46話 チームウイング

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読了時間目安:24分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

時系列は45話の次の日。
つまり7月29日です。
昨晩、アイトが精神的な面でも看病をしてくれたおかげで、ヒビキの容態は大分よくなった。
といっても、相変わらず熱が少しあるので、今日もヒビキはお留守番だ。
昨日と違い、今日は1匹に看病を任せて、残った2匹は依頼に向かおうと思っている。
ヒビキの容態も安定しているからね。
それで、誰が留守番するのかという話になったのだが...

「アイトでしょ」
「アイトだね」
「いや、なんで俺なんだよ」
「だって、1番寝てないのがアイトだもん」
「うっ..! でも、それはヒカリが交代に来なかったからで......」
「行ったよ? けど、あんな姿見せられたら....ねえ?」

とても誤解を招きそうな言い方だが、ヒカリの言い分も間違ってはいない。
ヒカリは交代時間になった時、確かにヒビキの部屋を訪ねたのだ。
ただ、そこで見た光景が、アイトが座った状態で壁にもたれかかって寝ていて、その膝を枕にするかのようにヒビキが幸せそうな表情で寝ていたのだ。
そんな光景を見せられたら、無理に起こすのもなんだか悪く思えたヒカリは、そっとヒビキのおでこに乗っている、乾ききったタオルだけを取り替えて部屋から静かに出ていき、自室に戻って2度寝したらしい。
一方、寝てしまったアイトは明け方に目を覚ました。
自分が寝てしまった事に気づき、慌ててヒビキの様子を確認しようと立ち上がろうとした時、自分の膝の上で安らかに眠っているヒビキを見つけて、一安心した。
そこから、ずっと起きていたが結局ヒカリは交代に来なくて、特にやることもないのでヒビキの頭をなんとなく撫でていたら、そのまま朝を迎えてしまったというわけだ。

「そういうわけだから、アイトはヒビキと一緒に今日はお留守番ねー」
「そんなに遅くはならない予定だから」
「...わかったよ。 よし! ヒビキの事ならまかせとけ」

半ばやけくそ気味に、留守番を引き受けてくれたアイト。
余談だがアイト曰く、ヒビキが目を覚ました時、「おはよう」と声をかけると、少しボーっとした表情で「あれ....アイトくん?」と呟いた後、すごい勢いで目を見開くと、アイトの膝から慌てて離れて、真っ赤な顔をしながらベッドに顔を埋めたらしい。
「やっぱりほのおタイプだから暑かったのかな..?」とアイトは言っていたが、違うと思う。

―――――――――――――――――――――

というわけで、僕とヒカリはカリムさんに会いに行き、簡単な依頼で、負担の少ないようにという事で他のチームと合同での依頼を請け負う形になった。
今日は、鳥ポケモンだけで構成されているチームウイングと一緒だ。
このチームのリーダーであるヨルノズクのノクト。
かなり真面目な性格で、常に冷静に物事を判断している印象だ。
次にオオスバメのスロウ。
気さくで優しく、このチームのメンバーの中では、1番声をかけやすいポケモンな気がする。
最後にムクホークのタラス。
彼はどちらかというと、口数は少ない部類に入り、たまに口を開くと、厳しい物言いが多く感じられる。
この3匹と一緒に依頼をすることになった。

「それで、依頼の内容ってなんなのー?」
「なんだ、聞いていなかったのか」

レベルグを出発してから、ヒカリがノクトに質問した。
つい先日、重症を負い、病み上がりのチームウイングと一緒ということもあり、落とし物を探す簡単な依頼ということしか僕とヒカリは知らない。

「今回の依頼は、ヤンチャムとチョボマキってポケモンからの依頼でな。 この先にある神秘の森で、木の実が入った袋を落としたから見つけてきてほしいというものだ」

スロウが丁寧に詳細を説明すると、それを鼻で笑ったタラス。

「フンッ! 元はと言えば、そのヤンチャム達がチェリムの住処に無断で侵入し、あまつさえ木の実を盗むような真似をし、チェリムに追われて落としてきたもの。 自業自得だ」
「まあまあ。 そう言うなタラス。 あの2匹だって、あそこがチェリム達の住処だって知らなかったらしいし、子供のしたことなんだから大目にみてやろうぜ」
「誰かへのプレゼントだかなんだか知らないが、子供は常識に欠けるから苦手だ」

