Episode 53 -The Everthing-

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読了時間目安:19分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 リャンガンに近い寂れた海岸にやって来たチーム・澪標。打ち寄せる波以外何も見当たらないこの場所で、レギオン使いのプサイが再び姿を現す。果たして、次なる敵はどのようなレギオンなのだろうか?
 砂浜といっても、白いビーチに真っ青な海が広がるリゾートばかりではない。
このリャンガンから離れた位置にある浜辺は、少しゴツゴツとした黒岩が顔を覗かせる砂浜となっており、波の音がする方へ目をやると、群青色の冷たい水が、白い飛沫を上げながら波打ち際へとぶつかって行く。

こんな場所で泳ぎたいなどと思う酔狂者はいないらしく、海を見ても海水浴客の姿は見えない。もっとも、この一帯は離岸流がかなり早いらしく、遊泳禁止の立て看板があちこちに見えている。


「全く、こんな何もねぇとこに本当に奴らの反応があったのか? ローレルたちのいる場所からも離れてるし、小狐どもの向った地点からも真逆方向だってのに。」
「辺鄙なとこの方がいいよ、街中なんかでレギオン出されちゃ大変なことになっちゃう。それに私が思うに、相手は敢えてここを選んだんだと思う。自分が有利に事を進められるようにね。そうでしょ、プサイさん?」

カムイが突然刀を構えてそう言い放つ。その先にある、崖の上にはプサイの姿があった。


「あら、初対面の人間ちゃんに名指しで呼ばれるとは、私もすっかり有名になっちゃったかしら?」
「有名といったら有名やねぇ、そないな道化師みたく楽しげなお化粧面してたら、誰でもすぐ顔を覚えてしまうわぁ。」

「またネチネチと面倒な奴ね。どっちにしても、罵り合いなんてやってる場合じゃなくてよ。ハズレの人間はとっとと潰しておかないと、ターゲットの追跡がやりづらくなるのよねー。それと別の理由でも、元人間のポケモンは始末するのがベターな訳だし。」

その一言を聞き、シグレが羽根の矢を素早く放つ。しかし、プサイはみずのはどうを手元から撃ち出し、それを弾き飛ばしてしまった。


「フン、そう簡単にはくたばってはくれねぇ訳か。降りて来な、俺たちも同じ事情でね。お前らを叩き潰し、捕まえて情報を吐かせてぇんだ。」
「今ので実力差を測れないとは、哀れな奴ね……。今私が直接戦ったところで、何も面白みはないわ。レギオンの力を試しつつ、あわよくば邪魔な人間やダイバーは抹殺する。今はそれが一番な訳。」

「随分と余裕ね。自分の戦力に自信があるのに、わざわざレギオンを代わりに差し向けるんだ。回りくどいことしてくれるじゃない。」
「こっちにも事情があるのよ、今は直接的にアンタたちに手は出せない。だからこの子と遊んどきなさいな。」

プサイがカムイにそう告げると、彼女の身体にヘラルジックが赤く発光して浮き上がる。澪標の一行は、一斉に武器を取って戦闘に備えた。


「さて、今回はどんなのを呼び出してくれるんだろうね? もっとも、ボクたちにかかれば倒せない相手なんかいないよ!!」
「ふふ……。それなら試してみるといいわ、坊や。現れなさい、『カルキノス』!!!!」

プサイのヘラルジックが眩い閃光を放ち、一帯が赤一色に包まれていく。ミハイルはその魔杖を握る手に、より一層力を込めた。








 その頃ハリマロンのえっこたちは、荒野の中で正体の掴めぬレギオン相手に、思わぬ苦戦を強いられていた。

ニアは両手を負傷してしまっており、レーザーで敵を狙うことが難しくなったために、実質戦える状態にはない。
同様にカイネもいくらかのダメージを負っているため、決していいとはいえない状況だ。


