。」
「ん?あぁ、いや……結果は明日……か。」
「?」

*****

翌朝

「それじゃあ、このまま南のリゾート地に向けて、しゅっぱぁつ!」

「あっ!見つけた!!」

「え?」

荷物を纏め、私達がポケモンセンターから出発しようとした時……昨日のカップルが、私にすがりついてきた。

「お前等は、昨日の……ッ!」
「なぁ!あの動画、早く削除してくれよっ!」
「動画?何のことだ?」
「…………………!ねぇ、もしかして、これのことじゃないかしら?」

ティアが持っていたノートパソコンで何やら検索してくれたらしい。
そのパソコンの画面には、私と目の前にいるカップルとの……昨日の、このポケモンセンター裏であった一連の出来事が、動画投稿サイトにアップされており、その下に自由に書き込めるコメント欄には様々なコメントが寄せられていた。

『は?何なん、あいつら?いくら見たことが無いからって、あれがポケモン相手にすることか?』
『この動画のUP主には感謝だな。おかげで珍しいポケモンが見れた。』
『おいおい、この紅い髪の女の子のポケモンって、エーテル財団の御曹司も使ってなかったか?』
『↑ マジか!?それじゃあ、あのバカ達は知らないうちに、御曹司のポケモンをディスってたってことか。社会的に消えたな、こいつ等。』
『身元特定できたぜ~。どうやら、こいつら他所でもポケモン関連でトラブル起こしてたらしい。』

「うわぁ……」
「ねぇ!お願い!さっき、パパとママから連絡があって……大変なことになってるって……」
「お前が動画投稿したんだろ!?さっさと消せよ!!」
「いや、知らねぇよ!私は、パソコンのポケモン預かりシステムだって満足に使えない女だぜ?こんな動画投稿なんて高等なこと、できるわけねぇだろ!」
「それに、このカメラアングル……アーシェちゃんが座っていた位置からは無理よ。少なくとも、貴方達の正面に当たる位置に座っていないと……」
「ん?あぁ、やっぱりこうなったか。」

ティアが持っていたパソコンを覗き込み、コルボーが呟いた。

「ん?コルボー、何か知ってんのか?」
「おう。お前のポケモン達が顔合わせの儀をしている間も、カメラを構えていたポケモンコレクター風の男が居たので、『何してんだ?』とは思っていたんだが……まさか、こうなっちまったか。はははっ!」
「笑うなんて酷い!!」
「なぁ、オッサン!そのコレクター風な野郎がどこ行ったか知らねえ!?」
「オッ…………さぁな。そいつを見たのはそれっきりだ。もしかしたら、既にこのポケモンセンターを出てるかもな。」
「「そんな……」」
「まぁ、仮にだ……私が機械の扱いに慣れていて、今回みたいな動画を撮って投稿したとして……『消せ!』と言われても、絶対消さないけどな!いくらワカシャモ達が叩き落としてノーダメージで済んだとはいえ、私の大切なポケモンに向かって石を投げてきたお前等を許すわけねぇだろうが!!このまま他の人達に白い目で見られながら、自分達がこれまでポケモン達にしてきた非道な所業を反省しやがれ!!」

私は男性を押し退け、ティアとコルボーと一緒にポケモンセンターを後にした。

その後、彼等がどうなったのかは知らない。
ただ、今までもポケモンに対して酷いことをしてきて……それで、私のヌルを馬鹿にしたところで、とうとう天罰が下った。

そう思うことにしよう。
TwitterやSNS(?)が発達して、面白い動画が世間に出回る中、
『普通に考えて、それはアカンやろ』と思うような常識が欠如した人達が投稿する動画が世間に出回っているようで……

自分達が面白いと思っていても、他の人がどう思うか判らない……自分もこうして作品を綴らせていただいている以上
そういう部分は気を付けなければいけないなぁ……なんて思ってます。

はい!そういうことで、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

今回でヌルがシルヴァディに進化しました!
なつき進化なので、早く進化させてあげたいと思っていたところ、ようつべさんの方で一般の人がDQN(?)と呼ばれる人達に制裁を加える動画を幾つか見て
『あ……こういう話と、ヌルの進化……何とか合わせられへんかな?』
と思い、今回の話を制作させていただきました。

さて、長々とお付き合いいただきありがとうございました。
また次話で御会いしましょうです。

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