そんなやり取りをしながらも、一同は目的地である神秘の森の入り口前に到着した。
この神秘の森は、一部が不思議のダンジョン化しているが、今回の目的地であるチェリムの住処はごく普通の森の部分であり、危険はほぼない。

「ここからは手分けをしてチェリムの居所を探す。 私はここで地図を見つつ、指示を出す。 スロウとタラスはそれぞれ上空から探してくれ。 チームスカイのハルキとヒカリは、ここで指示を出す私の妨害が無いように近くで警戒を頼む」
「わかりました」

ノクトの指示を受けて、スロウは森の右側、タラスは左側へと飛んでいった。
残された僕とヒカリは、指示をとばすノクトの護衛だ。
といっても、危険が少ない森なので周辺を警戒しても特に何もないのだが...。
ノクトは救助隊に何組かある救助隊バッチを片手に、ここにはいないスロウとタラスに指示を出している。
見た目は、なんの変哲もないバッチの形状をしているが、実は高性能な無線機らしく結構な範囲を連絡し合える優れものだ。
調査団の自称天才のポケモンが作成したらしいが、作るのが大変で生産が追い付いていない事と完成したばかりで不具合も見つかる可能性を考慮し、その試作機のテストを兼ねて救助隊も特別に数個譲り受けたらしい。
まあ、この世界で無線があるという時点で驚くべき事だと僕は思う。

「......そちらの方角にいなかったら少し南下してくれ。 タラスはスロウとは反対で北上しつつ、次のポイントへ........ああ、そうだ」

森の地図を見ながら指示を出すノクト。ヤンチャム達の証言を元に捜索範囲を絞り混んだようで、地図には数ヶ所、赤い丸で囲われた場所があり、そちらにスロウとタラスを順番に向かわせているようだ。

「なーんか暇だね~」
「元々、危険が少ないらしいし、仮にも護衛である僕らが暇なのはいいことだよ」
「ん~。 まあ、そうなんだけどさぁー」

ヒカリはおもむろにノクトの元に向かい、背後から地図を覗き込んだ。

「ねぇねぇ!」
「...そちらにはいないか。 ならそのまま少し東に移動して..」
「ねぇねぇねぇ!」
「......そこでもないか。 なら一旦戻るようだが北上しつつ西の方へ...」
「ねぇってばぁー!」
「ええい! うるさい! 集中できないだろ! ハルキ、ヒカリをなんとかしてくれ。 お前のチームメンバーだろ」

しつこく絡んできたヒカリに、最初は無視をしていたノクトだが、体を揺さぶられた辺りから我慢の限界だったのだろう。
ハルキは慌てて、ヒカリの元に駆け寄った。

「ちょっと、ヒカリ。 あんまり迷惑かけちゃダメだよ」
「えー、でも、チェリム達の居場所はその地図に記されたポイントのどこでもないと思うよー」
「なに? なぜそう思う?」
「だって、依頼してきたポケモンはヤンチャムとチョボマキの子供でしょ? だったら、こんな森の深いところには来ないよ。 うーん…私だったら、この辺で収穫するかなー」

ヒカリが指で示した地点は、神秘の森の入り口であった。

「フッ、何を馬鹿なことを。 入口なんて先ほど私達が通ってきた場所じゃないか。 もし、そこがチェリム達の住処ならとっくに私達は襲われているはずだぞ」
「あー、そうじゃなくて...」
「たぶんヒカリが示しているのは、入り口じゃなくて、厳密には入り口付近。 つまり、メインの道から大きく外れたこの辺りだと思います」

ヒカリの言葉を補足するように、ハルキも地図を手で示しながらノクトに話す。

「...確かにそれならば、一理あるな。......スロウ、今の話を聞いていただろ? 予定を変えて、森の入り口周辺を調査してくれ。 タラスはそのまま継続して、次のポイントに向かってくれ」
[[了解]]

救助隊バッチから2匹の声が響き、ほどなくしてスロウから見つけたとの連絡が入った。
ノクトはタラスにスロウと合流するように指示を出し、僕達も連絡のあったポイントに向かう事にした。