「……。なあニア、こんなときはどうするべきだと思う?」
「無闇に動かない方がいいね。敵の性質が分かるまで、行動は控えるべきだと思うのー。」

「だな。だが一つ間違っているとすれば、それは敵の攻撃のからくりが読めない場合に限ってだ。そうじゃなければ、君が最初にやった通り。先手あるのみ!!!!」

突然、えっこが魔導書を片手に走り出す。その姿を見て、カイネとニアが驚きの表情を見せる。


「何やってるの!? 冷静さを欠くなんて君らしくない!! 下手に攻撃すれば私たちが……!!!!」
「君たちは一体何を見ていた? 敵の姿ならずっと目の前にあったのにな。それが分かれば、目を瞑ってでも攻撃が当たるぜ? 何なら試してみるか?」

「ちょっ、ど、どういう意味なのよ!? 敵の姿なんてどこにも……!!!!」
「『ブラックアウト』!!!!」

えっこが魔法を詠唱すると、えっこを中心として巨大な闇のドームが形成され、自分の手すらも見えない真っ暗な空間が生み出された。

闇が辺りを包み終えた直後、何かが刺し貫かれた音と、何か液体のようなものが飛び散る音とが聞こえた。


「えっこ!!!! まさか敵に攻撃されたんじゃ……!!!!」
「………………。俺がそんなにドジだと思うか? 20年以上連れ添った夫の力量を見誤るとは、君もまだまだだな。」

そんなえっこの声が聞こえると、暗闇のドームが晴れていく。すると、そこには突剣のヘラルジックを片手で持つえっこの姿が照らし出されていた。

その剣先には、非常に薄く、そしてどこまでも真っ黒に塗りつぶされたようなものが刺し貫かれ、布のようにだらんと引っかかっているのが見えた。


「えっこ!! 無事だったのね!! というか、その黒い布みたいのは何……!?」
「コイツがレギオンの正体だよ。俺はさっきの攻撃を思い出し、そして気が付いた。空を見上げるといくつも大きな雲が浮かんでいる。その雲は、日光を遮ってこの荒野のあちこちに影を落とす。」

「まさか、レギオンの正体って……!!!!」
「ニアも理解したか。敵は影そのものだ。恐らくは陰に潜み、陰がかかったところに一瞬で移動して攻撃を仕掛ける。カイネが最初に攻撃を受けたときも、雲の影が君の身体に触れていた。そこを狙ってやって来たって訳だな。」

ニアとカイネに対し、えっこがそう説明する。イプシロンとユプシロンが呼び出したレギオン・『ノクターン』とは、影に潜んで攻撃を行う性質を持っていたのだ。


「恐らくは不定形の敵だ。それなりの大きさで、周りより暗い部分があれば、そこに飛び移って好きな場所を好きな器官に変えて攻撃できる。カイネやニアを襲ったときは、君たちの身体にかかった影を牙へと変えた。」
「そんなことが……だからさっき、光を遮る空間を作れる黒魔法を使ったのね?」

「ああ。陰に潜むという性質は厄介だが、それが一番の弱点ともいえる。もし周りに闇しかない空間が現れれば、身体は強制的にそこに癒着してしまう。闇そのものが身体なのだからな。だからああして、どこを適当に突き刺しても命中しちまうって訳だ。」

えっこはそう告げると、血のような体液を流す黒い布状のレギオンを放り捨て、懐から何か金属片らしきものを取り出す。


「それからもう一つ、重要なことがあるんだぜ。」
えっこはそう言い終わると、何やらカチンという金属音を手元から鳴らした。それを聞いた瞬間、ニアとカイネの顔が青ざめる。








 「カニ……かよ。」
「ええ、どっからどう見てもカニね。」

シグレたちの前に立ちはだかったのは、横幅3m程の、巨大なカニ型のレギオンだった。

プサイに『カルキノス』と呼ばれていたそのレギオンは、右のハサミがハンマーのごとく太く大きい形をしており、左のハサミは小振りながらも鋭い刃物のようになっていた。


「まあ何だろうといいよ。私の刀なら、カニの甲羅くらい叩き斬ってやれるんだから!! ミハイル、補助をお願い!!」
「分かった、ボクたちの力を見せつけてやろう!!」

ミハイルの補助魔法の元、カムイが長刀を振りかぶってカルキノスに斬りかかる。その刀の一撃が甲羅を切断するのか、甲羅が刀を弾くのか、一同がそんなことを考えながら固唾を飲んで見守るが、予想外の展開が訪れることとなる。


