8話ー2 神経細胞、テメェは黙ってろ

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読了時間目安:7分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「お前は誰なんだ?」

「……………。」
カイトは下を向く。

「俺に嘘ついてたのか?」

「……………。」
カイトは下を向く。

「俺に隠し事してたのか?」

「……………。」
カイトは下を向く。

「最低かよ。俺たちは親友じゃなかったのかよ。」

「電気。気持ちはわかるけどそれ以上い…」
「そういえば西大陸の軍人で英雄だったムクホークの名前が『セン・ロッツォ』って名前だったよな。苗字が同じだけど何か関係があったり?」
ミルが肩を強くつかんで割り込んできたが掴んできた肩を振り払って電気野郎は言い続けた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
カイト・ペインは下を向く。

「へぇ、図星?まさか英雄とやらの息子がお前だったりする系? まじ? 草生えるんですけど。」

「………だま…」
「ずっと前に図書館で家族写真を見つけたんだ。ムクホークとルカリオと幼いリオルの写真だったかな。幼いリオルはお前そっくりだったな、というよりもあのアホ面はお前以外にあり得な……」
「黙れ!!!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!!!!!!!!!!」

「――――――――っ!!?」
鼓膜が破れるかと思った。なぜか俺は汗を流していた。滴る汗が冷たく感じる。冷や汗だろうか。なぜ出ているのか分からない。心臓がバクバクする。なぜか口呼吸になるほど息が苦しくなってきた。なぜなのか分からない。怖い……。
電気野郎はなにかを感じた。


そして叫び続けたカイトはゼェゼェハァハァ荒い息を整えて、








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「――――――――――ッッ」
電気野郎は言葉で表現できない、否、言葉で表現してはならない“痛み”を感じた。
手が震えた。全身が震えた。ゾクッッッとした。足のつま先から耳にかけての神経、細胞すべて震えるようだった。
神経細胞のクソ野郎…。まじで黙っててれ…大人しくしてくれよ…!!
手の痙攣。恐怖。カイトからこんな言葉が出てくるなんて。
呼吸は苦しくなる。胸を抑える。
ナイフどころではない。さらにもっと、何かが心臓の奥に刺さった気分だ。
心臓に機関銃を撃ち込まれたかのように、心が壊れそうになる。
電気野郎は、冷や汗をかいて、荒い息をして、膝をついた。

カイトは遠回しに言ったんだ。
“過去がないくせに。ふざけんな”って。
これだけは言われたくなかった。
これだけは言われたくなかった!!!!!

こんなこと、言わなければよかった…。
電気野郎はひどく後悔した。


電気野郎は過去の記憶がない。自分の名前、年齢、どんな人だったのか、すべての記憶がない。
これを簡潔に表現すると

“電気野郎には過去がない“。
今までの楽しさや経験、“辛さ”、“苦しさ”、“痛み”、“傷”。電気野郎には“それ”がない。
忘れたいこともあるのが過去。探求心の強い電気野郎はカイトの痛みや傷を掘り上げてしまった。



「カイト、それは言い過ぎ。」
ミルがいつもと違う冷たい目でカイトを見る。


…はっ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥ごめんね。……………。」
頭を深く下げてカイトは謝った。

電気野郎は声すら出なかった。体全身が震えて動けない。今できることは呼吸。


「僕はね、父さんが大嫌い。お母さんが大嫌い。みんなは英雄英雄って言ってるけど英雄なんかじゃない。」

電気野郎は返事ができない。静かに話を聞くことしかできない。

「僕のお父さんとお母さんはね、まぁ‥‥‥‥‥‥いろいろあってね。大嫌い。大大大嫌い。」

「いろいろ…か……。」
電気野郎はようやく話すことができた。

「…ごめん。俺、何も知らないのに嫌味な言い方して。今までずっと嘘をつかれてたんだって思って、つい…」

「ううん、大丈夫。僕もカッとなっちゃってごめんね。」

「………。」

「……………。」
しぃーんとした雰囲気が包まれる。

「………。何があったか知りたい?」
カイトが口を開いた。

「うん知りたい。」
電気野郎が即答すると、相変わらず知りたがりだなぁ とクスッと笑う。


「いろいろあったのは9年前だったかな。……えっとねぇ…………。」


この間4秒間の空白が空く。


「………………………………ごめん、僕の口から言うのは無理。全部ミルから聞いて。もう夜遅いから僕もう寝るね。」
カイトはおやすみぃ~と言って寝室に

逃げた。


カイトがドアを閉めたと同時に、ミルは電気野郎の頭をバシッと引っ叩いて
「ハァ…、あんたってほんっっっと馬鹿。ほんっっっと最低。説教してやるわ正座しろ。電気、攻めすぎよ。誰だって秘密にしておきたいことくらいあるはずよ。それを質問攻めして嫌味な言い方したら、誰だってイヤに決まっているでしょ。それに「何があったか知りたい?」って言われて「うん知りたい」って言うなんて最ッ低。普通に考えて遠慮するでしょ。もっと考えてから発言しなさい。」

「……ごめん」
「返事が遅い。謝る相手が違う。」
「………はい。」
電気野郎はこれしか言うことがない。

ミルはまたため息をついて
「カイトってああみえてすっごい苦労してるのよね。私が体験してたら吐き気がするわ。」
ミルはカイトが逃げた寝室の方を見て

「…ねぇ。カイトに何があったかを知って、あなたはどうしたいの?これを聞いて何の為になるの?」

「っ!」
思いもよらない質問がっ。
アイツに一体何があったんだよっ?!
そんなに?!
………。




「あなたは知らない方がいいと思うの。だって……とても辛い思…」
「俺達は親友だぞ! ……親友の辛い思いも知らないで…親友なんかやってられっかよ!」

5秒のしぃんとした空気が電気野郎を息苦しくする。

「…………。それもそうね。わかった。」
ミルは深呼吸をした。
「何があったか教えてあげる。耳をでっかい綿棒で耳クソかっぽじってよく聞いてなさい。」

この話はカイトから直接聞いたの。カイトったら話が下手だから理解しにくかったの。だから私なりに解釈したことを話すわね。

この話を知っているのが私と私の師匠だけ。あなたが3匹目ってことになるわね。

この写真を見て。

ミルは、カイトの鞄を漁って一枚の写真を取り出す。

家族の写真はこれしかないの。



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カイトが生まれたのはね、1953年の冬ご………………。


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