―――――――――――――――――――――

ハルキ達は、スロウが見つけたと連絡のあった場所につくと、先に合流していたタラスがスロウと一緒に茂みからチェリム達の様子を伺っているところであった。

「状況はどうなってる?」
「あんまりよくないな。 ヤンチャムとチョボマキを泥棒と勘違いしたままだからなのか、警戒心が目に見えて高い」
「そうか。 できれば戦闘は避けたい。 ここはもう少し様子を......」
「こんにちはー! 私の名前はヒカリ! よろしくねー」

茂みから様子を伺いつつ、策を練ってから接触しようと考えていたノクトだが、
そのもくろみはヒカリの行動によってあっさりと砕かれた。
突然現れて、自己紹介をし始めたピカチュウに戸惑っていたチェリムだが、それでも警戒は緩めずにヒカリを無言で睨み付けていた。

「おい。 お前の所のチームメンバーがした行動だ。 お前も行ってこい」
「えっ、でも数が増えたらもっと警戒しませんか?」
「いや、タラスの言うとおり行ってくれ。 正直、ヒカリだけだと心配だ」
「ハハッ、それは言えてるな。 行ってやれ、ハルキ。 何かあったら俺達が何とかするからよ」

自由奔放に動く、ヒカリの性格を先程痛感したノクトは頭痛を抑えるかのように、眉間に翼を当てていた。
そのリアクションと救助隊バッチから、先程、聞いていた会話内容から察したスロウが笑いながらハルキに行ってほしいと頼んだ。
正直、複数のチェリムの警戒心を含んだ視線の中に自ら行くのだから、気はすすまないが行くしかない。

「あのー...ヒカリ、さん?」
「あっ、ハルキ! 紹介するね! 私のベストパートナーのハルキだよ! ほら、ハルキも挨拶して!」
「え、あ...ハルキです。 よ、よろしく」
「…………」

相変わらず無言でこちらを睨み付けるチェリム達。
気まずい。
自己紹介が無視されただけだが、無数の視線を浴びた状態で、全員から無視されるとなんだか、やってもいないギャグがスベったみたいな空気になる。
しかし、ヒカリにとって、そんな事は関係なく、鞄をガサゴソさせながら話を続ける。

「実はいいものがあるんだ~。 ジャーン!」
「それって、マカロン?」

ヒカリが鞄から取り出したのはピンク色のマカロンだった。

「いつのまにそんなお菓子を?」
「昨日、アイトがすりリンゴを作っている時にねー」

昨日、ヒビキの看病のためにアイトが自分ですりリンゴを作ると言い出して作っていた時、ヒカリはその裏でマカロンを作っていたというわけか。
僕はヒビキの看病をしていたから、詳しくはわからないけど、苦戦しているアイトの背後で鼻唄を歌いながらマカロンを作っているヒカリの姿が容易に想像できた。

「おいしいよー! みんなも一緒に食べようよー」

ヒカリがマカロンを一口食べながら、警戒しているチェリム達に、笑顔で手を振る。
やがて、1匹のチェリムが恐る恐る近づいて来たので、ヒカリは鞄から緑色のマカロンを笑顔で渡してあげる。
受け取ったマカロンとヒカリの顔を交互に見てから、意を決してマカロンを食べたチェリム。
すると見た目通り、花が咲いたかのような満面の笑顔を浮かべたチェリムは、その後も追加で貰ったマカロンを無我夢中で食べていた。
相当美味しいのだろう。
ヒカリは変な冒険をしなければ、普通以上においしい料理が作れるし、森の木の実だけを食べて生活しているようなポケモンには、お菓子なんて食べる機会はないと思う。
おそらく、こういった味の食べ物は初めてなのだろう。
美味しそうにマカロンを頬張るチェリムを見ていた、他のチェリム達は次第に警戒心が消えていき、ただ「いいなぁ~」と言いたげな表情で、マカロンを見ている。
このチャンスを逃すわけにはいかない。