「何これっ!? 刀がすり抜けた!? というか、水を斬ったような感覚が!!!!」
「どういうことなんかねぇ、カムイちゃんの刀が触れる直前、レギオンの身体が水になりよった……。 そのまま刀の一撃をすり抜けて、また元の姿に戻っとる……。」

そう、ミササギの言う通り、カルキノスはカムイの攻撃を避けるように身体を水に変え、そのまま振り下ろされる刀身をすり抜けていったのだ。

カムイの刀が通過した部分から再び身体が元に戻り、何事もなかったかのように飛び出た目でカムイを睨むカルキノス。


「カムイちゃんはやらせへんよ、身体を水に変えようが何しようが、凍らせてしまえば同じことや、覚悟しいな!!!!」
ミササギがホウキに強力な冷気を込めて攻撃する。カルキノスはその冷気を浴びて凍ると、全く動かなくなってしまった。


「あらまぁ、あっさりやられるとは素直な子やねぇ。ご褒美に、苦しまへんように一撃で仕留めたるさかい、安心しいやっ!!!!」
ミササギはホウキの先を特大の氷のハンマーに変えて殴り付けるが、何とホウキの柄が折れ曲がってしまった。


「竹から取った、炭素繊維で作った柄やで……どういう……ことなんや……!?」
「ミササギさん!!!!」

カムイがミササギの元に飛び込み、間一髪カルキノスのハサミの一撃を回避する。しかしミササギの手は、先程攻撃を弾かれた際の衝撃で、粉砕骨折を起こしてしまったようだ。


「これはえらいことやねぇ……。何で水の身体やのに……私の冷気が……。あいたたっ……。」
「無理しないで、ミササギさん……。一つ可能性があるとするなら……。シグレさん、奴の身体を切り裂くように攻撃してみてください。」

「さっきのを見なかったのか? また水になってかわされちまうぞ?」
「ボクの予想が正しければそうはならない。お願いします!!」

シグレはコートオブアームズの脇差で、カルキノスの甲羅の表面を斬りつける。すると甲羅がキラリとした光沢を持ち、シグレの攻撃を軽々と防いでしまった。


「やっぱりあの刀やと傷一つ……。き、傷? 何で水やなくて、固体になっとるんや……!? カムイちゃんのときは水になりよったんに……。」
「あのカニの能力は、自分の甲羅を任意の物質や物体に変える力だと思います。カムイのときは、重たく鋭い刀の一撃を、身体を水にすることで回避した。」

「なるほど、じゃあさっきの光沢のある硬さはダイヤモンド……!! シグレの横に切り裂くような一撃は、ダイヤモンドの硬さで傷一つ負うことなく回避したって訳ね?」
「そしてうちの冷気を受けるよりも前に、身体を鋼か何かに変えよったんか……。どうりで叩いたらこないになる訳やね。」

そう、カルキノスには、自分の身体を様々な物質に変化させる能力があったのだ。状況によって身体を構成する物質を使い分け、攻撃を受け流したり、真っ向から弾いたりできるらしい。


「フンッ、だがそのバカでかいハサミじゃ俺の速さには合わせられねぇぜ? そっちの攻撃も当たりゃしねぇって訳だ!!」
「ダメだシグレさん!! 奴はあなたを直接狙うつもりじゃない!! 恐らく着地したハサミが液体化する!! 被らないよう逃げて!!!!」

大きなハサミを振りかぶるカルキノスを睨み、その攻撃を回避しようと構えるシグレ。そんな彼にミハイルが咄嗟にそう告げたことで、シグレはハサミの着地範囲から大きく外れた場所へと何とか飛び退いた。


「な、何なのあれ!? ミハイルの言った通り液体化したハサミが飛び散って、大量の煙を……!!」
「あのカニ、ハサミを濃硫酸か何かに変えよったんやね……。ミハイルちゃんが気付かんかったら、シグレはんが骨まで溶かされるとこやった。」

