No.12『 子ども達の遊び場 』

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:14分
庭師さんとそのポケモン達の頑張りのおかげで、ついに裏庭に立派な滝付きの大きな池が完成した。
ボールから出したカイルのギャラドス、ユリアのミロカロス、オレのシャワーズが気持ち良さそうに泳ぎ回っても、ちっとも圧迫感というものを感じない。
ついでに作ってもらった池に隣接する砂浜の上では、セツナのコソクムシが気持ち良さそうに日光浴をしている。

「水タイプのポケモン達、凄く活き活きしていますね。」
「カイルのギャラドスなんか、滝を登ったり、流れ落ちる滝の中から顔を出したり……1番エンジョイしてるもんな。」
「良いことではないですか。庭師の方も、『ホエルオーやマンタインが来なければ、あと5~6匹は自由に泳げる』と仰ってましたし。」
「『もし来ちまった時は、また呼んでくれ』とも言ってくれたし、ほんと……庭師さん達には感謝してもしきれねぇな。」

オレとセツナが縁側兼廊下に並んで座ってお茶を飲みながら、ボールから出た此処に住む全員のポケモン……総勢17匹が各々楽しそうに過ごす姿を眺めていた。

「アレンさん。あの………仮にですが、もし御自身の手持ちポケモンが6匹以上になった場合、どうなさる御つもりですか?」
「どうするって……別にどうもしねぇよ。パソコンのポケモン預かりシステムとかいうものは使わず、7匹目だろうが8匹……それ以上になろうが、この庭で放し飼いにするつもりだ。バトルするときは、その中から6匹までを選べば良いだけの話だし……せっかく仲間になってくれたのに、離れ離れになるのは、ポケモン達だって寂しいだろうからな。」
「そうですね。それでこの庭が一層賑やかになるんですもの、とても良いことだと思います……あら?」
「ん?どうした?」
「アレンさん、あそこ……」

セツナが指差した場所……正門から続く石壁がちょうど途切れ、裏庭を囲む木製の柵の一ヶ所に、庭の様子を見ている1人の男の子の姿を確認した。

「ん?あぁ、別に構わねぇよ。悪さしようってワケでもなさそうだし、裏庭は一般公開してるんだしな。けどまぁ、ポケモンに興味があるようだし……誘ってやるか。」

オレはゆっくりと立ち上がり、庭の中を移動して柵の向こう側に居る男の子に話しかけた。

「よぅ、ガキンチョ。」
「ひっ!」
「あぁ、悪い。驚かすつもりはなかったんだ。ただ、そんな所からじゃポケモンが見にくいだろ?あっちの門から中に入って来いよ。」
「え?いいの?」
「もちろん。ただ、門の近くでは今、工事してるからな……そっちには近づかず、作業してるおっちゃん達の迷惑にならない様、気をつけて入って来いよ。」
「うん!わかった!」

男の子は頷きながらそう言うと、迂回して正門から入り、そのままこちらに向かって走って来た。

「おぅ。ようこそ、シエリー荘の裏庭へ。」
「いらっしゃい。」
「うわぁ……凄い!」

男の子は目をキラキラと輝かせながら、ポケモン達の居る牧草地の上に足を踏み入れた。

「ボク、ポケモンをこんなに近くで見たの、初めて!」
「ガキンチョ……って言い方は流石に失礼か。えっと、名前を訊いても良いか?」
「ボクはライン!お兄ちゃんは?」
「オレはアレン。あっちの黒髪の姉ちゃんはセツナだ。」
「セツナです。以後、お見知り置きを。」
「うん!よろしく、アレン兄ちゃん、セツナ姉ちゃん!」
「はい。宜しくお願いします。」
「ねぇ、アレン兄ちゃん。此処に居るポケモンはみんな、アレン兄ちゃんのポケモンなの?」
「まさか。オレのポケモンはこの中の4匹だけ。他のポケモンはセツナのポケモンだったり、建物の中に居る他の住人のポケモンだ。」
「へぇ!そうなんだ。」
「此処のポケモン達は野生のポケモンとは違うので、いきなり襲ってくることはありません。何か起こりそうなときは事前にトレーナーである私達が止めますので、もっと近くでポケモン達をご覧になりますか?」
「うん!」