「よかったら、他のチェリムやその仲間達もこっちで一緒に食べよう!」
「うん! そうだよー! まだまだマカロンはあるから、どんどん来て来てぇー」

ハルキとヒカリの言葉を合図に、今まで様子を伺っていた、チェリムやその陰に隠れていた進化前のチェリンボ達が一斉にヒカリの元に集まり、マカロンを貰って、嬉しそうに食べ始めた。
そこからは、警戒心が解けたチェリム達に事情を説明したところ、「そういうことならいいよー」と言ってくれたので、ヤンチャム達が落としていた木の実が詰まった袋を回収させてもらった。
その間にチームウイングも仲間だと説明し、余計な誤解を与えないようにもしといた。
紹介しないで、隠れっぱなしにして万が一見つかったら、またややこしくなるからね。

「よし。 依頼の品も見つかったことだし、帰るぞ」
「いや、まだやることがあるよー」
「やることだと?」

依頼された袋も見つけ、あとはこれを届けるだけだと言うのに、他に何をやり残している事があるのか。
そんな感じの表情を浮かべたチームウイングの気持ちを察してか、ヒカリはノクトの問いかけに無言で頷いた。

「私達は目的を達成できていいかもしれないけど、ここのチェリム達は一方的に迷惑を被っただけだよー。 それじゃあ、不公平でしょ?」
「いや、でもお前がマカロンを渡したじゃないか。 あれで十分だろ」
「あのマカロンはヤンチャム達が迷惑かけたお詫びだから、私達がここに踏み行ったお詫びはまだだよー」
「し、しかしだな...」

ヒカリの意見に噛みついたタラスは言葉を詰まらせた。 ヒカリの意見も間違っていないと、同意できる点が少なからずあるからだろう。
実際にチェリム達からしたら、いきなり自分たちの住処に見知らぬポケモンが踏みいってきて、警戒をしなくてはいけない状況になり、余計な心労をかけてしまっていたはずだ。

「お詫びをするって言ったって、俺達は救助隊の仕事として来たわけで、ピクニックしに来たわけじゃない。 だから、チェリム達が喜ぶような物は何も持っていないぞ」
「そうだ。 俺達に何をしろと言うんだ」

スロウが肩から下げている鞄を探りながら、大したものは渡せないと言い、それに便乗するかのようにタラスも、厳しい口調でヒカリに問いかけた。
その問いにヒカリはニッコリ笑うと、解答としてこう答えた。

「簡単だよ! 一緒に遊んであげればいいんだよ!」

―――――――――――――――――――――

「なぜ私達がこのような目に合っているのか...」
「おい! お前達! いいかげんにしろ! ...あっ! だから鶏冠に触るんじゃなぁぁぁい! 」
「おいおい、タラス。 そんなイラついても、相手はまだ小さな子供だぜ? 少しは多目に見ようぜ? ほーら、たかいたかーい!」

大量のチェリンボとチェリムに埋もれながらなすがままにされるヨルノズクのノクト。
同様にチェリンボとチェリムに体のあらゆるところに登られ、好き放題に毛並みをいじくり回されて、怒っているムクホークのタラス。
一方、オオスバメのスロウは、たくさんのチェリムやチェリンボに囲まれているのは同じだが、さながら保育士さんのような対応で見事にチェリム達の心を掴んでいた。

「同じ鳥ポケモンでも結構差がでるねー」
「そ、そうだね...ハハハ.....(一応、僕も鳥ポケモンなんだけど...)」

ヒカリと一緒に他のチェリム達と遊んでいるハルキが苦笑いをしながら答えた。
ここで、ヒカリがなぜ遊ぶことを提案したのか。 その事について説明しよう。
森の中で平和に暮らしていたチェリムとチェリンボ達は、周囲の木の実や湧き水を汲んで生活していた。
生きるためには不便はしていなかったが、ここはダンジョンも存在する神秘の森。
比較的、安全な入り口付近を拠点にするしかなかったため、思い切り遊んだことがほとんどなく、少しストレスを溜め込んでいた。 そのため、やたら警戒心が高く、ピリピリしていたらしい。
そこで、ある程度の戦闘経験のある救助隊が一緒ならば、思い切り遊ぶことができ、さらにストレスも解消できる。
という理由から、今の状態に至る。
そして遊び始めたはいいのだが、チームウイングのスロウ以外は見事にもて遊ばれてしまっている状態であった。