「おい、ミハイル!! 次はお前のとこだ、早く飛び退け!!!!」

シグレは、カルキノスの脚が波打ち際にかかっていることに気付いた。同じく波打ち際に片足が浸かっているミハイルを見て、シグレは素早く身体を向けて叫んだ。


「まさか……!! うわぁぁぁっ!!!!」
「ミハイルちゃん!!!!」

「やはりな……。脚を水に変えた後、波打ち際の水を伝ってミハイルの元へ行き、鉄に変えた脚で刺し貫こうとしやがった……。油断ならねぇ化け物カニだぜ。」

ミハイルは頭から砂浜に突っ込んでしまったが、間一髪カルキノスの強襲を回避できた。身体をあらゆる物質に変えられる能力というのは、見た目以上に厄介な代物らしい。







 「ちょっとえっこ、そんなもの取り出さないでっ!!!! ってピン抜いちゃったぁ!!!! いやぁぁぁっ!!!!」

ニアが思わず両手で目を覆い隠した。直後、凄まじい爆音と共に閃光が辺り一面を覆い尽くし、深く瞑った上に両手で覆ったはずの目でも、外の世界が真っ白に塗り潰されているのがよく分かる。

数秒間、カイネとニアの思考は停止していた。百戦錬磨の2匹といえども、間近で眼の許容量を大きく逸脱する量の光を浴びたとなれば、思わず怯んでしまうのも無理はない。

やがて2匹は目をピッタリと塞いでいた腕を恐る恐る開き、重たいまぶたをこじ開けて何とかえっこの姿を捉えた。


「もー!! スタングレネード使うなら一声かけてよ!!!! 心の準備が必要なのー!!!!」
「ふふっ、悪かったな。だがこの通り、もう一体も仕留め終わったぜ。」

そう得意げに呟くえっこの剣先には、先程のような、空気の抜けたゴム風船のような物体が引っ掛かっていた。一つ違う点を挙げるとすれば、今回の物体の色は白一色であることだ。


「なーるほど。さっきのニアの手を攻撃したの、あの黒い奴じゃなかったんだね。」
「カイネにしちゃ冴えてるな。その通りだ、今回のレギオンは2体で1つ。陰に潜む者あれば、光に潜む者もあり。この白い布っ切れ野郎は、光に潜むレギオンだ。」

そう、ノクターンは1体だけではなかった。陰だけでなく、光に潜んで攻撃してくるタイプも存在していたのだ。

ニアがレーザーで攻撃しようとした瞬間、光に潜むノクターンが照らされたニアの手を、その影が落ちたカイネの身体を陰に潜むノクターンがそれぞれ攻撃した。
それこそが、2匹が同時にダメージを受けた怪現象のトリックだったのだ。


「ミハイルよ、その表情を見りゃ分かるぜ。もう勝利への道は見えたって訳だな?」
「ちょっ、ホントなのミハイル!? あんな厄介な攻撃してくる相手に対処法が……。」

「ふふふっ、さすが鋭いねシグレさん。そうだよ、何にでもなれる性質……好きなときに好きな物質になれる性質だからこそ、打つ手があるんだ。だから力を貸して欲しい。ボクじゃ非力だし、シグレさんとカムイの協力が必要になる。」

そんなミハイルの眼差しを受け、シグレとカムイは黙って頷く。そのまま武器をカルキノスの不気味な黒い目に向けると、二人は刀を構えて敵の元へひた走っていった。


「シグレさん、さっきみたく斬りつけるんだ!! 敵の身体をダイヤ……金剛にするためにね!!」
「任せときなっ!!!!」

シグレはミハイルの指示を受け、脇差で無闇やたらに殻を斬りつけまくった。すると、カルキノスの外殻が再びダイヤモンド化し、シグレの嵐のような太刀筋を軽々と弾き返す。


「今だね、せぇぇぇやぁっ!!!!」
カムイはミハイルの視線を受けただけで、全てを理解したかのごとく、高くジャンプして背後からカルキノスに斬りかかった。やはりパートナー同士、言葉を交わさずとも互いの考えが通じているらしい。