セツナと手を繋ぎ、ラインはリーフィアの傍へと歩いて行った。

「聴き慣れねえ声がしたんで来てみれば……お前等、いつの間に子どもを作ったんだ?」

廊下に腰を下ろしたオレの背後から、カイルがとんでもない発言を投下してきた。

「ばっ……!?何言ってんだよ、カイル!/////」
「まっ、まったくです!だいいち、ライン君が5歳ということは、アレンさんが15歳で、私が11歳の時にできた子ということになるのですが!?/////」
「……ったく。あんまりふざけた寝言をほざくようなら、簀巻きにしてギャラドスの餌にするぞ。」
「俺のポケモンの餌に俺を差し出すんじゃねえよ。まぁ、冗談はこれくらいにして……真面目な話、どうしたんだ?あの少年。」
「向こうの柵の外から羨ましそうにポケモンを眺めていたんで、そこじゃ見にくいだろう?って、こっちに来るよう誘ったんだ。」
「なるほどな。それで?どこの少年なんだ?」
「そういや、まだ名前しか訊いてなかったな。ライン、ちょっといいか?」
「ん?なに?アレン兄ちゃん。」

セツナとリーフィアから離れ、ラインが駆け寄ってくる。

「なぁ、ライン。お前……今、何歳だ?」
「5歳!」
「5歳か……家庭の事情は知らんが、少なくともまだ自分のポケモンは持ってねえみたいだな。」
「このアマーブル地方では、だいたい10歳前後で御三家ポケモンを貰える権利を得るからな。オレやセツナみたいにもっと違うタイミングで最初のポケモンを貰うこともあるだろうけど。」
「うん。パパとママも『最初のポケモンは、もう少しお兄ちゃんになってからね』って言ってた。」
「少年……ラインといったか?俺からも質問させてもらってもいいか?」
「うん!何?おじちゃん。」
「おじっ……!?」
「ぷっ!くく……ライン。こいつはカイルっていって、オレの兄さんみてぇな存在だ。できれば、お前も兄さんを付けて呼んでやってくれ。」
「わかった!」
「まったく……心に氷の維吹を受けたような衝撃だったぞ。」
「確か、絶対急所に当たる技だっけか?」
「まぁいい。気を取り直して……ライン。お前がポケモンを持ってないことは解った。それで?お前はどこから、どうやってこのシエリー荘まで来たんだ?」
「簡単に言うと、ラインの家はどこで、そこからどうやって此処まで来たのか?ってことだ。」
「えっとね、家はバリエンテにあるよ!そこから、歩いて此処まで来たの!」
「バリエンテ……まぁ、普通に考えたらそうだろうな。でなければ、こんな幼い少年が1人で……しかも、ポケモンを持たずに此処まで来れるとは思えない。」
「だろうな……オレもそう思う。とりあえず念のため、後でラインを家の近くまで送ってくるよ。」
「あぁ。そうした方が良いだろうな。」

「あら?皆此処に集まって、どうしたの?」

買い物を済ませて帰って来たユリアが、黙ってこちらの様子を見て……そして一言

「アレンさんとセツナちゃんにそんな大きな子どもが居たなんて……それをカイルさんに見つかったのね。」
「「違う(います)!!」」

*** アレン、セツナ、事情説明中 ***

「そう、近所の子なのね。えっと、ラインくんだっけ?ジュースがあるんだけど、飲む?」
「うん!飲む!」
「うふふ。良い返事ね。それじゃあ、持って来るからちょっと待っててね。」
「よし……じゃあ、ユリアが戻って来るまでの間、俺のドダイトスの背中に乗せてやろう!」
「本当!?カイル兄ちゃん!」
「ユリアがキッチンから此処に戻って来るまで、そんな時間掛からねぇだろうが。ちょっと、休憩!大人しく座って待ってろ。」

◇◆◇

アマーブル地方・バリエンテフレンドリィショップ付近

「ボクの家ねー。この近くなんだ。」
「へぇ、ショップの近くなのか……じゃあ、もしかしたら、今まで知らねぇうちにこの近くですれ違ってたかもな。」
「ねー。」

太陽が西の空に沈みかけ始めたので、オレはラインを安全に家へ帰すため、一緒にバリエンテの町に来ていた。

「ねぇ、アレン兄ちゃん。」
「ん?何だ?」
「明日も遊びに行ってもいい?」
「ん~……来ても良いけど、今日と何も変わらねぇぞ。オレ達の手持ちポケモン達は急には増えないし、例えばセツナが出掛けている時はニダンギル達が居ない時だってある。」
「あっ、そっか。」
「けどまぁ……遊びに来てくれる分には、いつでも大歓迎なんだけどな。とりあえず、毎日じゃなくて、明日はお前の友達と遊ぶと良い。友達、居るんだろ?」
「うん!そうする!……あっ、此処がボクの家だよ。」

フレンドリィショップからしばらく歩き、とある家の前でラインが足を止めた。

「此処がラインの家か。それじゃあ、今日はここでバイバイだな。ほら、今日オレ達と遊んだこと、ママに自慢してこい。」
「わかった!それじゃあ、アレン兄ちゃん。また今度遊ぼうね!」
「おう。また今度な。」