「くッ! こいつら.....小さいのになんて力だ! あ、おい! だから、俺の鶏冠には触るんじゃない!!」
「………………」

「なにこれー?」「へんなのー?」と言われながら、チェリム達に自慢の鶏冠をいじられ、四苦八苦しているタラス。
その隣では、完全に事態に思考が追い付けず、放心状態のようでピクリとも動かないノクト。

「まあ、あの2匹は無邪気なポケモンや子供を相手にするのは苦手だし仕方ねぇか。 ハルキ! ヒカリ! わりぃけど、埋もれているノクトだけでも助けてやってくれ」
「はーい」
「ちょっとまて! 俺も助けろ!」
「タラスはー......そのままでいいぞ。 チェリムとチェリンボに鶏冠が大人気だしな! ハハハッ」
「なっ、何ィッ!? スロウ! 貴様ぁぁッ!」

スロウに頼まれて、とりあえずハルキとヒカリで動かない人形と化したノクトをひっぱりだす。
その間、タラスの姿を見て笑っているスロウと、覚えていろと言わんばかりの眼差しをスロウに向けるタラス。
しかし、自慢の毛並みをボサボサにされていて、いつものようなカッコよさは微塵もなかった。
それからは、みんなで鬼ごっこやかくれんぼをして過ごした。
ノクトは相変わらず、終始放心状態でただのオブジェとなっていたが、タラスは口調は悪くても、なんだかんだノリ気で、鬼ごっこで鬼役を務めた時なんて、律儀に空を飛ばずにチェリム達を追いかけまわしていた。
その姿を見た、スロウに「あれが本当の羽飾り」と言われ、その言葉に腹を立てたタラスがスロウをひたすら追いかけまわし、それをチェリム達が「そこだー」「やっちゃえー」などと、さながらヒーローショーを見ながら応援を飛ばしているような場面もあった。
そして、鬼ごっこが終わる頃には夕方になっていた。
チェリム達は大満足したようで、さらに木の実を上乗せして譲ってくれた。
お詫びのためにやったのにお礼をもらうという不思議な事態になったが喜んでくれたようなので良かった。
森から離れる時のチェリム達の表情は最初に会った時のような固さはなく、みんな笑顔で手を振りながら見送ってくれた。

「楽しかったね~」
「フンッ! お前の提案のせいでひどい目に合った」
「まあ、そう言うなよ。 なんだかんだお前だって、楽しんでたじゃねぇか」
「ふざけるな! あんな子守りみたいな事、2度とごめんだ! ......だが、その、なんだ....つまらなくは..なかったな」
「あー、ツンデレだ! ツンデレー!」
「なんだ? そのなんかあまり良さげな意味に思えない言葉は!?」
「ヒカリ....なんでそんな言葉知ってるの..」
「えへへ~」
「………ハッ!! 私は今まで何を…? 何故スロウに背負われているんだ?」
「おっ! やっとお目覚めか。 起きたなら自分の足で歩いてくれ。 リーダー」
「あ、あぁ...」

放心状態から今さら戻ってきたノクトは状況がまったく呑み込めずにいた。
途中から石みたいに動かなくなっていたし、無理もないだろう。
ん? 石みたい..に?

「ッ!!」



***

「うっ..うっ....」

石になった何匹かのポケモンの前で、座り込んで泣いている影がいた。

「キョウ。 泣いていても彼等は目を覚まさないし、何もすすまない」

泣いているポケモンが顔を上げると、深い青色の瞳をしたピンク色のポケモンが中に浮いて、キョウと呼ばれたポケモンを見下ろしていた。

「ミュウ...。 だって....だってよぉッ! こんなッ...! さっきまで....ついさっきまで、普通に話していたこいつらがッ! なんで石にされなくちゃいけないんだ!」
「死んでいないだけマシさ」
「死んでいないだけマシ!? 確かに俺達からしたらそうだろうな! だが、石にされたコイツらの気持ちはどうなんだ? 光りすら見えない虚無の世界で、永遠に彷徨い続けるコイツらの気持ちはッ!!」

ミュウを睨み付けながら、両目一杯に涙を浮かべてそのポケモンは叫んだ。

「石化が解けないと決まってはいない」
「だとしても! 確実に元に戻れる保証はないだろ!? だったら、いっそここで楽にしちまったほうが...」
「それだけはやっちゃ駄目だ。 自分から希望を消しちゃ駄目だよ 」

