第3話・宿った魔力

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:10分
 ヤドリギの森の中を進んでいくトト達。この森は魔力を帯びたヤドリギが多く生息するため珍しい植物が生息しているのだ。根は地面から飛び出し太く伸びた幹は空高くそびえ立つ。葉は魔力を帯びたせいか時折光の具合で筋が七色の光を帯びる。
 ヤドリギの森はトライタウンから少し離れた郊外にある小さな森。魔力を帯びた植物が群生する隠樹地帯でもあるのだ。隠樹によって陽の光が遮られているため小さな子供だけで入ると迷子になることもあるのだ。
樹のそばには多種多様なキノコも生えている。
ケイトが先導してトトとアルト、ロイドが後をついていく。

「おーい!ランタくーん!」

 わずかに差し込む木漏れ日と時折光る植物の明かりを頼りにそう言いながら森の中を散策していくトト達。散策していると少し開けた場所に到着した。
 少し開けているだけあってここだけ陽の光が差し込んでおりあたりを照らしてくれていた。

「だ、だれか〜…た、たすけて〜…」

 上の方から声が聞こえてくる。聞こえてきた方を見てみると樹と幹の間に何やら茶色い甲羅のようなものが見える。

「もしかして、ランタ君ですかー?」

 アルトがそう問いかけるとその甲羅から少し顔をのぞかせている。みずがめポケモンのゼニガメである。おそらく彼がランタ君だろう。

「あ、その声はアルトにーちゃん達?…からだがしびれて降りられなくなっちゃったんだー…」

 ランタがいるのはここからおよそ10数メートルほどの高さの場所であった。樹はまっすぐと伸びていて足を引っ掛けられそうなるところは見当たらない。

「…ぁ…クラボの実…持ってない…?…僕が行ってくるよ…」

 4匹の中で木登りができそうなのはロイドくらいしかいない。水とかげのロイドであれば木登りは適任だ。

「あ、あるよ!」

 ケイトは持っていたカバンを漁りロイドにクラボの実を渡した。ロイドは樹のそばには持っていた本を置いて樹に登り始めた。水とかげというだけあってスルスルと簡単にランタがいるところまで登っていった。ロイドはランタにクラボの実を食べさせるとランタの痺れが抜けていった。

「ありがとうロイドにーちゃん!」

 そう言われてすこし顔を赤らめるロイド。

「…ぁ…は、早く降りよう…!」

 ロイドはそう言ってランタに背中に捕まるように言って樹の下まで降りていった。

「…でもなんで樹の上になんかいたの?」

 ランタがいた樹はここからだいぶ高いうえ足を掛けれそうなひっかけもない。水とかげのロイドならまだしもみずがめのランタが1匹でどうやって登ったのか…

「そ、それは…
ザザッ!

 後ろの方から何やら草をかき分けるような音が聞こえてくる。

「誰ザマスか!?またわたくしのマナフラワーの園を乱すのはッ!!」

 そうマダム口調でこちらに対して怒鳴り始めるポケモン。ガーデンポケモンのフラージェスのようだ。

「ここはわたくしのマナフラワーの園ザマス!サッサと出て行くザマスッ!!」

 そのフラージェスはかなり怒涛の声を上げてこちらに対して物言ってくる。

「え!俺たちはただ…
「言い訳は無用ザマス!これでも食らうザマスッ!!」

 フラージェスはトト達に向かってエナジーボールを放つ。間一髪トトとロイドは攻撃を避けたが、うわぁッ!と言いながらケイトとアルトとランタに直撃し3匹は後ろの方まで吹き飛ばられてしまった。

「…ケイト!アルト!大丈夫かッ!?」

 トトがそう問うと弱々しくもケイトがう、うん…と答える。トトとロイド、2匹で戦闘態勢に入る。

「…トト…フラージェスに向かって…何か技を打てないかな?なんでもいいよ…!技で気をそらしてから…僕が魔法を使ってみるから…!」

 ロイドが咄嗟にトトにそう伝えるとロイドは横飛びをしてフラージェスと間合いを計り始める。

「(技って言っても…みずタイプだし…とりあえず水技を…)」
「“あわ”」

 トトのあわはフラージェスに当たりフラージェスはトトの方に目を向ける。ロイドが今だっ!と言ってた魔法詠唱を行う。

「“偉大なるグリモワールの主よ!僕に力を”!【アイスクリスタル】!」

 ロイドの詠唱した魔法で氷の粒手がフラージェスを取り囲む…と思いきや氷はその場で砕けてしまい魔法は不発に終わった。

「…あ、あれ…?」

 不発に終わった魔法にロイドが疑問に思っているとフラージェスが風の魔法で反撃を行う。

「【ウォローウィンド】!」

 砕けた氷をロイドに向かって風の魔法で弾き返しロイドに風の魔法と氷の粒手が襲う。うわぁー!!とロイドの声とともに背後に吹き飛ばられてしまった。

「…ッ!ロイドッ!」

 ロイドに問いかけるも返事はない。さっきのダメージで気絶してしまったのだろうか。

「(どうすれば…落ち着け俺!どうする…?…ッ!そうだ!魔法!俺にも…もしかしたら魔法が使えるかも…!)」

 一か八かの賭けであったがトトはロイドの真似をして魔法詠唱を試みる。

「“天地を結ぶ精霊よ!俺に力を!”…【ウォーターブラスター】!」

 その場で適当に浮かんだ言葉を羅列させて魔法詠唱をすると、トトから激流の水が出てきてその水はだんだんと水ではなく炎のように燃え上がり始め水は火炎となってフラージェスに直撃する。

