その祈祷師とかいうやつ、私もやったる!

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

不思議な生き物、ポケットモンスター。さまざまな属性を持ち、手持ちに加え戦わせ、ある時は愛で、生涯を共にするパートナーのような者。そんな世界の中にも、平行世界いわゆるパラレルワールドと呼ばれる物が存在する。その中の一つに、人間が存在しない、ポケモンだけが暮らしている世界がある。彼らは、自らの力で文明を開花させ、発展させてきた。発展具合は地方によってさまざまなだが、何不自由ない暮らしをしていた。
そんな世界の中の一つの大陸が、今回の舞台である。その大陸の名は、「四季の大陸」。四季桜を中心に、町が広がっている。この大陸が「四季の大陸」と呼ばれている理由は、大陸を四等分するように四季が分かれているからだ。ある所は春、ある所は冬と。そんな不思議な事が起きるのは、この大陸の中心にある四季桜が関係していると、考えられている。四季桜は、この大陸が出来た頃からあると考えられており、不思議な力が秘められていると考えられている。なので、四季桜の周りには、しめ縄が巻かれており、真正面には鳥居が建てられている。しかし、それでも四季桜の威力は抑えられないようで、そこから「ケガレ」という霧状の物が発生していた。「ケガレ」はポケモン達の体に取り憑き、そのポケモンのコピーを作るという。その為、この大陸には「祈祷師」という職業があった。彼らが「ケガレ」を浄化してくれるのだ。しかし、「ケガレ」に取り憑かれたポケモンと直接戦う事もあり、なかなかその職業につく者はいなかった。













春の訪れを告げる風が吹くある日、ヒトカゲのチカは、四季桜の周りを散歩していた。ここはケガレが沸く場所でもあるが、パワースポットとしてもかなり有名な所だった。しかし、やはり彼の他にポケモンはいなかった。ケガレの事を警戒して、誰もこないのだ。それはそうと、そんな危険な所を散歩しているのだろうか。他にも散歩出来る場所はあるはずなのだが。
チカがひたすら歩いていると、鳥居が見えてきた。一周回ってきたのだ。一周回ったし、もう帰ろうと思った時だった。鳥居にもたれ掛かるようにして倒れているピカチュウを見つけたのは。尻尾の先はハート型だから、恐らく女であろう。

「ねえ、君、大丈夫!?」

彼は驚きつつも、ピカチュウを揺さぶった。幸い、彼女はすぐに気がついた。

「うっ……うぅん……?」
「あっ、気がついたんだね。良かった……。」

チカは心底安心した。ピカチュウはというと、まだ完全に覚醒していないのか、ぼぉーとしている。しばらくその状態だったが、彼女がやっと口を開いた。

「ポケモンが……しゃべっとる?」
「えっ、何言ってるの?君もポケモンじゃないか。」
「へっ!?何言っとんの?私がポケモンな訳……」

彼女は自分の手を見たと同時に、凍りついた。黄色い!頭に確かに生えている長い耳。可愛らしいほどに小さい手足。先端がハート型のギザギザ尻尾。どう考えてもピカチュウだった。

「へっ!?何で……私、ピカチュウになっとるぅゥゥゥゥゥ!?」

彼女は叫んだ。それはもう大きな声で。この大陸中に響いているのではないかと思うほどに、大きな声だった。その行動に不信に思ったチカは、落ち着くように彼女の背中を撫で、話し掛けた。

「僕、チカっていうんだ。ねえ、さっきピカチュウになってるって叫んでたけど、どういう事?」

彼女は少し落ち着いたのか、話し始めた。

「私、アイ。実は私、元人間やねん。信じてもらえへんと思うけど……」
「元人間?人間はずいぶん前に、絶滅したって聞いたけど……」
「そうやんな……簡単には信じてもらえへんよな……」

アイという少女は、肩をすくめ項垂れる。それを見たチカは、なんとなく申し訳なくなる。

「アイ、他には何か覚えてないの?」
「えっと、ポケモントレーナーとして、いろんな地方、旅しとった事くらいかな。」

どうやら彼女は、ピカチュウになる前はポケモントレーナーという職業についていたらしい。しかし、それ以上は何も話さなかった。二人共、沈黙していると、その沈黙を破るかのように、爆発音がした。チカは、これは、マズイと思った。彼らの目の前には、ケガレに憑かれたポケモンが、まるで幽霊のようにゆら~と立っていたのだ。