自ら諦めるような事を口走る前に、1人の声がそれを遮った。

「......ハルキ。 でもよぉ...もう、俺にはどうしたらいいかわかんねぇんだよ! ....うっうっ」

俯いて泣くポケモンの胸元に下げられたペンダントに、次々と涙が滴り、こぼれ落ちていく。
ハルキはそんなキョウを優しく、慰めるように頭を一撫でし、目の前のミュウに呆れた表情を浮かべた。

「ミュウ。 さっきから聞いていたけど、言い方が少しきつすぎだよ」
「ぼくは事実を言っただけだよ」

***



また….あの感覚だ。
技能測定を開始する前に見えた光景よりも、今度はハッキリと見えた。
一体、なんなんだ。今の光景は?
僕はこんな事した覚えは......

「ハルキ? どうかしたの?」

その声にハッとし、視線を横に向けると、心配そうにこちらを見る、青い瞳と目があった。

「ヒカリ...ううん、大丈夫! ちょっと疲れちゃったみたい。 ハハハ...」
「そっ...か。 だったら、早く帰って休まないとだね!」

気になることはたくさんあるが、今は依頼を完遂させることだけを考えよう。
ハルキは、思考を切り替えると前を歩く、チームウイングと少し距離があいてしまったので、歩調を早めて前においついた。
その後ろ姿をじっと見つめる青い瞳のヒカリの視線には気づかずに。

―――――――――――――――――――――

「依頼された物だ」
「ありがとな。 おっ! 木の実が増えてるじゃねぇか!」
「救助隊って気前がいいんだね」

ノクトが依頼主であるヤンチャムに木の実の入った袋を渡す。
落としてきた時よりも2倍近くの木の実が入っている袋を見てヤンチャムとチョボマキが感嘆の声をもらしている。
チェリム達から貰った木の実は、僕達だけでは量が多すぎるということで、こっちにも追加しておいたのだ。

「とにかく助かったぜ! これなら喜んでもらえそうだ」
「礼はいい。 それに今回はそこのピカチュウのヒカリが1番の功労者だ。 礼ならそちらに言うことだな」
「えへへ~。 だって、ヤンチャムとトリマキがプレゼントとして採ってきた木の実でしょ? やる気が出るに決まってるよー! ねぇ~?」

ヒカリがヤンチャムの両手を掴んで、握手をした後に、チョボマキを抱き上げてぐるッと回転した。

「な、なんかやけにグイグイくる奴だな…」
「というか俺はトリマキじゃなくて、チョボマキだし…」
「あれ? ハグの方がよかったかな?」
「寄るなッ! 暑苦しい!」
「うーん....残念」

ハグができなくて、少し残念そうな表情を浮かべるヒカリ。
ヒカリはそういうこと躊躇なくやるから、本気だったのだろう。

「じゃあ、俺達はこれで帰るかな」
「またなー」
「バイバ~イ! ヤンチャムー! トリマキ~! シキジカによろしくね~!」
「だからチョボマキだ!」

こうして、依頼主達を見送った後、ハルキ達はギルドに戻った。

「やけに親しげだったが、会ったことがあるのか?」
「ん? いや、私は会った事ないよー」
「そのわりには、随分と友好的に見えたけどなー」
「あー、ヒカリはいつもあんな調子ですよ」

ハルキの言葉でチームウイングは全員、納得した表情になった。
まあ、今日1日、あれだけ振り回されれば...ね。

―――――――――――――――――――――

「なあなあ、ヤンチャム」
「なんだ?」
「俺達さ、シキジカちゃんに渡すプレゼントって説明したっけ?」
「してないと思うけど、なんでだ?」
「いや、だったらなんであのピカチュウ。 シキジカちゃんの事、知ってるのかなーって少し思ってさ」
「さあな。どうせ、救助隊の情報網かなんかで知ったんだろ」
「そうかなー?」

2匹はそんな会話をしながら、木の実がたくさん詰まった袋を持って、帰路を辿っていった。
というわけで、なんとなく救助隊として登場させたキャラを動かしてみたいなーと思って
書いていたら、サラッといろんな伏線ばらまいてしまいました(笑)

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