prologue. だから、いらないの -ツイオク-

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不定期更新ですが、本編開始です。

 遠くで、何かが。
 崩れて行く音を聞いた。



   ◇   ◆   ◇



 その言葉は。
 紅茶に入れた角砂糖が、すうと溶けていくように。
 私の心にすうと溶けていったのを、今でも覚えている。



   *



「私、忘れてた。存在そのものを、忘れてた」

 あなたがぽつりと呟く、その言葉。
 傍に居たレモは聞き取れなかったみたいだけれども。
 私には確かに届いた。その言葉。
 モンスターボールの中でも、確かに届いた。その言葉。

「あの子達のことしか、考えてなかった」

 あなたは、あの子達のトレーナーだもの。
 それは当たり前のこと。大丈夫。私は分かっている。

「私の中でライラは、当たり前の存在じゃなかったんだ」

 うん、分かっている。
 あなたは私のトレーナーじゃないから。それも当たり前のこと。
 私は。あなたのお父さんから、あなたを頼まれた。護って、と頼まれた。
 それなのに。護れなくて。傷を負わせてしまって。ごめんなさい。

「私といても、不幸しかないんだから」

 うん。そうかもしれない。
 あなたは私と、一緒にいない方がいいのかもしれない。
 私が傍にいて、あなたが苦しくなるだけならば。もう。

「いらない。ライラなんて、いらない」

 私もあなたはいらない。いらないよ。
 あなたの傍にいることが“当たり前”になる前で良かった。
 “当たり前”になってしまっていたら。
 きっと。手放すことができなかった。
 今ならまだ、ちょっと苦しくなるだけでいいから。
 最後まで。あなたと気が合って良かった。


 静かに、そう思った。



   ◇   ◆   ◇



 でも。でも、ね。
 これだけは知っているよ。
 あなたが私を大好きでいてくれたこと。
 今でも大好きでいてくれて。想ってくれていること。
 知っているよ。全部、知っているから。
 だから。大好きだから、いらない。
 私もね。あなたのことが大好き。
 だから、いらないの。

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感想

お名前:ioncrystal さん
失礼致します…。
あっちのシルベの方追えてなくて、該当シーンだけ読んでたのでこちらは一応追おうみたいな気持ちで来ました。やっぱラプラスだし…
朝っぱらより読んで胸が苦しくなっている。(本当か?)
良い人らだなぁ、とか、人の良さの普通さ、それを実行する思いやりの能力の平均って果たしてどんなものか分からないから外野が何も言えないな、とか。
返信特別に不要です。
書いた日:2019年06月13日