第120話 VSゴールド[後編]

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 次に出して来たポケモンにゴールドは眉を寄せてこう言う。

「毎回カイリ……リューくんばっかりだと他のポケモンも育たないぞ! 他にしろ、他!」
「えっー……ごめん戻ってリューくん。んと、えっと、アルファ! 行ってきて!」

 固い地面にがっしりとした足が着き、いざ勝負と意気込んだ所でストップが出された。マイが出したポケモンはカイリューであり群を抜く強さであった為ゴールドは他のポケモンを要求。
 渋々出したポケモンは炎タイプであるバクフーンに有利な水タイプのラプラス。久しぶりに外に出て空気がおいしいのか、美しい鈴のような声で飛び出して来た。

「よしよし、分かってんじゃねぇの。バクたろう、一気に行くぜブラストバーン!」
「へっ!? あっ!? 何それ!? ええっちょっと待ってええええ!?」

 『ブラストバーン』はっきりとそう叫んだ。瞬間、バクフーンの背中にあたる身体の斑点から見事な炎の柱が三本誕生。陽炎が立って、遠くの木々が波打って見える。
 斑点模様から立ちのぼる炎をラプラス目掛けて投げ放つように身体を回転させると三本の柱にラプラスは囲まれてしまう。見たことも聞いたこともない技にマイは混乱して目を回す。

「勝負あり! ってな。オイオイマイさんよォ、そんなんでチャンピオンになれんのか?」
「…………」
(ちっとやりすぎたか?)

 何も出来ずに勝負は終わってしまった。ラプラスが倒れたままボールに戻さずにマイは黙って下を向いたまま。震える手をギュッとこぶしに変えて泣くのを耐えている様子。
 見兼ねてゴールドが左肩を抱いてやろうとするも振り払われて呆然とする。

「ゴールドすごい! やっぱりゴールドは強い! 強くてかっこいいゴールドだよ!」
「お、おう? ありがとうな……? ん?」
「びっくりしちゃったよ。アルファごめんね、火傷治しするね」

 逆にマイに両腕を掴まれて前と後ろに身体を揺さぶられる。どうやら落ち込んでいた訳ではなく興奮して我を忘れる事を我慢していたようだ。
 ハッと気付いて腕を離すとワンピースのポケットに入れてあったらしい『火傷治し』を取り出して治療をする。

「持ってたのか……」
「ん? うんっ! ゴールドなら絶対バクたろうで勝負すると思ったから! 一応持っておこうと思ってたの」
「そうか。そうか……っ」
「ゴールド!? どうしたの? お腹痛いの? 大丈夫?」

 火傷を負ったラプラスに自分が火傷治しで治そうとしていたゴールドは鞄を地面に落として手を震わせた。

(てっきりマイは俺とバトルするのが楽しみなだけかと思っていたがしっかり考えてたんだな……実力がちゃんと実らないだけで、ちったぁ成長してんだな)

 動かなくなったゴールドを心配して眉をハの字にする。昔のように、おどおどと不安げに周りの人に助けを求めるマイはもう目の前にはいなかった。

 それを、なんでか、認めたくない自分がいて。

「逃げてたのかもしれねぇな」
「へ? ごめんなさい、聞こえなかった!」
「なんでもねェ! よし! 特訓だ! オラオラ特別大サービスだ、満タンの薬使えー!」

 思わず声に出てしまったが幸いな事にマイは気づかなかった。不安を飛ばすようにゴールドは声を上げ、いつものテンションに戻る。

「わーい! 特別だー!」

 秘密の特訓は夜遅くまで続いた。ポケモンリーグまであと六日。どこまでマイは進めるのかそれは、マイにも、ゴールドにも、誰も分からない。

◆◆◆

「あれー、お父さんどうしてここに?」
「ああ、マイちゃん、ゴールド君、お疲れ様。リーグでのトーナメントが決まったから教えに来たらまだ帰って来てないって言うから、ここで夕飯頂いてるんだよ」
「オッス、ウツギ博士。マイを強くしてきたぜー。母さん、風呂沸いてるか?」

 特訓を終えてゴールド宅に帰宅するとウツギ博士が食事をしていた。口の中に入れていた物を飲み込むとマイを手招きして汗やホコリでちょっぴり汚れた顔をハンカチで汗を拭ってやる。ゴールドは風呂に入りたいのかキッチンにいた母親を呼び、尋ねる。

「沸いてるわよ。マイちゃんと入ってらっしゃい!」
「はい! そうします!」
「カーバ! 先入れよ、俺は待ってるから。なあ、ウツギ博士、トーナメントはどんな感じなんだ?」

 ティーポットからお湯を出し紅茶を淹れていた母親。悪びれもない言葉にゴールドは赤面しながらマイの腕を掴み風呂場へと催促させるとリビングに戻って来た。
 トーナメントが気になるゴールドは食卓の椅子に座りながらウツギ博士に聞いた。

「明日、リーグ前の掲示板にも張り出されるから見せるね。マイちゃんの初戦はソラ君だね」
「ソラ先輩!? いきなりかー。こりゃヤベーな。真面目に特訓させねぇと」

 トーナメント表を食卓に乗せて、人差し指でマイを指す。言葉通りマイの初戦は、離れていたけれど仲良しなソラ。
 顔色が悪くなるゴールドにウツギ博士は深く頷いた。

「うん。この子は頭の回転が速い子だよ。絶対にリーグに出ると分かっていたから予選ではメタモンを出したからね」
「メタモンか、確か相手のポケモンそっくりに化けるポケモンだったよな。それだけポケモンの技を知ってるって事か……」
「そうだね。しかもメタモンはノーマルタイプだから他のポケモンのタイプや戦い方が不明だ。手強いかもね」

 ソラがバトルしている時、ゴールドはマイの面倒を看ていたので戦い方や出してきたポケモンがわからなかった。
 ゴールドは手に取った箸を持ったまま話しているため、ウツギ博士も箸を止めて話に集中。

「コホン。あなた達、ここは食事の場です。美味しいご飯にバトルは無用でしょ? そう言うのは後で話しましょう! ほら、ゴールド! 手を洗ってから食べるのよ! マイちゃんの分も残して置いてね!」
「ははは、こりゃすいません。さて、僕も続きを食べようかな?」

 この二人は似た者同士なのかもしれない。母親は飽きれながらも、どこか嬉しそうな顔を浮かべて紅茶を口に運んだ。

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