「えっ、何あれ!」
「あれは、ケガレに憑かれたポケモン!とにかく逃げるよ!」
「へっ!?」

チカはアイの手を取ると、その場からすぐに立ち去ろうとした。彼女も彼女で、あれはマズイ物なんだと本能で感じていたので、されるがままだった。しかし、相手はそう簡単には逃がしてくれないもの。行く手を阻むかのように、高速で移動していく。

「だめや……全然抜けられへん……。」
「どっどうしよう……」

すると、そのポケモンはジリジリと二人に近づいてくる。もうだめだ!心からそう思った。そして、ポケモンの攻撃が二人に直撃する、まさにその時だった。二人の前に巨大な扇子が現れ、攻撃を防いだのだ。

「あなた達、大丈夫だった?」
「後は、俺達に任せときな!」

二人の目の前に現れたのは、プラスルとマイナンだった。二人共、着物のような物を着ている。しかし、それは襟がセーラー襟と、とても現代チックな物だった。プラスルは話し方からして、女だと認識出来るが、マイナンは口調が男口調なので分かりにくいが、声の高さからして、恐らく女だろう。プラスルの方は、赤色。マイナンの方は、水色の扇子を両手に持っている。彼女達は、アイコンタクトで同時に走り出した。そして、持っていた扇子をポケモンを叩きつけた。扇子を叩きつけただけで、そんなにダメージは入らないだろうと思うだろう。しかし、彼女達の扇子は違った。叩きつける瞬間、鉄に変わっていたのだ。そのおかげで、ポケモンはふらふらになっていた。もちろん、鉄のおかげでもあるのだろうけれど、なにより彼女達の叩きつける威力が桁違いだ。

「ねえ、あのポケモン達は?」
「あの人達はね、祈祷師っていって、ケガレを浄化してくれるんだ。」
「ケガレってあのポケモンの事?」 
「うん!あの二人は凄い実力者なんだよ。」

チカは、うっとりとしながらアイに祈祷師の事を説明した。アイはというと、本当に祈祷師が好きなんだなぁと、微笑ましく思っていた。そんな事をしている間に、あの二人のおかげで、ケガレは立ち上がれないほどに体力を消耗していた。

「姉ちゃん、そろそろいいんじゃない?」
「そうね。」

二人は顔を見合わせると、二人の扇子を重ねた。すると、扇子が巨大化した。

「「森羅万象!!」」

彼女達は叫ぶと同時に、扇子を重ねる為に上げていた腕を、ケガレへと向けた。すると、扇子から大量の桜の花びらが出てきた。けれど、彼女らの桜の花びらは、普通のより少し紫に近かった。その幻想的な光景に、アイは心打たれた。
攻撃が収まると、そこにはケガレに憑かれれいたポケモンが倒れていた。

「うん。大丈夫そうだな!」
「ええ。それとあなた達、あまり四季桜に近づいてはだめよ?」

プラスルが言ってきたので、チカ達は「はい」と返事をした。それを聞くと、彼女達は憑かれていたポケモンを抱き抱え、帰っていった。しばらく、二人は立ち尽くしていたが、チカの声が沈黙を破った。

「ねえ、アイ。僕と一緒に祈祷師になってくれないかな?」
「えっ?私、元人間ですとか言ってる変な奴なんやよ?こんな私なんかより
「ううん!アイが良いんだ!」 

アイは不思議に思った。今日初めて会った、ましてや元人間ですと、意味不明な事を言う奴と何故組みたいのか?それが謎だった。

「アイがあの二人の浄化しているところを見てる時、目がキラキラしていたんだ。きっと、この人となら、立派な祈祷師になれる。そう思ったんだ。」

アイは少し戸惑ったが、やがて意を決したように言った。

「分かった。その祈祷師とかいうやつ、私もやったる!」
「ほっ本当!?」
「うん!これからよろしくな。チカ!」
「こちらこそよろしく。アイ!」
第一話目、書きました。
今回は、ポケダン風ファンタジー小説にしていこうと思っております。

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