「キャァァアーーーッ!!」

 フラージェスの叫びとともに黒焦げになったフラージェスがフラリとその場に倒れ気絶する。
ハァッ…ハァッ…と息を切らしてトトはその場に座り込む。

「…これが…俺の魔力…?」

 みずでっぽうを結ぶ放った時は口から水をはいたが、魔法を唱えた時はトトの正面に水流ができたのだ。しかも水流は水としてではなく途中で火炎となってフラージェスに直撃したのだった。
トトに宿った魔力…それは水ではなく“火”の魔力だった。

「…あ、そうだ!みんなを…!」

 そう言ってトトはケイトの持っていたカバンからオレンの実取り出してケイト達に食べさせた。
ヤドリギの森に差し込む陽の光はかすかに赤色みを帯びていた。



* * *



「ハルト!」
「あ、ランタ!大丈夫だった?」

 ヤドリギの森を後にしランタをハルトの待つ入り口にまで案内したのだった。

「ありがとうお兄ちゃん達!これこれにお礼にうけとって!」

 そう言ってランタは白い花を取り出す。いいよね…?とハルトに問いかけるとハルトも頷きながらお礼を言ってくれた。

「この花…あそこに生えてたのなんだけど…」

 ランタがそう言うとなぜあのフラージェスが怒っていたのかなんとなく察しがついた。

「あ、ああ…なるほど…この花、あのフラージェスさんが育ててたお花なんじゃ…」
「…全く…次からは気をつけれよ」

 トトがそう言うと2匹がご、ごめんなさい…と言って謝る。

「まあ、もう日も暮れるし…今日は早く帰れよ…」
「うん!ありがとうケイトにーちゃんとロイドにーちゃんとアルトにーちゃんと……」
「…あ、俺はトトって言うんだ。よろしく」
「うん!よろしくね!トトにーちゃん!今日はありがとう!」

 ハルトもありがとう!と言って2匹は街の方へと帰っていった。



「けれど驚きましたね。トトさんが火の魔法を使えるなんて…」

 旅館に向かいながらそう話すアルト。

「ほんとだよね。トトが“火の魔法使い”だったなんて!」
「…し、しかも…適当に言って発動できたってもの…」

 ロイドの言う通り、適当に放った言葉で魔法が使えたのだ。ここも不思議な点である。第一に…

「…トトはみずタイプなのに…“火の魔力”が…宿ってたってところも…気になるなぁ…」

 みずタイプのポケモンには本来なら水の魔力が宿るはずなのだ。しかしトトには水の魔力でなく火の魔力が宿っていだことだ。

「…え、でも、ロイドも水じゃなくて氷の魔法使いなんだろ?」
「…え、まあ、そうだけど…」

 たしかにロイドも水の魔力ではなく氷の魔力が宿っている。タイプによって魔力が決まる…しかしこのことに関して例外が存在するのだ。その例外により本来宿るはずのタイプではない魔力が宿ることもあるのだ。その魔力のことを時に“例外魔力”なんて呼んだりするのだ。

「…てことは…俺ってレアってことか…」
「ま、そう言うことだね」

 元人間でもあり、例外的な魔力の宿り方をしたトト。トトに関しての謎は深まるばかりだった。

「…あ、そういえば…ロイドの魔法ってなんで失敗したの?」
「…ぁ…そ、それは…」

 ロイドが恥ずかしながらアルトの後ろに隠れる。

「…ロイド君は特殊な魔力が宿ってますけど、そう言う場合は魔法アイテムで補助をつけたりしないとうまく魔法が作用してくれなかったりするんですよ…ロイド君の場合はいつも持っているあの本が魔法アイテムなんですよ…」

 本来宿るべき魔力ではない魔力が宿った場合、魔法アイテムで補助をつけないとうまく魔力を引き出せなかったりするのだ。しかしトトは例外的な魔力が宿りそして今回初めて使ったのにもかかわらず魔法を発動させることができたのだ。そう考えるとますますトトに関する謎は深まるばかりだった。

「…まあ、今考えても仕方ないしね…ぼくたちも日が暮れてきたし早く帰らないとね…!」
「…そうですね」

 そう言ってトト達は旅館の方へと向かっていった。空は緋色から紺色の夕焼けが広がっていた。

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。