元気に手を振った後、家の中に入ったラインを見届け、オレもシエリー荘への帰路についた。

▽▼▽

翌日・14時頃

セツナは学園、カイルはユリアと買い出しに出かけており、オレが1人で廊下に座りながら、ボールから出した自分のポケモン達が自由に過ごす光景を眺めていると、木製の柵の方から聞き覚えのある声がしてきた。

「ママ、ほら!見て!」
「あら、本当。凄く近くでポケモンが見れるのね。」

オレはゆっくりと立ち上がり、牧草地を歩きながら、柵の向こう側に居る親子へ話しかける。

「おぅ、どうした?ライン。今日は友達と遊ぶんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったんだけど、ユウトくんは風邪で遊べなくて、レイナちゃんはママと買い物に出かけるんだって。」
「あちゃあ、そりゃ残念だったな。」
「アレンさん……ですか?昨日は息子がお世話になったようで……御迷惑ではありませんでしたか?」
「え?あぁ、いや……オレ達の方こそ、ラインくんのおかげで楽しい時間を過ごせましたし……」
「そう言っていただけると、幸いです。あの、こちらお礼と言っては何ですが……よろしければ、皆さんで召し上がってください。」
「そんな、わざわざ……ありがとうございます。ありがたく、いただきます。」

オレはラインの母親から菓子折りを受け取った。

「アレンさん。御迷惑でなければ、時々で構いませんので、息子と遊んであげていただけませんか?」
「ラインと?」
「はい。ウチにも可愛がっているポケモンが居るのですが、そのポケモンは旦那の手持ちでして……その旦那は今、そのポケモンを連れて仕事でカントー地方へ行っていているので、友達と遊ぶ以外の時は、この子に寂しい思いをさせているな……とは、少し前から気付いていたんです。ですが、私は自分のポケモンを持っていません……具体的な解決策が見つからないでいたときに、昨日……息子からこちらの話を聞いたのです。」
「なるほど……わかりました。ライン。」
「何?アレン兄ちゃん。」
「昨日も言ったけど、またいつでも遊びに来いよ。今度は友達も連れてくると良い。」
「本当!?」
「おぅ。今日風邪で寝込んじまってる友達も、お出掛けしてる友達も、まだポケモン持ってねぇんだろ?だったら、お前だけ楽しい思いしてねぇで、その友達にも此処のことを教えてやるといい。」
「うん!わかった!」
「ありがとうございます、アレンさん。」
「いいえ。ポケモンが大好きなのに、ポケモンを持っても良い歳になるまで待たなきゃいけないもどかしさってのは、オレにも解りますから。もちろん!それと同時に、ラインの身を案じて自分のポケモンを持つことを待たせているあなた達親御さんの考えも充分理解しているつもりです。」
「えぇ。そう言って理解してくださり、嬉しく思います。」
「まぁ、ウチは基本的に裏庭は一般公開しますし、誰か居ることが多いですから。オレのハガネールみたいにゴツいポケモンや、住人の手持ちにアーボックやギャラドスが居たりしますが……子ども達が危険な目に遭わない様、しっかり監督させていただきます。」
「すいません。その時は宜しくお願いします。」
「はい。ライン、お前が遊びに来たり、友達を此処に連れて来た時、柵の隙間から庭を見て、ポケモンが1匹も居なかったら……その時はオレ達全員、何処かに出かけてると思っておいてくれ。」
「はぁい!」
「すいません、アレンさん。では、本日はこれで。」
「バイバイ!またね、アレン兄ちゃん!」

ラインは母親と手を繋いで、バリエンテの方へ帰って行った。

「アレンさん。今、どなたかいらしていたのですか?」

声がした方を振り向くと、学生服を着たセツナが帰宅していた。

「あぁ。ラインがお母さんと一緒に来てたんだよ。こっちに入らないで、この柵越しに話しをしてたんだ。」
「そうでしたか。それで、どのようなお話を?」
「別に大したことじゃねぇよ。昨日のお礼と、時々ラインやその友達をこの庭で遊ばせてやってくれってお願いされて承諾したんだけさ。あっ、そうだ。お菓子を貰ったんだった……カイルとユリアが買い物から戻ってきたら、ありがたく頂こうぜ。」
「はい!」

いずれラインや、その友達も成長して両親や研究所……その管轄にある主要施設で最初のポケモンを貰う日が来るだろう。
けど、それまでは……その日までは、子ども達の心の中から『ポケモンが大好き』という気持ちが消えてしまわない様
『子ども達の遊び場』として、自分達のポケモンを大切にするという基本的なことを守りつつ、この裏庭を一般公開、提供し続けよう……そう思った。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

 この作品は感想が書かれていません。