「おいミハイル!! いくらカムイの刀でも、金剛相手じゃ斬れやしねぇぞ!!!! 何考え……。」
「斬る? それは違いますよ、シグレさん。」

ミハイルがにやりと笑みを見せる。カムイの刀は峰打ちの形になっており、外殻に真上から振り下ろされていた。そして刀の着弾点を中心に、大きく殻にヒビが入っているのが見える。


「そうだろうと思った。ダイヤモンドは世界一硬い鉱物。でもそれって、擦られても傷を付けられにくい硬さって意味なんだよね。だから鈍器で叩きつければ、こうしてヒビが入るんだろうと思ったよ。」
「さすがカムイー、分かってくれて嬉しいよ!! ダイヤモンドは削るような力には強いけど、一点に衝撃がかかるようや力にはとても弱く、あっさり砕けてしまうんだ。トンカチで殴ったりとかね。」

ミハイルの言う通り、炭素によってできているダイヤモンドは、その炭素原子の構造上擦る力には最強の耐性を誇るが、ハンマーで殴るような衝撃に対しては非常に脆い性質を持つ。


「シグレに気を取らせてダイヤモンドになってもらった上で、思い切り峰打ちを叩きつけてやった。刀って見た目の何倍も重いからね。峰打ちだと立派な鈍器になっちゃう。こんな風にね!!」
「ミササギさんっ、身体を水に変えて粉砕を防ごうとします!! 凍らせてください!!」

「もう今度は逃さへんよ、全身をダイヤモンドから水に変えるこの瞬間が命取りや!!!!」

カムイが繰り返し刀を叩きつける。これ以上の身体の破損を防ぐため、カルキノスは咄嗟に身体を水に変えようとするが、それもミハイルの思惑通りだった。

ほんの一瞬でミササギの冷気が、水になったカルキノスの身体を芯までカチカチに凍らせてしまった。


「さて、これでとどめと行こうかな? 水になった身体を微分子レベルにバラバラにしちゃえば、もう復活することもできないもんね。」

ミハイルはつるのムチで凍ったカルキノスをバラバラに打ち砕いた後、Complusに入れていたガソリンを浜に撒き、そのままマッチの火を投げ入れた。

一瞬で燃え上がった火の手により、砕かれて小さくなっていたカルキノスは瞬時に蒸発してしまい、そのまま二度と戻ってくることはなかった。


「うー、やっぱり炎怖いよぉ……。燃え移ったらどうしよう……。」
「お前……さっきまで平然と火を点けて燃料に投げ入れてたろうが……。いきなり何言ってやがんだ。」

「ミハイルちゃんは草タイプやからねぇ。同じ炎が苦手な仲間同士、その気持ちはよう分かるわぁ。……というか、シグレはんも草タイプやろ、怖ぁないん?」
「さあな、元人間だからそんな感覚ねぇよ。つかお前の場合、弱点どころか耐性のある虫まで苦手じゃねぇか。タイプ云々関係ねぇだろ明らか!!」

「まあ、それはそれ、これはこれだよね。誰しもタイプ関係なく、苦手なものの1つや2つあるでしょ? ね、カムイ?」

ミハイルが急にカムイの方に目を向ける。カムイは一瞬びくりと身体を動かした後、いかにもバツが悪そうに目を上にそらしてみせた。


「何だよ、お前の苦手なものって何だよ!? 何か猛烈に気になってきただろ!!」
「い・や・だ、教えないっ!!!!」

「えーと、カムイは怪談とか聞くとね、夜中一匹じゃ……。」
「あーーっ!!!! それ以上喋ったら即刻海に沈める!! 土下座しても許さない、待てぇーっ!!!!」

浜辺を駆け抜けて逃げるミハイルと、相当恥ずかしげに顔を赤らめて必死に追いかけるカムイ。未だ燃え続ける炎が天を焦がし、白い波が浜辺に繰り返し押し寄せる中、2匹の騒ぎ立てる声が、遠浅の海へとこだましていた。


(To be continued...)

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